心情の変化難しい…
朝5:30いつものように咲は父親に稽古をつけてもらう。これは日課の朝練である。しかし今日はいつもと違う
「…今日はこれまで」
「…えっ?いつもよりだいぶ早いよ」
毎朝6:30まで稽古をしているそれなのに1時間も早い
「これ以上やっても無駄だ…」
「無駄ってなんで!」
「理由は知らないが怒りに身を任せてやるもんじゃない、集中できてないぞ…それに怪我するぞお互いに…」
「ッ!」
自分で理解出来ていなかった。けれど怒っている理由は昨日のアレだ心操に言われたことアレが自分の事を思って言ってくれたことは理解していたがそれでもあの短時間で知ったように言われたのは頭に来てしまった。
「…ごめんなさい」
「別に怒ってるわけじゃないからな…」
「…えっ?」
咲自身自覚がなかった訳だがそれでも怒りで稽古をやり
集中しておらず怒られることを覚悟していた。
「お前がそこまで感情を出すなんて珍しい…と言うか初めてだろ」
咲は怒ったり不機嫌になる事はもちろんあるがあまり表に出さない、母親に似て怒りは静かで穏やかだ、そんな咲が表に出していた。
「許せないことがあって怒ってるにしては落ち着いてるし、何かいいで刺激でも受けたか?」
「…」
「思う存分怒って、思う存分悩んで、思う存分考えろ!新しい事知るのは面白いぞ」
そう言ってガハハと笑い出す。いつもバカみたいに生徒をぶん投げたりそれを母親に諌められたり運動一直線の父親から想像もつかないことを言われる。
「…誰の言葉?」
「俺の!」
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【1年C組教室】
教室に入るとそのまま席につき小説を読み始める。そして誰も話しかけるなオーラを醸し出す。しばらくするととある生徒がやってくる。
「切裂さんおはよぉ!」
無駄に元気な声を横目に無視を決め込み小説の続きを読む。
「ふ〜ん、それならこうだ!」
「うわぁ!!?」
昨日切裂と一緒にスポーツテストを行っていた女子生徒が抱きついてきた。切裂は驚き振り払おうとするが離れる気配がない
「切裂さんおはよぉ!…あぁ離そうとしても無理だよ私の『個性』粘着は1度くっつくとなかなか離れないよ!」
どうやら『個性』を使用してくっついているようだ。切裂が座っていて力が出せないとはいえかなりの力で振り回されてなおくっついていられるとは凄い
「聞いたよ切裂さんの『個性』!」
昨日屋上から出ると扉の前にクラスメイト達が個性を使って盗み聞きをしているを見ていたので既に知っているだろうと思っていた。
「それ聞いた時ね私優しい『個性』だなって思ったよ!」
「…えっ?」
「あっ!やっと反応してくれた!」
思ってもみなかった事を言われつい反応してしまう。
「昔お母さんとか先生とかに言われたことない?『ひとの痛みのわかる人になりなさい』とか『人の気持ちなって考えなさい』とかって!切裂さんの『個性』聞いたら真っ先に思ったんだよね!正しくそれじゃんって!」
「…違うよ」
そんなんじゃない、そんな綺麗な力じゃないから『呪い』なんだ
「それにね切裂さん、傷つくこと恐れて立ち止まってたらつまらないよ、笑う時も傷つく時も誰かが傍にいるんだから…1人になるのは無理だよ特に私はね!」
そう言うと更に力を入れて抱きしめる。
「それに離れるのも傍にいるのも決めるのはこっち!切裂さんじゃないよ!」
優しく抱きしめる声をかける。
「それに…そんな顔してる人ほっとけないって…」
切裂の顔は歪んでいた。なんでもないようなことだったのにそんな簡単な言葉でさえも響いてしまうほど切裂の心は疲弊していたのだ。今まで1人でいようとしていたのに本当はいつも誰かがいてくれたことを忘れていた。親だけじゃない、道場の人も寄り添ってくれていた。
「…それでも私は人を殺した」
「それは昔の事でしょ関係ないよ」
「…離して」
「ダメ」
「離して!!!」
「切裂さんが反省するまで離さない、私が決めること勝手に決めないで」
「…」
切裂は悩む。こんなに真っ直ぐぶつかってくる人は初めてだった。
