ウルトラスクランブルファイト 〜インペリアル・ソウル〜 作:Toran toran
俺達が皇帝の下に付いたのは、単に皇帝を崇拝していたからだけでは無かった。
俺達はそれぞれの故郷で
俺は後者だ。自分達の持つ科学力に心酔し相手に敬意を払う事を忘れてただ貶すことしか考えのない
生身では脆弱な種族である俺は星の外では命の危機に瀕しやすかった。だからパワードスーツを始めとした兵器類で外敵から身を守り続けてきたが、まあ長くは保たなかったもんだ。あの時は俺も若かった。ガキの家出とは違うものだ。ちょっぴり後悔したよ。
そんな中、俺は何処かの星で一人のカタン星人と出会った。その星の宙域で怪獣に襲われていたところを助けてもらったんだ。
「命知らずなバカがいたもんだぜ、この付近をそんな軽装でウロウロするなんてよぉ。」
「恩に着るよ…。どうにも自分の星に戻りたくなくてな…。」
「フン、まあいいや、いいか?俺はひ弱なテメェをわ・ざ・わ・ざ助けてやったんだ。見返りはわかってんだろーーーな〜〜〜〜??」
カタン星人はそう言って顔を近づけてきた。
対して俺は、不思議な事に嫌な気分にはならなかった。
「そうだな…命の恩人である君には何かしらの礼をしなければならない…。内容を俺が決める訳にもいかんな、君には希望を聞いておこう…。」
「有り金全部だ!出来ねぇとは言わねぇよな?」
「全部…。」
正直、困惑はした。そのくらいは言われるだろうとは思っていたが、本当に言うとはな…。
「払うんか?払わないんか?あ?」
「払う」
「え」
俺はこの時、もうここで最期を迎えてもいいと思っていた。このカタン星人に所持金を適当に渡して、適当に死んでしまえばいいなんて思っていた。
「おい、何即答してんだお前。もっと要求しちまうぞ。」
「足らないか?」
「いや、足りる足らないの次元じゃねーだろ。有り金全部っつっちまったんだから。」
「…?他にも欲しいものがあるのか?生憎、あまり良いものは持っていないが…。」
俺がそこまで言うと、カタン星人は心底呆れた表情を見せ、額に手を当てて仰け反った。
「あーーーー!!もういい!!もうなんっっっっもいらねぇぇぇぇ!!」
「…?何故だ、俺は別に構わんのだぞ?」
「嫌な顔もしないでそんな事を言う奴はテメーが初めてだ!手持ち無しじゃ余計に生き残れねーぞ!死んでもいいのかよテメー!?」
「…帰る場所も無いしな。恩人の君に最大限の敬意を払った上で死ねるならそれで本望だ。」
カタン星人ははぁ…?と言うと、そのまま後ろに寝そべった。
「んだよ、珍しいなお前…。お前の同族は偉そうな奴らばっかりなのによ。」
「そうだな、同感だ。故郷の星は偉そうな奴が多すぎてウンザリする…。俺もそれに嫌気が指して星を出た。」
「…何処の星にもいるんだな。」
カタン星人の言葉は意外なものだった。彼も俺と同じような境遇にいるとは思いもしなかったからだ。
種族ぐるみで殺し屋稼業を行っているとされているカタン星人だが、彼はその中でも実力が飛び抜けていた。しかし、本人の攻撃的な性格と周囲の嫉妬から居場所を失い、孤独になった末に自分からカタン星を捨てたのだという。
「なあ、君…。良ければ、俺と一緒に宇宙を旅しないか?」
何となく、俺はカタン星人にそう声を掛けた。
「あ?何でだよ?」
「俺は単体では戦えないから君の力が必要になる。俺は、自分の発明品で君をサポートする。どうだ?」
カタン星人は少し考えた。
「まぁーーー…。いいぜ。テメーと一緒にいるのも、何か悪くねぇ気がするしよ。」
「ありがとう…。君は…えと…。」
「ガクレだ。」
カタン星人ガクレはそれまで名前を知らなかった俺のために名乗ってくれた。
