ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
部隊長を離脱させてしばらく経つと、再び周囲を闇が覆っていく。
敵の襲撃が始まったことを察知したゼットは、迎え撃つべく飛翔する。
「ジェアァ!!」
ガクレも無謀にも暗黒空間の中を飛ぶゼットの姿を視認する。
「そこか…!」
右手の長い鉤爪を向け、ゼット目掛けて突進する。
こちらの殺気を察知したようだが、もう遅い。ズガッッ!!とガクレの鉤爪がゼットの左肩に突き刺さった。
「ダァァァッ!!」
痛みに苦しむゼット。それを見て先の一撃を報いたとガクレはほくそ笑み、追い打ちを加えるべく右腕を引いた。
「――あれ?」
抜けない。鉤爪がゼットの身体から抜けないのだ。予想以上に深々と刺さりすぎたというのか――
「な…!?」
いや、違う。よく見たらゼットは左腕を曲げて力こぶを作るようなポーズを取っている。筋肉を隆起させ、胸部のプロテクターに挟む形で鉤爪を
攻撃は通じていたが、逆に利用されて押さえ込まれていたことに気づき、ガクレは舌打ちする。
「んだよ、この筋肉バカは…!オレの刃をこうも簡単に受け止めやがって…!!」
ウルトラマンゼット ベータスマッシュ
覆面レスラーのようなマスクを被ったマッシブな赤き勇気の戦士は、ゼットが初代ウルトラマン、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウの三人の力をウルトラフュージョンさせて変身した形態である。
相手の攻撃を真正面から自慢の肉体で受け止めて強烈な一撃でカウンターする豪快な戦法は、偶然ながらガクレの天敵にもなっていたのだ。
ガクレの攻撃をまんまと受け止め、ゼットはマスクの奥から睨みつける。
「ナニガンツケテンダテメ-!!」
「口悪ぃなテメェ!?」
ウルトラマンらしからぬ粗暴な口調に思わずツッコんでしまったガクレの額に、ゼットの重々しいヘッドパッドがガツンと直撃する。
「痛ぇ!?」
仰け反るガクレ。ゼットは左肩に挟まってる鉤爪を両手で掴み、ベキリと力任せに圧し折った。
そして、右の拳を力いっぱい引き絞ると真っ赤に燃える豪炎を纏わせ、ガクレの顎目掛けてアッパーカットを放つ。
「ゼスティウム…アッパァァァァーーーーー!!」
ゼスティウムエネルギーを拳に纏わせて敵を貫くゼスティウムアッパー。豪炎を纏いし拳がガクレの顎に炸裂した!!
「ナメてんじゃねぇぇーーー!!」
しかし、ガクレもただでは終わらない。
即座に両腕で顎を庇い、同時に両手の間に火炎を集中させて迫りくるゼットの拳目掛けて放つ。
豪炎同士が衝突し、相殺して爆発を起こす。
「ジェアァァァァーーーー!!」
爆発に吹き飛ばされるガクレとゼット。しかし、ガクレはすぐに態勢を直し、破砕された鉤爪を分離させて新たな鉤爪を瞬時に生み出し、再びゼットに襲いかかった。
「また来るぞ!ハルキ!」
『押忍ッ!!!』
ゼットは叫ぶと共に、両手を前に突き出して青い光の柱を作り出す。
柱は槍の形へと変わり、ゼットランスアローとなった。
「ゼットアロー!」
ゼットランスアローを召喚したと同時、ランスアローの胴体が敵の攻撃を防いだのを感じた。ガキィン!!と激しい衝撃がランスアローを握る両手に伝わる。
「ジュワァァ…!」
鍔迫り合いの状態となり、ゼットはベータスマッシュの腕力に物を言わせてグイグイとゼットランスアローを押し込む。
「なんつー…馬鹿力してんだ…!!」
