ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
トキワの森を抜けたリーフはまず初めにポケモンセンターへと向かった。
ポケモンの回復とお金の引き出し、それからご飯を食べるためだ。
やはりというかなんというか、トキワの森で戦った面々の中に何人かバッジ所持者がいたのだろう。
俺が回復を終えて帰ってくるころには、嬉しそうな表情を隠しきれていなかった。
ニビシティで食べるポケモンフーズは妙に歯ごたえがあった。
煎餅でも食べているかのような音が楽しく、くちばしで食むたびに口の中をクラボの実特有のピリッとした辛みが刺激する。
あの木の実、サクランボっぽい見た目だけあって結構柔らかかった気がするんだけど……。
唐辛子が練り込まれた感じでこれはこれで美味しい。
フシギダネは嫌いな味だったせいか、口から火の粉を吹いていたけど。
リーフはといえばシチューを食べているようだ。
ニビシティの名物料理らしいのだが……あいにくと俺はポケモンなので食せませんでした。ちくせう。
ちなみにトキワシティで学んだのか、俺のポケモンフーズは並盛になっていた。
うん、こういうのでいいんだよ。こういうので。
ポケモンセンターから出たリーフは、フレンドリーショップではなくニビジムに向かって行った。
これには色々と訳があるのだが、今は置いておこう。
とにかく次はジムなのだから気を引き締めないといけない。
といってもタケシだし。
最初のジムだし勝てるだろっていう思いが無いわけじゃない。
だってエースが攻撃力ポッポだし。
ヒトカゲならともかくフシギダネだからね。
勝てるでしょ。
なんて、そんな甘い考えが通るわけないことを俺は数分後に分からされた。
ニビジムの内装は岩山をそのままくり抜いたかのようだった。
リーフよりも背丈が高い岩石のフィールドが広がっていて、二階で試合を観戦できるようになっている。
天井には我らがスプリンクラー先輩も備え付けられている。
サイドンに似た石造の前に立っている眼鏡をかけた男性が、入ってきたリーフに声を掛ける。
「オッス、未来のチャンピオン! ここから先、岩タイプの弱点を突けるポケモンを三匹用意しないと入れないぞッ!」
「三匹ですね」
リーフはポケモンボックスを開くと、手持ちにモンメン、マダツボミを追加する。
それをしかと確認した眼鏡の男性は道を通してくれた。
リーフはひとつお礼を言うと、すぐにボックスの中にモンメンとマダツボミを戻した。
……なんというか、誰もが一度はやるよな、それ。
強制イベントで選ばされると置いていきたくなる心理に駆られるの、よく分かるわ。
それからニビジムといえば、
「タケシさんに挑戦なんて1万光年速いんだよ!」
ボールを突き出し宣言する短パン小僧。
出た! 有名な1万光年少年!
一度生で聞いてみたかったんだよな、これ。
なおリーフさん、無慈悲にも俺を使って即退場させていた。
止めてあげて、距離だって訂正する前に唖然としちゃったから。
そんな俺の思いを露知らず、リーフは段差を登る。
リーフの姿に細目の男は顔を上げる。
眉を顰めることもなく、男はリーフたち挑戦者を歓迎する。
「来たな。俺はニビポケモンジム。リーダーのタケシ!」
「私はマサラタウンのリーフ!」
「マサラタウンのトレーナー……これで三人目か」
目を瞑っているのでどうか分からないが、我らのメインヒロインであるタケシは俺たちを睥睨する。
「俺はここへ来る挑戦者に必ずこの質問を投げかけることにしている。お前は何のためにジムへ挑戦する」
リーフはタケシの質問に拳を固めた。
ボールの天蓋からしか外の様子を覗くことはできないが、リーフは少し俯いている様子だった。
「まだ……分からない。これから見つける」
「それも答えの一つだ。では次、そのファイヤーと旅をしてからどれくらい経つ」
「三日よ!」
「三日か……。その様子だと、強さに盛り上がっているといったとこだろう」
タケシってやっぱりジムリーダーではあるんだな。
現状のリーフが持つ考えを見通した。
というか三日でここまで来るのってよくよく考えたらすごくね?
アニメでは二週間掛かっていたのに。
タケシは指をパチンと鳴らす。
するとジムリーダー専用のバトルフィールドが、タケシとリーフを隔てるように浮き上がってくる。
「良いだろう。申し込まれたバトルを拒否する権限はジムリーダーにない。使用ポケモンは三体。交代は両方認められている。道具の使用も禁止だ」
「大丈夫、こっちにはファイヤーがいる!」
「ここは岩タイプのジムだ!」
ほんとにね。
バンギラスとか出てきたら普通に負けるぞ、俺。
流石のタイプ相性無視、使用ポケモン二体という舐めプをされたタケシは苛立ちを隠せない様子で投球する。
「行けっ! イワーク!」
「行って! ファイヤー!」
光を纏い現れ出たのは岩の身体を持つ蛇こと攻撃力ポッポさんだ。
流石にジムリーダーが使うというだけあり、このポッポさん。ファイヤーである俺に恐れもしない。
研ぎ澄まされた眼光を持って戦意マックスなのをぶつけてくる。
当然、俺も負けるつもりはない。
ましてや俺の身体は対戦で使っていたエース級のファイヤー。
攻撃力ポッポに負けるなんて、あってはならないのだ。
いつの間にか立っていた審判が両旗を上げる。
「イワーク! しめつける!」
「ファイヤー! 熱砂の大地!」
でかい岩の身体を持ち上げ、尻尾で締め付けようとしてくるイワーク。
だけど遅いんだよ。
最近改めて思い知ったけど、この世界はゲームじゃない。
つまりは速い方が有利だし、多少相性不利でも立ち回り次第で下剋上も狙えるんだ!
俺は熱々に熱した砂を正面からぶっ飛ばした。
防御方面に強いイワークであっても、特防は非常にもろい。
相撲に押し負け、のけぞったイワークに追撃のエアスラッシュを飛ばす。
俺を締め上げるつもりでいたイワークの巨体がガギンと重厚な音を立てて倒れ伏した。
「イワーク!」
タケシが呼びかけたイワークは、その目をグルグルと回していた。
審判は旗を振り、戦闘不能と裁定を下す。
やっぱりポッポさんはポッポさんだったようだ。
いや強いんだけどね、ポッポさん。
すべてはどう運用するかだから。
攻撃力ポッポなら防御力ザマゼンタで殴ればいいわけだし。
いや、いかなる攻撃をも弾き飛ばし格闘王の盾と恐れ崇められたザマゼンタより固いけどね、この石蛇!
タケシはイワークをボールへ戻すと、次なるポケモンを繰り出した。
「行けっ! ゴローニャ!」