『おい!?なんで爆豪が怪我してんだよ!?何があった!!?』
『切裂が個性を使ったんだろ…切裂の個性は【自傷】個性発動中に負った怪我を対象者に与え、切裂本人の怪我は治る…痛みや衝撃は残るみたいだがな…』
『なんだその個性!!強すぎんだろ!!』
『だがこれで…』
爆豪の右手を奪う。右手に火傷を負ったことにより汗が一時的に出にくくなる。たとえ爆破をしたとしても激痛が爆豪を襲うこととなる。
「…やるじゃねぇか…クソッ!」
「ッゔぅぅぅ…!」
お互いに痛みに耐えているがヒーロー科で鍛えられているのだろうか爆豪は少し余裕を見せている。爆豪が左手で小さな爆発を見せている。まだ終わりじゃないという意思表示なのだろう。
『見事爆豪の右手を奪った切裂!!だが爆豪の爆発は両手からだ!まだ終わりじゃねぇ!!』
『いや、これから先爆豪は左は容易には使えない…次切裂に左手を潰されれば近距離での肉弾戦になる…そうなれば軍配は切裂の方に上がるだろう…』
『マジかよ…てことは!?』
『たった一度、個性を使っただけで爆豪の攻撃を封じた…狙ったのかどうか知らなないが見事だ』
イレイザーヘッドの解説に観客達はドッと盛り上がり始めた。今まで劣勢だった切裂が一瞬にして優勢に変わったのだ。爆豪は爆発のタイミングを間違えれば終わり、切裂は爆発に左手をあわす、または体術で爆豪を倒せばいいという切裂が完全に有利な状況が出来上がっていた。しかし
「…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
『なんだ?切裂が急に頭おさえだしたぞ?』
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…!!!」
思い出す。
あの時の光景を…
幼い頃やっとの思いで発現した『個性』で奪ってしまった命を…
あの血に染った存在が爆豪と重なりだす。
一年前『個性』を初めて使った日あの時は何ともなかった…ただあの時と違うのは自分を傷つけたのが自分か、他者かの違いだけだ、ふと切裂の手にあの時の感触が蘇ってくる。まるで今刺したかの様に
『おいおい!切裂が急に呻き出したぞ!大丈夫かこれ!!?』
『これほどか…相当根深いな』
『冷静になってる場合じゃねぇだろ!!明らかにおかしいだろ!!』
『自分で覚悟決めて使ったんだ、自分で何とかするしかねぇだろ』
『つってもよぉ!!』
『個性事故…悪いが切裂の過去調べさせてもらった。アイツ個性発現時に交通事故にあってる…その時の相手は切裂の個性で死亡してる…十中八九それが原因だな』
個性事故 個性発現してまもない子供や個性の制御が苦手な人がちょっとした拍子に個性を発動してしまうことで起きてしまう事例。切裂は幼い頃毎日のように悩まされ、発現時に命を奪ったトラウマは今でも癒えることは無い
『ここで超えられなきゃ切裂は一生前に進めない…』
自分の前に血に染った人がいる。子供の頃の記憶ずっと縛られている。相手がこちらを見ている。わかっているこれが幻覚だと幻なんだと理解している。けれど恐怖で頭が、体が、心が動かない。
「「頑張れ!!切裂(さん)!!」」
普通科から心操が、ヒーロー科から緑谷が声をあげた。『個性』に悩まされた心操、『個性』が発現せず夢を諦めかけた緑谷、事情は違えど切裂と自分が重なる。
皆前に進もうとしている。切裂も例外では無い、ざわめきの中切裂を見守る。
「(見ろ!見ろ!見ろ!目を逸らすな!受け止めろ!そのために使ったんだ!これぐらい今までに比べればどうってことない!負けるな…自分に挑戦しろ!)」
自分に言いつける。トラウマはそう簡単に乗り越えさせてくれないだからといって諦める理由にはならない。震える体を無理やり押さえつけ爆豪へと向かう
「お待たせ…爆豪君…もう…大丈夫…」
