【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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「なろう系な俺たち」様 孤児院経営物の俺たち その20でネタにさせていただいてありがとうございました。


第70話 ダイアナさんの一日

 ──―場所は佐渡の森林地帯に移る。

 佐渡はそのかなりの部分が森林地帯に覆われている。それは妖怪たちにも居心地のいい場所であるが、それ以外の存在、魔獣など一部の悪魔にとっても居心地のいい場所だといえる。

 発生した外国の悪魔に、その土地に住んでいる妖怪たちが追い出されるという自体が多発していた。

 妖怪たちも今の人間たちに比べれば強大な力を誇るが、それ以上の存在が来てしまってはどうしようもない。

 魔獣グリフォン(レベル40)二体と妖獣マンティコア(レベル45)

 これほどの存在になると並大抵の妖怪では太刀打ちできない。

 

 悠々と空を舞うグリフォンに、野生動物を次々と貪り食らうマンティコア。

 彼らがMAGを求めて都市へと侵攻したらいくつもの都市が消滅してしまう大惨事になる。

 そんな彼らに対して、森の中を物ともせずに凄まじい速度で疾駆している一人の弓矢を持った女性の姿があった。

 金の髪をたなびかせながら、整地されていない凸凹の森の中を疾走し、木々を足場にしながら三次元移動で跳躍を繰り返す女性【地母神 ダイアナ】である。

 地母神ではあるが、狩猟神としての側面も強く出ている彼女にとっては、どんなに深い森の中でも全力で疾走できるのは基本中の基本。

 木々を足場にしながら、軽やかに宙を舞う彼女を捉えるのは、黒札であっても難しいほどだ。*1

 この森の中こそが、狩猟神である彼女のホームグラウンドなのである。

 彼女はそのまま、木々の陰に隠れながら弓矢を引き、空中を飛行しているグリフォン二体に狙いを定める。

 

「【銃ハイブースタ】【アローレイン】*2ッ!!」

 

 次の瞬間、マシンガン顔負けの連射速度で、凄まじい量の矢を空中を飛行しているグリフォンに対して対空砲火のように叩き込むダイアナ。

 いかに空中を自在に飛行できると言っても、予想できない地点からのいきなりの面制圧攻撃を回避できるほどグリフォンに知恵はない。

 回避しきれずに、無数の矢が次々と体に突き刺さっていくのに、グリフォンは悲鳴を上げる。

 弓矢攻撃は銃撃として扱われ、おまけに銃ハイブースタまでついている上に、グリフォンは銃撃弱点である。

 正直、この一撃で倒されても不思議ではなかったが、何とか耐えきって怒り狂ったグリフォンは、攻撃があった地点に襲い掛かろうとする……がすでにダイアナはその場所から離れていた。

 俊足でその場から離れ、ほかの木々の陰に離脱したダイアナは、再び上昇したグリフォンを慎重に狙う。

 

「【銃ハイブースタ】【アローレイン】ッ!!」

 

 ヒットアンドアウェイによる対空砲火。

 こんなことをされてはグリフォンたちもたまったものではない。

 彼らは敵すら見いだせずに、無数の矢を食らって地上に落下していった。

 

 ──―そして、それからしばらく後。

 ダイアナは超遠距離から慎重に身を隠しながら草原でのんびりとしている魔獣マンティコアを見張っていた。

 LV45、妖獣マンティコア

 尻尾から猛毒入りの毒針を飛ばし、近接戦闘も強い文字通りのキマイラ。

 だが、森の中からマンティコアの知覚の届かない場所で観察していたダイアナは、弓矢の射線が通るのを確認すると、慎重に弓矢をギリ、と引き絞り、狙いを定める。

 風向きや湿度、風速などを慎重に図った彼女は、その弓矢を放つ。

 

「【銃ハイブースタ】【グランドダック】*3!!」

 