「ガクレか…。俺はブライクだ。よろしく頼む。」
「お、おう。…つくづく変わった奴だな、お前は。」
それが、俺とガクレの出会いだった。
ガクレとの旅は楽しかった。だが、しばらくしてもう何人か仲間が欲しいよな、と話し合った事があった。
その時に出会ったのがリフレクト星人のイルーだった。
イルーもリフレクト星人の中では中々の実力者だが、仲間だと思っていた奴らに嵌められて任務を失敗させられ、失望を買って星を追い出されたのだそうだ。
「雑魚そうなおチビに鳥頭ですか…。まあ、私の退屈を満たしてくれるなら同行しても構いませんよ?」
「喋るミラーボールが気取った口ぶりでなんか言ってやがらぁ…。」
「あ…?おい、アヒル。誰のことをミラーボールっつった?」
「メッキ剥がれるの早すぎだろ…。テメーの事だよ。トゲボール。」
「トゲボール言うなやぁぁぁぁぁぁ!!!???」
ガクレとイルーは初対面からいがみ合う関係だった。どうにもお互いキャラが合わないらしい。俺も毎回宥めるのは大変だったから途中から放おっておくようにしていた。
次にはゴドレイ星人ガンカノ。彼は多くを語らないために何故星を捨てたかは分からなかったが、俺達と一緒に行くと言葉が無くても仕草でわかった。
「なあ、ブライク。」
「どうした、ガクレ?」
ある時、ガクレは俺に尋ねた。
「俺達ってさ〜〜〜、何のために旅してるってことでいいの?」
「そうだな…あまり考えた事は無かった…。」
「せっかく3人とプラスアルファ集まったんだし、何か目標みたいなもん持っといた方がよくね?」
「ふむ…。」
ガクレがそうに言い出したことは意外だった。俺自身もそんなことは考える必要はないと考えていたからだ。
「こういうのはどうだ…?俺たちは故郷に捨てられた者達だ…。だが、心の中に抱く
「おぉ…おぉ、いいじゃねーか!!」
ガクレは感嘆の声を漏らしていた。後でイルーとガンカノにもこの話をしたが、二人も異論はなかった。
俺達の行動指針が決まった時だった。
そして
皇帝、エンペラ星人の配下となったのは四人が揃ってからしばらくだった。
宇宙を震撼させる暗黒の皇帝、その下に付いて武勲を挙げれば自分達のようなあぶれ者の集団でも重宝してくれるのではないかと、今思えば安易な考えだったな。ちなみに言い出しっぺはガクレだった。
「俺達は混成の私兵集団だということにする…。そうすれば散り散りになることもないだろう…。」
「いいじゃねぇか!んじゃ、リーダーはブライクでいいか?」
「俺が…?」
ガクレにそう言われて俺は驚いた。種族として見たら俺は4人の中でも脆弱過ぎるからだ。
「鳥頭は何を考えているのか分かりませんねぇ。ブライクよりも、私の方がカシラとして優れているではありませんか!!」
「…銀のくす玉。」
ガクレがボソッと呟いた。
「おんもしれぇぇぇ事言ったなああああぁぁぁ、ああああん!!??」
「ホラ、無理、無理だよ。こんな短気ヤロウにリーダーは無理だよ。」
ガクレは迫ってくるイルーを嫌そうに押し退けようとする。
「それによ、俺達のキッカケを作ったのもこの中で頭イイのもブライクだ。ま〜身体は弱っちぃかもしれねぇが、纏め役としては最高だと思うぜ?」
「ま…まあ…。確かに、ブライクならば任せても安心というのはありますねぇ…。私も負けてはいませんが…。」
冷静になったイルーはなおもブツブツ言っていたが、無口なガンカノは頷いて俺がリーダーになることを賛同してくれた。
「分かった…皆がそうに望んでくれるなら、俺が皆のリーダーとなろう…。」
しかし、現実は非情であった。
