ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
ごめんなさいm(__)m
怪獣墓場宙域 惑星タピオス付近
ゾフィーによって派遣された宇宙警備隊の先遣隊はタピオス付近の小隕石群で機械兵の大群と戦闘を繰り広げていた。
顔面に3門のガトリングガンを備えた機械兵はエンペラ星人が作り出した自立戦闘兵器。
―― 無双鉄神 インペライザー ――
「皇帝の残党とはいえ、未だにここまでの戦力を持っていたとは…!」
「ウルトラサインはもう送ってある!我々でインペライザーを殲滅するぞ!」
「油断するな、旧式の機体とはいえかつてはウルトラ兄弟を苦戦させたロボット兵器だ。全力でかかれ!」
インペライザーのガトリングガンが重々しく回転して砲門に光が集まっていく。標的となった隊員の一人が気づき、側転で回避行動に移る。
ガトリングガンから光弾の束が発射され、隊員のいた場所を吹き飛ばした。
ガシャンガシャンと3体のインペライザーが列をなし、両肩のビーム砲、ガンポートから紫の光弾を連射していく。
「その弾にはホーミング機能があるぞ!気をつけろ!」
呼びかけられた警告に従って二人の隊員が飛び上がると、光弾も隊員を追いかけて上昇する。
二人は散開し、光弾の大群を分散させる。
光弾と光の戦士のドッグファイト。一人はクルッと身を翻して光弾の方を向くと、両腕を突き出して黄色の鏃型光弾を連射する。光弾同士が衝突して爆炎へと姿を変えていく。もう一人は胸の前に両手を備え、エネルギーを溜めて大きな光の球を生み出す。
「タアァァッッ!!!」
前面に光の球を撃ち出し、追いかけてくる光弾達にぶつかっては霧散させていく。
次々と撃墜されていく光弾。しかし、全ては撃ち落としきれてはいなかった。
「フッ!」
一人が両手を突き出して光のバリアを張る。残っていた光弾が次々とバリアに衝突しては霧散せずにバリアを打ち消そうとその身を押し込んでいく。
「今だ!撃ち落としてくれ!」
「おう!」
もう一人がバリアの側面に回り、右腕を突き出して光線を放つ。
ワイパーのように光弾を薙ぎ、消滅させていった。
「テヤァァァァァ!!!」
量産型ウルトラブレスレットを変形させたウルトラランスで二体のインペライザーと接近戦を挑む隊員もいた。
ランスを振り回してその先端で薙ぎ、体重を乗せて刺突するが、インペライザーの強靭な装甲は傷一つつかない。
だが、ランスによる攻撃はあくまでも牽制。
挟み打ちにされた状態。前から右腕を巨大な剣、インペリアルソードに変形させたインペライザーが迫る。
隊員は振り下ろされる剣を避け、ランスを振り上げて肩に先端を叩きつける。バキッ!と先まで傷もつけられなかった装甲の一部が破損する。露出された内部ではオレンジ色の光が明滅していた。
「これが再生装置か…。」
隊員が呟いた直後、背後から足音が迫るのを感知し、すぐにその場を離れた。
もう一体のインペライザーが鋼鉄のパンチを繰り出すが、その拳は光の戦士ではなく露出した同胞の再生装置に直撃してしまった。
すぐに拳を抜き取ろうと上体を起こすが、腕に刺さった機体が重りとなって逆にガクンと前のめりになる。深くめり込みすぎて抜き取ることも出来なくなってしまったのだ。
インペライザーは即座に抜き取る事を諦め、迷いなく両肩のガンポートから光弾を発射した。
盛大な爆発と共に重い鉄の破片が飛び散る。
無情にも同じ姿の仲間を爆散させたインペライザーはその炎の中、ゆっくりと立ち上がった。
爆発の威力で右肘から先を失ってしまったインペライザー。
しかし、右肩の小型ランプが橙に光ると失って煙を昇らせている右腕の先からボコボコと泡立つように金属の塊が生み出され、やがて腕の形へと整っていく。