「…ごめんなさい」
その言葉を聞くとニヤリと笑った
「…皆聞いたよね?」
「…えっ?」
「言質取ったからね!切裂さんが離そうとしても離さないからね!」
「…それより早く離して、もうすぐ授業始まるよ」
授業開始までもう10分も無い。
「…えっとね、私の個性発動してから30分ははずれないの…」
「…あれから何分だったの?」
「…10分くらい?」
急に静かになる。ずっと2人を見ていたクラスメイト達の視線が変わる。
「「「お前やっぱりバカだろ…」」」
「うっさい!」
その後2人は教師に仲良く叱られたらしい。
「そ〜言えば切裂さん」
ようやく離れたクラスメイトが不意に声をかける
「昨日ね話を聞いた時に私達ちょっとイラッとしたんだよね。面倒臭い人だなぁ〜って」
「うっ…!」
「だからお詫びとして今度の休みちょっと付き合ってくれない?」
「いいけど…私お金とかないよ」
「大丈夫…色々と着てもらうだけだから…フフフ」
「…えっ?」
不気味な笑みがクラス中から切裂に向けられる。
後日切裂が着せ替え人形になったとか…
切裂着せ替え人形化が決定した日1年A組がヴィラン襲撃にあったとニュースが流れた。幸いな事に生徒は1名以外ほぼ無傷だったらしい、1名の生徒はヴィラン襲撃から逃れるために『個性』を使い怪我をしたそうだ。授業をしていた先生達は重症は負ったものの命に別状はないとの事ヴィランが校舎内に入り込んだ事により明日は臨時休校となった。そのお陰で切裂着せ替え人形計画速攻で実施されたのは言うまでもない。
後日全身包帯の男とすれ違った。恐らくヴィラン襲撃で重症を負った先生だろうがいくらなんでも復帰が早すぎる。
「…えっと連絡事項は1つだけ…雄英体育祭が迫ってます。」
ホームルームで伝えられた。ヴィラン襲撃があったのに学校を解放するなんて何を考えているのか大半の生徒が思っただろう。しかし、あえて開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すためらしい警備も例年の5倍に強化するとの事ヒーロー科の人にはプロヒーローに見てもらえるチャンスの場でもあるわけで簡単に中止していい催しでもない。なんとなくだがクラスの雰囲気が変わった気がする。
放課後ホームルームが終わった途端何人かの生徒が移動を始めた。
「…」
「ほら切裂さんも行くよ!」
距離を置こうとしていた名残か無視しようとしていた切裂だがクラスメイトに連れらていく。行先は1年A組の教室だった。既に多くの人が集まっていた。目的は恐らく皆同じで、ヴィラン襲撃から帰ってきた人達を体育祭前に見ておきたいのだろう
「意味ねェからどけモブ共」
「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」
相変わらず口の悪い爆豪を飯田が諌めだす。
「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁヒーロー科に在籍するやつは皆こんななのかい?」
一緒に来ていた心操が前に進んで爆豪に言い放っていた。
「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ知ってた?体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって…敵情視察?少なくとも
爆豪もだが心操も大胆不敵だった。2人が言い合っていると1年B組の人も言いに来た。この人もこの人で大胆不敵だった。A組の生徒からは爆豪のせいでヘイトが集まってしまったと怒るものもいたが
「関係ねぇよ…上に上がれば関係ねぇ」
シンプルだが事実だった。言ったからには上に上がる他ない。気づくと切裂の方を指さしていた。
「テメェにだけは負けねぇからな…」
「「「!!!?」」」
「…えっ?」
そう言うと爆豪は去っていった。なぜ爆豪に宣戦布告されたのか分からなかった。しかし既に十分目立っていた爆豪が切裂に対して宣戦布告してきたのだ切裂に注目が集まるのは必至。目立ちたくない切裂にとってこれ以上ないくらい最悪な状態である。
