ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
ゴドレイ星人ガンカノは『使命』を果たした。ブライクからの指令により託されたエネルギーの塊をゲーキンド鉱石にぶつけて増幅、そして宇宙に向けて放出させることに成功した。後は鉱石の暴走、及び宇宙警備隊の追跡から逃れるために退却するだけだが…。
文明監視官に捕捉はされてしまったが、まあこれも
マックスもガンカノの不穏な動きと交戦経験のあるゴドレイ星人に遭遇したことで警戒心を抱きながら問う。
「ゴドレイ星人、ここで何をしている!この星の地下にある鉱石は危険物であることを承知しているのか!?」
ガンカノは答えない。マックスの言葉を無視して両腕に黒紫色のオーラを纏わせ、地面に向けて撃つ。撃たれたオーラは二本の黒紫色の火柱へと変わった。
鉱石の危険性を把握した上での行動――そう判断したマックスはガンカノが発生させた火柱に警戒して構える。これは威嚇行為か?それとも攻撃手段の一種か?
否、それは
火柱は瞬間の内に消え去り、中から一本ずつ一体の影が姿を見せた。
一体は本来の顔の他に両腕に凶悪な顔面が備わっており、胸部には見るからに頑強そうな装甲板、注射針のような形状の尻尾と全身兵器と呼ぶに相応しい風貌。
もう一体は猫背気味な背中と肘、尻尾には鋭い刃が生え揃え、表情からは狂犬のような獰猛さを顕にしている。
―― 凶獣 ルガノーガー ――
―― 最凶獣 ヘルベロス ――
『凶獣』の名を冠する二体の怪獣。
地球にてルガノーガーと、惑星ミカリトでヘルベロスと交戦経験のあるマックス。二体が強敵であることは重々承知であった。
だが、恐れをなして退くという選択肢はない。マックスは三体の強敵に向けて走り出した。
「シュワァッ!!」
先手を取ろうとしたのはヘルベロス。右肘の刃に赤黒い光を纏わせて斬りつけようとするが、それをマックスが飛び蹴りで阻止した。続けてルガノーガー。両腕の振り下ろしで着地したマックスを狙うも、いなされて逆に右の脇腹にミドルキックを入れられ、間髪入れずに胸の装甲板に拳の乱打を叩き込まれる。強固な装甲板によって大したダメージは無いが、拳の衝撃は凄まじく、ルガノーガーはズンズンと後退していく。
今度はヘルベロスがマックスの背後から突進を仕掛けた。しかしマックスは突進を回避し、側を陣取って右脇でヘルベロスの頭を抱えた。
ヘッドロックの体勢。暴れるヘルベロスを抑えながら、左の拳をガンガンとヘルベロスの頭部に叩きつけていく。ヘルベロスはマックスを振り解こうと必死になるが、マックスも離すまいと攻撃の手を緩めない。ルガノーガーはヘルベロスを援護するためにマックスの背後に近づいた。
だが、この状態でもマックスは周囲の警戒を怠ってはいなかった。ヘッドロックを崩さずに、左脚でルガノーガーの腹部を蹴り飛ばす。ルガノーガーの接近は迎撃できた。が、直後に背中に強烈な一撃を叩きつけられ、マックスは前方に吹っ飛んだ。
ヴヅヅヅヅヅヅヅ…。
ガンカノが右手の巨爪をマックスに叩きつけたのだ。嘲笑するかのように不快な声をあげて倒れたマックスを見下ろす。
「ジェア…。」
立ち上がるマックス。再び構えるが、ヘルベロスとルガノーガーが左右に分かれて動く姿を目にし、そして勘づく。
二体はまるで、ガンカノの攻撃の妨げにならないように動いて――!
次にマックスが取ったのは回避行動だった。そして予想どおり、ガンカノは胸部の発光体に紫の光を集め、エネルギーをチャージしていた。
チャージが完了。放たれる数条の光線!!