 超遠距離からのスナイピング攻撃。

 熟練のスナイパーもかくやと言わんばかりのその矢の一射は、木々をすり抜け、何も知らないマンティコアの頭部を一撃で粉砕した。

 マンティコアも銃撃が弱点であり、回避も防御も出来ずにこんな攻撃を食らえば一溜りもない。

 超遠距離からの狙撃により、マンティコアは何も気づくことなく頭部を粉砕されて死亡した。

 

 彼女は手慣れた様子で、腰の後ろに備えてあったナイフを抜き放ち、倒したグリフォンの皮を剥ぎ、内臓を取り出し血抜きを始める。

 テキパキと手早く血抜きを行って川の水で洗った後で、今度はマンティコアの血抜きも始める。

 マンティコアには尻尾に猛毒を持つが、尻尾を切り落とし、慣れた手つきで毒の分泌線を取り除く。

 これらの肉を、佐渡の黒札に渡す……正確に言うと、電脳異界に所属しているニスロクのデビルシフター*4へと、佐渡の黒札経由で渡すと、非常に高額なマッカを支払ってくれるのである。

(ちなみに、佐渡の黒札を通しているので、彼女自身は電脳異界の事についてはまるで知らない。佐渡の黒札が買い取っていると思っている。)

 

 ダイアナが獲物を狩り、それを料理人に渡して金を貰う。

 ある意味、古来より続く狩猟の流れである。

 それらの肉を、トラポート機能付きのアイスボックスに詰め込むと、佐渡の黒札へと即時に輸送する。

 

「本日は孤児院や救貧院の皆に肉料理として振る舞いたいのですが、魔獣の肉は未覚醒者にはきついらしいですからね……」

 

「よし、もう一つの方に行きますか」

 

 彼女は厳重な結界が張られたとある異界内部に向かう。その小さな異界内部に漂っているのは、無念と憎悪と猛烈な悪臭。

 それは、無数の天使の死骸。しかも五体バラバラになっていて腐敗している天使たちの死骸である。

 その悪臭に対して、一応ダイアナは布で口元を覆っているが、正直あまり効果はないが気分的な問題である。

 外部の森を再現している異界内部に天使の死骸の山があるなど、非現実的そのものである。

 

 ……これはとある黒札の提案から始まった。

「天使ってトルコ石ドロップするだろ? トルコ石ってリン酸じゃん? 天使の肉体って大量のリン酸が存在してるんじゃない?」

 ははは、まさかーと一蹴されたその提案だったが、調べてみたら体内にリン酸を持っている天使が確かに多かったのである。

 

「この天使を腐敗させて分解させれば大量のリン酸……いい肥料になるんじゃね?」という提案で施策されたのが、この屍山である。

 

 まずは羽をむしった後で、五体バラバラにした天使にネクロマをかけてゾンビ化させる。

 そしてバラバラになって身動きが取れない状態でダイアナが離脱すると、「戦闘終了」と判断されてネクロマの効果が解けて、ゾンビ化が解除、腐敗が進んだ天使の死骸が出来上がりである。

 この腐敗した肉体と周囲の土を回収して、ガイア連合の技術部の研究班へと運んで研究を行ってもらう。肥料として使ってみたら農作物から天使の反応が出るなんてことになったら洒落にならない。現在研究中の天使肥料(仮)のサンプルを届けるのも彼女の重要な任務の一つである、

 

「よし、いい感じに腐敗しているようですね」

 

 これは周囲の土や腐敗した肉体を回収する際に、時々天使の無念に満ちた悪霊化した天使の亡霊も現れたりするので、一般人は使えないのである。

 

《あああ……。苦しい、苦しい……》

 

《我ら天使がゾンビ化するなど……。こんな事が……》

 

 天使は穢れを殊の外嫌がる。ゾンビたちも汚すぎて、直接動いて浄化できないらしい。*5

 そんな忌み嫌うゾンビに変貌し、魔蟲に集られながら腐敗に苦しむなどどんな心境なのだろうか。

 まあ、ダイアナにはそんな事は関係ないことである。怨霊たちにやかましいと矢を叩きこんで黙らせる。

 もっともこれによってどんな病原体が出るか分からない危険な作業のため、限られた部分でしか実験は行われていない。この成果をガイア連合に送るのもダイアナの仕事である。

 

