【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち   作:名無しのレイ

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今回は、「【カオ転三次】現地民とのぐだぐだ小話」様から強く影響を受けた話になります。(「カオ転三次 カオス転生の片隅で」様からも)
政治的な話は難しいネー。

8/7、ノートルさんからのご指摘をいただき多少修正しました。


第96話 魚沼支部運営会議

 ──魚沼シェルター。

 新潟県に存在するそのシェルターは、大地震の後も大した被害を受けず、泡状結界で大規模を防衛している一大地域である。

 結界と結界の干渉している間を通りぬけるには多少手間がかかるが、それでも悪魔からの防衛力はかなりの物を誇る。

 何せ、外側の結界が破れそうなら、より内部の結界へと逃げ込めばいいのだ。

 だが、難民たちが大量に逃げ込んできたせいで、外部結界をさらに広げなくてはいけない事態に陥っている。

 そして、その最外周部には当然のことながら難民たちを住まわせている。

 簡易住宅も建てられ、凍矢の権能で極めて豊富で安全な水が使えており、それを使用した食料生産なども行われている……が当然のことながら不満は出ているものである。

 それらを抑え込むため、あるいはどうにかするため、凍矢たちは魚沼の統治機関&行政機構をそのまま取り込みに入ったのである。

 

 魚沼シェルター内部の会議室。そこには魚沼市の60~70代の高齢の男性、水希市長と副市長が揃っていた。彼らはこの地を陰ながら支配している九重家の強い影響を受けており、基本的には対悪魔に対してはハンコを押すだけの人々だが、それでも彼らにきちんと説明して納得してもらうべきである、という静の言葉に従い、凍矢は彼らの取り込みに入ったのである。

 

「どうも皆さん初めまして。碧神 凍矢といいます。よろしくお願いします」

 

 その頭を下げる彼を見て、水希市長たちは思わず脂汗などを浮かべながら必死になって挨拶を返す。

 彼らは【戦術甲冑 震電】*1を使って何とか覚醒した人々である。根っからの文官、しかも高齢の人を機械に乗せて悪魔と戦わせようとは、頭がおかしいと言われても仕方ないが、それでも悪魔の恐ろしさは身を持ってしか味わえない。*2

 実際は、その【ガキ】はスクンダがかけられており、かなり動きが低下したのをガイア銃でようやく倒したのだが、何とかやりとげたのである。

 

「い、いえこちらこそ。よろしくお願いいたします。しかし、お話には伺っていましたが、黒札様がこれほど強大な存在だとは……」

 

 何とかLV1に覚醒した水希市長であるが、そんな彼からすれば、目の前の青年が文字通りのヒトの形をした怪物か神霊そのものにしか見えない。LV1の存在がLV80以上の存在と真正面すればそう思われるのは当然だろう。

 

「ああ、いやそんなに固くならないでください。ともあれ話は簡単にいきましょう。

 ここ魚沼の統治機構……というか行政機関などはそのまま使用させていただきます。餅は餅屋。霊能があるとはいえ、変に素人が行政機構をやっても失敗するでしょう。その代わり、官僚の皆さんたちはできる限り早期に覚醒を行わせていただきたいと同時に、皆さんはできる限りそのまま働いてもらいたいと思っています。……もちろん終末後ということで根こそぎ常識が変わってしまったことは理解してもらいますが。」

 

 裏側から強い影響力を誇る静がいるとはいえ、裏側から操っているだけでは限界がある。

 ならば終末で悪魔を皆が知ってしまったのをきっかけに、行政機関を丸ごと取り込んでしまったほうが効率よく故郷を守れるという考えである。

 そして、厄介な政治的問題などは全部向こうに丸投げしてしまえばいいというのが凍矢の考えだ。

 

「はい。それはもう喜んで。こちらこそ頭を下げてお願いしなければならない状況ですが、よろしくお願いします」

 

 それに対して、水希市長たちも脂汗をかきながら頭を下げる。

 凍矢たちにとって一番恐るべき事は、権力者がドッペルゲンガーに乗っ取られて内部からシェルターを自滅させるために動くことである。(結界内部なのでその可能性は少ないが)