ドムドムッと乱射される強力な光線がマックスの周囲に着弾する。地を灼き、吹き飛ばし、爆炎が上がる。マックスは直撃さえ許さないものの、爆発の衝撃に吹き飛ばされそうになる。
「ジェアァァッ…!!」
何とか踏みとどまるも、今度は胸元をエネルギーの刃が切り裂いた。ヘルベロスだ。
ダメージを受けたマックスに今度はルガノーガーが迫る。長い尻尾を頭上まで振り上げて尾の先に備わる凶悪な先端で刺すために突いた。
「シュワッ!」
マックスは顔面にまで迫った先端をすんでのところで両手で掴み、止める。しかし、これで両手が塞がってしまった。ヘルベロスとガンカノがこの隙を逃すはずがない。
ヘルベロスは二本の角から電撃『ヘルホーンサンダー』を放ち、マックスの背中に浴びせる。ルガノーガーも尾で抑えながら空いた両腕をマックスの脇に叩きつける。無防備な部分を攻撃され、流石のマックスも堪らず膝をつく。その脇腹を今度はガンカノが蹴り飛ばす。ルガノーガーの尾からは逃れられたが、三体の猛攻は終わらない。
ルガノーガーは口から青い熱線を、ガンカノは紫の光線を乱射し、マックスを滅多打ちにする。一日の内に天体ひとつを壊滅させることなど朝飯前なルガノーガーと連射性に優れている上に威力も高い光線の乱射が可能なゴドレイ星人。
その二体が発射する光線がゲーキンド鉱石を刺激したら惑星コリンボは…!そう考えたら、マックスはあえて自分の身で防ぐしか無かった。回避という選択はなるべく避けたい。前方に円形のマックスシールドを張り、光線を受け止めて反撃のチャンスを待つ。
シールドに連鎖して伝わる光線の凄まじい衝撃。その場に踏み止まるのも精いっぱいであったが、そこに右方向からの電撃が襲いかかる。ヘルベロスがマックスの側面に回って『ヘルホーンサンダー』を放ったのだ。
無防備な部分への攻撃を受けたマックスは張っていたシールドは霧散させてしまった。だが、何故かルガノーガーとガンカノは光線の連射を止めていた。その意図に気づいたマックスがハッと顔をあげると、ルガノーガーの頭と両手の3つの顔、その開いた口が青白く眩い光を集束させているのを見た。
ギィィアァァァォォォォンキィィィィィィ…!
ルガノーガーの超凶悪な咆哮と共に3つの口から吐き出される超弩級の熱線!!
マックスはその直撃を許してしまった!
「ジェアアアアアアア!!!」
前面にズドォォンと起こる大爆発。そして吹き飛び、更に吹き飛び、マックスの背中が岩盤に叩きつけられた。
「ガアァァァァァァ…!!」
痛々しく仰け反るマックス。
ダメ押しとばかりにヘルベロスが背中を丸め、背中に生えたトゲ『ヘルスパイク』から紫の矢のような光弾をドシュドシュと打ち上げ、弧を描いて雨のように降らせる。
これこそが、『ヘルエッジサンダー』!
マックスを蜂の巣にしようと迫る光弾の雨。ダメージの残るマックスはすぐに立ち上がれないが、その代わりとして右掌を頭頂部に添えた。頭部の角飾りのような刃に青色の光が走る。
そして前方に向かって手裏剣を投げるように差し出すと、刃が射出されてその全体像を顕にした。
マクシウムソード。マックスの頭部に装備されている宇宙ブーメランである。マクシウムソードはヒュンヒュンと高速に回転しながら光弾の雨へと飛び込んでいく。すぐに到達――すると、方向転換をして一番手前の光弾を側面から切り飛ばした。
マックスの脳波によってコントロールされる銀の刃が主人を護るために次々と光弾を切り裂いて爆散させていく。やがて、光弾の雨が一掃されて今度はヘルベロスへと向かっていった。
キュルルルルルルルゥゥゥゥーーーーー!!
