「ほい!これ冷凍弾注文分!バンバンこなしてくれよな!」
そう言ってエドニキは凍矢の前に、自衛隊で使用されている弾薬箱を置く。
自衛隊で使用されている弾薬箱には誰でも分かりやすく側部に「9mm通常弾」とデカデカと印字されている。ここにびっしりと大量に9mm通常弾が内蔵されているのだ。
これを全て冷凍弾へと変えてほしい、という注文に、流石に彼もちょっと待ってくれ、と声をかける。
「ち、ちょっと待って。ワイ、まだ一発ずつしか付与変化できないんだけど。
これ全部やれっていうの?」
「習うより慣れろ!バンバンこなしていけば単発からマガジン分ぐらいにはスムーズに付与できるはず。
繰り返せば弾薬箱ごと瞬時に変化できるかもしれないぜ?
それに、アンタの目的からすれば、自衛隊と友好関係を結ぶのは絶対プラスになるしな!」
長岡市には、新潟地方協力本部長岡出張所が存在する。
恐らくゴトウ部隊とは異なり、オカルトには疎いだろうがそれでも頼りになることは間違いない。
そうでなくとも、自衛隊の装備やマンパワーは頼りになるはずである。……終末でさえなければ。
とほほ、と言いながら、彼はとりあえず一発ずつMAGを付与して冷凍弾へと変化させていった。MAG補充アイテムを制作班が供与してくれたのと、慣れてきたので数発単位で付与できるように効率がよくなってきたのが救いである。
「お前さんはあれやこれやと協力してくれるからな。こちらのできる範囲で早めに手配してみた。
それにウチの【ロボ部】もハッスルしてなぁ……。あいつらもストレス溜まってるから丁度いいだろ。」
とはいうものの、ロボ部はデモニカ、多脚戦車作成に、ロボ少女系の式神作成とかなり活躍をしているはずではあるが、やはり機械が止まってしまうという終末や異界では活躍が限定されてしまうのも事実である。
それによるストレス解消のために、ロボ系式神の注文・作成に対しては力を入れているとの事らしい。
「まあともあれ、お前さんの式神が完成したから伝えに来たぞ。こっちに来な。」
そういうエドニキの言われるまま、制作班がこもっている製作作業所の奥へと入り込むと、そこには、肩部装甲に踊る人形のマークが貼り付けられ、水色の装甲を持った西洋の騎士甲冑然とした式神が、片膝立ちのまま固定のポーズを取っていた。
【
フ〇イブ〇ター物語で活躍するモーターヘッドの一騎である。
この式神は、彼の髪や血を入れ、さらに修行で吹き飛んだ肉や体の一部を入れてある。
それに対して、起動させるために、凍矢が自分のMAGを注ぎ込むと、起動させると同時に、破裂の人形のツインアイにヴンと光が灯り、ぎぎぎぎ、と音を立てながら片膝立ちの状態から完全に立ち上がる。
その状況を見て、思わずおお、と感嘆の声を上げる凍矢。
『認証登録完了。以降は彼をマイマスターとして承認します。
ご命令をどうぞ。』
ツインアイに光を灯し、片手に剣を構えながら機械式音声でそう言い放つ破裂の人形を見て、彼はさらに感嘆の声を上げる。
「おお!かっけええええ!!」
その破裂の人形の姿を見て、凍矢は目をキラキラさせて思わず叫ぶ。
エドニキもそうだろうそうだろう、と言わんばかりに腕を組んで頷く。
理想の彼女ではないが、これで専用式神も出来て、修行用異界で他の式神たちからちょっと可哀想な目で見られるのもこれでおさらばやで!と張り切っている彼だったが、一つ気になっている事があった。
それは、式神から発せられる【音】である。
キンキンキンだのコーンコーンコーンだのピピピピピだのイレーザー音まで再現されているのは何なんだぜ、こんなの悪魔を引き寄せるだけで全く意味なくない?という疑問に、エドニキは答える。
「ああ、それは設定を変える事によって、特定の悪魔にだけ音声を向ける【挑発】スキルになるんだってさ。普段は音声を切っておく事もできるし、特定の悪魔にだけ音声を向けることができるから周囲の悪魔を引き寄せる心配もないとのことだ。」
確かに設定をいじると音声はすっと消える。しかし、なぜロボ部はこんな無駄なところに全力を尽くしたのか。
ロボ好きの彼でも思わず首をかしげてしまうレベルである。
と、そこで彼は破裂の人形が持っている剣に視線がいく。
「そういえば、これ【無銘の刀】ですよね。俺は注文してないんですけどこれは?」
