ただちょっと解禁条件が面倒なだけで。
〜東京・渋谷 駅前広場 夜〜
「オイ、蓮! あそこでなにか撮影をやってるみたいだぞ!」
カバンの中から顔を出すモルガナの視線の先には、かなりの数の人が居た。その群衆の中央、ぽっかりと空いたスペースでは、テレビカメラがある一人の女性を撮影している。
>あの女性は確か……。
「アイツ、アイドルの『桑山千雪』じゃねぇか? この間リュージとアン殿が熱く語ってただろ?」
モルガナに言われ、彼―――雨宮蓮はその女性の事を思い出した。
彼女は『283プロダクション』という、新興のアイドル事務所に所属するアイドルで、彼女の入っているグループ『ALSTROEMERIA』は、駆け出しにもかかわらず多くのファンが付いている……らしい。
「お疲れ様、千雪。今日の撮影はこれで終わりだ。明日もまた、ここで撮影だな」
と、彼女の隣のスーツ姿の男性がそう声を掛ける。
彼女はその言葉に頷きを返すと、そのままセントラル街の方向へと歩いていった。
「へぇ……。明日以降もまた、ここで撮影をやってるみたいだぜ。まぁ、ワガハイ達には関係の無いことだけどな。まずはご主人の信用を得ることから始めようぜ」
蓮はそんなモルガナの言葉に頷き返すと、居候先の喫茶店へ帰るために駅のホームへと向かっていった。
〜東京・渋谷 セントラル街『俺のべこ』 夜〜
夜もそれなりに更けてきた時間帯。蓮はセントラル街にある牛丼屋でアルバイト……メタ的に言ってしまえば、ステータス上げをこなしていた。
そんな中、彼はカウンター席に座る千雪を見つけた。しかし、どうやら気づいていないようだ。
「おっ、クワヤマが居るな……。でも、気付いてもらえそうに無かったな。……これから頑張ろうぜ」
やけに事務的な態度で接してくるチーフから給料を貰った後、モルガナにそう言われる。
蓮はその言葉に頷き、器用さの上がった感覚と給料を握り締めながら帰ることにした。
(要人間ステータス 魅力:3、度胸:3)
〜東京・渋谷 駅前広場 昼〜
たまたま駅前広場を通りかかった時、再び千雪が撮影している様子を見掛けた。が、今日は何やら様子が違う。
「―――」
「―――」
千雪と、いかにも監督らしい格好をした男性、そしてこの間も居たスーツ姿の男性の3人が、深刻な顔をして話し合っていた。
「クワヤマ達、一体何してるんだ……?」
モルガナもカバンから顔を出し、その様子を観察している。
と。
>溢れる魅力で、監督の第六感に(半強制的に)はたらきかけられそうだ……!
「―――!」
「「―――、―――!?」」
唐突に辺りを見回し始めた監督の視線が、こちらを捉えた。監督の言葉に、他2人は驚いている様子。
その瞬間、蓮の脳内には、唐突にアラートが響き始める。こういう時、人間の嫌な予感という物は得てして当たるものであって。
「うーん、そこのキミ! 眼鏡を掛けたキミだよキミ!」
気がついた時には、既に監督と、それを追いかけるスーツ姿の男性はこちらにやって来ていた。
「あれ? そのカバンの中に猫が居るのかい!? ハッハッハ、面白いね。ますます気に入ったよ!」
「か、監督さん! 向こうは一般人ですよ! 確かにあの役はエキストラ扱いですけど、セリフも有りますし、何より映る時間がそれなりに長いんです、無茶ですよ!」
「んー、しかしだねぇ……」
どうやら、映画だかドラマだかの撮影中に、役者が1人出られなくなり、蓮がその代わりとして出演するか、しないかという話のようだ。
>今の度胸なら、映画の撮影を乗り切ることが出来そうだ……!