「貴様ら、カス共の働きなど、誰が期待するか!皇帝陛下の足手まといになるわ!、引っ込んでいろ!」
「星に捨てられ、虫けらがカシラを務める負け犬共の吹き溜まりがぁ!!皇帝の下にいられるだけ有り難く思え!!」
これが、暗黒四天王謀将デスレムと豪将グローザムとの初対面において双方より掛けられたお言葉だった。
俺達は『星に捨てられたあぶれ者の役立たず集団』として、誰からも期待されず、何の働きも与えてもらえなかった。暴れるだけしか能の無い怪獣軍団、捨て駒の宇宙人の雑兵達よりも俺達の立ち位置は低かった。軍団にとっては、ワザと俺達を生き残らせて蔑みの対象にして憂さ晴らしに利用したかったのだろうな。
それに、俺が一番気にしたのは実力者であるガクレ達を不遇にしたのは虫けら同然の俺の存在だった。この時は部下達に本当に申し訳なく感じた。
「ナメやがってぇぇぇーーー!!!」
いつもは慇懃無礼なイルーが口汚く叫び、そしてズンズンと俺に迫る。
「ブライク、気にするんじゃねぇぇぇぇ!!私達のリーダーは変わらずアンタだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ…そっ…!!ここまでコケにされるとは思わなったぜ!!」
それでも彼らは、俺を慕ってくれた。まだチャンスはある。俺も部下からの信頼を裏切ることのないよう勤めようとした。
あいつとの出会いもこの時だったな。
「コイツを貴様らの仲に入れてやろう!」
ある日、幹部の一人であったテンペラー星人が俺達の前に一人の異星人を乱暴に突き飛ばした。
ドサァッと俺達の足元に倒れ込む異星人に、ガクレとガンカノが慌てて駆け寄る。
「お、おい。大丈夫かよ!?」
「あ、痛つつ…。そんな乱暴にしなくても、俺は何も反抗しねぇっての〜…。」
銀と紫の身体をした軽薄そうな口調の男の両手首には、闇のエネルギーで構築された手錠がされていた。イルーがテンペラー星人に尋ねる。
「この方、皇帝への反逆者か何かですか?」
テンペラー星人は「さあな!」と即答した。
「そいつは違う宇宙から来た浮浪者だ!どうせ生きていても仕方のない奴だがな、皇帝が慈悲を掛けて拾ってくださったのだ!!貴様らのような何の価値もないあぶれ者の集団にはうってつけであろう!!」
「俺、何も言ってない。」
「黙れぇぇぇ!!浮浪者に拒否権があると思うなぁぁぁ!!貴様は何も言わずに俺達の言うことに従っておればよいのだ!!」
男の言うことにテンペラー星人は激昂し、怒鳴り散らす。理由が理不尽な差別意識とは…。それもこいつらの事だから自覚あってやっているのだ処までも外道な連中だ。
「君、こことは違う宇宙から来たのか?」
テンペラー星人が去った後、俺は男に声を掛けた。
「まぁな〜。宇宙を旅してたらワームホールに巻き込まれちまって…。この宇宙に来たって感じ。ワームホールは閉じちまったから帰れなくなっちまってよぉ〜。途方に暮れてたら何か捕まっちゃった☆」
「強制的に引き入れたのかよ…。災難だなお前…。」
ガクレが同情の声を掛けると、男はへへへ、と笑った。何処か緊張感のないやつだ。
「どうすんだよ、ブライク?こっそりと逃がすか?」
「そうしたいが、逃した所で今度は反逆者として刺客を送り込んでくるだろう…。」
「え〜…もう俺ここにいるしかないの?まだ極上の可愛い動物に出会えてないのによ〜…。」
「貴方、中々に肝が据わってますねぇ…。」
何処までも軽いノリの男にイルーが呆れる。
男は、しばらくウジウジとしてると急にムクッと顔を上げた。
「ま、でもあんた達の仲間になるのも悪くなさそうだなぁ。」