「…切裂さん今の人知り合い?」
「中学が同じだっただけだけど…」
ただそれだけの関係だ、宣戦布告される理由は無い
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【1年A組】
「緑谷君彼女は爆豪君と何があったんだ?」
「分からないそもそも切裂さんはかっちゃんの事避けてるから…」
しかし緑谷にはひとつ心当たりがある
「(もしかしてあの時のこと…)」
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体育祭の発表から2週間その間爆豪に切裂が宣戦布告されたことは学年中で噂になっており切裂はその注目の的となり疲弊していた。
体育祭当日今日も父親に稽古をつけてもらう咲今日はいつもより軽めに行っている。
「…咲大丈夫か?なんか妙に窶れてると言うか…」
「大丈夫だよお父さん…」
「そ、そうか…それよりも今日は体育祭があるからここまでな」
そういい稽古を終える。父は咲を見ると口を開く。とても真面目な目をして
「…咲、今日は優勝するつもりで全力でやりなさい」
「…えっ?」
この人は何を言っているのだろう。大概この体育祭ではヒーロー科の活躍の場でありその他の科で優勝するなぞほぼほぼ不可能である。それを知らないわけないのだが
「咲は優しいから相手を傷つけたくないだろうけどそれは相手を傷つける行為になる。皆全力でやるそんな状態で誰かに手を抜かれて結果を得ても意味が無い…傷つけたくないならそうなりにお前のできる全力を出して相手をしなさい」
「…えっと」
「難しいなら一つだけ今日なにか挑戦してみなさい…ただし基本は忘れるなよ」
そう言い父は去っていく
「全力でか…」
1人になった道場で誰に言う訳でも無くつぶやく
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【雄英高校1年C組控え室】
控え室で開始を待っていた。いつも楽しそうにしているクラスメイト達は静かだ。父親に言われた理由が少しだけわかる気がする。
「(皆本気なんだ…だからお父さんはあんなこと言ったんだ…)」
そうして入場ゲートに集まるように指示される。
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『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我のこそはとシノギを削る年の1度の大バトル!!』
プレゼント・マイクの実況により各クラス入場を始める。ヒーロー科以外の生徒は引き立て役とかしているがそんな事は関係ないとこれから始まる競技に向けて集中してる生徒もいた。
「選手宣誓!!」
ミッドナイトが進行を始める。選手代表として爆豪が呼ばれる。どうやらヒーロー科の入試で首席合格だったらしい、余計目立つからやめて欲しいと静かに思った切裂だった。
「せんせー」
だるそうにそれは始まった。
「俺が1位になる」
「「「絶対やると思った!!」」」
切裂含め爆豪の事を知る生徒が声を揃える。もちろんブーイングが飛んだが
「せいぜい跳ねの良い踏み台になってくれ」
なぜこうも人を煽るのだろうか、そしてそれを良しとするこの学校も学校である気がする。
そして第一種目が発表される。
『障害物競走』
画面にはそう書かれている。計11クラスでの総当りレースコースはスタジアムの外周約4kmでコースを守れば何をしてもいい。つまりは『個性』の使用が自由である。
「(全クラス総当りなら最初の関門は…)」
考えている間にゲート前に集められる。切裂はなるべく前の方に行けるように位置をとる。
『スタート!!』
開始の合図と共に走り出す。
「(やっぱり!最初の関門はここ…)」
スタートのゲートはかなり狭く多くの人で塞がれる。
「(次注意しないといけないのは…)」
考えていると地面が凍り出す。ジャンプや『個性』を使用しよけた人達が何人かいるのが見える。
「(今…右から)」
雄英体育祭が始まった。