──―魚沼、権現堂山の麓付近。
そこには、とある超巨大異界の入り口が存在していた。
新潟の黒札たちの支援によって作成途中の半空間遮断超巨大異界。
いざという時には、空間遮断を行って半封印できるその超巨大異界の中心には、それと比例するかのように極めてこじんまりとした祠が存在していた。
そして、その祠、というか神社の中に存在するのは「九つの頭を持った竜の木像」である。
新潟の黒札たちの支援で作り上げているさなかのその異界内部に凍矢たちは入り込んでいたのだ。
「……よし、【対戦闘用異界】の準備はうまく言ってるみたいだな」
そんな彼の前に存在しているのは魚沼に存在している【九頭竜権現木像】(マジにあります)
かつて【戸隠神社】からこの地へと移送されて作り上げられた木像らしい。
【弥三郎婆】のお膝元である【九頭竜権現木像】は異界内部に収められ、結界と限界にまで絞られた地脈供給が行われていた。
【九頭竜】といえばメガテニストが思い浮かぶのは一つ、【神霊クズリュウ】
真・女神転生Ⅱでルシファーがミレニアムを破壊するために使用した九つの首の一つ。
ガイア連合の中でも心配されている【終末懸案】の中の一つである。
もちろん、普通はこんな小さな木像ではなく長野県の「九頭竜神社」や神奈川県に存在する「九頭竜神社」などに降臨すると考える方が自然だろう。
だが、ガイア連合もそれを予測して、各地に存在する九頭竜神社はガチガチに厳重な封印で封じ込めを行っている。
例えクズリュウでもそう簡単に降臨はできないほどの厳重すぎる結界だ。
その中でも、この魚沼は異常なほど結界が薄く、しかも絞ってはあるがきちんと地脈も通っている。
これは、もしクズリュウが降臨した時に、ここにおびき寄せようとする罠である。
強大な悪魔の降臨に対する封印とは、例えていえば溢れる地下水を抑えるようなものである。
全てを完全にガチガチに封じ込めれば、どこかしら圧力に耐えきれず破綻して吹き飛ばされる可能性が高い。だが、一点だけわざと封印を軽くしておけば、そこに殺到し、狭い穴から噴出する事になる。
そして当然ながら、勢いはあっても規模が縮小されるのは事実。
つまり、わざと力を弱めたクズリュウを降臨させ、それを叩こうという案である。
一度噴出させて圧力を弱めれば、次の噴出は難しくなる。
それと同様に、弱めのクズリュウを降臨させ、それを叩く事によって被害を最小限に収めようというのだ。
この程度の穴では、クズリュウの九つの頭全てを降臨させることはできない。
せいぜいが、頭一本が降臨できるだけだろう。(それでもその強さは間違いないが)
「しかし……正気か? 【神霊クズリュウ】と戦うなどと。そんなもの降臨させたらこの地が全て吹き飛ぶぞ?」
凍矢たちと同じように入り込んでいた弥三郎婆は、思わずジト目で凍矢を睨みつける。
クズリュウは【9本の頭全てを動かせば、地上も魔界も、全てが破壊される】とルシファーが明言するほどの存在である。
真女神転生ではルシファーの制御があったから首の一本がミレニアムを破壊した.
だが、今ルシファーはどこにいるのか行方不明になっている。(ショタおじの中にいるなどとは彼らは当然知らないし、『阿部 清明』のところに堕天使 ルシフェルが存在していることも知らない)
それはつまり『制御できる存在がいない』ということだ。
制御できない状態で、クズリュウの全ての首が地上に降臨したら、間違いなく地上も魔界も吹き飛ばされるだろう。
それならば、限界にまで地脈を絞って、木像という極めて小さな依り代のみフリーにする。
これならば”穴”が狭すぎるため、首一本を地上に降臨させるのが限界だろう。
「仕方ないだろ。このご時世どこにクズリュウが現れるか分からないんだから。
それなら、戦場を作り上げておびき寄せて迎撃したほうがいい。
魚沼が戦場になるよりマシだろ?」
「まあ……それはそうなんじゃが……」
渋々ながらも同意する弥三郎婆に対して、今度は静が凍矢をジト目で見る。
「で? また借金増やすんですか?」
「こ、これは必要経費だから。無駄遣いじゃないから」
静に書いて渡した紙には『破裂の人形』の変化スキルへの変更代と「高速飛行」スキル。
さらには凍矢自身の飛行スキルやキクリヒメの飛行スキル代。
そして【シキオウジロボ】の代金などが購入されていた。
せっかく頑張って借金を減らしているのに、さらに増やすなどと言われたら静は切れていいだろう。
それに対して反論するのは人間形態の『破裂の人形』だった。
「いいのではないでしょうか? クズリュウ相手にちんたら地上を歩いていてはそのまま容易く潰されてしまいます。高速で飛行できる戦闘機モードの導入は、戦略的に利にかなっています」
確かに飛行スキルは持っているが、今の人型状態のままでは高速飛行はできない。
変化スキルを獲得して、戦闘機態勢に変形できればより高速の飛行が可能になる。
確かに対クズリュウ戦では、彼女の言葉は正論である。
「予算を惜しんで負けました、じゃ話にならないからなぁ……。生きていて終末を乗り越えれば何とかなる」
まあ、確かにその通りである。予算を惜しんで死んでしまっては元も子もない。
それに仮想敵は【神霊クズリュウ】万全の体制を整えていく必要がある。