「あまり生半可なことは言わない方がいいぞ。俺達の仕事は汚れものだ。糞みたいな扱いをされるんだぞ。」
カラッと決意されそうになったので俺は警告し、そして思案した。
「君は任務中に死んでいたという事にする。ここを去れ。」
しかし、男は「いいや、」と俺の言う事を聞かなかった。
「どうせ俺が逃げても、俺が始末されたら今度はあんたらが反逆者の仲間ってことにされちまうんだろ?その皇帝さんっていうのも中々に強そうだしなぁ。だったら、俺は付いていくぜ。何か、あんたらと一緒にいるのも面白そうだしな!!」
「軽く言わないで欲しいですねぇ。本当に、良い思いはしないのですから。覚悟は決められるんですかねぇ?」
「だーいじょうぶ、だいじょうぶ!!」
「なっ…!」
拘束されていない足裏同士をパンパンと叩きながら男は答えている。何処までも軽薄な男だ…。だが、俺もこいつを逃がすことは容易ではないとわかっていた。だからあえて仲間に組み込むことにした。
「わかった…ならば君も俺の下に付いてもらおう…。そういえば、名前を聞いていなかったな。」
「あ、そうだった!俺はエルーヴォ。ここの宇宙にあるかは分からんが、レギュラン星ってとこが生まれだ!」
そして、皇帝とウルトラの星との全面戦争、ウルトラ大戦争が勃発した。
ようやく、俺達にも活躍の場が出来る。そう思っていた。
そして回ってきた俺達の役割は――
後方支援かつ補充要員だった。
戦力外であることを突きつけられているのは火を見るよりも明らかだった。
精鋭のウルトラ戦士達は前方の暗黒四天王や怪獣軍団で事足りていたため、俺達ははぐれたザコの戦士達としか戦うことが出来なかった。まるで試合場のゴミ拾いをさせられているような気分だった。
指示を出すことしか能のない俺とは違い、ガクレ達は前衛の宇宙人達ともタメを張れるほど優秀だ。非常に悔しい思いをしただろう。
だが…俺に対し不満をぶつけることはしなかった。どれだけ不満をぶつけても、結局は俺がリーダーであることに繋がるからだったのかもしれない。
「ゲアアアアアアアアアア!!!」
「ハアァァァァァァァ!!!」
ガクレが火炎を噴射してヒヨッコのウルトラ戦士を焼き、イルーは拳銃をぶっ放してヒヨッコを撃ち抜く。
攻撃を食らったヒヨッコ共はどいつも光と化して消え去った。
ガンカノも胸から光線を乱射させてザコ共を一掃させていく。
エルーヴォもあの性格の割には闘える奴だった。身軽な動きで相手を翻弄し、腕からの光線で次々と仕留めていった。
俺もチブローダーに搭乗して目まぐるしく移り変わっていく戦況を読み、指示を出していた。が、肝心の自分の周囲が見えておらず、俺は二人のウルトラ戦士が光線を放っていたことに気がつかなかった。
「ブライク!」
二筋の光線が到達する前に、イルーが割り込んで右腕の盾で弾き返した。
反射された光線はウルトラ戦士の元へと返っていき、近くに着弾して盛大な爆発を起こした。
「ウワァァァァァ!!」
二人のウルトラ戦士は爆発に巻き込まれて吹き飛ばされていった。
「大丈夫ですか?ブライク。」
「すまない…イルー、助かった。」
「ふぅむ…。しかし、こう雑魚ばかりでは張り合いがありませんねぇ。」
「…お前達には屈辱だろうな、こんな状況…。」
「え?あぁ、いやいや。ブライクのせいではありませんよ。」
いつもは高慢な物言いのイルーが、すぐに俺の言葉を否定して気を遣ってくれていた。
「どいつもこいつも、私達のことを低く見すぎている。人を見る目のない、ろくでもない連中ですよ。」
「俺達が皇帝の下で甘い汁を吸って過ごそうとしてたのも事実だ。俺は相手への敬意を欠いて、甘く見てしまったのかもしれない…。」