「…いいんだな、手加減なんてできねぇぞ」
「そんな人じゃ…ないでしょ…君は…」
爆豪は笑みを浮かべると切裂へと向かい走り出す。
「(笑え!辛いなら!苦しいなら!笑い飛ばせ!!)」
切裂も苦悶の笑顔を爆豪に向ける。今目の前の強敵に挑戦する。
右手を潰された爆豪だがそれをものともしない様な動きを見せるが攻撃回数を減らされたせいか切裂が攻撃を見せ始める。先程パニックに陥り切裂の動きは悪いしかしキレが増している。余分な思考が出来なくなったからか攻撃に迷いが消えている。
『おいおい!大丈夫かよ切裂!!さっきまで唸ってただろ!!』
『乗り越えたか、振り払ったか、どちらにせよ立ち向かったから今こうして動けてる』
『まぁ大丈夫ならいいか!』
『再開以降お互いにキレが増している爆豪は片手を封じられたせいか立ち回りを上手くしてるな、切裂は動きが鈍くなってるが余分な思考が減ったか…迷いがない』
再開後お互いキレが増し均衡を保っていたがそれが不意に崩される。爆豪は左手の爆発を利用し攻撃を仕掛ける爆発の勢いを利用し回し蹴りの威力をあげる。それを切裂が
「「グゥッ!」」
『爆豪の強烈な一撃が切裂を襲う!!だがダメージを受けてるのは両方だぁ!!』
切裂は右腕で受け止めた爆豪の左足に両腕を絡め内側に巻き込む
『ドラゴンスクリュー!!?なんだよ切裂プロレス技も使えんのかよ!!』
『切裂道場は武道教室と言われてるが教えてるは武道だけじゃねーな、太極拳や拳法なんかもやってやがる。アイツの父親が教えてんなら【鬼神】じゃなくてもはや【武神】だな…』
プロレス技であるドラゴンスクリューを見せるが爆豪は宙に浮いてたためそこまでのダメージは与えられなかった。しかしそれでも膝に少なからずダメージが通る。これで爆豪は右手と左膝にダメージがある。明らかに切裂優勢な状態だった。
「…舐めんじゃねぇ!!」
爆豪が爆発を起こそうとする。右手は封じているので左からの爆発誰しもがそう読む。しかし爆発は切裂の左側から発生した。
『マジかよ!?爆豪潰れた右手で爆発起こした!!』
『激痛だろうな…切裂の裏を完璧にかけたがダメージは爆豪にも入る。アイツは今切裂と自分を相手にしてるのと同じだからな…』
「右手封じただァ?そんなもんちょっと痛いの我慢すりゃいいだろうが!!」
痛いどころじゃないだろう。激痛のはずだ火傷した場所はヒリヒリと痛み衝撃が加われば更に痛みが襲う。爆発なんて起こしたら痛いで済むはずがない。決死の爆発だろうが、右手からの爆発は無いと考えていた切裂の裏をかくことに成功する。そして今後も右手の爆発がある可能性を浮上させる。
「(右手での爆発…痛みなんて気にしないってこと?…なら爆豪君の爆発を封じるには…)」
回らない頭で考える。爆豪のあの爆発は強力な武器だ。それを奪わなければ切裂に勝機は訪れない。ならばと切裂は爆豪の爆発を躱し懐に潜り込む。爆豪の右袖、左襟を掴むとできる限り体を密着させる。
『ほぉ考えたな、あそこまでくっつかれれば爆発で爆豪自身が巻き込まれる…しかもそこに切裂の個性の追い討ち、単純にダメージが倍になる』
『美少女にくっつかれて羨ましいとか思ってたよちくしょ!!切裂やることエゲツねぇ!!』
『確実な爆豪の個性封じ、それさえ出来てしまえば切裂の勝率は跳ね上がる。』
切裂が考えた爆豪封じ、しかしこの男にはそんなこと関係ない切裂と爆豪を巻き込む形で爆発が起こる。その衝撃で切裂は爆豪から離れてしまう。
「ダメージ倍だァ?関係ねぇよ!テメェが『個性』使った時からわかりきってんだよそんな事!!自分犠牲にしなきゃ勝てねこともわかってんだよ!!」
爆豪は左腕を右手で押さえ左手を切裂に向ける。バチバチと爆豪の腕から音が聞こえる。麗日戦で見せた大爆発が来る。否それよりも更に強力な爆発