それも先程までの人の腕ではなく、手首から先をドリル状に変形させたドリルミサイルへと――。
「くっ…マジかよ…!」
何事も無かったかのように構えて戦闘態勢に入るインペライザー。
ギュイイイーーーン…!!と高速で回転させたドリルで隊員の胴体を穿とうと打撃を繰り出す。
それを避けながらウルトラランスで牽制して距離を取る。
インペライザーはドリルによる攻撃から切り替え、ガトリングガンを回転させてエネルギーのチャージを開始する。
「!」
隊員はインペライザーの次の攻撃を予測すると、バク転して後退する。インペライザーの顔面から弾丸の束が発射され、隊員の足元を吹き飛ばした。
ガトリングガンによる砲撃も避けられ、今度は両肩のガンボートにエネルギーを集中させる。
発射態勢に入るインペライザー。だが、エネルギーを集中した両肩は突如として爆ぜる。
攻撃対象とは別の二人の隊員が両肩をそれぞれの光線で撃ち抜いたのだ。貯まったエネルギーを起爆剤代わりにされたインペライザーの両肩は再生装置を巻き込んで消失し、両腕も地面へと落下する。
「今だ、攻撃を集中させろ!」
合図と共に、三人の隊員が腕を組んで光線を放つ。光線はインペライザーの胴体へと集中し、照射され続けることでインペライザーの全身が赤熱化し、そして爆散した。
一体が倒れ、もう一体は爆散し、やがて全てのインペライザーは鉄塊と化して沈黙した。
「やったな。」
「ああ。」
インペライザーの全滅を確認し、ひとまず安堵する隊員達。
一方、部隊長は残骸を見て右手を顎に当てていた。
(しかし…何故、ここにきて旧式のインペライザーなんだ?大戦争から何万年も経っているんだ。いくら残党とはいえより最新鋭の兵器を繰り出してきてもいいような気がするが…。)
「隊長!!」
隊員の声に、部隊長がハッと反応した。
そのまま振り向きざまに手刀を繰り出し、急接近していた物体を弾き飛ばす。
小型ミサイル。
弾かれたミサイルは制御を失って地面に激突し、爆散する。
ミサイルは一発だけではない。十数発のミサイルの雨が弧を描いて部隊の頭上から降り注ぐ。
「敵襲!!」
五人はそれぞれミサイルを弾き返し、一点に集まっていく。
ミサイル群は五人の周囲で爆発し、全滅した。
「集まれ、全方位警戒。」
部隊長の号令と共に五人は背中合わせとなり円を描いた。あらゆる方向からの攻撃に対応出来るよう、一人が倒れても他の隊員が反撃できるよう、一撃を食らう覚悟を持って五人は構える。
蛇が出るか邪が出るか。冷たい宇宙空間の中で仲間の息遣いを感じた。
…フッ
急に目の前が
「え…?」
突然の不可思議な現象に部隊長含め5人は困惑する。
意識を失ったわけではないのはわかった。今の間の抜けたような隊員の声がしっかりと聴こえていたからだ。しかし、視界からは仲間の姿どころか星の瞬きすらも一瞬で消え去ってしまった。地面も見えないため、一度飛び上がってしまえば何処に足場があるのか分からなくなってしまいそうだった。
「敵の能力だ!来てるぞ!!」
部隊長は叫ぶ。しかし何も見えず、敵がどこからやってくるのかも分からない中、迂闊に攻撃に移ることはできない。
「うわぁぁぁっ!!!」
そんな中で響く悲鳴。今のは部隊の中では一番若い隊員の声だ。
その後、反撃に転じるような声は聴こえない。一撃を食らって気絶したか、あるいは…。
「…くっ!」
最悪の事態を予感した部隊長が歯嚙みしていると、三時の方向から敵が迫っていると思わしき足音が聞こえた。
「そこかっ」
部隊長が手刀より放つエネルギーの刃で迎撃を試みる。