暗闇から聞こえる敵の声。単純な力比べではやはりゼットの方が有利らしい。ゼットは右脚を振り上げてガクレを蹴りつけ、強引に鍔迫り合いを解く。
距離が離れたのを感じ取ったゼットはランスアローの槍先を前に向け、アロー胴体中央の「Z」と記されたレバーを引く。レバー付近の金色の球体が高速で回りだし、その状態でレバー下の赤色のボタンを押す。
槍先に紅蓮の炎が集中し、燃え上がった。
「ディィィィヤァァァッッ」
ゼットは槍先が燃えているランスアローを振り回し、前方に「Z」を描く。
「イクゾオラァァァァン!!」
宙に描かれた炎のZの字にゼットは渾身の突きを入れる。
炎の文字は一瞬膨れ上がると凄まじい爆炎と衝撃波を撒き散らして爆散した。
ゼットの前方を火炎の大波が拡がり、近くにいるものを焼き付くしていく。本来ならば一体の相手に炎の斬撃をぶつけるゼットランスファイヤーの応用である。
「うあーー!!アチチチチ!!」
どうやら敵は火炎に呑まれたらしく、熱がる声が聞こえてきた。
「おお、効いてるようだぞ!」
『この隙にここから逃れましょう!』
「よし!」
『変幻自在、神秘の光…!』
ゼットの身体から三条の赤い光が離れる。それと入れ替わるように今度は紫や赤、青の光がゼットへと吸い込まれていく。
〈Ultraman Z Gamma Future.〉
暑苦しさ満載の筋肉マッチョだったベータスマッシュから一転して細みの体型となり、額のクリスタルや頭のスリットが施された洒落た印象の姿。
ウルトラマンゼット ガンマフューチャー
ティガ、ダイナ、ガイアの力を内包した多彩で摩訶不思議な超能力を操る形態である。
変化したと同時にゼットは右手の中指と親指を合わせてパチンッと鳴らした。
「ガンマスルー…。」
ゼットの目の前に光の魔法陣が浮かび上がる。
ゼットが魔法陣に触れると、身体が魔法陣の中に吸い込まれるようにして消えていく。
内部の光を全て奪い取る黒い球体の外側。ガンマスルーの魔法陣が浮かび上がり、そこからゼットが飛び出した。
『何とか抜け出せましたね…。』
「途轍もなく恐ろしい能力だ…。仕掛けて来る前にカタをつけるぞ!」
早期に決着をつけるべく、球体の方を向いてもう一度指を鳴らすゼット。
今度は光の残像が2つ、ゼットの身体から分離してゼットを挟むように佇む。
一人は超古代の光の巨人、ウルトラマンティガ。
もう一人は人間が光となり誕生した巨人、ウルトラマンダイナ。
ネオフロンティアスペースを護る2人のウルトラマンの幻影は燃えるような赤が体色の大半を占め、体格も筋骨隆々としていた。
ティガのパワータイプとダイナのストロングタイプである。
「ガンマイリュージョン…!」
ティガ、ダイナ、ガイアの幻影を召喚して連携を取るガンマイリュージョン。その幻影から放たれる光線技の威力も本人と同等である。
2人の幻影はそれぞれエネルギーを溜めて紅蓮の高熱光球を生成する。
ゼットもそれに合わせて両腕を前に翳し、一気に斜めに広げる。腕の間には強烈なスパークが生じた。
「ゼスティウム光線!!!」
ゼットが腕を十字に組んでゼスティウム光線を放つ。ティガも灼熱の光線が尾を引く高熱光球デラシウム光流、ダイナは爆熱の赤色光球ガルネイトボンバー・シューティングバージョンを放つ。
単体でも破壊力抜群の光線技の束。巨大な球体もこれにはひとたまりもないはずだ。
二つの光球と一条の光線が球体目掛けて突き進んでいく。そして、その表面にーーーー。
到達しなかった。
「え゛」
その上、信じがたい光景を目にする。
放った光線が球体から
向かった道をそのまま戻ってきている!
