銭と課金のノスタルディア  ~異世界行ったのに、仲間増やすにはガチャしか手がないんですが~   作:Rameso

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依頼を受諾しても、依頼者がまともとは限らない

 今ここでエステルと交されようとしている会話は、アプリ内ではもっと大雑把でしか表現されていない。

 

 ──―不意に、全身鎧の騎士にあなたは呼びかけられる。

 

「おぉ、そこの旅人。我が国の姫様が行方不明になってしまった故に捜索願いを出している。

 もし良ければ報酬は弾むので、依頼として受けてはいかがだろうか」と一方的にまくし立て足早に去っていった。

 あなたはこのクエストを受けてもいいし、受けなくてもいい。

 

 このような簡易なテキストが表示されるのだ。

 故にこの騎士が実はエステルとはこの時点でプレイヤーには気付きようがないのだが、実は……と言った所なのだろうか。ハンプの存在もアプリ内では言及されていない。

 

 それだけに、ここに来た理由を正直にエステルに告げる事に少しだけ戸惑いがあった。アプリとは展開が既に違うが、この場で面識を得ることは悪いことではない。何かそれっぽく理由づけてこの事件に関われないだろうかと思案する。

 

「──―ふむ、既に貴殿の身分は証明されているのだ。何か既に任務を受けており守秘義務があるということであれば、旅行と言うことで申請しておくがよろしいか?」

 

 返答に迷っている間にエステルは、早合点していた。

 そしてハンプも「ええ、そのように願います」と述べて、気付けば入門条件をクリア。

 メルカトルに入る条件を満たしてしまっていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

 思わず焦りを声に出す。

 このままではストーリーラインに乗れなくなる可能性が出て来るのだ。

 チュートリアルをスキップするとそこに残るのは──―無料十連ガチャを引いたという結果のみ。

 そう、このアプリの悪名高い点の一つとしてリセットマラソン対策がされている所だ。つまり一連のチュートリアルを『スキップ』すると、『ガチャを引いたもの』とみなされる。

 もっと言えばチュートリアルをこなしたと仮定した、運営おすすめキャラが編成に勝手に入っているのだ。

 

 序盤をこなすにはうってつけの星三つのタンク、アタッカー、ヒーラーと当座を凌ぐ武器一式。

 ──―だが、それだと開幕に星五つのキャラクターを手に入れる機会は失われてしまう。

 

 目の前の"陽光の騎士 エステル"に、"風塵の双剣士 セレニード"、"死霊龍騎士 ドラクロア"等々。

 勿論確実に排出されるわけではないし、その上この世界でガチャがどういう扱いなのかも分からない。

 しかし、実際星三つのタンクは、どうあがいてもエステルの基礎スペックを超えれないのだ。

 

 一応は経験を積ませる事で昇級させる事はできる。一時期流行った星一つヒーラーの"農民 ブリオ"の大根踊り事件等は有名だ。

 このブリオのスキルの一つに、大根踊りという物があり全体回復を短い詠唱でこなすことができた。

 

 ただし、回復量が「おっさんの踊りだし回復する方がおかしい」というくらいしょっぱい(具体的に言うと一桁に近い)ので、産業廃棄物肥溜めクソ雑魚農民ブリブリオと言う、小学生が考えたような酷い蔑称があった。

 

 ……しかし、ブリオ愛が過ぎる変人がブリオを星五つまであげた所、評価は一変。

 暗黒大根踊り、汚い髭舞踊と言われながら目を見張るほどの回復量を叩き出す。しかも性能は全体回復。

 その結果、大半の廃人の一軍ヒーラーから星五つの"奇跡の申し子 ラティア"とか"聖女 ユニュート"等を抜いてまで、攻略税には採用されていた。

 

 だが、これは本当に極一部のキャラの話だ。基本的にはどうあがいても星三つの性能で五つの性能を覆すことはできない。スキル構成からして、"あえて"痒い所に手が届かないように調整されているのである。

 

 星五つの冒険者を手に入れる機会をみすみす見逃す等あり得ない。

 つまり、チュートリアルスキップは考えられる中でも最悪手。

 ここで姫様関連のストーリーラインに乗らないと言う事は考えられないのだ。

 

「──―姫様の案件はギルドの紹介で知ってる。もしよければ協力させて欲しいんだが」

 

 真顔でエステルに告げる。

 この時点でエステルと本来は知己を得ていない筈だ。そこにアプリとの相違はある。

 だが、クエストラインに乗れないのは本当に、本当にまずい。

 

