これなら彼がちぐはぐ変人なのも説明がつく……かな?
なお、この三神は仲がめっちゃ悪い模様。(正確にはポセイドンが二人と仲が悪い)
──―とあるガイア連合の黒札無しシェルター第三支部。
黒札が多数存在するガイア連合といえど、黒札が存在しないシェルターは多い。黒札の絶対数を考えればそちらが多いぐらいだ。
そして、そういうシェルターは金札たちや現地民たちが管理を行っているが……当然の事ながら運営に苦労しているところは多い。
黒札自身が存在しないので、資材も戦力もカツカツであり、渋々ながらメシア教の支援を頼ってオカルト防衛を行っているシェルターもある。
そして、そういった弱いシェルターを内部から浸食し食らいつくそうと虎視眈々と狙っている勢力も存在するのだ。
黒札も金札もいない小規模シェルター。ガイア連合の事務員たちもそれなり程度のLVと権限(シルバーなど)しかいないシェルターに目をつけて、都市防衛に協力を行っていた外様神の一派がクーデターを起こし、シェルターを乗っ取ったのである。
そのトップである白衣を身に着けた男は、堂々と捕らえられた事務員たちの前で腕を広げて演説を行う。
「さて、貴女がたはしてはいけない事をしてしまいました。我らが神に逆らおうなどと!!
外来神といえど、力ある神に逆らおうなどとは不遜の極み! 全く、たかが10人ばかり生贄に捧げた程度でウダウダと……」
「だが! 最早このシェルターは我等外様神の物!! ガイア連合には「民主的に外様神にシェルターを捧げると決定した」と伝えておきますか」
そんな彼らを見下ろす巨大な影。下半身が巨大な蛇で上半身が人型の異形の存在。
邪龍キングー(LV39)*1それこそが彼らが崇める外様神である。
キングーとは、古代バビロニアに伝わる神の一人で、女神ティアマトの息子の一人にして第二の夫である。
権威の象徴である「天の石版」を身に着け戦ったが、結局マルドゥークに敗れ、その肉体は人類創造の生贄となった。それを復活させた、元考古学者の信望者は熱狂していた。
失われた古き神々の復権!! かつて時の果てに消え去った存在が目の前に復活したことに彼は狂喜乱舞していた。
古き神々の復権のためならば、それらを忘れ去った愚かな人々は喜んでその命を捧げるべきである。彼からすれば、失われた過去からの神々が復活するのはまさに天から宝物が降ってきたようなものだ。できるならば、神々に直接過去のことについて直接聞きに行きたいぐらいである。
悪魔召喚プログラムもCOMPも何の術式や契約なども使用せずに、直接キングーと話した彼は、完全にシンクロ(精神汚染)されていた。*2
まずは、このシェルターの人間たち半分を生贄に捧げればキングーはその力をある程度取り戻せるだろう。
だが、焦ってはいけない。ガイア連合という目障りな存在に攻め込まれてきては困る。
まずは、ガイア連合にこのシェルターは「民主的に」「市民たちが賛同したため」外様神の物になったと通達する。
そして、ガイア連合の関係者を(穏便に)追放し、そしてこのシェルターを表面上は普通に、裏で人間牧場へと秘密裏に変貌させる。それが彼の目的である。
彼は、束縛の魔術で縛り付けたガイア連合の事務員たち、関係者を次々と終末でも動く車に乗せて、霊道を通して近くのシェルターに送り届けるつもりである。
関係者がいなくなれば、ガイア連合も小さなシェルターのことにウダウダ言わないだろう。
きちんと後で文句を言われないように、事務員たちには一切危害を与えないように注意している。
それと同時に、シェルター外に無作為に選んだガイア連合には関係ない一般人20人ほどを連れ出し、彼らの前で白衣の男は演説する。
「いいですか? あなたたちに最早人権だの平等だの存在はしないのです。人間など我らの神の餌でしかありません。死ぬまで働かせるか、神の生贄になるか。どちらかしかないのです。
基本的人権など貴方たちには存在しない!! それを貴方たちにたっぷりと”分からせ”なくてはいけませんね。平和ボケしたシェルターの中の人たちにも皆”分からせ”なくては。さあ、神の生贄になる光栄を喜びなさい」
そんなセリフを聞きながら、事務員は緊縛の魔術で身動きが取れなくなっている中(一応本部には何とかSOSは出したが、いつになる事やら)と思いをはせる。
クーデターを受けて、とっさにクーデター軍に気づかれないように、オカルト通信器具にツートントン、とモールス信号で第三支部から本部へと助けをもとめたのだが、果たして気づいているかは不明である。
