ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
レジロックが起き上がる前に俺は、熱砂の大地を2回ぶつける。
眠気ざま岩石封じを撃ってくるレジロックに、俺はエアスラッシュをぶつけて怯ませてやる。
微々たるダメージしかないだろうけど、怯んでくれる隙を狙って再び熱砂の大地!
ボッと、レジロックの身体に火が灯った。よしっ、火傷を引けた!
「なんだ、あのファイヤーは何をしようとしている。……そうか! だがさせん! レジロック、眠——」
「ギャーオ! (やらせるか!)」
レジロックが眠ろうとする直前、俺は熱した砂を風で巻き上げた。
それを風の刃に乗せ、高熱カッターのようにして飛ばしてやる。
ここまでやれば聡明なジムリーダーのタケシだったら分かるはずだ。
俺がやろうとしていること。それつまり、
怯み運ゲーだ!
そっちが眠るとかいうクソ技使ってくんならこれくらい許されるよなぁ!
エアスラッシュの方がよっぽどクソ?
知ったことかそんなの!
特防100ある岩タイプに勝つんだったらこれくらいしなきゃもう無理なんだよ!
勝ち筋0なんだよ!
だからやってやる! せいぜい怯み続けてくれよ!
もうこっから先は俺とお前の根気の勝負!
お前が怯まなかったら勝ち、そして俺の敗北だ!
非常に分かりやすいだろ。そして単純だろ。
「レジジジ(指示を中止します)」
熱砂の大地を含んだエアスラッシュを受けた岩の巨人の脚が一歩後退する。
Hの部分はまだまだ光り続けていて戦闘不能には程遠く見える。
まだ耐えてくるか!
「耐えろレジロック! 眠ることに集中するんだ!」
「ギャーオ! (それがジムリーダーのやることかぁ!)」
エアスラッシュを打ち込む。
打ち込んで打ち込んで打ち込みまくる。
負けられない!
負けてたまるか!
ここまで来たのに負けるなんてもっぱらごめんだ!
後なんだ。
何をすればいい。
スプリンクラー先輩でも破壊すればいいか。
火炎放射を使えばいいか。
翼の感覚が無くなってきた。
もう羽ばたいているのかすら分からない。
俺は飛行を維持できずに地面に激突した。
炎だって出し尽くした気もする。
熱砂の大地はもう作れないかもしれない。
息も粗い。
ゲームだったらもう、悪あがきになってもいいくらいだ。
それだと睨みつけるだけ残るか。
やだなぁ、ここまで来てただのお笑いエンターテイメントになるのは!
レジロックのガタイがさらにぐらつく。
あっちは熱砂の大地とエアスラッシュだけじゃなく、火傷のダメージも入っているんだ。
もうそろそろ限界なのか、レジロックの点字が明滅しまくっている。
上げていた腕もだらりと垂れ下がっている。
耐久戦の末にやってくる希望の光。
真っ白に輝き続ける道の先へ進み続ける俺に、タケシがにやりと笑った気がした。
「楽しいな! 眠るはもういいレジロック! この一撃! ボディプレスにすべてを込めろ!」
「レジジジ(命令を実行)」
ぼうっとレジロックの火傷が大きくなる。
同時にタケシの指示を聞いたレジロックの点字が全開に輝いた。
ボディプレス。
普段なら軽傷で済む一撃。
だがレジロックは鉄壁をもう三回も積んでいる。
防御だって200もある。
おまけに俺の身体はもう言うことを聞いてくれない。
文字通り千鳥足だ。
ひとつ鈍い音が響いた。
レジロックは両腕を地面に叩きつけ、その巨体を跳びあがらせたのだ。
狙いはもちろん俺。
レジロックの影が俺を覆い、必然とこれが最後の一撃になると確信する。
「ギャーオ! (最後の火炎放射! 受けろやレジロック!)」
レジロックの身体が炎に包まれる。
されど俺の炎じゃレジロックを押し返すなんて到底できるはずはなく。
眼前に岩の身体が見えた瞬間、限界を超えていた俺は全身から力が抜けきったのがわかった。
勝たなきゃいけないのに。
俺が負けたらリーフは……。
それでも審判の判定は無情にも俺に告げられた。
「ファイヤー、戦闘不能! レジロックの——」
俺の意識はそこで途絶えた。