ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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VSロケット団下っ端1

「どうしたの?」

 

 戦闘が終わった後、俺はボールに戻されなかった。先にリーフからそう切り出され、その目は純粋に心配の感情を宿していた。

 いきなりドータクンに怨敵ばかりの火炎放射をぶつけたことに対して慮ってのことだろうな。

 一応ドータクンが耐熱の特性を持っていることも理由にはあるが、根幹はもっと違うところにある。

 関係も罪もない相手を修行の代わりにするのは失礼なのは分かっている。

 分かっているし、こう女の子に純粋な瞳を向けられると、俺としても男の意地など捨てて本当のことを言ってやりたいところなんだけど……。

 言っても通じねぇんだよなぁ……。

 図鑑とかに乗っていないか? そういうの。

 無理だよな。ポケモンの言っていることを自動翻訳してくれる機能とかあれば楽なんだけどな。

 ファイヤーって神通力くらいしかエスパータイプの技を覚えないし、テレパシーも使えないか。

 

「ギャオギャ? (フシギダネって人間の書く言葉分かる?)

「ダネ(分からないよ)」

「えっと……お腹すいたの?」

 

 ほらっ、通じない。

 止めてね、俺を勝手に空腹になるとついイライラしてしまうポケモンにしないで。

 今まで通り並で良いからね? 並々ならぬ量を盛るとか止めてね? 

 フシギダネがいてくれるので食べてくれそうな気もしなくはないが。

 

「じゃあ今日は腕を振るっちゃおうかな!」

「ギャオ(それはとても楽しみだけど、俺リーフのご飯食えないじゃん)」

 

 今まで通りポケモンフーズじゃん。

 それもコンビニ弁当の方がまだ高いよなぁって思うくらい安い奴。

 リーフのご飯、匂いは良さそうなんで気になるんだけどなぁ……なんて考えていると、フシギダネがツルの鞭で俺の後ろを指さした。

 俺とリーフの身体を何かの影が飲み込む。

 

「ダイオウドウ! ヘビーボンバー!」

 

 まったくの死角から飛んできたポケモンの攻撃を、リーフを庇いつつ躱せたのは奇跡に近かった。

 フシギダネの喚起。それとトレーナーであるリーフも対象だと脳が先に理解してくれたおかげだった。

 地面が喉を鳴らして唸る。天井にまで伝わっていた細かな振動により、パラパラと細かな瓦礫を落ちてくる。

 先ほどまで俺たちが居た場所に巨大な鋼鉄の身体を持った像が砂煙を纏いながら立っていた。

 

「待ってたぜ。お前がここに来るのを」

 

 俺とリーフを害する第三者の声。

 その声は俺とリーフから見て正面にいるダイオウドウの向こう側から放たれた。

 いきなり攻撃を、それもポケモンじゃなくトレーナーも纏めて攻撃をしてくるとか誰だ。

 なんて俺が声のする方へと威圧感たっぷりに睨みつける。

 次第に煙が晴れていく。スクリーンと化した煙からは、黒いシルエットの正体がはっきりと浮かびあがりその答えを映し出した。

 闇夜に紛れるのに最適な色をした、悪を示す漆黒のキャップ帽と制服。

 真っ黒いスーツの胸には見ればすぐ分かるほど、存在感たっぷりな赤いRという文字が刻まれていた。

 この姿、そしてトレーナーもろとも攻撃してくる所業。

 間違いないこいつは、

 

「俺はロケット団の……まぁいいか。そのファイヤーを手に入れたらもう用はないんだしな」

 

 ラブリーチャーミじゃ無い方の敵役! 

 相手の物言いにカチンと来たのか、リーフは腕を振りかざして言い返す。

 

「はぁ? この子は私のポケモンよ!」

「そうか。なら明日からはロケット団のポケモンだッ! ダイオウドウ! いわなだれ!」

 

 ロケット団の指示に、幽鬼の如き毒々しい紫のオーラを放ち、迸るほど赤く血走らせた目を持つダイオウドウが「パオー!」と前足を地面に突き刺した。

 鈍い音に呼応するかの如く、虚空から異次元への入り口のような穴が開く。かと思いきや、小さくない岩石の塊がにわか雨のように降ってきた。

 狙いは俺とリーフ、両方か! 

 俺はリーフの着ている服の首回りをくちばしで咥えこむと、その場から急いで退避する。

 服が伸びるのは許してほしい。全部ロケット団のせいだから! 

 

「それっ! お前らも行けっ!」

 

 ロケット団員はポケモン勝負の掟をガン無視し、持っている12個のモンスターボールを放り投げた。

 中から飛び出たのはまぁ俺対策に集めたのか水タイプや岩タイプ、電気タイプの皆々様。レイドの3倍とは嬉しく思うね! 

 しかもご丁寧にみんな赤く目が迸っていて、紫のオーラが現出している。

 敵意とか戦意とか、そういうちゃちなものじゃ断じてない。

 殺意や憎悪にも近いドロッドロのスライムみたいな感情をそのまま目に宿してぶつけられている気分だ。

 俺から降ろされたリーフは腕を振り上げて抗議する。

 

「ちょっと! トレーナーが持てるのは一度に6匹まででしょ!」

「俺はトレーナーじゃなく夢を吐き捨てた大人ちゃんさ。そんな子どもが良い子ちゃんのように守るルゥールを守ると思ってのかヴァーカァガヨォ!」

「ポケモンバトルはポケモンリーグが決めた正式な試合よ! それにファイヤーを奪うって何よ! あんたにどんな権限があって!」

「強いポケモンのためなら無理な育成も繰り返すトレーナーから救うべく、慈善活動をしているのさぁ! こいつらもトレーナーになるかもしれない、しょんべんくせぇガキがペットにしてたから救ってきた可愛いパートナーさ! くぅー! 俺様ってば良い奴だよなぁ!」

 

 煽るなぁ……。あと無駄にセリフが長いわ。

 リーフはギリギリと拳を握りしめる。眉を中央に寄せ、ある限りの戦意を目に込めて使い走りに叩きつけている。

 それを使い走りは鼻で笑う。その目は13匹のポケモンでもなく、リーフでもなく、俺でもない。腕を広げて高笑いする様には、別の何かを見つめているように見えた。

 馬鹿じゃねぇの。ロケット団ってのはさ、世界征服のために強いポケモンが必要だから奪うんだよ。

 だから一番効率よく強いポケモンを入手するために、準伝説のポケモンに目を付けたり、トレーナーから奪うことを生業のひとつとしている。

 ただのポケモン、強くないポケモンなんて欲していない訳よ。

 

 それにさ、こいつ言ったな。子どもからペットのポケモンを取り上げるって。

 

「ギャーオ! (子どもからしか奪えねぇのかよ雑魚が!)」

「ファイヤー……。うん、そうだよ。こいつは絶対に許せない!」

 

 リーフは戦う覚悟を決めたようだ。キッとせせら笑う黒い雑魚を睨みつけた。

 

「速攻で終わらせるよファイヤー!」

「お前の色違いファイヤーを捕まえれば幹部昇進も夢じゃない!」

「ファイヤー! 熱砂の大地! 使い方は任せる!」

 

 使い方を任せたらダメだろと思ったけど極めて了解! 

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