 表世界の人間たちは、世界の急激な変化についてこれず、今だに以前の世界観で動いている人間がほとんどである。そんな人間たちに「市長」という肩書は大きい。(実際は何の意味もないとしても)

 そのため、まずは【戦術甲冑】を使用して権力者たちを覚醒させ、彼らを手元に収めてその看板を最大限に利用しようというのである。

 彼ら権力者は最低限の覚醒を行い、悪魔から保護され、凍矢たちは彼ら権力者の看板を使用し、一般市民たちを指示する大義名分を得る。それが目的である。

 権力者との癒着? 知らん。すでにそっちの権力吹き飛んでおるで? 

 まあ、それはともかく、市長にもきちんと現状を報告して理解してもらう必要がある。

(基本的には静から説明が言っているとはいえ)

 

「はい、まずは市長たちに現状を理解してもらうために、この泡状結界についてご説明します」

 

 静は立ち上がると、会議室に備え付けのホワイトボードにキュキュッと簡単な地図などを書き込んで、現状の状況を確認していく。市長たちも結界についてはおおまかには理解しているが、それをきちんと理解してもらうためと、お互いの現状確認のすり合わせのためである。

 

「まずは、越後三山の一つ、修験道の伝承があり霊山とも言われている【八海山】から湧き出る地脈を修験道の神【ザオウゴンゲン】の力で制御、それをこちらに流すことによって、【ザオウゴンゲン】の権能で長岡市、小千谷市、魚沼市シェルター、中越地方各部の結界が張られています。【ザオウゴンゲン】は降魔の霊神であり、諸災祓い、怨敵退散などの権能を有しているため、悪魔の発生を退ける&悪魔の侵入を防ぐには最適といえます」

 

 静は、さらにホワイトボードにさらに様々な簡単な説明などを書き込んで説明を行う。

 

「ですが、【ザオウゴンゲン】は降魔の権能は有していますが、農作物生産、豊穣などの概念は有していません。それをカバーするのが【キクリヒメ】の作った結界になります。キクリヒメは五穀豊穣、子孫繁栄、そして良縁成就、水神や農業神の加護を有し、豊穣神としての側面を持ちます。

 この二柱の結界によってお互いの欠点をカバーします。外周部を【ザオウゴンゲン】内周部を【キクリヒメ】の複数結界を組み合わせて泡状結界を構築しています」

 

 余談だが、新潟市、及び新潟市近辺はそれこそ最も有名な【弥彦神社】による結界で守護されている。

 天香山命は新潟、越国開拓の神であり、当然ながら新潟と相性がいい。

 農業神・開発神、商売繁盛、五穀豊穣、無病息災としての権能があるため、それによる権能による結界を展開して守護しているのだ。

 そして、肝心の越後平野はそれこそ農作物、キクリ米の大規模生産地になってもらわないと困るため、凍矢の仲魔のキクリヒメが大規模結界を張ってここを覆っている。

 LV60であれば地球規模の異変すら引き起こせるのだから、この程度など大したことはない。

 

 市長たちに十勝支部を参考にして作り上げたパンフを渡しながら、静はさらにホワイトボードに書き込みながら凍矢が解説を行う。

 

「で、ほかのところ……。すでに行政機構を取り込んでいる十勝支部などでは【管理部門】【戦闘部門】【医療部門】【政治部門】【その他各地方の有力者】などの合議制になっている形ですので、ウチもその形に習おうかと。

 市長には、【政治部門】のトップになっていただいてアドバイスをいただけたらと。我々は政治には疎いので。やはり餅は餅屋かと」

 

 凍矢はもうある程度社会システムが整いつつある十勝支部*3に目をつけて、それを参考にシステムを組み立てようとしているのだ。十勝支部では管理部門は大半が黒札ではあるが、こちらはそれに加えて凍矢のブレインともいえる静や、ホノガグヅチの転生体で準黒札の力を持つほむらなども加わっている……がほむらは不満があるようだが。

(そもそもJKをそんな権力者側にいれるな! (BYほむら))

 他には魚沼に移住してきたロボ部の工場の黒札たちなどが協力してくれる予定である。それを聞いて、市長はパンフをめくりながら頷いた。

 