そう、それは柄の部分だけ西洋剣風に変えられた【無名の刀】である。
基本的に、式神には牙などを除いて武装などはついていない。
そのため、誕生したばかりの式神が武装を持っているなど通常ではありえない話である。
「ああ、それはロボ部からのカンパによるプレゼントだってさ。
騎士系ロボならそれぐらい持っておかないと恰好がつかないから持っておけだって。
ありがたく受け取っておけ。」
ありがてぇ……ありがてぇ……と思わず彼は呟く。
武器をどうしたものか、ロボなのに釘バッドとかカッコつかないよなぁ、と考えていた凍矢にとってこれはまさに福音だった。
「あと、何か知らんけど、試作型の【プラズマソード】*1の目途が立ったらそちらに試験運用してもらうからよろしくってさ。まあ当然高級だからマッカはそれなりにもらうが、試験運用での実戦データ収集と言えば大体の無茶は効くからな。ロボ部が贔屓にしているし、冷凍弾作成で頑張ってもらってるしこれぐらいの融通は効かせないとな。」
ホンマにありがたい。ロボ部の皆には頭が上がらないわ、と心の中で凍矢は思う。
(暗に次の式神もメカ型にしろよな、というロボ部の無言の圧力も感じるが、そこはスルーしておく)
「後、ロボ型式神は、手持ち武器は装備できる分、鎧などは装備できないから、マッカとフォルマさえあれば、表面装甲を強化できるようにしておいたとの事だ。
確かモーフィング装甲*2とか何とか言ってたな。これが高評価なら他のロボ型式神でも導入されるので、実戦試験運用をお願いしたいんだと。
普通の装備と比べて割高になるし手間もかかるけど、まあそこは諦めろ。」
例えば、今は破裂の人形はケブラーベストを纏った程度の装甲値であるが、マッカさえ払えばこれを強化してファイアーカードやサンダーガード並みの装甲値に上げることができるのだ。
さらにマッカを払えば、パワードスーツやドラゴンメイル以上に上げていくことも十分可能である。
これは、人型式神が有利な点である装備の多さにメカ型式神が対抗するべくロボ部のみんなが開発した特殊機能である。
メカ型式神は基本的に人型式神の武器や銃、盾などは使用できることが多いが、鎧や防具などは装備することが難しい。
メカ型で見た目装甲なのに、全く何の防御力もないという状況は許さない!とロボ部がハッスルした結果でもある。
「それじゃ人間形態にもしてみるか。こんな感じだけどいい?」
そして、次に人間社会に混じるために装備された人間変化Eを発動させる。
発動した瞬間、
長い腰まである銀髪、切れ長の瞳、雪のように白い肌。
それはシンデ〇ラガールズの〇峯のあの姿そのものだった。
地方での嫁攻勢に少しでも対抗するため、人間変化Eはエドニキたちの判断で女性の姿を選んだのだった。
もちろん、凍矢自身の意見も聞いてこの姿にしてある。
『いや、ファティマじゃないんかい!!』とロボ部のみんなには総突っ込みを食らったが、仕方ないだろ、ファティマはスレンダーすぎるんや!とは本人の弁である。
しかし、そこは悲しいかなEレベル、Sレベル用に完全に人間形態になれるわけではない。
試しに指で頬を押してみたけど、柔らかさなど欠片もない装甲板の冷たい硬い感覚しか返ってこない。
しかも、瞳はツインアイの影響かピカピカ光るし、口を全く開かずに言葉を話す。
よほどうまくやるかスキルを上昇させないと、不自然さはバレバレである。
ともあれ、これで専用式神を手に入れたことは事実である。
さらにこれに加えて現地人覚醒用のデモニカもゲットできた。
よーし!これから頑張るぞー!と彼は気合を入れなおした。
碧神 凍矢 男・20歳 転生者・覚醒済 Lv10
ステータスタイプ:【魔】中心の魔術師タイプ
耐性:破魔無効、凍結耐性
スキル:ブフ、コンセントレイト、ディア、マハブフ
特殊スキル:ブフストーン作成、凍結弾付与作成
仲魔:式神【破裂の人形】 Lv1
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、精神状態異常無効、呪殺無効
スキル:挑発、かばう、ヒートウェイブ
汎用スキル:会話、人型変化E
装備:無銘の刀 *3
仲魔:妖魔アガシオン Lv2 物理耐性、雷撃弱点、アギ、エネミーソナー