うちのSSにペルソナ使い……生やさないと……(使命感)になってます。
次元を潜り抜ける次元通路を潜り抜け、凍矢たちがすぽーんと辿り着いたのは、マヤの宇宙樹ヤシュチェを模した大樹の根元、そこに存在していたのは、長髪で顔全体を覆った一人の長身の女性だった。
死神、イシュタム。
自殺を司り、死者を楽園へと導くマヤ神話の女神である。彼女は、この異界にやってきた凍矢に対して大声で怒鳴る。
『何をしているんだお前たちは!!』
首を括る用の縄を綱引き代わりに使われたのが、よほど不本意だったらしく、彼女はこの空間に飛び込んできた凍矢たちを怒鳴り付ける。
「そりゃこっちのセリフだ!! お前こそ何してるんだ!! 迷惑なことしてるんじゃない!!」
それに対して凍矢は彼女に対して怒鳴り返す。人間視点からしてみれば、迷惑をしているのは彼女であるが、イシュタムにとってら不本意だったらしい。
『迷惑!? 迷惑とは何だ!? 神がせっかくお前たちの事を思って安楽死させてやろうというのに!! この半終末の時代、安楽死を望む人間は山ほどいる! 彼らを救って何が悪い!!』
「迷惑に決まっているだろうが! 誰も望んで首吊りなどしたいはずがない! 人々の魂を奪い取ろうとするんじゃない!!」
それに対して、手に縄を持って、顔を髪で覆っているイシュタムは冷静に言葉を返す。
『それはお前が強者だからだ。弱者は救済を望んでいる。彼らを幸福のまま安楽死させ、我が冥界で幸福のまま暮らさせる。それこそが弱者にとって最もいい選択肢だ。これこそが『慈悲』なんだよ』
『私は弱者の弱さを肯定する。お前たちはそのままでいいと。強くなどならなくていい。弱肉強食の世界から逃避させて、彼らを幸せな世界へと導く。これこそが【人類安楽死計画】だ。これこそが人類にとっての救済であり【良い事】なのだ』
『幸福に死のう、安らかに死のう、それの何が悪い。私は苦しむ人々を解放しているだけだ!! 彼らも安楽死して魂だけで幸福になれることを望んでいるのだ!!』
確かに言っている事はご立派である。これから先、安楽死を望む人々はさらに多くなるだろう。
人類の黄昏で生きるより、安楽死をしたほうがいいという人々は理解できる。弱者ならなおさらだ。
だが、それでも気になることがあるので、凍矢は彼女に確認をとる。
その彼女の言う通り、大樹の根本、多くの魂が集っている『楽園』から人々の声が聞こえてくる。
幸せです、私たちは幸せです、ありがとうございます、ありがとうございます、もっと幸福を、永遠の幸福を、という無数の魂の声が聞こえてくる。それはまるで、薬物中毒者のような虚ろな響きだった。
「……楽園というけど、それってただハピルマ漬けにしてるだけじゃないよね?」
『はい』
「はいじゃないんだが!? それって二十四時間薬物漬けにしてるのと代わりないじゃないか!!」
24時間365日ハピルマ漬けにすれば、確かに永遠に幸福でいられるだろう。だが、24時間中ずっと薬物漬けで幸せにしているのと違いない。ハピルマ漬けによる幸福であっても、イシュタムにとっては幸福であることには変わりないのだ。
『? だから? 幸せであることには何らかわりないだろう? これこそが救いであり救済だ。
私は救う! お前たち人類を! 弱者たちを安楽死という救済で!!
弱い者たちを救うには安楽死以外ないのだ! これこそがたった一つだけの答えだ!
大人しく従え人類!! 私が救いを与えようとしているのだ!!』
やはり上位悪魔であり、人間とかけ離れた存在である彼女に人間らしい幸福など理解できるはずもない。
ハピルマ漬けによる幸福だろうが、自分自身で作り上げた幸福だろうが変わりがないのだ。
よし、殴るしかないな、と凍矢は心の中で決心するが、それでも一応確認しておく。
「じゃあ、お前からしたら生きていること自体は全て無駄だというのか?」
『? 当たり前だろう? 何か終末対策だ。生き延びたいだ。お前たちやガイア連合のやっている事は無駄、無駄、無駄。全て無駄である。
無駄な足掻きで苦しむより、安楽な死を与えようとする私の慈悲が何故理解できない?
生きていることは無駄であり苦しみである。故に私が救済を与えようというのだ。全人類は私に感謝するがいい。』
よし、殴るしかねぇな、と凍矢は固く決意する。人がせっかく終末対策であれやこれやしているのに、自分たちのやっている事が全て無駄と言われて許せるほど凍矢も温厚ではない。そもそも頑張って生きようとしているのにそれを否定される筋合いはない。この高慢さこそが神たる由縁なのだ。
『それが苦しみの元なのだ! 生きたい、生き延びようとすることこそが苦しみの根源だ!!
それを救済する! それの何が悪い!!』
その瞬間、凍矢の持っているCOMPに内蔵されている『百太郎』が激しい警戒音を発生させ、一番後ろにいたスザクが警戒の声を上げた。それと同時に彼らの背後から『ムドオン』と打撃の攻撃が襲い掛かる。
「バックアタックか!!」
とっさにそれらの攻撃を回避する凍矢たち。COMPのソフト『百太郎』は敵からのバックアタック攻撃を防ぐ効力を持つ。そのソフトの力で彼らはバックアタックを回避することに成功したのだ。
後ろから襲い掛かってくる呪殺と物理攻撃を、凍矢たちは散開する事で回避した。
『チィイ!! もっと注意を引き付けておけ間抜けが!!』
攻撃を仕掛けてきたのは、黒い山高帽と黒い燕尾服、丸眼鏡を身に着けた顔に骸骨のようなペイントをつけた存在。
にたにたと笑うその気味の悪い笑いを宿したその存在は、まぎれもなくイシュタムと同じ死神であろう。
それは、日本の神ではないあからさまに異国の神。ハイチのヴードゥー教における死神ゲーデである。
>死神ゲーデ LV63
ゲーデは凍矢を見ながらゲタゲタと笑いながら言葉を吐き捨てる。
『流石に機械に対して腰を振ってる奴は違うなぁ!! いやぁ変人変人!!』
ゲーデは死とセックスを司り、その一方でひどく下品な態度や言葉遣いをし、非常に陽気で葉巻と酒が大好物とされている。この程度の下品な言葉など彼にとっては普通なのだろう。
その言葉に思わずかっと頭に血が上ってしまうが、この程度の挑発に乗るわけにはいかない。
『ゲーデ、遊んでいる余裕はありません。相手はここにまで乗り込んでくるほどの黒札。本気でかかりなさい』
『はいはい! まあ用心棒としては仕方ないだろうなぁ! 全くどいつもこいつも考えすぎなんだよなぁ。もっと気軽に逝こうぜ! レッツデス!!』
顔を長髪で隠した異形の女性と、黒い山高帽と黒い燕尾服をつけただけの骸骨のようなペイントをつけた異形の男は戦闘態勢に入る。
『空しい、虚しい。全ては虚しい空虚なものだ。死こそが唯一の確実なものである!!』
>死神イシュタム LV76
こうして、イシュタムとゲーデ、そして凍矢たちの戦いは始まった。