ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
慈愛の勇者、ウルトラマンコスモスが護る宇宙、コスモスペース。
その宇宙には千年間に一度だけ太陽系を通過するという緑の惑星があった。
その名は惑星ジュラン。
かつて空は茶色がかり、岩盤の多い殺風景な風景が広がる中で、守護神パラスタンが聖光として惑星を見守っていた。しかし、突如宇宙の秩序を乱す存在が送り込んだ刺客により抵抗も虚しくパラスタンは死亡、惑星全体が砂漠と化し、星は死んでしまった。
しかし、コスモスと共に歩んできた地球人の青年、春野ムサシがパラスタンとの交流を経てその意志を受け継ぎ、子どもの頃から夢見ていた怪獣保護の概念を併せた復興計画『ネオユートピア計画』として、紆余曲折はあったものの環境調整ト地球にて保護されていた怪獣達の移住を実行。見事、数多の生物が共生する緑豊かな惑星として再生に成功した。
ムサシも自分がかつて所属していたTEAM EYESのモリモト・アヤノ隊員と結ばれ、一子を設けてジュランで幸せに暮らしていた…。
だが、その幸せは今や侵略者の襲撃により崩されかけていた。
惑星外から飛来し、青空を陣取る巨大な円盤。円盤は怪獣の居住区の上空に留まると、カブトガニのような形状の二本爪が特徴の小型戦闘機とドローンに似た四つ羽根の捕獲用戦闘機を大量に射出する。
戦闘機の機関銃から乱射される紅い銃弾が怪獣達を傷つけて悲鳴を誘い、捕獲用戦闘機の羽根から展開されるレーザーの檻が怪獣の自由を奪い、檻ごと母艦である巨大円盤に輸送していく。南国のように呑気な景色が炎に包まれ、理不尽極まりない暴力に染められていた。
地底怪獣 テールダスの子どもがピー、ピーと怯える声をあげる。身を挺して子どもを守る父親の個体が銃弾を受けて倒れ込み、すぐさま捕獲用宇宙船が接近して檻に捕らえられて連れ去っていく。残された母親が夫の代わりに子どもの盾となるため戦闘機の群れの前に立つ。
ズガガガガガッッッ!!!
五機の戦闘機が母子を取り囲み、標的に向けて機関銃の火を吹かせる。
母親は子どもに覆い被さり、全ての銃弾をその身に受けた。
ギシャアアァァァーーー…。
重症を負った母親は、それでも子どもから離れない。
だが戦闘機群は今度は子どもを銃撃するため、まるで子を命を懸けて護る母親の姿を嘲笑うかのように、隙間から銃撃が出来るように角度を修正する。
そして――。
戦闘機は、テールダスとは別の方向から放たれた火炎の塊を受けて墜落した。
爆炎をあげて墜ちていく機体を尻目に、他の機体が火炎弾が発射された方向に向いていく。と、向いている途中で一発の火炎弾がまた一機を撃墜。残された三機は回避行動を優先する。
ズン、ズン、と火炎弾を口から放射しながら進行し、戦闘機を撃墜していく怪獣――古代暴獣 ゴルメデはテールダス母子の無事を確認し、歩みを進めていく。
電撃怪獣 ボルギルスの群れが隕石小珍獣 ミーニンの群れを囲み、その強固たる外装で盾になりながら火球を吐いて応戦し、友好巨鳥 リドリアスの群れは統率の取れた編隊飛行で戦闘機群を撹乱し、その巨体を衝突させる。
怪獣達は侵略者に対し、同じ星に棲む『家族』として種族の垣根を超えた共闘を繰り広げていた。
そしてその戦火の中では、
「デェヤァァッッッ!!!」
太陽の燃ゆる炎のごとき、戦いの赤き巨人の姿もあった。
ウルトラマンコスモス コロナモード。
緊急事態にムサシと一体化して、変身したのだ。
慈愛の勇者として名を馳せていた彼もこの事態を前にしては邪悪な者を倒すための形態へと姿を変えていた。
「敵の数が多いようだな、コスモス…。」
そしてもう一人、紅い巨人と並ぶのは、まるで天使の羽根のような翼を拡げ、女神を彷彿とさせるシルエットの金色の巨人。
「すまない、カオスヘッダー…!君も巻き込んでしまった…。」
「構わない。この星を護るためだ、私も力を貸そう…。」
かつて怒りと憎しみの化身としてコスモスと対峙し、ムサシと怪獣達によって理解り合うことと心を通わせることを知り、優しさと慈しさを得て生まれ変わったカオスヘッダー0。彼もパキスタンに代わる惑星ジュランの守護神として戦闘機群から怪獣を護っていた。