ともあれ、事務員たちは無事に近場まで運ばれるらしいので一安心はしている。まあ、輸送している間に「悪魔に襲われて行方不明」になる可能性はあるがどうなることやらである。
そんな風に、ガイア連合の事務員や関係者たちがシェルター外の車に積み込まれている中、キィイイイイン!! と隣の人の声が聞こえないほどの凄まじい轟音が響き渡る。それと同時に音の壁を突き破る轟音とソニックウェーブが地上にいる皆に襲いかかる。超音速すら超えたマッハ5以上の極超音速。上空を小型の「何か」が超高速で飛行しているのが、彼らの目にも入る。
戦闘機? 確かに形状はそうだが、あれほど小型の戦闘機などあるはずもない。
まるで空を破裂させるような凄まじい爆音と共に飛来したその小型の戦闘機は、そのままくるりと反転すると、地上に向けて落下……する寸前で変化スキルで瞬時に人型に変形しながら着地する。
そして、地面に着地した際の轟音と土煙が晴れた時、そこに存在していたのは西洋の騎士が纏うような、プレートアーマーを連想させるような騎士然とした独特のスタイル。そして、装甲各部にある「踊る人形」の紋章を見れば、ガイア連合の関係者なら明らかにあれが何かということは理解できる。
拘束魔術で縛られているガイア連合の事務員は、その名を叫んだ。
「あれは──―『破裂の人形』!!」
フィイイイイン! フィイイイイン! キィーンキィーンだのイレーザー音を鳴り響かせながら、破裂の人形のツインアイは、ギン! と光を放ちながら邪龍キングーを睨みつける。
空を高速で飛行でき、さらにトラポートなども可能というその機動性を生かし、『破裂の人形』は有事に迅速に行動・対処する為の即時適応部隊として各地を飛び回っていたのである。
そして、本部からの指令を受けて、真っ先に何かが起きたであろうこのシェルターに駆け付けたのだ。*3
「な、何が破裂の人形だ!! 我らが神、邪龍キングー様に勝てると思っているのか!! さあ、キングー様! そのお力を……」
その瞬間、『破裂の人形』の姿がシュンと消えたと思うと、邪龍キングーの下半身の蛇体がまるで魔術のように切り飛ばされる。それも一度だけではない。蛇体は何十回と輪切りにされていたのだ。
「……は?」
そして、下半身を失って呆然としている邪龍キングーと信望者を他所に、今度はキングーの首が切り飛ばされ、キングーは何もできないまま消滅していった。
「え……? は?」
茫然としている彼らを他所に、それと同時にガイア連合に属する戦闘員たちが霊道を通して、霊的に改造された車などで駆けつけてクーデターを起こした人々を次々と鎮圧していく。口を利ける事務員から事の顛末を聞かされた彼らは、さらに怒り狂う。
「野郎! クーデターとかふざけるなよ!!」
「一人残らず引っ捕らえろ!! ガイア連合のシェルターを奪い取ろうなんて奴らは、お願いだから死なせてと懇願する目に会わせてやる!!」
そのガイア連合の戦闘員たちがシェルター内部を制圧するの見届けた後で『破裂の人形』は再度戦闘機モードへと変形し、轟音と共にまるで放たれた矢のように、一直線へ空へと舞い上がっていった。
そして一方、ガイア連合山梨支部、修行場入口前。
「うわーっ!! 嫌だー!! (式神無しで中層になんて)行きたくなーい!! 逝きたくなーい!!」
「うるせぇ!! 今回の階層は魔炎と毒炎で身動きとれねぇんだ!! 水系と冷却系に長けてるお前が最適解なんだよ!! 何のために報酬山分けにしてると思ってるんだ!!」
まるでセミのように木々に抱き着いて張り付いている凍矢と、その首根っこを掴んで引きはがそうとする霊視ニキ。そして、それを呆れた顔で見守る霊視ニキの式神、モードレッド。
今回の依頼は、星霊神社の修行場の中層攻略*4の際の手助けとしてその能力が必要だと(半ば無理やり)連れてこられた形である。だが、流石に式神なしで中層にいくのは凍矢も嫌がってこんな状況になっているのである。
「大体お前式神はどうしたんだよ!! 何!? 式神派遣勢みたいにあちこちに派遣させてる!? ええい俺たちが前衛してやるからさっさと行け!! 借金返済のためだろうが!! 駄々こねるな!!」
「あ──―ッ!!」
木から無理矢理引きはがされた凍矢は、霊視ニキに蹴り飛ばすされてそのまま修行場へと転がり込んでいった。こうした緊急事態への対応や修行場の中層などで稼いだマッカなどで、凍矢は借金を返していっているのである。*5
書いてたら長くなったので二つに分けました。