「なんと……! 真に噂に聞くような人物だったのだな。貴殿が加われば百人力だ」

 

 エステルの声は高揚していた。

 そして、俺に分厚い篭手のまま握手を求めてきたので、それに答える。

 ……これが正解に近い筈だ。チュートリアルの本筋に乗る。それが正しい。

 ゲームと現実の相違がどこまであるかはわからないがこれで良い筈だ。

 

 いやまぁ、本来のヴェリはともかく、俺自身は戦闘したことないし捜索とか知らないけどさ。

 声をはずませたエステルは早速だが打ち合わせがしたいと声をかけてきた。

 

 ハンプも「流石ですぞ、旦那様。わたくし、こうなる事を予想しておりました」とか言ってるし。

 

 まぁ、なんとかなるだろ。なんとか。チュートリアルだし。

 物語すら始まってないし。……うん、大丈夫だよな? 

 

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 エステルと連れ立ってメルカトルの街を歩く。

 ハンプは馬車と共に、エステルに紹介された宿屋に預けていた。

 日常品を魔物単独が買いに行く事は流石に不信感を与えるので、宿屋の給仕に依頼して必要な物資を買うように差配するとの事だ。

 

「今朝方、騎士団の詰め所に姫様らしき人影を教会付近で見つけたと報告が入ったのだ。この国では王族以外は持たない特徴的な黒い長髪、風貌といい、私はその報告から、その人物は姫様に間違いないと判断した」

 

 なるほど、このエッツラウプという国では黒髪は珍しいらしい。

 どうやら情報源は教会のシスターと言うことで、教会にも何人か騎士団を配置してるとの事。

 

「向かうのはとりあえず教会だ。今朝から街中を騎士団の配下の者に調べさせているが発見報告はまだない」

「なるほどな、すぐに厳戒態勢を敷いたのはその為か。入るというよりも出る人間を見張っていると。町からは出ていないのなら案外近くに居たりするのかもな」

「おぉ、確かにそうなのだ。今までは大抵の場合目撃証言からそう離れていない所にいらっしゃる。……良くそこまで知られていない姫様の習性を知っているな、流石だ」

 

 適当に放った言葉なのだが、何故か感心したようにエステルが頷いた。

 俺は、放火犯の心理と姫様の心理は多分同じなのかなと不敬かもしれないが思う。

 そうこうしている内に、教会前の門に辿り着く。

 

「お勤めご苦労」

「はっ、エステル様! 未だに発見報告はありませんが、全力で街中を探索しております!」

 

 若い騎士達がエステルに向けて勢いよく敬礼をする。

 が、その横に立っている不審な男には警戒の色を見せたようだ。

 

「……それで、エステル様。そちらの御仁はどなたでしょうか」

「あぁ。クリューゲルで名を上げている"自由の旅人 ヴェリ"殿だ。ちょうどメルカトルにへと来られていてな。姫様捜索に協力してもらっている」

「なっ、冒険者に依頼したのですか! 確かに"自由の旅人"の名は聞いた事があります。ですが、僭越ながら騎士団だけでもこの問題は解決できる筈です」

 

 どことなく敵意を向けられているのには気付いていたが、そこには色々な感情が含まれているのだろうなとは見て取れる。

 ……まぁ、そもそも美人の上官に知らない冒険者風情が立っていたら嫌だろうさ。

 

「まぁ、そう言うな。姫様に万が一の事があれば騎士団として立つ瀬がない。その為には恥を忍んで民間や組合から協力を募った方がいいのだ。ここまで何度も脱走されては国家としては醜聞であるのだがな」

 

 エステルは苦笑しながら語る。どうやら姫様行方不明事件はこれが最初ではないようだ。

 

「……陽光の騎士であるエステル様がそう言うのであれば異論は挟みません」

 

 報告を告げられた騎士は悔しげに唇を噛んでいたが、すぐに表情を戻すと、粛々と見回り業務に戻っていった。

 

「貴殿には失礼な態度をしてしまって申し訳なく思う。だが、国家の安寧を守る騎士団としては、冒険者に介入される事を快く思わない者も多いのだ」

 

 そう言ってエステルが深々と頭を下げてくるが、慌てて俺は「構わない」と返す。こういう所がエステルが早々に部下を持つ身になった所なのだろうか。

 