「えぇっ! 本当に受けてくれるのかい!?」
蓮はそれに頷くと、監督の後について行く。
「……ホントに出るのかよ、オマエ……。ワガハイ、辺りを散歩してるから、終わったら声をかけてくれよな」
>モルガナの声を背に受けながら、監督から説明を受けた……。
>撮影に成功し、監督や他のスタッフ達からも好評価を得られたようだ……!
〜昼→午後〜
「ハッハッハ、いやー、助かったよ!」
監督の愉快そうな笑い声と共に、お褒めの言葉を貰った。
最後に他のスタッフ達に挨拶をしようと、周りを見渡すと……。
「よし、今日の撮影も終わりだな。俺は1回事務所に寄ってから帰るけど……千雪はどうする?」
「そうですね……。でしたら、ご一緒させていただいてもよろしいですか? 私も、1度事務所の方に顔を出しておこうかと思いまして」
スーツ姿の男性―――確か、千雪のプロデューサーと名乗っていた―――と千雪が、セントラル街の方へと歩いていった。
「おっ、終わったのか?」
ちょうどそこへ、タイミングを見計らってモルガナがやって来てくれた。
「それにしても、初心者にしてはなかなか良かったぜ、オマエの演技。まぁアン殿には敵わないけどな!」
どうやら、物陰から見ていてくれたようだ。
「それにしても、あのクワヤマの演技……。怪盗の活動に何か役に立ちそうじゃないか?」
確かに、彼女の演技を思い返せば、人の心を揺り動かすための技術が随所に散りばめられていたように思える。
その技術は、怪盗の活動における確かなステップアップに繋がりそうだ……!
「しっかし……アイツら、夕飯とかはどこで食べてるんだろうな……。案外、牛丼屋で済ませてたりしてな」
モルガナは彼らの歩き去っていった方向を見ながら、そうボヤく。あの包容力の塊みたいなアイドルが、牛丼を食べる姿……。見たくないとか見たいとか、そんな感情が湧き上がりはするが……。
「とにかく、今度牛丼屋でアルバイトでもして、情報を集めてみようぜ!」
その提案に蓮は頷く。そして、監督に改めて挨拶をしてから、ルブランへと帰るのであった。
〜東京・渋谷 セントラル街『俺のべこ』 夜〜
この間の事もあり、蓮は再び牛丼屋でアルバイトをしていた。
と、カウンター席に見覚えのある男性が座っている。
「オイ! アイツ、クワヤマのプロデューサーだったよな? 一生懸命に働く姿を見せてやろうぜ!」
厨房の奥深く、客からは見えないところからモルガナの声が飛んでくる。
その言葉に蓮は頷き、再び業務に戻った。
「あれ? 君は確か……」
今日も今日とて、凄まじい客の波を捌いたあと。溢れ出る魅力が目に止まったのか、283プロのプロデューサーが話しかけてきた。
「この間、ドラマの撮影に協力してくれた子だよね? 監督が上機嫌に話してくれたよ。『あいつは絶対、将来大成する』ってね」
プロデューサーは笑いながら、そう蓮を褒める。蓮はその言葉に、謙遜をしながらも首を軽く回す。
「ははっ、それも余裕の現れかな? ……そうだ、君はここでアルバイトしているのかい?」
とここで、彼は言葉を止め、厨房やカウンターの方を見てから、再び話す。
「ワンオペか……。大変じゃないのかい? さっきも結構、お客さんの数とかすごかったけど……」
ちょっと辛いかも
>余裕だ
「へぇ、凄いね。僕が高校生だったら、2、3日でやめてるよ、こんなバイト」
互いに苦笑いが溢れる。互いに共通の敵がいると、人間というのはすぐに仲が良くなれるものなのだ。
「―――ねぇ、もしよかったら何だけど、うちでバイトしてみないかい?」
業務内容は?
