ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
無数の星が瞬く広大な宇宙。漆黒の闇に星の光が彩りを加え、人々の心を震わせる壮大なる景色を生み出していた。
この蒼く輝く星もそう。八割以上が水で覆われているという惑星レミオは瑞々しく澄んだ光を放ち、宇宙の彩りの一つとなっていた。
心を落ち着かせてくれる静寂の空間…。一つの大爆音は無惨にもそれを打ち破ってしまった。
レミオ宙域で突如発生した爆発。その爆炎の中から、一つの影が飛び出した。
ギィィィィィィィッッッ!!!
ひび割れた紺色の体表、頭頂部の一本角に両手の鋭い一本爪。そして何よりも目を引くのが赤い瞳の凶悪な面構えに腹部の五角形の器官。
見るからに凶暴な風体の怪獣が、爆炎から逃れる。
しかし、もう一つの影がそれを待ち構えていたかのように迫り、怪獣に鋭い蹴りを浴びせた。
ギィィィィッッ!!??
怪獣は瞬間、バランスを崩したがすぐに立ち直って攻撃を仕掛けてきた敵に対し両眼から機関銃の如く光の弾丸を乱射した。
敵は自身に迫る弾丸の雨に対し、意外にも回避行動を取らない。その代わりに両腕を前に突き出した。
弾丸達は敵に到達し、やがて爆発の連鎖へと姿を変える。怪獣はその光景に手応えを感じたのか、弾丸の乱射を止めた。
やがて爆炎が消滅していき、敵の姿が顕になっていく。そこにはーーー。
メビウスの輪を中心に広がる、橙色の光のバリアで身を守る銀色の巨人の姿があった。
「セヤッ!!」
ウルトラマンメビウスは残った爆炎ごとバリアーーーメビウスディフェンサークルを掻き消すと、両腕を広げて飛行体勢へと入り、怪獣に急接近していく。怪獣は手応えとは正反対の結果に驚愕するが、身を翻してなんとかメビウスの突進を避けた。そのまま横を掠めていったメビウスに今度は腹部の器官を青く光らせ、溜めたエネルギーを五角形状の光線として狙い撃とうとする。
しかし、メビウスには当たらない。飛行体勢のまま全身を反転させて光線を回避し、左手首に装着されたメビウスブレスに右手を翳して、怪獣に右の手刀を向けた。手刀から三日月状の光弾ーーーメビュームスラッシュが数発発射され、怪獣の顔面に直撃する。顔を覆う衝撃に飛び散る火花と閃光が怪獣を怯ませる。速射性・連射性共に優れたメビュームスラッシュは威力は低いものの、怪獣の光線よりも素速く、対象へと到達する。巧みな牽制で優位に立ったメビウス。しかし、本人は自身が優勢にあることを意識していなかった。
惑星レミオに急接近している怪獣がいると緊急通報を受け、一番近距離にいたメビウスが駆けつけることとなった。しかし、そこに怪獣の姿は無く、惑星に到達しているはずではと捜索しているとまさかの展開、怪獣の方から襲撃を掛けてきた。狙いは惑星ではなくメビウス。そして目にしたその怪獣を、メビウスも知っていた。
(宇宙大怪獣ベムスター…。僕は何度もこいつの同族と戦ってきた…。けれど、こいつは今までと違う。野生にいる個体じゃない!)
全体的なシルエットは一致するが、所々に記憶と違う特徴がある。
ベムスターといえば、かつてウルトラマンジャックを破り、ウルトラブレスレットの支給が無ければ勝機がなかった個体もいる程の強豪ながら、その実力に反してつぶらな瞳に可愛らしい姿で何処か愛嬌を感じるのが印象深い怪獣だった。しかし今戦っている個体には愛嬌どころか生気が感じられず、既に死者であるような不気味な雰囲気を纏っている。
(そうか…。前にデータベースで見た、ヤプールに改造された個体に似ているのか…いや、似ているどころか…。)
そのもの。
今相手にしているベムスターは、異次元人ヤプールによって改造された個体の一体だったのだ。
ー 宇宙怪獣 改造ベムスター ー
(これは…ヤプールの暗躍か!?)