「構わないさ、それで俺はどういう風に協力すればいいんだ?」

「そうだな……貴殿にはまず、シスターの話を聞いてもらいたいと考えている。

 私が聞いた話と相違点はないとは思うが、違った視点から気付くこともあるだろう」

 

 扉を開けると、目深にローブを被り、祈りを捧げている人々の姿。そしてそれをまとめ導くように壇上に立つ、柔和な表情のシスターの姿があった。にこっと笑顔を見せながらこちらに話しかけてくる。

 

「ようこそ、教会へ。あなた達に陽光神のご加護がありますように」

 

 そう、このシスターこそチュートリアルをスキップした時に手に入る、タンク、アタッカー、ヒーラー。俗称メルカトル三人集の一人。

 "シスター アンク"その人なのである。

 

 長い金髪に、如何にもな聖職者の風貌で、攻略勢からは純僧侶と呼ばれている。

 性能としては詠唱動作を長くとってから、単体に回復をかけるといった物だ。

 基本に忠実であるが、その代わり回復性能は高い。序盤の単体攻撃をしかけてくる相手やタンクの挑発が上手く決まれば悪い性能ではない。

 

 しかし、対人戦の場合は相手が"農民 ブリオ"の全体回復ごり押しラッシュを展開すると、分が悪い。なんせ継続全体回復自体の能力は割と反則だ。

 

 だが、いくら性能が凄くても薄汚いおっさんをどうにも使う気にならず、そもそもブリオ自体は廃課金前提で性能が発揮されるので、実は俺もゲーム内ではアンクをスタメン入りさせていた。エステルとの相性は良かったからだ。

 

 契約石を使うガチャでは星三つのレアリティは最低保障されており、比較的にそのレベル帯のキャラクターは手に入りやすい。余談だが、ガチャでは武器・防具・アニマかそのキャラクター本人が排出されるシステムになっていた。

 

 アニマを複数揃えればそのキャラクターを解禁させることもできるというシステムだ。だから星五つのキャラクターも課金をし続けていればアニマ解禁という手段を取れる。いくら課金をしても絶対に手に入らないと言うことは起き難いシステムになっており、かくいう俺もアニマを集めてアンクをガチャから引っ張って来た口だ。

 

 いやぁ、なんだか感動するな。エステルのように愛着を持ってスタメン入りさせていたキャラクターが、目の前にいるのだ。

 

「エステル様、ご用件は今朝方の件でよろしいでしょうか」

 

 柔和な表情のまま語りかけてくるシスターに、エステルは鼻息荒く答える。

 

「いや、それもあるのだが。その話の前にまず、こちらの冒険者"自由の旅人 ヴェリ殿"に陽光の洗礼を施して欲しいと思っていてな」

「あら、それはまた驚きですね。こちらの方が自由の旅人というのにも驚きですが、なるほど」

 

 洗礼? なんだ、それはと驚く暇もなく、アンクとエステルは「では、こちらにいらっしゃってください」と、俺を教会内の扉に案内する。

 

「──ようやく見つけた」

 

 戸惑っている中で、どこからか声が聞こえた気がした。

 祈りを捧げている人々が発したのかと思いそちらを見たが、特に誰も動きを見せていない。協会に来ている者はみな目深にフードを被り祈りを捧げていた。

 気のせいだと思い直し「はやく」と導かれるまま、荘厳な雰囲気を放つ個室へ連れてこられてしまう。

 勢いに流されてしまったのだが、いそいそと洗礼とやらの準備を始めているエステルとアンクに「流石に、ちょっと待ってくれ」と伝えた。

 

「すまないな、貴殿には先に洗礼について説明するべきだったかもしれない。今回の姫様の事件には秘匿性から信頼できる人物ではないと依頼できないのだ。陽光の洗礼とは陽光神様からの祝福を持ってして、貴殿の属性や心根を証明するものだ」

「それに、陽光神様の祝福から授けていただくことは良いことづくめなのですよ? 具体的には免疫力が上がって小さな病気にかかりにくくなったり、自然治癒力が高まります。冒険者の方々で、自ら洗礼を受けに来られる方も多いのです」

「そうだそうだ、ただ、ちょっと属性自体が陽光属性寄りになるだけの話だ。気にする事ではない」

 

 ちょっと待て、今聞き捨てなら無い事を聞いたぞ。確かゲーム内でのヴェリの属性は無属性だった筈だ。無属性はどの属性にも有利は取れないが、逆に不利にもならない。

 どんな敵にもコンスタントにダメージを与えることができる。それは明確なメリットなのだ。

 