しかし、敵の数は二人の想像以上に多かった。次々と援軍が送られてくる戦闘機群にはコスモスとカオスヘッダーも苦戦していた。
「コスモス、君は元凶を叩け。ここは私が引き受ける。」
「…!分かった!」
コスモスは怪獣の護衛をカオスヘッダー0に任せ、この襲撃の元凶たる異星人の元へと向かった。
紅い巨人と対峙する元凶は、薄紫の体色にコオロギのような頭部、甲冑のような胴体に胸から腹にかけて逆三角形に配置された三つの発光体が特徴の異星人だった。
「どうしてこんなことをするんだ!」
ムサシが叫ぶ。
「決まっているだろう!この星に住む怪獣達を売り飛ばして、生物兵器や愛玩動物の原料にしてもらうのだ!」
異星人が高々に告げた目的は、あまりにも身勝手で、残忍で、理不尽なものだった。
―― 残酷宇宙人 アビウ星人 ――
「そんなこと、させるか!」
コスモスは怒りを体現するように力強く構え、アビウ星人へと向かっていく。
「小癪なぁ!」
アビウ星人も右手の濃紫の長剣を振り上げてコスモスへと向かっていく。
振り下ろされる長剣の一閃を躱すと、コスモスは脚を振り上げて星人の首元をズドン、と蹴り込む。
対抗して星人は刃を横一文字に浴びせようとするが、しゃがんでそれを避けたコスモスは右腕を思い切り引き、そして渾身の一撃を放つ。直撃――はするが、星人の甲冑のような装甲が衝撃を吸収し、大きな痛手とはならない。
「でやぁっ!!」
剣技と拳のぶつかり合いが続き、アビウ星人のふり払いがコスモスの胸元を斬りつける。
「グワアッ!?」
――好機!
ダメージを受けたコスモスの背後から近寄り、両腕で長剣を天に掲げ、背中を斬りつけようと振り下ろした。
が、コスモスは両腕を左右に大きく広げると、赤と白の光に包まれながら飛び上がりその場から姿を消した。
剣撃は空振り、長剣の刃が地面に叩きつけられる。消えたコスモスに狼狽えて周囲を見回していると、ドンっと背中に強い衝撃が走った。
高速移動で星人の背後に回っていたコスモスが今度は両腕を後ろに引き、勢いよく前に突き出して
その拳を背中に叩きつけていたからであった。
「ぐおおっ!?」
吹き飛ばされて派手に倒れるアビウ星人。追撃を掛けるためにコスモスが迫ると、身体中に衝撃が走った。
「ジェアッ!?」
それは戦闘機の機関銃。
コスモスの周囲を旋回する戦闘機群の空襲がコスモスの行く手を阻む。コスモスは右腕を振り上げると、戦闘機に向けて突きだす。拳から楔型の破壊光弾――シャイニングフィストが連射され、戦闘機を撃ち落としていく。
「馬鹿めがぁぁ!!!」
そう吐き捨てるとアビウ星人はコスモスに向けて両眼を紫に光らせ、強烈な電撃を放った。
「シュワァッ!!!」
コスモスは右肘を突きだすポーズを取ると、再び光に包まれて高速移動し、電撃光線を回避する。
電撃が大地を灼き、爆ぜて地表を吹き飛ばす。
一方のカオスヘッダー0は空中戦を展開していた。空間の歪みのような透明なバリアを張って機関銃の弾丸を防ぎながら、戦闘機に念力を加えて軌道を狂わせて機体同士で衝突させ、不可視の念動力の塊と両腕からの金色の光弾で撃墜を繰り返して怪獣達の避難を援助していた。
「ふぅっ!!」
全身に力を込め、一気に発散する。周囲に金色のオーラが広がり、接触した戦闘機が次々と爆散して生じた炎が空を照らす。
撃墜を免れた数十機の戦闘機は二本の爪を展開して内部から青色のクリスタルを露出させた。
フオオオォォォォーーーーン…。
クリスタルは青の輝きを増幅させていく。
「!」
カオスヘッダー0が攻撃を察知すると同時に周囲の空間が歪む。全方位からの射撃に備えてバリアを展開したのだ。カオスヘッダー0を取り囲む戦闘機達が光のチャージを終えて、一斉にカオスヘッダー0に向け青白い熱戦を照射した。光線はバリアに接触すると同時に壁面で分解されてその威力を失っていく。これで全ての攻撃を受け止めたかに思えた。
「ぬうぅっ!?」
不意にバリアに一つの
「カオスヘッダー!?」
その光景を見たコスモスが驚愕の声をあげる。一方のアビウ星人は大きく笑い声をあげていた。
「フハハハハ!!効いているようだなぁ!!」
「カオスヘッダーに何を!!」
激昂するムサシの声に、アビウ星人は得意げに語る。
「そのカオスヘッダーとやらにに効くものだったら、お前も知っているだろう?