 ともあれ、ひとまず川で手を洗ったダイアナは帰る事にした。本当は水浴びでもしたかったが、アルテミスとしての因子を引き継ぐ彼女にとっては水浴びは不幸フラグのため、香水で匂いを誤魔化して帰還する。

 

 彼女が帰るのは、佐渡にあるとあるガイア孤児院の一つ。ダイアナを味方に引き込むために、佐渡の黒札たちは一つの小さなガイア孤児院を託してみたのである。

 孤児たちの今までの惨状を一人一人聞きながら、ダイアナはおんおんと号泣しながら孤児たちを守護する事を誓い、人々を守るための活動を行っていた。

 そして、佐渡の黒札から任されているガイア孤児院に帰ってきた彼女は、一人の神の分霊が来ているのに気づく。

 結界で守られた都市内部ならば、敵ではあるまい。しかも、その顔は見知った顔、彼女から言えば親戚にも近い神霊だった。

 

「やあやあ久しぶりだね! いや、初めましてというべきかな。」

 

「お久しぶりです。ヘスティア叔母さま。元気そうで何より。」

 

 そう、それは、ギリシャ神話の炉の女神、ヘスティアである。*6ヘスティアは、孤児たちの神とも伝承に伝えられている、まさしく孤児たちの育成のプロ中のプロである。

 そんな彼女からのアドバイスがいただけるのなら、これ以上頼もしい事はない。

 

 しかし……久しぶりにあったが、ヘスティアはあんなツインテールの紐神でボーイッシュな口調だっただろうか? 

 ダイアナ中ではもっとこうお淑やかで大人しいイメージがあったのだが、まあ分霊だし、の一言でダイアナはそれを断ち切った。

 ともあれ、ダイアナの原型になったアルテミスと同様、ローマ神話とギリシャ神話はほぼ親戚のようなものだ。ダイアナからしてみれば、ヘスティアは「叔母」と呼んだ方がしっくりくるかもしれない。

 せっかく来てくれたヘスティアに対して、ダイアナは彼女を自室に誘い、ハーブティーを出して労る。

 それに対して、ヘスティアはさっそく求められた孤児院に対しての必要な物を切り出す。

 

「うん、では君に孤児院運営にとって絶対必要な物を教えよう。いいかいよく聞きたまえ。孤児院経営に必要な物、それは……」

 

「金だ!!」

 

「いきなり生臭い話ですね!!」

 

「いや、実際必要なんだよ。君は「お腹すいた……」と言いながら餓死した孤児を見たことがあるかい? 寒さに震えながら死んでいった孤児は? これらを防げるのはただ一つ、金だ。

 この現実をきちんと見なければ、君は保護した孤児たちが死んでいくのを見ていくしかなくなるぜ。」

 

 ぼ、母乳……という言葉が浮かんだが、流石にそれは周囲の人々から受け入れられないと彼女も学習したらしい。

 せっかく保護した孤児たちが金がないせいで無惨に死んでいくなど、彼女からしたら発狂物である。絶対にそれだけは阻止しなければならない。

 

「そこで問題は、金稼ぎの方法さ。幸い君には普通の地母神より強力な戦闘力がある。お得意の狩猟で悪魔を狩って悪魔肉をガイア連合に売り払うこと。これが一番手っ取り早いだろうね。

 あるいは、掲示板で用心棒稼業を募集しているところに行って稼ぐのもいい。LV50の戦力ならどこでも大歓迎されるだろうからね。」

 

 大地母神でありながら狩猟神でもある彼女は、そこらへんの悪魔など叩きのめせる戦闘力を有している。

 レベル50の人類を守護してくれる大悪魔など、どこからも引く手あまたである。

 この用心棒家業で大きな収入が見込めるだろう。

 

「林業は君一人だけでは大変だろうから、もっと人手が増えてからのほうがいいかもね。

 ああ、確か君は魔女の神として崇められてるんだっけ? なら魔女たちを集めて霊薬作りとか、君自身が特殊な霊薬を作るとかしたらどうかな?」

 