「いや、属性が変わるなんて聞いてないし、それは勘弁してくれ。陽光属性はアタッカーには向かないだろうから今後に差し支える」

 

 そう、どちらかと言えば陽光はヒーラーやタンクに向いている属性だ。

 連撃を得意とする純物理アタッカーの俺が積極的に転向するべき属性ではない。

 

「なっ、いや、確かに貴殿を疑っている訳ではないが。陽光属性はいいぞ! 私は元から陽光属性だったが、さらに洗礼を授かってから強くなれた! 背も伸びたぞ!」

「属性変異なんて一瞬ですよ。大丈夫です、天井の染みを数えてる内に終わりますから……」

 

 な、なんかどんどん聞き捨てならない方向に進んでるんだが。

 じりじりと迫り来る陽光属性二人に俺はついつい席を立つ。

 

「ほーら、ようこうしんっ! ようこうしんっ!!」

 

 エ、エステルの目が狂気を帯びている……こ、こいつ、こんなキャラだったのか?! 俺のスタメンであり大エースだったエステルのイメージがガラガラと崩れ落ちてくる。

 ガチャで引き当てた時の「──―我が名はエステル。この身を持ってして、貴殿の盾となろう」ってかっこいい言葉はなんだったのか。

 

「初めにちょっとチクッとするだけですよ。神は言っております、あなたは洗礼を受けるべきだと」

 

 アンクの目も相当濁りだしている。あんた、陽光神の信徒で、シスターだろ。思わず扉へと向かうが施錠されているのだろうか音を立てるばかりで開かない。

 

「無駄です、この場は神と交信する神聖な場所。洗礼を中断する要因を極力排除するために、自動に魔法で内外鍵がかかるようになっています」

 

 チッと舌打ちをして、にじりよってくるアンクとエステルを警戒する。だが、それにお構いなくアンクは手を振りかぶり祝辞を述べる。

 

「──―陽光神の元に祝福あれ」

 

 薄い光が俺の体全体を包みこみ、温かな香りと陽光に包まれたような錯覚を覚えた。

 しかし、直後、バチッ! と弾けるような音がして、俺の体を包む陽光が掻き消えた。

 

「「!!」」

 

 その光景を見ていたエステルとアンクの二人は絶句していた。

 

「な、なんということですか。陽光神の洗礼を跳ね返す人間など居るはずが……」

「まさか、貴殿は、貴殿は──―」

 

 ごくりと二人の生唾を飲む音が聞こえた。

 そして、俺から距離を取った二人は戦闘態勢を取る。

 

「あのおぞましき、光さえ遮る闇の神、遮光神の加護を受けているというのか」

「聞いた事があります、遮光、その邪悪を隠すために無属性と偽る人間も多いと……!」

「なるほど、大いなる光さえ遮る闇……自由の旅人の正体は、自由な悪人だったという訳だな!

 

 エステルが手に持つ騎士剣にぐっと力を入れたのが目にとれた。

……いや、初耳だし、ヴェリにそんな設定があったのとか知らんし。

 扉を背にしてもはや、逃げ道は無い。俺も仕方なく腰にぶらさげた剣の鞘を握り、臨戦態勢で向き合う。

 

「……そもそも、陽光の洗礼を受けれなければ属性は遮光と決まるのか? それに遮光属性は必ずしも悪人なのか?」

 

 俺の疑問に彼女たちは当然だという風に頷く。

 

「陽光属性は火・風・水・土の四大元素から独立した属性。対となる遮光以外には無効化されません」

「富も名声にもこだわらない高潔な冒険者と聞いていたが、いやはや、正体見たりという感じだな。

 世間でのその名を以てして、身近な仲間を作らずしてその属性を隠し通したという訳なのだろう」

 

 冤罪でしかない、いや、冤罪なのかどうかすら分からない所が悲しい。だが、ヴェリとしての俺の体が、心が訴えかけてくる。違うぞと。

 そう。俺だけが知っている。ヴェリが仲間を作らなかったのは、富も名声も受け取らなかったのは。

 

────単に、ヴェリがコミュ障だったからだと。

 