「うむ、了解した。政治的なアドバイスなら喜んで行わせていただこう。未覚醒者たちの市民たちの政治的な抑えなども行わせていただこう。もっとも、旧世界の政治がどこまで終末後に通じるかわからんが……」

 

「で、【戦闘部門】は黒札様が特級戦力ということでいいのかね? 後は九重家とホノガグヅチ様の転生体。そして合流してきた自衛隊の東部方面隊第12旅団、第30普通科連隊に加え、名家の霊能力者たちを取り込んで戦闘部門を結成する、と」

 

それを聞いて、凍矢は頷いた。

 

「はい、地元名家の霊能力者たちはもう少しゴネるかと思いましたが、実にあっさりとこちらに従ってくれて助かっています。自衛隊には、ロボ部が工場防衛用に作り出したロボに加え、デモニカと多脚戦車、それに属性弾をさらに供給してさらに戦力になっていただきます。名家のほうには、量産型簡易呪唱銃などを供給して戦力になっていただこうかと」

 

【破裂の人形】は、ほかの黒札と協力して、越後平野近辺の広くなった土地の開拓。ほむらは魚沼の周辺地域の制圧&長岡市の黒札と協力して、長岡市周辺の制圧を行っている。

 そのあまりの強さに新しく合流した自衛隊やデビルバスターたちは白目を向いているだろう。

(凍矢的には、ほむらはデビルバスターたちの面倒を見てもらおうかと考えている。あれでいて面倒見がいいので、新入りや弱いデビルバスターたちの面倒をきちんと見てくれるだろう)

 

「ううむ……。まさか霊的とはいえ、巨大ロボを本気で作り上げるとは……。さすがはガイア連合ですな。その巨大霊的防衛装置の大工場も何個も魚沼に誘致していただいたようで……。助かります。

それで、覚醒者ならこちらでも働かせていただけるとか?しかし、問題は未覚醒者たちですな……。」

 

とにかく、世界が全て変わってしまった状況では、新しい働き口を探さなければならない。

LV1でも覚醒していれば働き口はいくらでもあるのだが、問題は膨大な数な未覚醒者たちである。

これら大量の未覚醒者たちをどうすべきか、どのシェルターでも頭を抱えている大問題なのだ。

 

「いえ、まあ……。趣味でやっていることが戦力になっていることですから。

【管理部門】は【私&ロボ部の黒札&静&ほむらたち】、【戦闘部門】は【私&静&ほむら&自衛隊&地元名家霊能力者】、【政治部門】は【市長たちがトップ】に立っていただき、一般市民の未覚醒者たちの説得などを行っていただきたいと、ひとまずこんな形で。【医療部門】はまだ未確定ですが、白魔術を使う魔女たちを保護していますので、そちらからかと。【その他各地方の有力者】は静が担当することで」

 

 その解答に水希市長としても否はない。こちらこそ土下座をして何とかしてもらいたかったところをそのまま維持してくれるというのだ。

そこで、先ほどの問題である大量の未覚醒者についての問題へと話が戻る。

【戦術甲冑】でほかのシェルターより覚醒しやすいとは言っても、基本は覚醒するかは五分五分だ。

しかも、たった数機の【戦術甲冑】ではローテしても、到底大量の未覚醒者を一気に覚醒することは難しい。その大量の未覚醒者たちの働き口をどうにかしなければならない、というのは、市長としても他人事ではなかった。

 

「それで未覚醒者なんですが……越後平野へ「出稼ぎ」することが可能になったとか? この状況で外で大規模農業ができるとはありがたい。とはいうものの、外が未覚醒者にとって死地であることは変わりない。きちんと護衛やら霊道? やらを確保していただけるとありがたいのですが……。」

 

 新潟県の黒札たちの手によって、越後平野は大規模結界が張られ、そのまま人類の陣地になっている。

 元々、日本有数の穀倉地帯である越後平野の水田をそのまま使用できるなら、大量のキクリ米を生産できるはずである。同時にこれは未覚醒者たちの大量の雇用の場ともなりえる。ここで未覚醒者の雇用を作り出そうというのが、凍矢初め新潟県の黒札の考えだ。