 ダイアナは魔女たちの神でもあり、魔術神ヘカテーとも月関係で関わりがある。つまり、彼女も優れた魔女術、マジッククラフトの使い手であるという事だ。

 彼女がその気になれば、色々な霊薬を作り出せることも可能だろう。

 神の手から作り出された霊薬は、皆が求めること間違いなしだろう。

 

「あと重要なのは、愛情と根気だね。孤児院に来る子たちは皆大きく傷ついて不良化したり、人間不信に陥っていたりする子たちが多い。それを癒すのは愛だね。金は最重要だけど、愛情も重要さ。」

 

「ご安心ください叔母様。愛なら溢れ出るほどあります! 傷ついた子たちを全て癒してあげます!」

 

 自分の胸に手を当ててそう宣言するダイアナに対して、お、おう、とヘスティアは思わず冷や汗をかく。確かに愛情だけならば溢れるほどある彼女にとってはこれは問題ないだろう。

 

「そして次に重要なのは……独立、自立の時間さ。孤児たちの自立、これは絶対に避けられない。今から心の準備を……。」

 

「嫌です」

 

「嫌ですじゃないんだが!?」

 

 やだやだやだー!! 子供たちはずっと私に甘えていればいいの!! 自立なんてやだー!! と寝転がって手足をバタバタさせてダダをこねるダイアナの姿は、どこからどう見ても地母神ではなく、ただの大きくなった子供だった。

 

「えーい静かにしろ! タダっ子か君は!! まあ、その辺は嫌でもあるだろうから慣れたまえ。」

 

 もうこの辺は言葉で言っても無駄か、慣れてもらうしかない、とヘスティアも匙を投げた。

 こんな事では孤児院の子が「デビルバスターになる」などと言ったら卒倒するんじゃないか? と思いながらも、ヘスティアは言葉を続ける。

 

「それと、多神連合からのゼウスからの要請か何かきたら「私はギリシャ神じゃなくてローマ神なんで」で全て断りたまえ。それでも何か言ってくるようなら僕を頼りたまえ。なあに、ゼウス君だろうと僕のいうことは聞いてくれるはずさ」

 

 ゼウスはヘスティアに対して甘い。非常に甘い。傍若無人であるゼウスも姉であり妹である彼女のいうことなら大抵のことは聞いてくれる。

 それは国家の中心である炉の力を有するヘスティアの力が国家運営にとって非常に重要なことを指し占めている。

 

(しかし、何かヘカテーもゼウス君の指揮下から抜けて日本神に鞍替えしたらしいからなぁ……。*7 全くゼウス君は短期的な荒稼ぎしか頭にないからそうなる。もう少し長期的に考えればいいものを。まあ、それだけの余裕がないんだろうが……)

 

 ヘカテーは正確にいうとオリュンポス十二神よりも、それより以前のティターン神族の孫の代に属す。 しかし、ゼウスがティタン神族を破って神々の王になってからも、彼女だけは従来の特権を奪われることなく、神々の間で高い尊敬を受けた。

 そんな彼女だからこそ、ゼウスから離反するという行動をとることができたのだろう。

 考え込んでいるヘスティアに対して、ダイアナは不思議そうに首を傾けて声をかける。

 

「叔母様?」

 

「ああ、何でもない。ともあれ、何かあった時には遠慮なく頼ってくれていいさ。弱者を守護してくれる酔狂な神霊は大歓迎だからね。これからもよろしく頼むよ。ダイアナ。」

 

*1
迅速の権化、悪魔のバトルスピードが25%増加し、物理回避率が10%増加する。+フィールド上のあらゆる障害を飛び越えて移動できる。(オリジナル設定)

*2
敵全体に強力な攻撃を行う。

*3
敵単体に銃撃属性で大威力の攻撃を1回行う

*4
小ネタ 霊能グルメと食材俺たちなど

*5
小ネタ、海外の野生の天才たち。

*6
「なろう系な俺たち」様 孤児院経営物の俺たち その20

*7
【R-18】アビャゲイルの投下所様

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