「そんな輩は大勢いますよ。何も私達に限った話ではありません。」
それに、とイルーは付け加える。
「貴方は私達にはいなくてはならない存在です。ここで燻られては困りますねぇ。」
「…そうか。」
ウルトラ大戦争は集結した。皇帝が一人のウルトラ戦士との一騎打ちに敗れて撤退したと聞いた時は驚いたよ。
「えらそーに言っておいて…結局負けるのかよ。」
「最後までザコの相手ばかりさせられて、挙げ句に敗戦しましたなんて、笑えませんねぇ…。」
何処かの小惑星。
ガクレとイルーが口々に愚痴るのを、俺はため息をつきながら聞いていた。
「皇帝が再起不能の今、俺達はもはや用済みだろう…。すぐにここを出て、また皆で旅にでも出るか…。」
「お、旅?また旅に出るのか!そういえば、ブライク達は元は旅人達だったんだよな!?」
「あぁ、そうだ。色んな星を回ったんだぜ?あの時の方が楽しかったよな〜。こんな所に来るんじゃなかったぜ。」
「へぇ〜。じゃあ、今度は俺も付いていっていいのか!?」
何処までも軽いエルーヴォはどれだけ酷い扱いをされても全く滅気なかった。敬意を表する程の精神力だ。そもそもこいつは巻き込まれた身だ。仲間に入れることにもはや抵抗はなかった。
「あぁ、いいぞ…お前ももう俺達の仲間…」
「おやおや、皆さん。一人も欠かさずに生き延びていましたか。」
俺の言葉を割り込むように掛けられた声。全員がその方向に向いた。
両手を後ろに回して立っていたのは、全身が真っ黒い異星人だった。
―― 暗黒四天王 知将 メフィラス星人 ――
「これは、メフィラス様。ご無事でしたか…。」
俺は社交辞令のようにメフィラス星人の無事に安堵している旨の言葉を掛けた。他のメンバーも合わせて跪き、頭を下げる。それに対し、メフィラス星人はフッフッフと笑った。
「あれだけの扱いを受けていたのにそこまで心配して下さっていたとは、ありがたいことです。どうにも私はあなた方を過小評価していたみたいだ。」
慇懃無礼な物言いだが、あのガクレもイルーも頭を垂れるだけで何も言い返さない。メフィラス星人の実力は二人の遥か上を行く。二人もそれを自覚していたため、滅多な事は言えないのだ。
「あなた方がこの戦火を生き延びたのは素晴らしいことです。しかし、皇帝は力を失い、我々は撤退を余儀なくされてしまった。これはとても残念なことです。」
俺達がまともに前線に出られなかったこと、皇帝自身が敗れ去ったことを上手く躱しながら話している。なんともセコい奴だ。
「しかし、私は諦めてはいません…。今やるべきこと、それは何だと思いますか?」
メフィラス星人は突然、俺に尋ねた。俺は頭を垂れたまま答える。
「はい…皇帝陛下の復活、軍の再興…これらが優先されるべき事項であると考えます。」
俺の答えにメフィラス星人はハッハッハッハッ、と仰け反りながら高らかに笑った。主が敗れたというのによくそんな笑い声があげられる。
「とても良い答えです。素晴らしいです。」
笑いながら俺を称賛するが、すぐに笑い声は止まり、仰け反っていた身体を今度は前のめりにする。
「しかし…。もう一つ、重要なことがあるのです。」
「重要な事?」
「そう…皇帝陛下が残された物の処理、ですよ…。」
低い声のままそう言い放つメフィラス星人。俺は何を言っているのか分からなかった。
「処理…?それは…」
俺が言い終える前に、メフィラス星人は後ろに回していた右腕を自分の顔の横まであげた。
掌には、どす黒いエネルギーの塊。邪悪なオーラが炎のように燃え上がっていた。
「フゥゥンッッッ!!!」
そして、その右手を前に突き出し、俺達に向かってエネルギーを光線として撃ち出したのだ!!