「なんだって…!?」
月面に存在している青く輝く鉱石、ソアッグ鉱石。カオスヘッダーの弱点の一つであり、地球で敵対していた頃は対カオス兵器として転用していた代物である。
「あれは月でしか採れないと思っていたか?残念だったな!宇宙を探せば採れる場所もあるのだ!それも月の物より純度の高いものをなぁ!」
アビウ星人の両眼が再び紫に輝き、電撃光線が放たれる。
「ジェアァッ!!」
ソアッグ鉱石の存在に動揺していたコスモスは回避が間に合わず、直撃を許してしまった。電撃がコスモスの紅い身体を焼き、バジュンッと爆発があがる。二回、三回。連続で胸部と腹部を焼かれたコスモスの膝が地面につく。
「まあ、俺はこの時のためにヴィラン・ギルドのオークションで競り落としたんだがな!!高い金を払った甲斐があった!!」
右手に力を込め、紫の光が溜まっていく。ある程度まで溜まると禍々しい光は長剣へと移っていく。
「ハアアァァッ!!!」
袈裟懸けに振り下ろされた刃全体から放たれる三日月の斬撃が、まだ体勢を直せていないコスモスに迫る。
ズバァッッ!!とコスモスの身体を切り裂く斬撃。コスモスは絶叫しながら後ろへと吹き飛び、バタバタと手足をばたつかせながらも敵わず、地面に背中から叩きつけられた。
同時刻、M78ワールドでも襲撃を受けている惑星があった。
惑星コリンボ。
空は黒煙のような雲で覆われ、大地は常に怒りを表しているかのように燃え上がる赤に染まっている岩の惑星。
その地下には膨大なエネルギーを含有したゲーキンド鉱石が大量に埋まっており、一説によればその鉱石に外部からのエネルギーを照射すると受けたエネルギーを増幅、放出する性質を持っているという。しかし、照射するエネルギーが一定値を超えれば増幅させた熱量で自壊、大爆発を引き起こす危険性もあるというセンシティブな性質も併せ持っていた。そんな危険物が点在する星に命知らずな者がいた。
巨大な鉤爪のような両腕、蝶の羽根のように胸に広がる四つの発光体、三つの発光体を順に明滅させる巨大な顔面。
ヴヅヅヅヅヅヅと蝿の羽音とも不安定な電子音ともとれる不快感を抱かせる声を響かせながら、その異星人はコリンボで佇んでいた。
―― 巨大異星人 ゴドレイ星人ガンカノ ――
ガンカノは一人、自身が小さく見える程に巨大なクレバスを眺めていた。
その奥底では血のように赤く輝いており、地下から地上に向けて照らし出していた。ゲーキンド鉱石だ。血煙のように放出されるエネルギーの余波が肌を撫で、その感触は本能的な恐ろしさを身に沁みさせてくるという。
しかし、ガンカノはまるで恐怖など感じていないかのように鉱石を見つめると、顔を覆うように両腕をクロスさせ、エネルギーを集中させた。どす黒い闇と形容されるような黒いオーラが瞬く間に両腕を包み、禍々しく燃え上がる。まるで、エンペラ星人の周囲で燃えていた暗黒の炎のように…。
そのまま前に押し出すようにガンカノは両腕をクレバスの下の鉱石に向けて突き出した。両腕を包んでいたオーラが光線として放たれる。光線は鉱石に到達。血の色に染まっていたゲーキンド鉱石の光が一瞬紫に変色し、輝きを増す。美しさとは違う、危険性を帯びた光はクレバスから解き放たれ、大地も、厚い雲をも照らす。増幅されたエネルギーが地を揺らす。岩山が崩壊し、崖崩れが起き、小規模の地割れが幾つも発生する。
だがガンカノは動じない。自身が放ったエネルギーが鉱石によって増幅、放出され、惑星に影響が及んでいる様子を目の当たりにしても他人事のように平然としている。
やがて、エネルギーの放出が落ち着き始めたのか地震も鉱石の輝きも治まっていく。
終始を見届けたガンカノ。役割の遂行をほくそ笑むかのようにヴヅヅヅヅヅと声を漏らす。と、背後から何かが迫ってくることに気がついた。振り返る、と同時に赤い光の球が雲を突き抜け、コリンボの大地へと衝突した。ズドンと衝撃が走り、土煙が舞う。ガンカノは知っていた。今の光球は隕石ではない。光の巨人が宇宙を高速で移動するための形態であることを。
果たして、土煙の中で巨人のシルエットが悠然と立ち上がる。胸に不死鳥のようなモールドを施し、その中央には青く輝くクリスタル、パワータイマー。左腕に装着されているのは黄金のブレスレット、マックススパーク。
最強!最速!
ウルトラマンマックスが、そこに立っていた。
――②へと続く。
戦闘シーンを文字で表現するのって難しいねぇ…。