【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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第63話 【人類ママ活計画】中編

【団三郎狸】と佐渡の黒札に情報を渡して調べてもらった結果、不審な場所はすぐに見つかった。

 そこは佐渡の中でも山奥の田舎。

 とある田舎の村の一つの住民が全て一晩にして消え去ったらしい。

 この半終末の世界では、村が一つ消えさえることも珍しくはないが、悪魔に食われたり襲われたりした痕跡は欠片もない、文字通りの”行方不明”である。

 それを探知した凍矢と『破裂の人形』は、対混乱装備や対魅了装備を整えると、さっそく佐渡に飛ぶことになった。

 

 寂れた小さな田舎の村。まるで人が今までいたような状態で放置された家を見ながら、【団三郎狸】たちから入手した情報を確認した凍矢たちはとある場所へと向かう。

 

「……【団三郎狸】たちからの情報によると、近くの山に巨大な洞窟が存在するらしい。

 もしかしたら、その洞窟内部に村の皆が集っている可能性がある。向かってみよう」

 

 そして、地図に従ってその洞窟を見つけた彼らは、見つからないようにこっそりとその内部を見て思わず絶句した。

 そこにあったのがあまりに異常な状況だったからだ。

 

「うわぁ……」

 

 その巨大な洞窟内部にいたのは、もうヒト型すら留めていない、数百もの大小様々な無数の乳房で構築された4mほどの巨大な肉塊のような存在。

 その数百の乳房に、老若男女問わずあらゆる人間が夢中に吸い付いて体を委ねているのだ。

 

「ママァ……。ママァ……」

 

「おっぱい……。おっぱい……」

 

 男女問わず、その無数の巨大な乳房に抱き枕代わりに抱き着いて、乳房にある乳首に吸い付いている。

 その彼らの顔はこれ以上ないほど幸福な表情だった。

 そして、その無数の乳房で構築されている肉塊の上部に、女性の上半身が生えていて、慈母の表情で彼らを見ながら微笑みを浮かべていた。

 これこそが、彼らにとっては至高の幸福なのだ。

 

「うわぁ……(ドン引き)。どこぞのSCPじゃんあれ……」

 

 どこかであんなSCPがあったよなぁ、と思いながらもそのあまりのおぞましさに、凍矢は内心ドン引きする、

 実際、ダイアナの元になったエペソスのアルテミス像では、体中に無数の乳房をつけたようなアルテミス像が存在する。

(一説では、生け贄とされた牡牛の睾丸ともされているが)

 ダイアナとアルテミスはほぼ同一視されているため、その姿をそのまま持ってきて、それを肥大化させたのが、あのおっぱいの化け物なのだろう。

 そして、その無数の乳房の塊の頂点には、人間の女性の上半身が存在していた。

 金髪で両手を広げて陶然としている絶世の美女。彼女こそが【地母神ダイアナ】である。

 

『ふふふ、いい子たちね。もう貴方たちは何も心配しなくていいのよ。ただ私の胸に甘えてるだけでいいの』

 

 自分の無数の乳房にしがみついて夢中で母乳を吸っている老若男女の村人たち。

 それを彼女は愛おしげに眺める。悪魔の脅威に怯える人間たちを保護し、自分の胸で永遠の幸福を味わわせる。これこそが彼女の弱者救済である。

 彼女の胸に甘えていれば何も心配はいらない。天使も悪魔からも守ってあげるといわんばかりである。

 それは彼女自身から強力な魅了魔術【マリンカリン】が無尽蔵に垂れ流されているからである。

凍矢たちの仲魔である【地母神キクリヒメ】もその状況を見てドン引きする。

 

「うわぁ……。あれは頭におっぱい(地母神)キメてるわね~。あそこまで行く地母神はあんまり……。いや結構いるかも……。地母神の暗黒面であるテリブルマザー全開ですね~」

 

 同じ地母神であるキクリヒメのその言葉を聞いて、凍矢は思わず頭を抱える。

 地母神は比較的まともで人類を守護してくれるというイメージが木端微塵である。

(ダイアナも確かに人類は守護しているが)

 グレートマザーには、生み育てる肯定的な面と、子どもの自立を妨げ、子供を呑みこみ、ついには死に至らしめる面とが存在する。

 ダイアナは、そのグレートマザーの暗黒面、デリブルマザー全開の存在なのだろう。

 

「あんなSCPと関わり合いになりたくないんだけど俺……。もう帰っていい?」

 

「というものの、やはり依頼である以上こなさなければいけないのでは? マスター」

 

 『破裂の人形』の言葉に、ですよね~と内面で愚痴りながら、凍矢は戦う決意を固める。

 ここで不意打ちを仕掛けても、あのおっぱいに吸い付いている人間たちを人質にされては厄介なことになる。渋々ながらも、凍矢は『破裂の人形』や仲魔たちを引き連れて、ダイアナの前に姿を現す。