光線は分散して、俺とガクレ、イルー、ガンカノ、エルーヴォの左胸に照射される。照射と同時に身体が紫の炎に包まれ、焼かれるように痛い。その上、内臓を無理矢理動かされるような感覚に襲われ、内外共に激しい痛みに襲われる。
「こ、これは…!?知将…!!」
イルーが苦しみながらメフィラス星人にこのエネルギーの正体を尋ねる声が聴こえる。
「これは、皇帝が自らの魂を分離し、その欠片を移植する実験…。その余り物です!!」
「余り…物…!?」
「被験者は皆さん漏れなく命を落としてしまったので実験は中止となりましたが…。君達には特別に分けて差し上げましょう!!皇帝が退かれてから、もはや戦力としても期待できない君達と同じく、この欠片も残ってしまっては迷惑なのですよ!!さあ、遠慮せずに皇帝の一部を賜りなさい!!」
さっきまで『あなた方』と呼んでいたのが『君たち』へと変わっている。つまりは
メフィラス星人は最初から、俺達を殺しにきていたのだ。
「ぐああああああ!!テメェェェェェ!!メフィラスゥゥゥゥ!!!」
ガクレが怨嗟の声をあげる。しかし、メフィラス星人はハッハッハッハッと高笑いをあげると、足先から頭に掛けて消えていき、テレポーテーションで去っていった。
「ぐおおおあぁぁぁぁあああぉぉぁぁぉ!!!」
俺は意識を失いそうな痛みを受けながら、仲間達が苦しむ光景を目の当たりにする。
俺と一緒にいなければ、皇帝の下に付かなければ、メフィラス星人がウルトラ戦士に敗れて戦死していれば、
様々な後悔や恨みがたらればとして浮かび上がってくる。
しかし、俺にはそれよりも強い思いが浮かんでいた。
俺は――最後の最後で仲間達に
俺は…生き残っていた。
目が覚めると他の4人も助かっていた…。
メフィラス星人の言っていた事は嘘では無いのだろう。アイツが俺達に慈悲をかけて皇帝の魂を分け与えたとは考えにくい。
俺たちは奇跡的に全員耐え抜いたのだ。
「良かった…皆、無事か。」
「ああ…けど、あの野郎…!俺達を始末しようとしやがった!」
「ふざけやがって…。どこまでコケにしやがるんだぁぁぁぁ!!」
憤るガクレとイルーとは対称的にエルーヴォはいつも通りだった。
「邪悪だねぇ、皇帝様の腹心は…。で、どうすんだ?もう俺達は死んだと思われてるだろうし、自由の身ではあるんじゃね?」
「そうだな…。とりあえず、ここは離れるとしよう。」
その後は…適当に星々の旅を続けていた。
だが、取り戻したはずの自由な日々は何処か憂鬱としていた。
俺は虚脱感に包まれていた。皇帝の下に付いて過酷な目に遭いすぎたのかもしれないな。心が疲れていたのだろう。
ガクレとイルーはやはり大戦争の時は闘い足りなかったのだろう。以前と違って血気盛んとなり、向かってくる怪獣やチンピラ宇宙人共に率先して蹴散らし、時にはその命を奪っていた。
「こわぁ…。」
そういうエルーヴォは本当に可愛い者好きなのだろう、メンバーでも比較的穏やかなガンカノと共に旅先での小動物と戯れることが多かった。
いつまでこの旅を続けていることか…。そう考えて居た時に異変は起こった。
「…能力に目覚めている?」
きっかけはガクレだった。とある星で怪獣の群れに囲まれた時に、
「以前から持っていたものではないのか?」
「俺の同族でもこんな能力を持っていた奴はいなかった。戦争の後だぜ、ブライク!!」
「…私だけではありませんでしたか。」
話を聞いていたイルーも口を開く。ガクレとは違う内容だったが、今まで使ったことのなかった能力に目覚めていたらしい。
「アヒル野郎と同じく、私もあの戦争の後に使えるようになりました。アヒル野郎と一緒なのが嫌ですが。」
「俺だって嫌だぜ、よりにもよってミラーボールと一緒なんだからよ。」
「ま、どうせ貴方の能力はとってもつまらなく、使えない者なんでしょうけどねぇ。」
「うるせぇ、テメェの能力が使えるとか思ってんじゃねーぞ。」