こちらに突進してくる改造ベムスターを確認して、メビウスは回避ではなくむしろ接近を図る。目にも止まらぬ速さで二人は衝突。エネルギーのスパークが起こり、そのまますれ違う形となった二人はその後も二回、三回と衝突してはスパークを起こす。
「ハアッ!!」
メビウスが右のストレートを改造ベムスターの首元に叩きつける。改造ベムスターの巨体が拳の威力で大きく後退した。バタバタッと翼状の両腕をバタつかせて姿勢を直すと、急にクルッと後ろを向いて飛翔しだした。
その先には、惑星レミオ。
「!?…何を!」
メビウスも後を追うべく飛行体勢に入る。最初から狙いは自分だったはずなのに、何故急に標的を変えたのか?そんな疑問をよそにとにかく改造ベムスターを止めるために追う。
しかし、近すぎた。惑星への上陸は避けられない。メビウスは惑星の到達阻止ではなく、上陸した上で早急に決着を付けることに頭を切り替えていた。
そんな矢先にーーー。
「デヤァァァッッッ!!!」
突如飛来した赤い光が、改造ベムスターを横から蹴り飛ばした。
ギィィィィィィィッッッ!!??
「あれは…?」
バランスを崩し、そのまま惑星の成層圏に突入したことで大気との摩擦熱で青い光となって墜落していく改造ベムスターを、赤い光と共に追跡するメビウス。
透明度の高い、澄み渡った美しい海の中に僅かながらに存在するレミオの大地。改造ベムスターの身体がその地表に叩きつけられた。ドゴォンッ!!という激突音と共に土煙と瓦礫が盛大に舞う。
遅れて二人の巨人が地表への負担を最小限にするため、勢いを殺して着地した。
先程まで赤い光だったもう一人の巨人。メビウスはその姿を見て名前を口にした。
「タイガ!」
タイガと呼ばれた巨人が、メビウスの方へと振り返る。
ウルトラマンタイガ。メビウスの教官であるウルトラマンタロウの息子である。メビウスにとってもタイガは弟弟子であり、交流も深い。
「遅れてすみません、メビウス!」
「来てくれたのか!」
「知らせを聞いて来てみたんです、もしかしたら罠が仕掛けられているんじゃないかって…。」
そう言って、タイガは立ち上がろうとしている改造ベムスターを見る。
「あのベムスター…まさか、父さんが過去に戦ったっていう改造ベムスターですか!?」
自分の父親との交戦経験がある怪獣だからか、タイガは一目で気付く。
「恐らく…。気をつけるんだ、アイツは過去の個体にない能力を得ている!」
「はい!」
メビウスとタイガが似たファイティングポーズを取る。二人共タロウの系譜を受け継ぐが故だろう。
「「セヤアァッ!!」」
ギィィィィィィィッッッ!!
改造ベムスターが両眼からの光弾を乱射する。
メビウスとタイガは勇敢にも地面を蹴って駆け出し、接近する。光弾が地面に次々と着弾し、爆ぜる。二人のウルトラマンは怖れず勢いをそのままに自身に迫る弾丸を手刀で弾き飛ばす。弾き飛ばされた光弾は弧を描いて地面に着弾。爆発を起こす。
「テヤァッ!」
先に改造ベムスターに到達したタイガが飛び蹴りを食らわせ、後からメビウスが飛びかかる。そしてタイガも飛びつき、二人に掴みかかれた改造ベムスターは身体を振り回して抵抗する。
ギィィッ!!
凄まじいパワーだ。二人は振り払われてしまった。
「ハッ!」
「タアァッ!」
が、すぐに蹴りを放って、改造ベムスターの胸辺りを蹴り飛ばす二人。距離が離れると、メビウスはメビウスブレスに右手を翳し、メビュームスラッシュを顔面に浴びせた。
それに続けてタイガは左腕を縦に、右腕を横に添えて十字を組み、改造ベムスターに向ける。
「スワロー、バレットッ!!」
左腕から連射されるカッター状の光弾ーーースワローバレットが顔面に直撃する。
ベムスターの腹部、『吸引アトラクタースパウト』は周囲の力場形成器官で空間を曲げて、あらゆるものを吸い込みエネルギーとしてしまう器官。ここに光線を撃てば吸収されてしまう恐れがある故の顔面狙い。しかし、これが怪獣を激昂させてしまった。
改造ベムスターは腹部から勢いよく白色のガスを噴射し、振り撒きだした。その風力はウルトラマンがその場に留まることも困難にさせる程だった。
「うおっ!?」
思わず怯んでしまうメビウス。タイガは耐えきれずに吹き飛ばされてしまっていた。
その隙を逃さず、改造ベムスターは腹部を光らせてメビウスに青白い光線を浴びせた。モロに浴びてしまったメビウスの身体は宙を浮き、岩山の岩壁に叩きつけられた。
改造ベムスターは続けて吹き飛ばしたタイガに顔を向けて両眼の弾丸を浴びせようとする。
「そうはいくか!」
それを読んだタイガは両足で大地を蹴り、高く飛び上がった!発射された弾丸の射線上にはタイガはおらず、地面を吹き飛ばすだけで終わった。
空中で身体を錐揉み回転させ、まるで燕が空を舞うように宙返りを繰り返す。
「テヤアアアアァァァ!!!」
そしていつの間にか改造ベムスターの背後に回り込み、その背中に強烈な蹴りを見舞う。発生する小さな爆発がその威力を物語っていた。
「くっ…!」
岩壁に叩きつけられ、地面に伏せる形になっていたメビウス。立ち上がりながら状況を確認すると、タイガが改造ベムスターの左肩を掴み空いた左の拳で胸にズドン、ズドンと何度も叩きつけていた。タイガの方が優勢ではあるが、先程のようにまた力任せに振り解かれて反撃される可能性もある。決着をつけるなら今だ!
