ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
次に目を覚ましたそこはウルトラボールの中でした。
身体はもうどこも痛くない。
テン、テン、テテテン! っと聞きなれた音楽がボール中に響いた。
確か俺はあの時……まさか!
いても経ってもいられずボールの外に出ようとして一度頭を冷静にする。
ジョーイさんに運ばれている最中だ。
勝負の結果が気になって一秒すら待ち遠しいと、俺は意味もなく翼をバサバサと動かしていた。
やがて俺のボールがリーフの手に渡った。
ポケモンセンターから外に出たリーフを見て、俺をウルトラボールから飛び出した。
「ギャーオ! (勝負はどうなった!)」
「どうしたの? ファイヤー」
リーフは突然出てきた俺に対して首を傾けた。
可愛いけどそれどころじゃない。
勝負は! っと再び訴えようとしたら、突然リーフは俺の顔をそっと手で触れてきた。
特性炎の身体だというのにも関わらず、そのまま腕を俺の首に絡ませて、自分の顔元まで引き寄せた。
「ファイヤー」
「ギャオ? (えっと?)」
「改めて、やったね!」
えっと……それはいったいどういう意味で?
勝ったんですか?
ニビジムに勝ったんですか?
サァートシ君はジャケットの裏に付けていたりするんだけど……、リーフさんだと分からないんですけど。
結局どういう意味なのかさっぱりだけど、勝ったということで良いんですね?
気絶してたからまるで分からないんですけど。
フシギダネ君は何か知っているかなぁって思ったけど、リーフが出してくれないんじゃ話しできないし。
大人しく俺はリーフの腰についたウルトラボールに翼を伸ばして収納される。
「ファイヤー……」
何か寂しそうな口調でリーフはぼそりと呟くと、虚空に伸ばした腕を胸に抱きかかえた。
* * *
リーフは何かを言いたそうにしていたけど、数分後にはいつもの表情に戻っていた。
やっぱりニビジムを攻略したってことで良いんだろう。
それにしたってなぜ俺がボールに戻った時、悲しそうな表情をしていたのだろうか。
もっと喜べばいいのに。その方が俺も喜べるんだけど。
だってファイヤーがレジロックに勝つとかマジもんの前代未聞やで!
多分アニメみたいなお情けバッジか、最後の最後で火傷で戦闘不能になったかの二択だろうけど。
攻撃を躱せなきゃレジロックに勝てるはずがない。
「ファイヤーに負けたようなもの……か」
ひとりごちたリーフが次に足を向けた先はニビ科学博物館だった。
50円の見物料金を支払い、パンフレットを受け取ったリーフはポケモンの化石を見学していた。
標本として置かれているのはカブトプスとプテラ、貝の化石。うん、ここまで普通のような気がする。
いややっぱりというべきかさ、アノプス、タテトプス、アーケン、チゴラス、ガラル化石四種まであるじゃん。
流石に遠い地方から取り寄せたんだよな?
もし買えるんだったら化石の竜と化石の魚が欲しい。
リーフはポケモン図鑑を広げ、ポケモンの解説に耳を傾ける。
進化の石やデスマスが持つマスク、デスカーンのレプリカにも目を通す。
時には展示物の隣に張られた紙に目を向け、知識をゆっくりと咀嚼している。
なんというかちゃんと博物館って感じがするわ。
とりあえず適当に展示しとけばいいやっていう適当感の無い、化石や石、古代の歴史というテーマに沿って並べられた規則性のある感じ。
カントー地方の博物館って寂しいからなぁ。
化石を良く見せるためにも照明はほんのりと薄暗い。
ガチゴラスの標本。顎に歯が一本一本並べられ、大口を開けている様には尋常ならざる迫力すら感じる。
ボールの中だと、化石も巨大に見えるからなぁ。
ゲームだと大して興味なかったけどこう見ると案外楽しいもんだな。
おっ、あれ海底遺跡に沈んでいた古代文字じゃね? 読めないけど多分フラッシュと怪力を使うんやろなぁ。
古代の化石ポケモンが生息していた時代かぁ……。
まぁ冠雪原に行けば生きたまま会えるんですけどね!
まさか野性で化石ポケモンが出てくるとか夢にも思わなかったよ、俺は。
けどあれ、おかしいところがあるんだよね。それは、
「ポケモンの化石にご興味が?」
この博物館の職員と思しき白衣を羽織った女性が、じっくりと化石を観察していたリーフに話しかけた。
「図鑑完成のために!」
「博物館では静かにね」
職員の女性は口元に人差し指を立てて「しぃぃ」と息を吐いた。ここが博物館であることを思い出したのか、リーフも同じように人差し指を立てて頷いた。