後は、この異界に大量の【ノロイ酒】(飲酒可能)を搬入する予定でもある。竜が酒に弱いのはお約束だろう。
「【士魂号】は購入したけど、俺がいない分をカバーするために、シキオウジロボは購入予定だからよろしく。さすがに二機は無理だろうけど、一機だけなら何とかなるでしょ」
「もし俺が負けたら至急馬ニキを通してガイア連合に連絡して。黒札からの連絡ならガイア連合も至急動くだろう」
個人的には九頭龍を打倒したという【英傑ヤマトタケル】が欲しいのだが、必殺の霊的国防兵器という貴重な存在、そしてレベル90という途轍もない強さからして、到底制御しきれる自信はない。
最悪の敗れた場合、キクリヒメの本霊と相談して自分たちの魂を【黄泉比良坂】へと避難することは決まっている。現世と黄泉の間の【黄泉比良坂】なら、ある程度現世への介入も可能なはずである。
「それに、【九頭竜】と私、というか白山菊理比咩とは縁があるしね~。
白山信仰始まりの際に泰澄が九頭竜とあった際に、「真の姿を現してください」と祈ったときに、十一面観音菩薩=白山妙理権現(白山明神)へと変化したという伝承があるわ~。つまり、私と九頭竜はイコールってわけ~。
私を従えている凍矢なら、九頭竜に対してある程度の特攻がつくと思うわ~。」
確かに九頭竜は十一面観音菩薩=白山妙理権現に変化したという伝承がある。それを生かせば、キクリヒメの主である凍矢が九頭竜を制するということも伝承的には可能なはずであろう。
ともあれ、キクリヒメの言葉を聞きながら目下の可及的課題はクズリュウと対抗できるだけの自分のLV上げかぁ、と凍矢は思わずため息をついた。
【生存】地方防衛スレ(新潟)part50【戦略!!】
61:名無しの地方転生者
で?お前本気でやるの?
62:名無しの地方転生者
神霊クズリュウと真正面からガチバトルとか正気か?
63:田舎ニキ
俺だってやりたくないけどしゃーないやろ。
最悪長野の戸隠神社から神霊クズリュウ降臨とかになったら、長野と新潟大被害食らうやで。
64:名無しの地方転生者
まあ、それはそうなんですが……。
65:名無しの地方転生者
お前がやってくれるならそれに越したことはないんだけどさ。
66:名無しの地方転生者
自分からクズリュウと戦うと言い出すとか貧乏くじすぎて草。
67:田舎ニキ
というわけで……支援をよろしくお願いしまぁあああす!!
対クズリュウのためのカンパを!あと何かいい感じの戦略あったらオナシャス!!
68:名無しの地方転生者
まあ、とりあえずレベリングやろなぁ。
69:名無しの地方転生者
LV60……いやLV70まで上げればクズリュウとガチれるはず。
70:名無しの地方転生者
他の九頭竜神社をガチガチに固めて、九頭竜木像に降臨させれば、限界にまで神霊クズリュウを弱められるはず。
71:名無しの地方転生者
とはいうもの……極端な弱体化は期待しないほうがいいだろうな。
72:名無しの地方転生者
最低LV70を仮想敵にしておいたほうがいいだろうな。
73:名無しの地方転生者
お前、せっかく借金減らしたのにまた増やしていくスタンスなの?
74:田舎ニキ
借金でクズリュウに勝てるのならいくらでもやりまぁあああす!!(やけ)
75:名無しの地方転生者
えぇ……。(ドン引き)
76:名無しの地方転生者
普段ウジウジ悩んでるくせにいざという時に思い切りが良くて草。
77:名無しの地方転生者
いやまぁ生存戦略には極めて正しいんだけどさぁ。
78:名無しの地方転生者
どうして無駄な所で思い切りがいいんですか?
79:名無しの地方転生者
借金増えるの楽しみにしてる俺たちだけど、自分から増やすとかドン引きするんよ。
80:田舎ニキ
とりあえず、足元ちんたら歩いてるとクズリュウに潰されるから、『破裂の人形』に変化スキルを覚えさせて戦闘機モードに変形可能にして、高速飛行スキルを持たせる予定。
あと俺たちみんな飛行スキル持ちます。
81:名無しの地方転生者
まあ分かったわ。俺たちも全力でカンパ支援するからよろしくな。
82:名無しの地方転生者
クズリュウと戦うというのなら全力で支援するしかないんよ。
83:名無しの地方転生者
こっちでも対クズリュウ戦略とか考えてみるわ。
84:名無しの地方転生者
とりあえず、対クズリュウ仮想戦場の半空間隔離異界作成は俺たちも協力するわ。資金は任せろ。
85:名無しの地方転生者
ショタおじの許可を得てる以上、山梨支部も協力してくれるやろ。
86:田舎ニキ
俺がやられたら後はみんなよろしくな~。他の黒札たちで何とかしてクレメンス
87:名無しの地方転生者
ぜってぇやだよ。新潟と長野黒札VS神霊クズリュウ総力戦とか。
88:名無しの地方転生者
俺たちが苦労しないために全力支援せざるを得ない。(迫真)
89:名無しの地方転生者
自分自身を人質にして支援を引き出すとか狩人ニキじみてて草。
というわけで、この作品のラスボスはクズリュウになりそうです。
書いていたら「霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。」様のラスボスが神霊サタンみたいで思わず草でした。