「コスチュームなくても出来んだよ!!これならお得意の避けも関係ねぇ!!」
突如発生する大爆発。地面を抉りながらそれは切裂へと向かう。その爆発に切裂だけが触れるそれは爆豪の夢への形
「(これが爆豪君の夢か…私にもあったのかな、小さい頃はあったんだろうな…もう思い出せないや…)」
ふと何故かそんなことを考えた。切裂が爆発に呑まれる会場にいる全員がその威力に驚き言葉を失うこの瞬間だけ皆切裂の『個性』のことを忘れた。そしてすぐに気付かされる。その強力さに
「…ク、クソッ…クソ、がぁぁぁっっっ!!」
『爆豪ダウン!!改めて見るとやべぇな切裂の個性!!』
『あの一撃でさえもこれか…』
『てか当の切裂はどうなったんだよ!煙で何も見えねぇぞ!!』
爆豪は切裂の『個性』のダメージ反射によりダウン。意識もあるしまだ立とうとしているが立ち上がれない。一方切裂はというと
「切裂さん場外!爆豪くん三回戦進出!!」
爆豪の最後の爆発により場外に押し出される。切裂はあまりの衝撃と痛みからか気を失ってしまっていた。結果として爆豪の勝利となったがその光景は普通とは違う。
『なんだよこれ…負けた方無傷で勝った方が重症って…』
『それだけの個性なんだろ切裂のは…しかしまぁ個性、身体能力、洞察力全てがトップクラス…ヒーロー科よりもヒーローになれる素質がある…でもヒーローには向いてない切裂が致命的に優しすぎる…皮肉なもんだ』
コート内では倒れた切裂、爆豪が運ばれて行く。
『(どんなに否定しても切裂の根底には必ずあの個性がある…あれがあったから今こうしてここにいるだよな…ホント皮肉な話だ)』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【保健室(リカバリーガール主張保健所)】
試合終了後気を失った切裂はリカバリーガールの元へ運ばれた。切裂が目を覚ましたのはそれからしばらくしてからだった。
「…知らない天井だ」
「何を言ってるんだいあんたは…」
「リカバリーガール…じゃあここは保健室?」
「その様子じゃ意識はしっかりしてるようだね…ほらグミだ、グミをお食べ」
「ありがとうございます。」
目が覚めるとリカバリーガールがグミを渡してくる。ぼーとしてると段々と状況を理解する。あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
「…あの今何時ですか?爆豪君は」
「落ち着きな、あの子なら治癒したらすぐ戻ってったよ、時間はトーナメントが終わったばかりだね。今から行けば、表彰式には間に合うよ。」
「…そうですか」
とりあえず爆豪は無事のようだ、決勝戦は見逃してしまったがせめて表彰式には出ようとベッドから出る
「ッイタ!」
「悪いね…アタシの『個性』じゃぁ怪我は治せても痛みは治せないからね…初めてだよこの体育祭で無傷の子が運ばれてくるだなんてね…ほら行くなら早くしな」
リカバリーガールに保健室から追い出される。仕方ないので会場まで走る。リカバリーガールの元から離れてしばらくすると体がおかしい、脇腹に違和感を感じる。見てみると小さいが傷があった。
「あれ?なんだろこれ…切島君と戦った時にかすったのかな?…まぁいいか…」
特に気にせず切裂は表彰式の会場に向けてまた走り出した。
イレイザー「なるほどな【鬼神】に育てられたなら納得だ」
切裂父「あのヤロォ咲にも言ってねぇこと言いやがって後で覚えてやがれ」
イレイザー「【鬼神】じゃなくてもはや【武神】だな」
切裂父「全く相澤め、好き勝手言いやがってでも【武神】か、いいな【武神】カッコイイ…」
御満悦だった。
※この2人は学生時代出会ってます。荒れていた切裂父が引き起こした喧嘩騒ぎにイレイザーヘッドが巻き込まれるというはた迷惑な形で知り合ってます。まぁそれは別のお話