ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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不穏なリーフ

 

 時刻はヒトナナマルマル。つまりは17時くらいだろう。

 空はもうすっかり茜色。

 つまりは踏みつけメロメロ転がる色。

 お月見山に入る手前にポケモンセンターがあったような気もするけど、確実性を取るならこっちの方が良いだろう。

 ポケモンセンターで夕食を取っている最中であっても、リーフの顔は変わらなかった。

 シチューを食べるスプーンの手は停止していて、その瞳はシチューではなくどこか違う場所を見つめているようにも見えた。

 ご飯を一緒に食べていたフシギダネがそんな主人の様子を心配してか、俺に話しかけてくる。

 

「ダネダネ? (リーフ、どうかしたの?)」

「ギャー。ギャーギャーオ? ギャ? ギャ? (こっちが聞きたい。それよかジム戦どうだった? 勝った? 負けた?)

「ダネフシャ。ダネダネ(勝ったよ。僕もバトルしたかったなぁ)

 

 勝ったのにフシギダネは出なかった? 

 ということは俺が戦闘不能になったのと同時にレジロックも戦闘不能になったパターンか。

 クッソー、もう少し意識を保てれば先に相手の戦闘不能が聞けたのに。惜しいことした。

 

「ギャオ。ギャーギャーギャオ? (マジか。じゃあどうしたんだ。タケシになんか言われたか?)

「ダネ! ダネダネ! ダネフシャ! (リーフに負けたというより、ファイヤーに負けたってさ!)

 

 そりゃ落ち込むわ。

 ジムリーダーは終始、リーフじゃなく俺と対戦している気分だったって言っているのと同じだから。

 これは俺も悪いな。ついバトルに熱中しすぎてて、リーフの指示を聞いてなかったから。

 というより出してたか? 割とタケシの声は聞こえていたけど。

 

「ギャーオ? (リーフは俺に指示出ししてたか?)」

「ダネ(してないよ)」

「ギャー、ギャオ? (俺が勝手に動いていた時の様子は?)」

「ダネダネ。ダネフシャ(なんかね、迷ってた。次どうしよーって感じに)」

 

 聞こえていなかったじゃなく、出していなかったのね。

 勝手に動きすぎてリーフを混乱させてしまったのかもしれないな。もう少しリーフの指示を待つよう自重するか。

 反省。

 とりあえずだ。今俺にできることは、

 

「ギャオ(見守るしかないな)」

「ダネ? ダネダァネ! (行かないの? 僕は行ってくる!) 

「ギャオ(頼んだわ)」

 

 慰める資格など無い。少なくとも俺には。

 だってそれは、今のままで良いって言っているようなものだから。

 タケシの言葉は気にするな。今まで通りリーフは後ろでただ待っているだけでいい。なんて、言えるはずがない。

 そんなのトレーナーとしてダメだし、何より俺自身がファイヤーオンリーで勝てるわけがないのを分かっている。

 少なくともジムリーダーが化け物ってことは分かったし。

 だから今の俺がやるのは次のカスミ戦に置いてどう立ち回るかだ。

 

 水タイプが相手。ならやっぱりあの技を使えるようにならないと。使えるか使えないかで相当状況は変わるからな。

 ボールの中で密かに練習しようと決意し、夕飯を食べようと伸ばしたくちばしは空を切る。

 おいフシギダネ。お前辛いの苦手とか言ったわりにちゃっかり俺の分まで勝手に食うんじゃねぇよ。

 迫力があるとか言っておきながら勝手に食うとかマジ良い度胸だわ。

 ふと顔を上げると、リーフと視線が交差する。

 何か悲しそうな表情をしていたから、俺は何もせずにボールの中へ戻る。

 なんとなく身振り手振りしたり、吠えたりしても逆効果な気がして。

 

 

 

 三番道路。

 お月見山を目指すための道中を歩いていたリーフは、ここでもポケモンの捕獲ラッシュをしていた。

 ……ダンバルいるじゃん! あれヨーギラスじゃね!? ドーミラー、ドータクン発見! 

 ヒトカゲ、クチート、イワンコ、マグマッグ、ノズパス、ダンゴロ、イシズマイにタンドン。その進化系まで。

 おいおい、カントー地方だけで全国図鑑完成するんじゃないのか? これ。

 ポケモンの生息には環境とかも必要になるはずなんだけどな……。少なくともマグマッグがいる場所にクチートとか居ていいのか? 

 ゲームと比べて細かな差異ってレベルじゃないな。

 

「また新しいポケモン! 行くよファイヤー!」

 

 リーフの様子はといえば、一日寝たことでか回復したようだ。

 いつもと変わらぬ声でボールから俺を投げると、野性ポケモンの捕獲に駆り出している。

 

「行けっファイヤー! そこだファイヤー!」

「ギャーオ(エアスラッシュっと)」

「次だよファイヤー! いつもの感じでやっちゃって!」

 

 任されたと俺は自分の判断で技を選ぶ。

 ……これってどうなんだ。まるっきりタケシ戦でのことが生かされていないような気がするんだけど。

 相変わらず使っているの俺だけだし。

 ちょっと俺はリーフに目を向ける。するとリーフは、雲とか風とか微塵も浮かぶことのない晴天みたいな顔つきで頷いた。

 

「決めたの! バトルはファイヤーに任せるって!」

「ギャーオ! (いやそれじゃダメだろ!)」

「うん、そうだよね。ファイヤーならそう言うと思ったよ。私に構わず思う存分やっちゃって!」

 

 リーフは俺の言葉をなんと受け取ったんだ!? 

 自分に都合の良さそうな解釈してんじゃねぇぞ!? 

 言葉が通じないってホント不便だな。しかもポケモンの世界って日本語でも英語でもない謎言語だから、土に書いて伝えることもできないし。

 俺は違う違うって首を横に振ってみる。

 

「どういうこと? ファイヤーの方がバトル得意でしょ?」

「ギャーオ(それだとトレーナーの意味がないじゃん)」

「そうよ。私が指示出すよりファイヤーの考えで動いた方が強いんだよ!」

 

 マジで言葉が通じねぇ!

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