掛け持ちか……
>今回はご縁が無かったということで……
「いやいやいや! 早いよ、断るのが! せめて業務内容だけでも聞いて!?」
カウンターから身を乗り出し、大声で叫ぶプロデューサー。衆目を集めてしまっているので、落ち着くよう伝える。
「……ゴホン。それで、業務内容なんだけどね……」
と、彼は蓮に、プロダクション内での主な業務を伝えていく。基本的には、事務員の行う事務作業の補佐を行い、たまにプロデューサーの手が回らない、アイドルの仕事に付いていき、その内容を報告書にまとめて上の人間に提出するくらいで良いみたいだ。
しかもこの業務内容で、時給は今の牛丼屋よりも遥かにいい。バー・『にゅうカマー』と同レベル、いやそれよりもかすかに上だ。
>良いのか?
気持ちは嬉しいが……
「うーん……。本当はこういう縁故採用とかは、アイドルのスカウトとか以外はあんまり良い顔をされないんだけどね……。なんか君を見てると、昔の自分を思い出すって言うか……」
とにかく、何か蓮の働く姿に思うところがあったが故のスカウトのようだ。
「それに、空いた時間とかで、アイドルたちのレッスンを観察してもOKだよ。流石にレッスンスケジュールとかはアイドル優先になるし、レッスンの内容は喋らないようにしてもらうことにはなるけど……、どうかな?」
……! それは願ってもない提案だ。怪盗を行う上で、敵からアイテムや金を交渉で入手する際の成功確率などが上がる技術を得られるかもしれない……。
それに何より、あの日目の当たりにした千雪の演技。あのレベルまでになれば、『心を動かす』という技術で、新たなペルソナの入手が用意になるかもしれない……!
「どうする、レン? 怪盗団から見れば大いに役に立ちそうだが……」
モルガナの声に頷きを返すと、蓮はプロデューサーの方へと視線を向ける。
>取引成立だ
よろしくお願いします
「ははは、取引、か。言い得て妙だね」
プロデューサーは朗らかに笑い、こちらに手を差し出す。
蓮は迷うことなく、その手を取る。
「あぁ、これからよろしくね」
>プロデューサーからの信頼を感じる……
汝、ここに新たなる契りを得たり
契りは即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我、「太陽」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん……
>ペルソナの力を育てる人間関係、「太陽」のコープが解禁した!
RANK:0⇛1
「よし、それじゃあいつが空いてるかな?」
>残った仕事を片付けながら、プロデューサーとバイトの話を詰めた……
バイトが終わり、居候先の喫茶店に帰ろうとした時……。
「そ、そうだ! ちょっと待ってくれ、雨宮君!」
後ろから、走ってプロデューサーがやってきた。なにか忘れ物でもしたのかと、蓮は疑問に思いつつも後ろを向く。
「いや、忘れ物とかじゃなくてね……。チャットのIDを交換しておこうと思ってさ」
そう言われたので、蓮は素直にスマホを出し、プロデューサーとIDを交換した。
「……これで良し。これからは、ヘルプに入ってほしいときとかは連絡するから。これから頼むよ?」
そう言うと、プロデューサーは慌ただしく走り去っていった。仕事が忙しいのだろうか……。
蓮とモルガナはその背を見送ってから、喫茶店へと帰った。
別の選択肢を選んだときの会話
①ちょっと辛いかも/余裕だ
>ちょっと辛いかも
「だろうね。外から見てるだけでも忙しそうだからね」
以下同文。
②業務内容は?/掛け持ちか…/今回は〜
>業務内容は?
「おっ?やる気だね。それで、業務内容なんだけどね…」
以下同文。
>掛け持ちか…
「え!?他にもバイトを持っているのかい!?大変だね…」
その言葉に、蓮は大したことないと首を振る。
「ははっ、大物だね。それで、業務内容なんだけどね…」
以下同文。
③良いのか?/気持ちは嬉しいが…
>気持ちは嬉しいが…
以下同文。
④取引成立だ/よろしくお願いします
>よろしくお願いします
「あぁ、こちらこそよろしく」
蓮とプロデューサーは、そう言って固く握手を交わした。
以下同文。
(ちなみにこのコープは昼と夜の両時間コープ活動が可能なのを想定。ブラックだね)