言い争う二人を他所に、俺はエルーヴォとガンカノに何か新しく使えるようになった能力は無いか確かめさせた。案の定、2人も新たな能力に目覚めていた。
それが、
そして、俺も…。
「どういうことでしょう?何故、私達にこんな力が…。」
イルーが不思議そうに自分の手を見つめる。俺はある程度の見当がついていた。
「知将が俺達に浴びせた皇帝の魂…。それが俺達の潜在能力を呼び起こしたのかもしれない。」
「マジかよ…!俺達、あれのおかげで強くなれたってことか!? 」
皮肉というべきか。メフィラス星人が俺達を消すために放った魂は、逆に俺達をより強くしてくれていた。
そして気づいたよ…。あの時どうして俺達が助かったのか。
それは
その事実に気づいた俺の心は蘇ったよ。
この能力で、俺達は再び誇りを取り戻せるかもしれない。
そして2度目の旅に出てから1万年。俺はとある
「あ?解散するのか?」
「そうだ。」
俺の決意の言葉に、ガクレが真っ先に返した。
「なんでだよ?わざわざ離ればなれになる必要はねぇだろ?」
「このまま集団で動けば新たにウルトラ戦士達が立ち上げた警備隊に補足される。だから、少しでも長く活動できるよう、これからは単独行動とする。」
「宇宙警備隊でしたっけ…。一番上は皇帝を破ったウルトラ戦士だそうですねぇ。」
イルーの言う通り、皇帝の一騎打ちに勝ったウルトラ戦士――ウルトラマンケンが宇宙警備隊の大隊長とやらになった。あいつらの存在によって悪事を働く異星人共は大戦争以前よりも表に出づらくなった。傭兵やら地上げ屋の手伝いやらで派手に動いてたら恐らくあいつらに気づかれてお縄になってしまうだろう。まだ能力に慣れていないのもある。
だから、俺達は暗殺稼業に手を出すことにした。元々が暗殺者であるガクレがいたこと、判明している新たな能力が暗殺向きであることがその決意を手伝った。
「暗殺か〜!上手くできるか〜?」
「上手くやってもらわなければ困りますよぉ、エルーヴォ?間違っても捕まった時に私達の事は話さないでくださいよぉ?」
「テメェのことは話してもいいだろ。」
「は?でしたら私はテメェの事を話しますが?」
「あ?その前にテメェを消しますが?」
「もういいだろう…。」
ガンカノはヴヅヅヅヅ…と静かにその光景を見守っていた。
「俺達は一旦解散となる。だが、散り散りになっても俺達は一つだ。」
そこで、と俺は続ける。
「俺は、一つのチームとしてこの5人の集団に名前を付けた。」
「名前…?」
「いいじゃねーか。カッコイー!」
「ほう、その名前というのは?」
「図らずも、皇帝陛下の魂を受け継いだ者達…。
インペリアル・ソウルだ。」
名前を公表すると、4人は静まった。
しばらくの静寂を破ったのはガクレだった。
「おぉ…。おお!いいじゃねーか!」
「インペリアル・ソウル…それが私達の新しい名前…。」
ヴヅヅヅヅヅヅヅ…。
「お、ガンカノも賛同してるみてーだな!でも、いいのか?別に皇帝様の事なんて入れなくてもいいじゃねーか。」
エルーヴォの言う事は真っ当だった。確かに皇帝に因む必要等ない。だが…。
「これは戒めであり…。俺達の再出発のきっかけであり、そして受けた屈辱を忘れずに誇りを取り戻すことを込めて名づけた…。」
名前のルーツを聞いて、エルーヴォも「ほぇ〜」と納得したようだった。
俺は、皆の前に出た。しばしの別れを告げるために。
「この内の誰かがではない、俺達全員で栄光を手にする!そして、俺達は誇り高き者であることを宇宙中に知らしめてやるのだ!!」
小さな身体のリーダーは宣言した。そしてそれを合図にインペリアル・ソウルは解散することとなった。
―― 目つぶし星人 カタン星人ガクレ ――
―― 光波宇宙人 リフレクト星人イルー ――
―― 巨大異星人 ゴドレイ星人ガンカノ ――
―― 悪質宇宙人 レギュラン星人エルーヴォ― ――
そして、
―― 頭脳星人 チブル星人ブライク ――