ヘルベロスは両肘の刃を肘鉄の要領で振るい、マクシウムソードを弾き返そうとするが、マクシウムソードはその斬撃をものともせずに潜り抜けてヘルベロスの肉体部分へと到達する。脇、背中、首筋、顔をすり抜ける刃に空気を裂く鋭い音と共に全身を斬りつけられていき、やがてヘルベロスは叫びと共に倒れた。ヘルベロスを撃退したマクシウムソードは次の獲物へと向かっていく。
ガンカノは両腕を顔の前でクロスさせ、ルガノーガーは主人の盾となるべく前に出る。二体に迫るマクシウムソード。すると刃が青く輝き、二つ、三つと同じ型の刃を虚空に生み出していく。一瞬で十数本の分身の大群を作り出して囲い込み、マクシウムソード分身シュートとしてガンカノ達の防御態勢に対抗しようとする。
宙を自由自在に舞うことのできる銀の刃が四方八方から襲いかかる、見るものによっては身の毛のよだつ光景!だが、ヘルベロスよりも遥かに強固な皮膚を持つルガノーガーには通用しなかった。刃が接触しても甲高い金属音が響いて皮膚まで通らず、ガンカノも巨大な爪を活かして刃を弾き飛ばす。まるで羽虫を追い払うかのようにマクシウムソードを無力化していく二体。一つは岩盤に激突し、一つは幻となって消え…。
マクシウムソードの分身が次々と撃墜されていく中、マックスはダッと地を両足で蹴り、高く飛び上がる。マックスの身体がルガノーガーの頭上を飛び越えようとしたとき、マックスは右脚を突き出して飛び蹴りの体勢を取った。
「ジュワァッッッ!!!」
落下の勢いを利用した鋭い蹴りがガンカノが顔の前にクロスさせている両腕に刺さった。
ズドォン!という激しい音と共にガンカノの身体が後ろに吹っ飛ぶ。
着地したマックスは意表を突かれて対応が遅れているルガノーガーに向き、駆け出して接近する。
そのままの勢いでルガノーガーの巨体に掴みかかり、左の手刀でルガノーガーの肩を何度も打ち、右の正拳突きを食らわせる。
ギィィアァァァアァォォォンキィィィィィィ!!
ルガノーガーの両腕の大半以上を占める巨大な顔面が凶悪な表情を顕にする。目の前の獲物を仕留めるべく、マックスを捕食するかのように鋭く突いて反撃に出る。よろめくマックス。すると、今度は右のフックがマックスの顔面を打つ。そして両腕のクロスチョップが首筋を直撃し、左の張り手が再びマックスの顔面を打つ。強烈な打撃で視界が明滅し、倒れそうになるマックス。ルガノーガーもすかさず左腕の振り下ろしを後頭部に食らわせようとする。
しかし、マックスはなんとか立ち直す。迫る巨腕を両手で受け止め、ガラ空きになった腹部に前蹴りを食らわせた。ルガノーガーの巨体を後退させるのは困難だが、マックス自身は蹴りで生じた力を利用することで後ろへ飛び、距離が取れた。
だがルガノーガーの猛攻はまだ続く。両肩の突起部が赤く発光し、見るからに刺々しい電撃を纏いだす。マックスはその様子を見てすぐさま回避行動へと移る。
ギィィアァァァァァォォォンキィィィィィィ!!
ルガノーガーの両肩から広範囲に放たれる電撃の嵐!!不規則に吹き荒れる紅い電撃が弧を描き、地を走り、マックスへと襲いかかる。回避困難な攻撃、背後にはガンカノ。この状況にマックスは――
「シェアッ!」
全身を虹色の光を纏い、その場から消えた。
残像を残して、先まで立っていた所を電撃が薙いでいく。
コメットダッシュ!
超光速で移動するこの能力でマックスはルガノーガーの電撃を凌ぐ。目にも止まらぬ速さでルガノーガーの背後へと回ったマックスは、高く飛び上がって首筋を蹴りつけた。
マックスを見失って動揺していたルガノーガーはスピンキックをモロに食らってしまった。
キュルルルルルルルゥゥゥゥーーーーー!!
背後から聴こえるのはヘルベロスの咆哮。マックスは振り向きながら、左手を胸の前に翳す。すると、左手首に装着されたマックススパークのクリスタル部分が光り輝き、同時にマックスは左腕を頭上に掲げた。輝き続けるクリスタルに光が集まり始める。光が集まる度にクリスタルの輝きも増していく。
ヴヅヅヅヅヅヅヅ…。
マックスがこれから何を行うのか察したガンカノ。しかし、光線を放って妨害する動きは見せず、代わりとして顔面を縦に3つ並んだ緑に明滅するクリスタルの中心をルビーのように紅く輝かせた。
マックススパークの輝きが最高潮に達し、収束した光が鳥のようなオーラを形作っていく。
「デェェヤァァァァ!!!」
エネルギーのチャージを完了したマックスは右腕を縦一文字、左腕を横一文字に添え、逆L字になるように両腕を組む。マックスの必殺光線、マクシウムカノンだ!!