しかし、聞こえるのは岩が砕ける音。刃は直撃せずに岩盤を砕いただけだったようだ。
「うわああああぁぁ!!」
背後からまた別の悲鳴。
「くそぉ!このままやられてたまるかぁ!!」
「食らいやがれぇぇ!!」
二人の隊員の怒号。直後に光線を放つ音が聞こえ、部隊長は暗黒の空間に放り込まれたことと仲間が犠牲になったことで二人が冷静さを失い怒りに任せて攻撃に移ったことに気づく。
「待て、落ち着け!同士討ちになるぞ!!」
部隊長の叫びも虚しく、周囲を爆音が包む。そしてーーー。
「うぐおぉっ!!??」
「ああああああぁぁぁぁぁ!!」
ザシュッと一人の身体が切り裂かれる生々しい音が、もう一人の身体に数発の弾丸が着弾する乾いた音が、そして二人の痛々しい悲鳴が耳に入り、周囲は静寂へと変わった。
「そんな…!!」
部下達の死を悟り、一人残されたままそれでも構える部隊長。
「ウルトラ戦士といえども、お前らは大したことねぇなぁ。大戦争の時に片付けた雑魚共とあんま変わらねぇじゃねーか。」
未だに視界が闇のままである中、自身を嘲笑する声が聞こえる。それでも部隊長は怒りを懸命に抑える。
「ほぉ…。それほどまでにエンペラ星人と関わりが深いのか!」
「とっくにそちらでは見当がついていたんだろぉ?まさか、インペライザーまで差し向けられても気付いてませんでしたなんていうお間抜けじゃねぇよなぁ~?」
「…今のお前の言葉で確信に至った。しかし、旧式のインペライザーしか使えないとは、捨て駒同然の俺がいうのもなんだが、お前達もお粗末なようだな。」
敵がこちらの動向を何処まで把握しているかは分からないが、動きを掴まれて今のようにウルトラ戦士の襲撃を受けることは予見していたらしい。
あとは本命が相手に気づかれているかどうか…。
「ちっ…。まあいいや。このままお前を一撃で葬ってやるぜ。」
ダッ!と動きだす音。辺りが風を切る音で包まれ敵が高速で動いて次の攻撃をより読まれないようにしているようだ。
「さぁーーて、トドメの一撃はどっから来るかねぇ?お前は部下が死んだってーのに冷静さを失わねぇから相当の実力者と見たぜ。だからこーして攪乱してから殺す。」
速い…。
音だけでも、相手が動きを悟らせないよう素早く動き回っていることが分かる。
「テヤァッ!!」
部隊長は全身に光を集め、一気に解き放った。
ボディスパーク。
全方位から炸裂音が響き、周囲の物体が吹き飛ぶ様子を感じ取る。
敵も一緒に吹き飛ばしたと判断し、すぐさま地を蹴って飛翔する。立ち止まっていたらそれこそカモだ。
この暗闇が相手の能力、それも範囲が限定されているなら出口があるはず。それは何処だ?
敵の飛行速度も分からない。追いつく前に何とか脱出したいが…。
そう考えていた矢先、右胸に衝撃が走った。
これは、
「ぐおっ!?」
部隊長の飛行姿勢が崩れ、減速する。
直後に今度は背中に衝撃を受ける。斬撃。追いつかれた。
「逃げられると思ったのかよぉ!間抜けぇ!!」
前、後ろ、今度は左。斬撃の嵐が全身を切り裂いていく。次々と攻撃を受け、部隊長の身体はグルングルンと宙で回される。敵の動きが速いために体勢を整えることも出来ない。
「へっ、終わりだぁぁぁぁぁぁ!!」
もはや、これまでか――。
「『チェストォォォォォォォォッッッ!!!』」
ズドォォォォォーーーン!!!
若く暑苦しい叫び。直後に凄まじい衝突音が響いた。
「グワァァァァァァ!!!」
敵は派手に吹き飛んだようだ。視界の光が復活し、パッと辺りが明るくなる。
「…!視界が戻った…。」
部隊長は近くにあった小隕石に着地する。そしてゆっくりと振り向き背中合わせに着地した若者に顔を向けた。
「君は…。」
若者の身体は赤い。レッド族だろうか…?