「違うぞ、確かに個別の仲間は作らなかったが自由を好んだだけだ」

「ほう? 音に聞こえた"自由の旅人"がここに来て虚偽を言うとはな、見損なったぞ」

「なるほど、執拗に洗礼を受けさせたくなるこの気持ち。陽光神様の思し召しだったということですね。

 遮光などというおぞましい属性は、浄化しなければいけません」

 

 だから違うと言ってるのに、本当にこいつら聞く耳を持たないな。

 しかし、この状況をどう覆せばいいのやら分からない。握る剣の鞘に、じわりとした嫌な汗が伝わった。

 

 直後、何かが爆ぜる音がした。

 

「「「!!」」」

 

 驚愕する二人を横に、俺は後ろを振り返る。見るも無残な扉の残骸と立ち上がる黒煙。そこに現れた人影。

 フードを目深に被ってはいるが、見えるのは黒髪。そこには、先ほど教会内で祈りを捧げていた筈の信者が立っていた。

 

「そこの冒険者! 我輩"怪盗 キャットテール"が助太刀致すにゃ」

 

 そう言って彼女はフードを勢いよくフードめくり上げる黒一色に染められた漆黒そのものを誇るマントをたなびかせた。

 着用するはここが仮面舞踏会だったかと見まがうような仮面。頭に生えてたのは……信じられないことに猫耳。

 夜に紛れるように、夜を誇るように屹立する姿に驚愕すると共に、なによりこいつの風貌に見覚えがあった。

 

「お、お前はガチャ演出に出てくる猫娘じゃないか!!!」

 

 そう、こいつは無駄に煽るだけ煽って碌な装備を出さない腐れゲス野郎なのだ! 

 ゲーム上のガチャの演出の中には星5確定演出、期待度大演出、外れ演出と色々とパターンがある。  

 その全てにSD化されたこの猫娘が関わってくるのだが、異常なほど演出が凝っているのだ。

 特に期待度大演出の時の如何にも大げさな演出が本当に腹立たしい。が、ちょこまかとした演技も可愛らしい。

 全ユーザーが複雑な思いを抱くこいつこそが”怪盗 キャットテール”なのであった。

 

「にゃにゃっ、我輩の事を知っているのかにゃ?! 

 いやぁ、参ったにゃ。地道に遮光(しゃこう)教徒としての活動をしてきた甲斐があったにゃ」

 

 結構な物騒をのたまうこいつのお陰で、武器を構えるエステルとアンクの顔が一層険しくなった。

 

「な、な、な……心底から見損なったぞ、ヴェリ! 

 "自由の旅人"の自由とはテロを行う自由と言う事か! 自由な悪人め! ぶっころしてやる!」

 

 どんどんヒートアップするエステル。

 何か気付いたら貴殿から呼び捨てにされてるし、言動に知性が無くなっていってる……。

 

「もう駄目ですね、これは。陽光の洗礼を何度もかければ真人間に戻ると思いましたがこれは駄目です。

 腐った根っこは元から断ち切らないといけません」

 

 アンクはアンクで目から光が完全に消え失せた。

 もはや言葉は通じないと言うことだろう。

 

「むふふん、陽光教徒なんかに何言われても全然応えないにゃ。我輩の行いこそ正しいと、愚かな君らは知るべきにゃ」

 

 猫娘は自慢そうに今まで来ていたフードの中に手を突っ込む。そこから取り出されたのはまさかのガチャ石であった。

 

「な、そ、それは契約石! 膨大な魔力を誇る神話の時代から唄われていた物ではないか!」

「き、教会の秘奥ともいわれるものを何故あなたが持っているのですか!」

 

 エステルとアンクはかっと目を見開くが、その言葉を遮り猫娘はガチャ石を天高く掲げた。

 

「そもそも我輩達の神様は、"光を遮る"神ではないのにゃ。陽光教徒が勝手に解釈してるだけで」

「「!!」」

 

 猫娘の手の中に集まる膨大な魔力と、虹色の光に二人はさらに警戒を強める。

 俺はとてつもなく嫌な予感を覚えて耳を塞ぎたくなる衝動を抑える。

 

「そう、光さえ遮る……そういう名前に似てる事からこの不幸な間違いは始まったのにゃ

 射幸……って言葉を聞いたことあるにゃ? わくわくする気持ち。止められない気持ち。

 そう、本来は射幸神、我らの神が司るのは──―闇ではなく、──―抽選式購入方式にゃ!!!!」

 

 俺は天を仰ぎ、あまりのしょうもなさに大きな声で「オウマイゴッド」と口ずさんのだった。

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