「タイガ!そのまま抑えていてくれ!」
メビウスが呼びかけると、タイガは顔だけをメビウスの方に向け、頷いた。
タイガの了承を確認すると、メビウスはメビウスブレスの球形のクリスタルを右手で擦り、左の拳に力を込めてクリスタルから放射された橙色のエネルギーを集中させる。
「ハアァァァァァァ…!!!」
エネルギーの収束に気合を込めると左腕が眩い光に包まれ、やがて漏れ出してメビウスの輪のような光芒と共にスパークを起こす。
エネルギーが充分に溜まったことを確認したメビウスはダッと駆け出した。改造ベムスターに爪の一撃を食らい、お返しとばかりに膝をぶつけていたタイガはメビウスの接近を感じ取り、すぐに離れて後ろへと下がる。
「セヤアァァァァァァァッ!!!」
メビウスはエネルギーの溜まった左の拳で正拳突きし、改造ベムスターの身体に直撃させた!
スドォン!!
ギィィ…キィ…!!??
ライトニングカウンター・ゼロ!
強烈な一撃が改造ベムスターの身体を貫き、背中からエネルギーの激しい奔流が鮮血のように噴き出す。やがて怪獣の体は急激に流し込まれてくるエネルギーの熱量に耐えきれず、全身を内部から突き破って大爆発を起こした。
「メビウス…!」
改造ベムスターの爆発に巻き込まれるメビウスにタイガが心配の声を上げる。爆発が止み、炎が消え、黒い煙も晴れていくと…。
正拳突きの格好のまま大地に立つメビウスの姿が現れた。エネルギーの消耗もあってか、胸のクリスタル、カラータイマーが赤色の光を点滅させ、警告音を響かせていた。だが、当のメビウスはそんなことを気に留めることなく正拳突きの格好を崩した。
「やりましたね、大丈夫ですか?メビウス。」
「ああ…何とかね。アシストありがとう、タイガ。」
「は〜、良かったぁ…。」
本当に無事である様子を見て、安堵の声が漏れるタイガ。
「…そういえば、ヤプールは何の介入もしてきませんでしたね?何かとしゃしゃり出てくるような印象があるけど…。」
「そうだね。ベムスターに何かしらの援軍を送ってくるか、妨害をしてくると思ってた…。変だ、ヤプールにしてはあっさり過ぎる…。」
ウルトラ戦士に並々ならぬ怨恨を抱き、しつこい程に戦いを挑んでくる異次元人ヤプール。異次元空間を利用した妨害、ヤプールの手先である超獣の参戦、過去にヤプールが行なってきた執念深く、卑劣な戦略も今回は無かった。しかし、そのヤプールらしからぬ行動がメビウスとタイガの疑念をむしろ高めていく。
「嫌な予感がします…。なんか、この闘い自体が悪い事の始まりみたいで…。」
「警戒を怠らないようにする必要があるね…。とにかく、この事を報告に光の国に戻ろう。」
「はい!」
二人のウルトラマンは飛び立ち、惑星レミオを去った。
改造ベムスターの撃退により平和を取り戻した惑星レミオ。その岩陰からレミオを離れるウルトラマンの姿を見届ける一人の異星人がいた。
「おいおいおい…やっぱり強くなってるじゃぁないか…。」
異星人は愚痴りながら、空になった掌大の
「邪将が遺してったもんっていうからそこそこ耐えてくれると思ってたんによぉ…。戻し損ねちまったじゃねぇか…。ま、囮は果たしてくれたからいっか。」
そう言って、異星人は去ったーーー。