「【アギ!】」
凍矢の周囲を周回するツボに入った使い魔から放たれた火炎が敵悪魔を焼き尽くす。
そう、これはガイア連合で販売されている使い魔【アガシオン】である。
氷系魔術中心の彼では、凍結耐性や凍結無効の敵など出てきたらたちまち詰んでしまう可能性大なため、その対策として1耐性1弱点の高級アガシオンを購入することを選択した。
特に、雪国では何かあったときの暖房のためにアギがあったほうがいいと常々思っていたので、アギが使えるアガシオンは彼にとって非常にありがたかった。
現状では氷結に弱い【ジャックランタン】や【ウコバク】は彼にとってレベル上げのいい獲物だったが、逆に氷結に強い【ジャックフロスト】はさっさと逃げるしかないという極端具合だったので、こうした自分の真逆の炎の魔術を使えるアガシオンは非常に心強いというほかないだろう。
「おっと、もうそろそろ行かないとな。」
そう呟くと、彼は修行用異界から離脱することにした。
そのしばらく後、彼は長い赤髪を三つ編みにした黒いスーツにパンツスタイルの綺麗な女性と面会していた。
「?霊能組織の作り方ですか?」
この女性こそ、通称マキマネキ。自分の理想の彼氏を探し出すためにガイア連合下部の対悪魔組織を作り出したやべー女性である。*1
今回彼女と会っているのは、銀時ニキも言っていたように、彼女から対悪魔組織のノウハウを聞き出すためである。
だが、彼女と相対した凍矢は、その黄色を帯びた瞳を見た瞬間凍り付いた。
(ぴえっ、怖いっピ。)
まるで巨大な肉食獣を前にしているような恐怖を感じてしまう凍矢。
それは彼女が歴戦の強者である以上の不可思議な恐怖だった。
(というか、純粋に目が怖いよ目が。何というかガンギマリの目をしてるじゃんこの人。)
そんな凍矢に関わらず、ふむ、と事情を聴いた彼女は顎に手を当てて考え込む。
「で、ノウハウでしたっけ?そうですね……。まずは何と言っても人材集めですね。
簡単な所では悪魔被害者の孤児や復讐者を集めて手駒にすることですね。
レベル1、いえ、Dレベルでもいいですから覚醒さえしてくれれば、物資の運搬担当やら諜報員としての活動やら色々便利ですから。」
もちろん、Dレベルでは前線に出せませんが、後方活動要員としては役に立つんですよ、と彼女は言う。
ガイア連合からは親の仇のように憎まれているDレベルではあるが、Dレベルでも覚醒していないより遥かにマシ、というのが今の地方での現状なのである。
「見込みのありそうな人物は式神パーツ移植を行う式神覚醒なども行いますね。
式神パーツ移植は霊的限界も突破できて現地民でも前線で戦う人材を生み出せるいい技術ですよ?
まあ、マッカなどはかかりますが仕方ありません。」
式神パーツを移植された現地人は通称【移植組】と呼ばれ、霊的に覚醒して戦力になってくれる事が多い。
代表的な所では、キャプテンファルコンニキが肩入れしている【麦野沈利】である。
複数の覚醒転生者の血肉&高レベルの悪魔のフォルマ&高度な霊的手術により、彼女は現地人でありながら、準黒札とも呼べるほどの戦闘能力を得ている。*2
「まあ、移植技術はそうそう使えませんから、まずはやっぱりデモニカですね。
見込みのある人物にデモニカを着せて、修行を行わせて戦力にするのが第一目標だと思います。
確か修復をしたデモニカもどきも世間では出回っていますが、そちらではなくきちんとしたデモニカを使用すればレベル上昇率は格段に異なります。
あとは、自衛隊ニキのデモニカ覚醒修行を参考にすればいいのでは?もっとも、そんな都合のいい異界が見つかればの話ですが。」
「……まあ、最近の地脈活性化で悪魔の被害にあった人間は多いですからね。
孤児になった人間や、悪魔に大事なものを奪われて復讐を誓った人間、悪魔との接触で覚醒した人間を取り込んで、デモニカを装備させて育成させるのが一番手早いかと。」
「後、ほかの人材としては、神や悪魔の転生者を活用してみればどうですか?