その凍矢たちを見て、ダイアナは忌々しげに彼らを睨みつける。

 

『やはり来たかデビルバスター。だが、一体なぜ私を倒そうというのだ!! 見ろ! 弱者は私のおっぱいに吸い付いて幸せを享受している。お前に彼らの幸せを、それを与えている私を否定できるのか!!」

 

 いや普通にキモいし……。こんなの外に広められたら困るし……。というかもう関わり合いになりたくないからさくっと終わらせたいし……。思わずそんな本音を口に出しそうになってしまう凍矢。

だが、彼女を放置して、佐渡をおっぱいで埋め尽くされても防衛上困る。

渋々ながらも、凍矢は彼女に問いかけることにした。

 

「一応聞いておくけど、何のためにこんなことしてるんだ?大人しく降伏する気はない?」

 

肉塊の上に存在する女性の上半身、【ダイアナ】はそんな凍矢の声に、両手を広げて否定する。

 

『笑止!私はまだ何も始めていない!ほんの少しの人々を救っただけでは私は満足しない!!この程度では私は満足できない!!そう、私の望みは、全人類のママになることだ!!』

 

「ママ」

 

『そうだ! 今の人間たちを見よ! 全ての人間たちは恐怖に怯えており庇護を求めている!! 

 皆、守ってくれるママを探し求めているのだ!! 全ての人類はもう怯える必要はない! 

 ただ私のおっぱいに吸い付いて甘えているだけでいいのだ!! 

 すべての人類を私の庇護に置き、全ての人間を幸福にする! それの何が悪い!!』

 

『人類を救うのはママ()しかいない!! 全人類はただ私の胸に甘えていればいい!! 

 全ての人類を甘やかして救済する!! 他の地母神を打倒し! メムアレフを打倒し私が星を支配する大母となり、地球を私の(おっぱい)で埋め尽くす!!天使たちすらも私の(おっぱい)で無力化する!!

それが私の人類救済(ママ活)だ!!」

 

 もう帰っていい? (本日二度目)SCPそのものな姿を見せられて、こんな理論を聞かされてこっちの正気度はガリガリ削られてるんですが?帰ってそのまま寝たい……。と思わず凍矢はげっそりしてしまった。

 

 まあ、確かに彼女の論理にも一理ないわけではない。

 半終末のこの状況、どこもかしこも人類は悪魔の魔の手に怯えている。

 そこから救って守ってくれる、幸福を約束してくれるのなら、喜んで飛びつく現地人たちは多いだろう。

それだけ現地人たちは恐怖と不安に怯えているのだ。

 

 士魂号開発の研究の際、補助脳として人間の脳を使用するかという案が上がった際に、その妥協として補助脳として使用する代わりに幸福な夢を見させるというプランに、どこから嗅ぎつけたのか現地人が大量に応募してきたという事例もある。

(もちろん技術班の「人間の脳を使用するなんてダメに決まってるだろ!」という常識的判断で却下されたが)

 

 どうも、この世界の人間は不安から逃れるために、自意識を捨てる判断が早すぎる傾向にあるらしい。

 ともあれ、こんなSCP真っ青な怪物を放置するわけにはいかない。

 

「……で? なんだかんだ言いながらそいつらを人間の盾にする気だろ?何が弱者救済だよ。ただの生贄じゃねーか。」

 

そんな凍矢の挑発に、ダイアナは怒り狂って彼に反論する。

 

『ふざけるな! するわけないだろうが私が! 私の愛し子を盾にするなど!!』

 

ボコボコボコ、と乳房で構成されている巨大な肉塊は蠢くと、表面で無数の乳房に吸い付いている村人たちを中に取り込んでいく。

これは、分解して吸収するとかではなく、安全な肉塊内部へと避難させているらしい。

彼女曰く、この肉塊内部なら戦いに巻き込まれず、絶対に安全との事らしい。

 

『私は私の愛し子たちを絶対に守る!彼らはこれで絶対に安全だ。そして、貴様は私自らが相手になる!!』

 

ずるり、と肉塊上部にいるダイアナは、上半身だけの状況から肉塊に埋もれている自らの下半身を引き出す。そして、そのまま肉塊を足場にして跳躍した瞬間、彼女は光に包まれ、狩人に向いた身軽な服装に身を包み、手には弓を装備した姿へと変貌して地面に着地する。

 

『さあ、勝負だ、ガイア連合。これが、私の人類救済のための第一歩だ!!」

 

完全な女性体になった彼女は、金髪をたなびかせて、弓矢を構えながらその青い瞳で凍矢を射抜く。

これが地母神ダイアナとの戦いの幕開けだった。

 

 




ちなみに元ネタはSCPの「SCP-597 全ての母」です。
皆おっぱいに甘えていれば幸福!!幸せだね!
魔女たちこんなので人類救済しようとしたってマジ?
魔女「はい、そうですが何か?(彼女たちは狂っています)」
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