 さらにほかの未覚醒者はシェルター内部の機械の操作、シェルター内部の清掃、シェルター内部の水耕栽培の植物工場・食糧栽培工場作業などを行うことを考えている。

 

「ああ、その必要はありません。大ターミナル……ええと、分かりやすく言うと、テレポーター? 大規模瞬間転移装置を用意しました。大ターミナルを通して越後平野へと出稼ぎの皆を転送します。

 日帰りとは行きませんが、向こうで働いて週一で帰るぐらいはできるでしょう」

 

 大ターミナル数基に中、小ターミナルもそれなりの量を用意した。日帰りの人たちはそれこそ小ターミナルで帰還するなり何なりすればいい。

 大ターミナルが数基あれば、それだけで物流の中心地になれるはずである。

 長岡市もこちらに土下座する勢いで大ターミナルを頼み込んできたので、それだけの大規模な人口を賄うにもそれくらい必要か……と凍矢は考えていた。

 

「それで相談があるのですが……市長のコネとツテを頼って長岡市との政治家たちとも話し合いのですが。長岡市にいる黒札とも話し合って、寄付する事でそちらに大ターミナルを建築したいと。

 新潟第二の都市が崩壊すれば、こちらにとっても大ダメージなので、できる限りはシェルターを防衛したいので。」

 

 借金さえなければ、長岡市防衛のために色々寄付をしてもいいのだが、ただでさえ借金を抱えている彼にそんなことしたら、静が凄い目で見てくるだろう。

 大ターミナルがあれば、膨大な人口に対する食糧輸送なども可能であり、崩壊の可能性も少なくなるだろう。あくまで魚沼を防衛するための寄付という形なら、静もそう怒らないはず……である。

 それに対して、今度は静が市長たちに向けて言葉を放つ。

 

「あとは市長に言いたいことですが……。もはや”人権”だの”良識”何だのは贅沢品だと理解してください。この世界はもはや弱肉強食の生存競争な世界そのものです。比喩表現ではなく「大のための小を切り捨てる」この覚悟があることをご理解いただきたい。私たちもできる限りは努力しますが……」

 

 どことなく能天気な黒札と異なり、昔からこの世界の闇で生き残り、終末世界を乗り越えて現状を見ている静は、恐らく(黒札を除いて)誰より正確にこの終末世界を把握している。

 そして、この悪魔が跋扈超量している世界で生き残るためには、生き残るべき存在とそうでない存在をきちんと分けるべきだと判断している。

 彼女は正義の味方でも何でもない。この苛烈な世界で全てを救うことは無理ということを把握しているのだ。

 

「ところで……。最近色々とデモを行っている”市民様”が姿を消しているようなのですが……。

 

 マキマネキのシェルター*4でも出ていたように、各シェルターでは俗に言われる”市民様”がデモを起こして面倒を起こすのが社会問題になっている。

「オカルト知識、技術の独占反対」「市民に広く波及させろ」「もっと俺たちを助けろ」「一般人を軽視するな」「一部の特権階級を優遇するな」「難民を優遇するな」などと言いながらデモを起こす集団が社会問題になっている。

 現実がわかっている人間は賛同しないが、現実がわかっていない人間、認めたくない人間たちがこれに賛同し、どんどんガン細胞のように増殖してシェルター崩壊のきっかけになりかねない。

そういった政治的な問題は市長たちのほうが詳しいのでどうすべきか、という意見を言おうとした市長に対して、静は申し訳なさそうに口を開く。

 

「……黒札様の精神安定のためにあまり言いたくなかったのですが……。私が独断で『KSJ研究所』様*5と契約を結んで”市民様”を吸血鬼殲滅隊(ブラッドジャケット)*6に捕えてもらっています。捕えられた彼らが吸血鬼殲滅隊の餌になっているか、それとも同じ吸血鬼殲滅隊にされているかまでは知りませんが」

 

「!?」

 

「なにそれ……。知らん……。こわ……。というか俺全然聞いてないし、市長の前でいうことじゃなくないそれ!?」

 