「えええええ!!??いやいや、待って待って、ヤバいヤバいヤバいーーー!!」
ゼットの必死な呼びかけに応える筈もなく、ゼスティウム光線は主であるゼットに直撃した。
「テヤァァァァァ!!」
「グワァァァァ!!!」
ティガとダイナも同様に対処出来ずに自らの光球を浴びてしまい、身体が崩壊して光の粒子となって分解されてしまった。
「ぐう…っ!一体、何が…。」
『大丈夫ですか!?ゼットさん!』
「ああ…ウルトラ痛いが、何とかウルトラフュージョンを解かずには済みましたぞ…!!だがどうしよう、光線も弾き返されてしまうならここからの攻撃の仕様がないぞ…。それにグズグズしてたらまたあの闇の中に…。」
光線を庇った腕で受けたためにダメージを抑えることは出来たが、不意に起こった理解不能な現象に脳が追いつかない。
その隙を狙ってか、反撃に成功した黒い球体は急速にゼットに接近していく。
「っいやてか来てるぅぅぅぅ!!!」
咄嗟にガンマスルーを発動出来なかったゼットは再び飲み込まれることを許してしまった。
『…闇に、飲まれちゃいましたね。』
「…うん。」
再び敵の術中に嵌ってしまい、ゼットは少しヘコんでしまった。しかし!熱血漢な彼はすぐに立ち直った!
「だがハルキ!俺達はこういった場合の対策を心得ております!」
『押忍ッ!!!暗闇から逃れられないのなら、いっそのこと暗闇での闘い方をするまでだ!!』
ゼットとハルキの意思が同調すると、ハルキはスッと目を閉じた。ゼットも合わせるように両腕を回し、両手を前に翳して瞑想に入る。
心眼。
透明怪獣ネロンガとの対決を経て得た『見えない相手』に対処するための戦法である。
意識を集中し、周囲の気の流れを読む。微かな揺らぎも、息遣いも、気配も。
ー捉えた。
背後に大きな『揺らぎ』。すかさずその方向に回し蹴りを繰り出す。
「ぐおっ!」
脚に衝撃が伝わると同時に漏れる声。どうやらウルトラヒットしたらしい。
それでも暗闇は晴れない。ゼットは再び瞑想に入り、『揺らぎ』を捉える。
「ゼェェヤァァァ!!!」
左手で敵の攻撃を防ぎ、右の拳を叩きこむ。
次に捉えた『揺らぎ』には背を向けながら、右手にポッと青紫の光球ガンマエナジーボムを生み出して撃つ。背後から炸裂した音がした。
と、今度はその方向から凄まじい熱気が襲ってきた。どうやら火炎放射を繰り出してきたようだ。
「ゼヤアッ」
少し火炎を浴びたゼットはバリアを張って火炎を防ぐ。
と、背後からまた別の『揺らぎ』がいることに気づいた。
「なっ!?」
同時に背中に受ける衝撃。撃たれた。しかしバリアを解くまでのダメージではなかった。
「後ろからですとぉぉ…!?」
『まだ前には一人いる!ってことは…。』
今も前方からの火炎放射は続いている。この状況が意味するのは…。
「敵は…。」
『二人いる!!』
惑星タピオス
チブル星のパワーローダー、銀のチブローダーに搭乗したブライク、エルーヴォは濃紫の毒々しい色彩の大地に降り立った。
黒煙のような暗黒の厚い雲に空全体が覆われ、一切の光が入ることも許されず地上にいることを忘れ、地下にいると錯覚させる程の暗さ。肌に感じる気分が悪くなる程のマイナスエネルギー。風のうねりか、オォォォォォォォーーーーという悲鳴を思わせる不気味な音が絶え間なく響く。廃墟も少ない荒涼とした風景。
その奥に威厳を保って存在する巨大な石造りの遺跡のような建造物――フィーネ神殿。
ブライクが突き止めた、エンペラ星人が『実験』を行なっていたとされる場所。
「あれか〜?ブライク。お目当ての実験場っていうのは〜。」
「反応が強いのはあの神殿の中だ…。感謝するぞエルーヴォ。お前の働きが無ければここを見つけられなかった…。」
「すんげえエネルギーだもんなあ、ここ。そら並大抵の機械じゃ阻まれて見つけられないよなぁ。」
エルーヴォは呑気に辺りを見回してそう言った。
ブレない奴だ。
「行くぞ…。恐らく魂は奥だ。」
「おおーーーー…。」
チブローダーは歩き出すが、エルーヴォは気の抜けた返事をしただけでその場を動かない。
「…エルーヴォ?」
「ブライクさぁ〜…。先に行っててくんないか?」
ブライクはエルーヴォの言葉の真意にすぐに気づいた。
「お前、まさか…!」
エルーヴォは「へっへ〜」とヘラヘラ笑って、おもむろに背後へと回し蹴りを繰り出した。