だがこの瞬間、マックスに異変が生じた。
腕を組む直前、胸の中から何かが込み上がってくるのを感じた。突如湧き上がる感情。強制的に込み上げさせられる感覚に気味悪さを感じ、
「!!!……ジェアアアアアアア!!!」
それでもマックスは気合で乗り切る。組んだ腕から虹色の光線をヘルベロスに向けて放った!
「!?」
しかし、マクシウムカノンはヘルベロスには届かなかった。いや、ヘルベロスのいる場所とは別の方向に向けて発射していた。
自分で放った光線が宙を切る様を見て困惑するマックス。その隙を狙って、ガンカノが両腕を広げて再び胸から光線を乱射した。
光線がマックスの背中に直撃し、そこにヘルベロスが畳みかける。よろけるマックスに蹴りを食らわせ、更に頭部の刃で切り裂こうと頭突きを繰り出してきた。
マックスは刃の根本を両手で掴み、ヘルベロスの頭突きを阻止する。だがヘルベロスは無理矢理刃を押し付けんと脚力に任せて前傾姿勢でマックスを押していく。必死で抑え込むマックス。
ヴヅヅヅヅヅヅヅ…。
卑劣にも、ガンカノはその背後を狙い続ける。光線を連射し、ズドンズドンとマックスの背中を痛めつけてヘルベロスを援護する。
「ジェアァァァァ…!」
背中に受けるダメージに耐えながら、同時に背後から強い光を照らされていることに気づく。段々と強さを増していく光。それが何の光であるか理解したマックスはハッと顔だけ後ろに向ける。
その想定は的中していた。
ルガノーガーの頭と両手の3つの口が青白く眩い光を集束させている。あの強力な熱線を発射する前触れだ。
流石のマックスでもまたあの熱線の直撃を受ければ一溜まりもない。マックスは回避を優先した。
未だ前傾姿勢で相撲のように押してくるヘルベロスの顎を思い切り膝で蹴り上げる。ヘルベロスの身体が派手に仰け反り、両手をバタバタさせながら後退していく。ヘルベロスとの膠着状態を解消させたマックスは、すぐさま上へと飛んだ。
ルガノーガーが超弩級の熱線を発射したのはそれと同時であった。
熱線は既にその場にいないマックスには当然当てることは叶わず、代わりに射線上に残っていたヘルベロスに直撃した。
キュルル!!??キュルルルルルルルゥゥゥゥーーーーー!!
キュルルルゥゥゥゥゥーーーーー!!!
膨大な熱量がヘルベロスを包む。全身を灼かれる最凶獣の泣き叫ぶ声、自慢の刃がドロドロに溶け、体液は蒸発し、肉は赤熱化してまるで肉でできた風船のように膨れ上がり、そしてひび割れ、最後には破裂する。
ヘルベロスがいた場所から地を揺るがす程の大爆発が起こった。ヘルベロスであった肉片は炭と化してバラバラと散乱し、肉と血の焦げた匂いが辺りを漂いだす。
ルガノーガーの熱線を回避したマックス。その胸に備わっているクリスタルは、青色の輝きから赤色の点滅へと変わっていた。パワータイマーが体内エネルギーの著しい消耗を示しているのだ。ピコン、ピコンと警告音を鳴らしてマックス本人に知らせる。
警告音を聞いたマックスは、右手を掲げて、掌から宙に向けて虹色の波動を放った。
それに応えるように、コリンボの空を覆う厚い雲を突き抜けて一つの光が大地へと降臨した。その光は翼を広げ、まるで地球の神話で言い伝えられている不死鳥や鳳凰のような火の鳥が空を舞うようにコリンボの空を飛ぶ。
光はマックスの下へ降り、掲げた右の手首へと装着される。光は広げた翼を閉じ、剣の先端のように鋭い黄金の刃へと姿を変えた。
マックスギャラクシーと呼ばれるそのアイテムを装備し、マックスは決着へと動き出す――。
――②へと続く。