 静の言葉に、市長も副市長も凍矢も思わず愕然とする。これは凍矢の指示ではなく、静の全くの独断で行ったことである。

 その二人の驚愕に静は二人に頭を下げて謝罪する。

 

「申し訳ありません。できれば黒札様に知られない内に処理したかったのですが……。ですが、ああいったことで精神を摩耗してシェルター防衛を諦める黒札様もいるとお聞きします。凍矢様は大丈夫でしょうが、その可能性は避けるべきかと。独断での処罰は覚悟します」

 

「そして、市長様。このように終末以前の良識や人権などもはや通用しない世界へと変貌しています。

 我々が生きてるのはガイア連合……黒札様の守護があるからに他なりません。黒札様のご機嫌を損ねる”害虫”を野放しにしては、シェルターの皆が道連れになります。大のために害虫を切り捨てる”覚悟”をお持ちください」

 

 恐らくこれも静の計算の内だろう。これを市長の前で知らせる事で市長には世界の現実を知らせて釘刺ししたのだろう。

 そして、他所からの難民の処分はともかく、新潟県民がデモに参加した際はなぜか氏名住所が全て流出し、ほかの市民たちから村八分になったりリンチさせられたりするのは、静は口にはしていない。

 忘れられがちだが、静はこの地を自分の手で汚しながらダークサマナーや悪魔を排除し、自分自身を人柱に捧げようとしたガンギマリ現地民である。善良な市民を生かすために”害虫”を排除する程度など何の問題もない、と考えているのだろう。

 

「あと、この難民たちを最外周部に住まわせて、新潟県民を中心部に住まわせるというのは……。

 市民様は仕方ないにしても、あからさまに肉壁にされれば難民も不満を抱くでしょう。

 しかし、覚醒者だけ最外周部に輸送するというのも反対されそうですし……とりあえず、この十勝支部? の「非覚醒者と覚醒者が協力して防衛壁を作る」というのはいいのでは? 政治にはお題目……大義名分が必要だよ。これから先非覚醒者と覚醒者がお互い分断して奴隷と支配者となるのは避けたいですし。」

 

 ふむ、と静は顎に手を当てて考え込む。静からすれば、難民は新潟県民を守るための肉盾程度にしか考えていなかったのだが、あからさまな差別政策を行うと難民からの反発が出てメシア教や悪魔信仰が流行ってしまいかねない。

 外周部を十勝支部が作り出したような非覚醒者・覚醒者が協力して作り上げる防御壁を作り、さらに最外周部とはいえ結界で守護しておけば、難民たちもそうそう文句はいうまい。

 他のシェルターと異なり、ここは水が豊富で普通の米やキクリ米、その他大根、枝豆、ナシ、スイカ、桃などを栽培することができ食料も豊富である。人間安全な場所でお腹いっぱいに食べられればそうそう妙な事を起こさないものだ。

 

「後は……そうだね。マスコミを通して自衛隊と霊能力者が協力して悪魔との戦いを中継する、というのはどうかね。異界? とやらは映し出すのは色々問題はあるかもしれんが、そういう「我々を守ってくれるために戦ってくれるヒーロー」を演出するのは大事だよ。その過程で黒札様と巨大悪魔との闘いなど映像を取れればなおよしだ」

 

「分かりました。そちらでやってみましょう。市長も協力をお願いします。他には何かありますか?」

 

それに対して、市長は頬をかきながら言葉を放つ。

 

「ええ、あの『無気力病』やら『反転現象』が魚沼ではちょくちょく起こっているようですがあれは一体……? 特殊部隊【アリウススクワッド】が事件解決を行ってくれたり、黒札様が反転現象の被害者を治療していただけているのは理解できるのですが……」

 

 その市長の言葉にううむ、と凍矢は腕を組む。どこまで情報を与えていいか彼としても判断が難しいのだ。

 しかし、とりあえずざっくりとした説明は必要だろう。

 心の海でイザナミが暴走して異界『黄泉比良坂』を作り上げ、その暴走がこちらの『黄泉比良坂』に悪影響を及ぼしていることだけをさっくりと説明する。

 それを聞いて市長の顔が真っ青になる。それはそうだろう。この国を生んだ実質最高神が悪意を持って暴走しているとなれば、正気を保っていられるのがおかしい。

 