「どらぁぁっ!!!」
蹴り飛ばされる鏃型の光弾と光の手裏剣。
一発足りとも二人への直撃は許されなかった。
「来たなぁ〜?」
着地と同時にエルーヴォは見上げる。
自分達の後を追ってここまでやってきた四人のウルトラマンを。
ウルトラマンタイガ。
ウルトラマンタイタス。
ウルトラマンフーマ。
ウルトラマンコスモス。
「そこまでだ!レギュラン星人!」
「…と、チブル星人か!?」
コスモスの言葉に続くようにしてタイガが驚きの声を上げた。
「なんだ、なんだ〜?仲間にチブル星人いちゃ悪いのかよ〜?」
「い、いや悪くはないけど…えと…。」
「とにかくだ、貴様らの野望は止めさせてもらう!」
「だな、これ以上宇宙を引っ掻き回されてもたまったもんじゃねーしな!」
タイタスとフーマが構えると、エルーヴォも立ち上がる。
「いいねぇ…。強敵四人を一度に相手にするってーのは今まで無かったけどよぉ…。俺も仲間のために戦っていうのは好きなんだよなぁ。」
エルーヴォは顔をブライクに向ける。
「てことでさ、行ってくれよ。」
「…分かった。ならばそうさせてもらう。」
ブライクはエルーヴォに背を向けたまま、答える。
チブローダーは背部のブースターを点火させ、ジェット噴射で加速して神殿へと向かった。
「待て!」
ブライクを追おうとするウルトラマン達。その足が二発の弾丸によって止められる。
いや、弾丸によって地面が吹き飛ぶ光景によって止められたと言った方が正しいか。
「ちょ待てよぉ。」
エルーヴォの両手にはいつの間にか武装がされていた。
小型ではあるが、見た目に反して発射される弾丸は一発で地面をえぐり飛ばす程の高威力を誇る拳銃型の光線銃。
それが二丁。
「こっから先は…通行止めだぜ?」
ゼットは両手に光のトランプを生み出し、両手を合わせて親指でパラパラと交互にカードを落としてシャッフルさせ、配るように一枚ずつ素早くトランプをばら撒いていく。
ガンマシャッフル。
ばら撒かれた光のトランプはゼットの周囲を護るように飛び交い、敵の攻撃を防御する壁と化す。
火炎も、弾丸も、ミサイルも、ゼットに届く前に阻まれる。
万全な防御を展開させた隙に今度は三日月状の武器、ウルトラゼットライザーを手にする。
インナースペースでもハルキがゼットライザーを手にし、腰のホルダーから三枚のメダルを取り出す。
ウルトラメダル。光の国で開発されたウルトラマン達の力が内包されたメダル型のアイテムであり、ゼットは特定の三枚の組み合わせによって新たな形態へと変身するウルトラフュージョンを駆使して自身の強化へと繋げている。
そしてメダルの組み合わせによって発動できるのは変身だけではない。
ハルキはメダルの装填場所でもあるゼットライザーのブレードをスライドさせ、三枚のメダルを装填して再び元の位置へとスライドさせていく。
〈Jack〉
〈Zoffy〉
〈Father Of Ultra〉
ウルトラマンジャック、ゾフィー、ウルトラの父のメダルをゼットライザーにスキャンさせ、トリガーを押す。
「
中央から光の刃が生成され、光の剣と化したゼットのゼットライザー。
だが、ゼットは剣による接近戦には持ち込まず、その場でグルングルンと大きく円を描き始める。
すると、剣の動きに合わせて光のエネルギーの流れが生まれ始め、流れはやがて巨大な渦へと形を成していく。
そして生まれたのは巨大な光の竜巻。
「ウオオオオオオオオオオオ!!!」
ゼットはゼットライザーを回し続け、竜巻をより強大なものにしていく。
竜巻はゼットを囲むように暗闇の中をうねって移動し、近づくものを飲み込んで蹂躙していく。
ゼットの近くにいるガクレも例外ではない。
「でぇぇぇぇぇ!!??なんだ、この竜巻!?」
驚愕の声を上げるが、回避は間に合わない。たちまち飲み込まれ、竜巻の中でグルングルンとなすすべなく回されてしまう。
「どあああああああああ…!!」
イルーも例外ではない。
「へぇぇぇぇぇ!!??こっちにも来るですとぉ!?」
大蛇のようにうねり続ける竜巻にイルーも飲み込まれた。強固な身体を持つリフレクト星人でも、猛烈なエネルギーの竜巻にはなすすべなかった。
(くそぉぉぉぉ…!あのウルトラマンはこんな竜巻にオレ達を巻き込ませて何をするつもりなんだよぉ…!)