「おぉ!ハルキ!!見えるようになりましたぞ!!」
『やっぱり今の奴があの球体を作ってたんですね!ゼットさん、でもまだそいつは…!!』
「ああ…分かっている!奴はまだ健在だ!油断は禁物でござるぞぉ!!」
若者は誰かと会話しているようだ。恐らく、彼は誰かと一体化していて、その人物とバディとなって共に闘っているのだろう。
と、若者は背後にいる部隊長の事を思い出したかのように「あっ!」と声を上げ、振り返った。
赤いマスクをした、屈強で筋肉質の身体。胸のカラータイマーは『Z』の形をしている。
「あ…ご無事でしたか!?」
悪役のような面構えとは裏腹に丁寧で腰の低い口調。それにゼットという名前…。
「君は…そうか、ウルトラマンゼットか。」
「え?あ、はい!」
やはり。記憶と姿は大きく異なっているが、ウルトラセブンのご子息、ウルトラマンゼロの弟子を名乗っていることで有名な若者だ。
「助けてくれたこと、感謝するよ…。君も、ゾフィー隊長の要請を受けてここに来たのか?」
「いや、この近くを飛んでいたら、突然激しい音と黒い球体が現れたので誰か襲われているんじゃないかって思ったんです!」
(…そうか、ゼットは本命の部隊とは違い、偶然遭遇しただけだったのか。しかし、そのお陰で俺の命は救われた…。)
しかし、と部隊長はさっきまでインペライザーと戦闘を繰り広げていた小隕石を見る。部下達の姿は一人もない。光となって消滅してしまったのだ。
「くっ…。」
部下を死なせてしまったことに歯噛みする部隊長を尻目に、ゼットは宙に浮かぶ残骸に注目していた。
「これは、エンペラ星人の…!」
『ゼットさん、この鉄屑に何か見覚えがあるんですか?』
ハルキという若者の問いにゼットは「ああ、ある」と返した。
「…貴方はさっき、ゾフィー隊長の要請って言ってましたよね。もしや、貴方が相手にしているのはエンペラ星人の残党…!?」
ゼットの問い掛けに部隊長は頷く。
「残党はまだこの近くにいる。さっきの暗闇を作り出していたのもその一人だ。俺達は先遣隊だ。本命の部隊はもうじき来る。」
「俺『達』…!?」
「俺以外は全滅してしまった。奴らは強敵だ。」
「ならば、消耗している貴方も危険です!ここは俺とハルキが引き受けます、だから、貴方は退却を!」
「いや、闘うさ…。部下が殺られておめおめと引き下がる訳にもいかん。相討ち覚悟でやらせてもらう!!」
その言葉に、だめだ!とゼットは部隊長の両肩を掴む。いや、それはゼットの意思ではなく――。
『貴方は生きるべきです!』
ハルキの意思が、ゼットの身体を動かしているのか。
『大切な人を目の前で奪われた事の悔しさは、俺も分かります…。でも、命を懸けて闘うことだけが、全てじゃありません。時には退く事も大事です。貴方の仲間のためにも!』
表情は窺えないが、その語気から見ず知らずのウルトラマンの事を本気に思ってくれていることを感じる。これは若気だけで放てる言葉ではない。幾つもの闘いにゼットと共に身を投じてきたからこその言葉なのだろう。ハルキという若者、只者ではない。部隊長は自身の言動を恥じた。
一方のハルキも急に慌てて部隊長の肩から手を離す。
『す、す、す、すみません!!俺、偉そうな事を!!』
「お、俺からも、すみません!!」
ハルキと一緒に頭を下げて謝る赤マッチョのゼット。でも、とゼットは続ける。
「手の届く範囲で人々を守り、自分の正義を守りぬく。闘いの中でハルキが見つけた答えの一つなんです。貴方をこのまま死なせることはハルキも許しません。エンペラ星人の残党は、俺達が引き受けます!!」
改めて宣言するゼット。部隊長も今度は首を縦に振った。
「いや…私も目が覚めたよ。すまなかった。部下たちの弔いはいずれする。ここは君達と、ゾフィー隊長が遣わす本隊に託そう。」
一方。
「って〜〜〜〜〜!!あのモリモリマッチョマン!とんでもねぇパワーしやがって!!」
吹き飛ばされた先の隕石にめり込んでいたガクレは立ち上がるのに邪魔な礫をガラガラと力任せに崩して退かしていた。その頭をゲシッとイルーが蹴りつける。
「イッテェ!!」
「なぁ〜〜〜〜〜に、不意打ち食らってやがんですか!!視界を封じた上で優位に立っているのは我々だというのに、貴方がここまで飛ばされてくれたおかげで私も退却しなくてはならなくなったじゃあないですか!!」
「しゃーねーだろぉ!?オレの能力にあんな脳筋戦法でぶち破ってきたのは久々なんだからよぉ!!」
「あの暗闇空間を強引に破るとは…。ウルトラマンゼット…でしたっけか…。期待の新人だというのは本当らしいですねぇ…。」
イルーがふーむと関心していると、立ち上がったガクレがその背中をゲシッと蹴る。
「痛ぁ!?何しやがる!!」
「さっきのお返しに決まってんだろぉぉがぁぁぁぁ!!!」
「んなことしてる暇あったらとっとと空間展開しろやぁぁぁぁ!!」
「言われなくてもやってやらぁぁぁぁ!!!」
罵詈雑言を交わして、ガクレは両眼を紅く光らせる。
ガクレの身体から靄のような黒いエネルギーが漏れ出す。それはガクレを包み、より拡散し、周囲の隕石群を巻き込んで風景を黒く塗りつぶしていく。
やがて靄は、巨大な漆黒の球体へと形を成した。
飲み込まれた者の視界から全ての光を奪う、凶悪な球体に――。
②へと続く――