「とりあえず、心の海の『黄泉比良坂』からの悪影響を防ぐために、神剣ヒノカグヅチを突き立てて、さらにほむらのホノガグヅチの力で二重結界を張って可能な限り干渉を防いでいます。これで『無気力病』も『反転現象』もかなり発生率が低くなっているはずです。あとは特殊部隊【アリウススクワッド】の皆が何とかしてくれるかと。市長はぜひ協力をお願いしたい」

 

「し、しかし……。大丈夫なのですか? イザナミ神が暴走しているなど……。いえ、それはそちらを信頼するしかありませんね。こちらに協力できることなら何でもしましょう。よろしくお願いします。」

 

 いきなり最高神級の厄ネタを叩き込まれた市長の心境を答えよ。(配点:胃の壁)

 仕方ないやん! 監視するとは言ったがこうなるとは思わへんやん! スライムニキ何とかしてくれー!! と事の顛末*7を聞かされた時は凍矢も思わず青ざめた物である。

 くそみそニキ*8の”予言”に従ってペルソナ使いの【アリウススクワッド】たちを手元に置いておかなければどうなっていたことやら。

 何でも『星宿二十八宿曼荼羅』がどうのこうの、S県から見て『北方玄武、七宿の第五宿である危宿』*9がどうのこうの星辰やら占術に詳しくはない凍矢にはさっぱりだが、ともあれ危機をあらかじめ教えてくれたのはありがたい。

 ともあれ、ひとまずはそういうことで、ということで会議は一段落ついて凍矢たちと市長たちは分かれる事になった。

彼らと別れて市長や副市長は、ふう、とため息をつきながら椅子からずり落ちそうになるが、何とか体を支える。LV1の人間がLV80以上の存在と話せば、全身全霊を使い果たして当然である。幸いなのは、向こうがこちらに対して協力的であり、悪意をもっていないということだった事だろう。

 

「まさか世界がこんなに急激に変化するとは……。正直頭がついていけませんな。しかし、あんな若者にこの地域の全てを任せる重圧を背負わせるとは……。我々にできることはないのでしょうか?」

 

九頭竜(大災害)そのものと殴り合いできる相手自体に何ができると? だが、我々にも陰ながら手助け程度はできる。他の政治家たちへ根回しして、政治家たちが彼らに迷惑をかけないようにきちんと"指導"しないとな。きちんと理解してもらえれば、他の政治家たちも議会も満場一致で従うだろうさ。終末後のこの世界、強いものに巻かれるのが一番さ。」

 

 もはや民主主義を保てる時代ではない、強さこそ全ての世界へと逆戻りしてしまったのを見ると、我々が亡くなった後で来てほしかった、心の中でそれだけを言うと、水希市長は精魂尽き果てたように、深いため息をついた。

 

 

*1
「人工筋肉」と「高濃度MAG生体液」を動力源とし、エネミーソナーとガイア銃を手にしているため、未覚醒者でも悪魔を探知してガイア銃で倒すことができる。今は未覚醒者に悪魔を倒させて覚醒させる覚醒器具としての運用が多い。覚醒確率はほぼ五割。LV固定制でLV20固定。

*2
魔術で縛り付けたスライムを銀の弾丸で倒す方式もあるが、悪魔の恐ろしさを知ってもらうためにこちらにした。

*3
「【カオ転三次】現地民とのぐだぐだ小話」様

*4
小ネタ 愉快な終末マキマ・シェルター

*5
【R-18】アビャゲイルの投下所【カオス転生ごちゃまぜサマナーN次創作】様から

*6
反黒札の現地民にシキガミパーツ『ブラッドサッカー』を組み込んで作り上げた真紅の軍帽と軍服を着た吸血鬼部隊

*7
カオス転生外伝 ざこそな! 第10話

*8
「霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である」様の、主人公ハルカの師匠である阿部 清明のこと

*9
作者がちょうど瀧夜叉姫 陰陽師絵草子を読んだからね。仕方ないね。

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