竜巻の激しい奔流に耐えながら、ガクレは警戒する。
すると、竜巻の中に何かが乱入してきたのが見えた。
「…何だ!?」
ガクレは目を凝らす。そして、そのフォルムが凶悪なものだと把握したとき、戦慄した。
乱入者の正体は、
これこそが竜巻閃光斬の本領。竜巻に捕らえた対象を光輪で八つ裂きにする文字通りの必殺技。
「ざっっっけんな!!!!」
ガクレは焦りと怒りが混ざった感情で、身体が思い通りに動けない中で可能な限りの斬撃を繰り出し、抵抗する。
しかし、波に乗るプロサーファーのように竜巻の中を自在に動く光輪には追いつけず、斬撃を潜り抜けられて全身を斬り裂かれてしまう。
「うごがああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
普通の宇宙人ならここで斬殺されて終わりだが、ガクレは違った。切り裂かれても必死に抗い光輪を弾き返していく。
しかし、いくら弾いても光輪はまるで意にも介さないというように即座に体勢を整えてガクレを切り裂こうと迫る。
(まずい…!能力も限界だ…!)
「ふん、仕方のない奴ですねぇ。」
声と共にガクレと光輪の間にイルーが割り込んだ。
ガクレと違って直撃を許しても大したダメージも受けずに反射させてしまうイルーの身体がガクレの盾となる。
「はい、感謝をいたしましょうねぇ。」
「テメェから言うのかよ!!」
「言わないのですかぁ〜〜〜??別にバラバラにされて良かったのを見てても良かったのですがねぇぇ〜〜〜。」
「テメェに助けられるくらいならそれでも良かったかもなぁ!!あ、でもそうなるとお前の能力は只の
「このアヒルゥ!!やはりテメーはここで四散するのがお似合いだぁぁぁ!!じゃあな!!」
「この竜巻の中で庇いに動けたのが限界なクセして虚勢張ってんじゃねぇ!!」
相変わらず罵詈雑言を叩き合う二人だが、両人共に竜巻の猛烈な奔流の中では光輪を弾き返すことで精一杯であり、そのまま吹き飛ばされていく。
ガクレの
視界が元に戻ったことで、ゼットは「あ〜〜〜〜」と二人が竜巻と共にズドーンと遠方の隕石に激突したのを見る。
「仕留められなかったようだな…。全く、しぶとい奴らです…!?」
悪運の強い二人に悪態をついていると、ゼットは周囲の異変を目にして息を呑む。
黒い空間とは別に展開されている、薄い膜のような壁の結界。正十二面体の空間が、黒い球体に覆われるようにして存在していたのだ。
『空間の中に…また別の空間が!?』
ハルキが驚きの声をあげる一方、ゼットは直前の戦闘で起こった不可解な現象を思い返す。
「そうか…ガンマイリュージョンの時に光線が反射したあの現象!あれはこの結界が起こしていたのか!」
ゼットの推測は正解である。
この正十二面体の結界こそ、イルーの能力によって生み出された『完全防壁』なのだ。
能力の名は
結界の外から受けた光線技や弾丸は結界に触れた瞬間そっくりそのまま、180°回頭させて射手に送り返す特性があり、結界の外から放たれたものならば切断光線であろうと牽制技であろうと例外なく弾き返してしまうのだ。
しかし、この結界にはデメリットもある。
まずは範囲。結界を自分に纏うように張ることも出来れば、周囲を覆うように巨大にすることも出来る。しかし、巨大にする場合は一定の距離までしか張ることが出来ない。
二つ目は、結界の内側は光線の反射が無効化されるというもの。
結界の中に入られてしまえば、光線技を撃っても問題がなくなってしまうということ。ただ、これはリフレクト星人特有の誘電体多層膜ミラーで構成された身体で反射することも出来るため、イルーはあまり気にしてないみたいだが。
そして三つ目が、反射出来るのは『光線技や実弾を含めた遠距離攻撃』であること。肉弾戦を得意とする者には通用しないのだ。
このようなデメリットが多い上に使い勝手も悪そうな能力は、イルーの性格が傲慢過ぎたが故に同じく傲慢なエンペラ星人の魂とはそりが合わなかったからなのかもしれない…。
しかし、そんなイルーの
それこそが、ガクレの
ああ、これも運命の巡り合わせというものだろうか。よりにもよってインペリアル・ソウルの中でも一番仲の悪いガクレと能力の相性が良かったのだ!