悪魔のひも付きとしてガイア連合では嫌がられていますが、黒札の戦力として派出所で活用するのならば文句は言われないでしょう。まあ、そういう人材が見つかればの話ですが。」
そんなマキマネキの言葉を、ふんふん、と頷きながら彼はメモを取っていく。
もっとも、彼女の対悪魔組織は(最終的にだが)
【デモニカ隊(格差アリ)】×数十人
【現地覚醒者】×数十人
【移植組】×数人
【悪魔】×十数匹
という個人が所有する戦力においてはかなり大規模な部隊である。
こんな真似など今の彼には逆立ちしても出来ない。
彼女が言うのは、黒札の希望者にはデモニカが一機無料配布されるため、これをゲットして使いまわせばいい。
そして、組織が大きくなっていったら、他のデモニカをレンタルするなりすればいい、ということである。
だが、当然のことながらそんな金すらないのが今の彼の現状である。
「あの……下世話な話なんですけれど、金はどう調達してますか……。」
デモニカ数十体など金欠でひぃひぃ言っている彼にとっては到底手が出ないのは言うまでもない。
まずは小さな派出所レベルから始めるにしても、それでも金がかかることは言うまでもない。
「まあ、私は依頼をバンバンこなしていますから。
あまりお勧めはできないですが……自分の血液を売却するというのはどうでしょうか?
作成班なら転生者の血液なんて非常に高価で買い取ってくれますよ?」
確かに転生者の血液など高級で売れることは間違いないので金を手に入れるにはこれが一番速い。
だが、それにも問題点がある。
「まあ、手放した血液から呪いやら何やらをかけられる可能性も高いですが。
アイテムとして加工された物なら確率は下がりますが、やはりそれでも呪いなどが降りかかってくる可能性はあります。
この辺はショタおじから散々聞かされた話だとは思いますが。」
とはいうものの、作成班もその点は気を使っており、管理には細心の注意を払っている。
外部に売るなど論外だが、ガイア連合内部に売るのなら問題は比較的少ないだろう。
(なお、ショタおじから式神作成の際に散々脅されているため、売る人は少ない。
後になって式神に自分の血肉を入れる転生者も多くいる)
やっぱり、地道に依頼を行って金を稼ぐしかないかぁ。まあ、考慮には入れておこう、と考えた彼は、ふと思いついたことをマキマネキに聞いてみる。
「ふと思ったんですが……現地民に俺たちの血液を献血したら覚醒するんですかね?
実質転生者の血肉を移植すると同じような物だからイケると思うんですが。」
「多分、それなりのレベルの黒札の血をそのまま非覚醒者に投与すると、体が破裂する可能性も十分にありますね。やるにしても、十分に薄めるなり医者の黒札の施術に頼ったほうがいいです。」
えぇ……とそれを聞いて凍矢はドン引きした。
彼の行いたいのは現地民を覚醒させる方法であって、そんな悪趣味なことをするわけではないのだ。
「えぇ……?そういう後味の悪いのはちょっと……。もうちょっと何とかならないんですか?」
「まあ、医者の黒札に相談してみる事ですね。そういう施術には医者黒札が必要なので、私たちが下手に手を出すとロクでもない事になりますよ?」
はぁい、と凍矢は素直に返事をした。
そんな彼に対して、マキマネキはこちらの目をじっと見ながらさらに言葉を続ける。
「後、一応言っておきますが、育てた現地民にあまり入れ込みすぎないほうがいいですよ。
彼らはあくまで手駒程度に考えておくのがいいかと。
必要とあれば彼らに戦って死ね、という命令を下すのも貴方の役割です。
あとは涙の一つでも適当に流しておけば皆も納得するでしょう。」
「えぇ……。」
流石にマキマネキの言葉にドン引きしてしまう凍矢。
別にそれで激高するほど子供ではないけれど、思わず「人の心とかないんか?」とは心の中で呟いてしまう。
その彼の表情を見たマキマネキは、平然とした表情で答える。
「?ウチのかわいい犬たちは「死ね」と言えば喜んで死にますよ?
何の意味もなかった彼らに生きる意味を与えてあげて、死に場所まで与えてあげるんです。
皆、私のためなら大喜びで死んでくれますね。
それくらいの忠誠心の高い組織でないと悪魔とは戦えませんから。」
マキマネキの組織は、皆マキマネキの狂信者で「死ね」「魂を捧げろ」と言われたら喜んで死ぬと言われていたが、まさか本当だとは思わなかった。*3
こわ~……と心の中で呟く凍矢に対して、地元の警察や政治家の手懐け方なども教えながら、さらに彼女は言葉を放つ。
「ああ、後、そちらの野良霊能者で良さそうな男性がいたら私に教えてください。もしかしたら、私の理想の男性がそちらで生まれるかもしれませんから。」
「うっす。わかりました。」
まあそんなの生まれたら俺もこんな事してないけどね!全部そいつに任せて家でのんびり寝てるわ!という言葉を飲み込みながら、彼はマキマネキの言葉に素直に頷いた。
碧神 凍矢 男・20歳 転生者・覚醒済 Lv8
ステータスタイプ:【魔】中心の魔術師タイプ
耐性:破魔無効、凍結耐性
スキル:ブフ、コンセントレイト、ディア、
特殊スキル:ブフストーン作成、凍結弾付与作成
仲魔:妖鬼オニ(レンタル式神) 物理耐性、かばう、挑発
仲魔:妖魔アガシオン Lv2 物理耐性、雷撃弱点、アギ、エネミーソナー