そもそも、ガクレは不意打ち気味で能力を発動して、敵を暗闇に閉じ込めてから仕留める戦法を好み、この初見殺しで何回も暗殺を成功させてきた。しかし、何度かこの暗闇空間を強引に突破しようとする者もいた。
ブライクからアドバイスを受けてからはガクレにとっては不本意ながらもイルーと能力を併用させることで、暗闇空間から脱出しても相手は空間に近づくことを避けて遠距離攻撃を繰り出すしかない状況へと追い込んで、それを反射して迎撃するという二重の初見殺しを実現させたのだった。
しかし今、この戦法を完全に完封する者が現れた。それが心眼を会得している上に遠近を問わない多彩な戦法を展開できるウルトラマンゼット。ガクレにとってもイルーにとっても相性の悪い相手と遭遇してしまったのだ。
「…相手の手の内は分かったものの…だいぶ堪えるな〜〜〜…!!」
ゼットも想像以上の持久戦に持ち込まれた上にマイナスエネルギーの渦巻く宇宙空間で戦闘を繰り広げたためにエネルギーの消費が激しく、Z字のカラータイマーも赤く点滅していた。
『ゼットさん…。』
「ここで一旦退いた方がいいかもしれません…。ハルキ、この事をここに向かっている本隊に伝えよう。」
「その必要はない。」
突然、背後より掛けられた声。ハッとゼットが振り向く。
「貴方は…!」
「くそ…!あの新人、結構やるじゃねぇか…!」
「参りましたねぇ…。ブライク達には早く目的を達成してもらいたいものですが…。」
隕石に叩きつけられたガクレとイルーは衝突時に巻き起こった粉塵に紛れて身を隠し、別の隕石の深い谷底まで移動していた。
「…一応聞いておきますがね、鴨鍋野郎。能力は使えるのですか?」
「察しはついてんだろぉが、くす玉野郎。しばらくは使えねぇよ。」
小声で罵り合う二人。しかし、ガクレは自慢の能力を攻略されてしまった上に使用不可の状態まで追い込まれ、プライドをズタズタにされてしまっていた。
「くそっ…。とりあえず、俺は能力が使えるようになるまで隠れなきゃならねぇ。やるならテメェだけでやるんだな。」
「ここでへっぴりとは情けないですねぇ。ま、それに関しては私もあまり真っ向からやりたくありませんから人の事も言えませんが。」
「んだよ、肉壁にもなれねぇのか。しょーもね。」
思わず大声で言い返しそうになったが、ここはグッと抑える。
「…馬鹿言いなさんな?貴方と一緒の場で死ぬのが真っ平だというだけですよお。まあ?貴方がいないのならここで突撃して死ねますがね。」
「なら、各々別の場で闘って朽ち果ててみるか?」
不意に掛けられた声。ガクレとイルーは即座に声の主の方へと向く。
谷の上からこちらを見下ろす影。ゼットとは違う、
顔の上半分とカラータイマーを銀に煌めく鎧が覆う、ウルトラマンというよりは『鎧を纏った宇宙人』と表現した方が的確に感じる程の特異な姿。
しかし、イルーはその姿に見覚えがあった。いや、ある意味有名だ。隠れているところをいとも簡単に見つけられたことに驚きつつも冷静を装い、慇懃無礼な態度でそのウルトラマンに応える。
「これは、これは…。ハンターナイトツルギさんではないですか…!」