ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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VSロケット団下っ端2

 指示通り俺は登場した12匹のポケモン全てに、満遍なく飲み込むように熱々に熱した砂の津波をぶつけてやる。

 これでやられてくれればよし。やられなかったら、

 

「何やってんだお前ら! さっさと一斉攻撃しろ!」

 

 黒い雑魚がいきり立つ。

 しかしポケモンたちは俺を完全に見失ったようで、攻撃があらぬ方向へと飛んで行く。

 当然だよな。俺が疑似的な砂起こしをやったんだから。

 この砂起こしは今も続けている。

 継続的なダメージが焦りを呼ぶ。黒い雑魚は明確な指示を与えてはくれない。

 どこへ打てばいいのか分からなくて当然だ。

 だって目が見えていないんだから。

 それでもダイオウドウ以外の12匹のポケモンのうち、6匹は目つぶしが効かなかったようだ。

 俺の影でも捉えることができたのか、ポケモンたちは俺に照準を定めると口やたてがみを大きく膨らませた。

 だから俺は、

 

「ギャ────ー!!」

 

 なるべく洞窟内に響くのを意識して劈く咆哮を打ち出した。

 リーフと黒い雑魚がすぐに鼓膜を守るようにして耳に手を当てた。

 まだまだ止まらない。ダイオウドウに指示を出さない限り、ずっと俺のターンだ! 

 俺はさらに宙を羽ばたき、砂の真上から火炎放射をばらまいてやる。

 洞窟内でも自在に飛びながらこの攻撃ができるのは、ひとえに天井が高いおかげだろう。

 それにこちらからも砂のせいで見えやしない。だが、的の数は多い。

 視覚は潰した、触覚も役に立たない、聴覚を頼ることもできない。

 おまけに13匹もポケモンが密集しているんだ。嗅覚だってほとんど役に立たないだろ! 

 

「なにしてる! 上だ! 上にいるだろうが! 誰がてめーら愚図をバトルに使ってやってると思ってるんだ!」

 

 まぁまぁ下品な言葉を御吐きになられますようで。

 ゲームならともかく、ポケモンバトルって子どもがやるものではない……って聞いたことがあるんだが? 

 そして馬鹿だろ。俺が何の策もなしに上空へと飛び立つと思うか? 

 

「天井が!」

 

 13匹のポケモンが一斉に放った特殊技はひとつに収束し、洞窟の天井を暴虐の限り穿つ。

 すると天井は音を立てて、岩石を吐き出した。

 こうなるだろうなってのは、最初のダイオウドウの一撃で予想済みだ! 

 ほいっ、おまけに地面に降り立ち熱砂の大地っと! 

 

「おい待て! ふざけんなよ焼き鳥がァァ!!」

 

 慌てふためく黒いフェローチェ以下の雑魚……だとあれか。ヒードラン以下の……でもなんかあれだな。雑魚でいいやもう。

 リーフはというと、「すごい……」と感嘆の息を漏らしていた。

 いや、あなた主人なのでこれくらいの作戦は立ててください。戦うの俺なんですから。

 

 最後に暴れすぎたな、雑魚。

 ここにだってトレーナーはいるんだぜ? 当然野性ポケモンもいる。

 天井を落石させるほど暴れたんだぜ? そんな騒ぎ起こしたら

 

「何だあいつ13匹でバトル挑んでるぞ!」

「あの子傷ついてないか? 助けようとしているんじゃ」

「違う! あのファイヤーはあの女の子のポケモンだ! 色違いだから間違いない! 守ろうとしているんだ! あの男から!」

 

 集まってくるに決まってるよなぁ! 

 そして13匹もポケモンを出して戦っているお前にヘイトが向くに決まっている。

 なんというか、俺から言えるのはただ一つだ。

 

「ギャーオ! (ポケモンバトルのルールは守れ!)」

 

 そもそも13匹に一斉に明確な指示を送れるわけないだろ! せめて3匹だ! 

 ポケモンの技も4つだから戦術性が生まれるし、色んな活用をしようと思うし、発想を生み出そうとできるんだ! 

 何でもかんでも使える数を増やせば強くね? なんて思うのはそれこそ子どもだぞ、間抜け! 

 

「この役立たず共が! もうお前らはいらねぇ!」

 

 ロケット団の男は不利と分かるや否や、自分の持っているすべてのモンスターボールをばらまき踏み壊した。

 こいつ、ダイオウドウのモンスターボールまで破壊したぞ。何考えているんだ!? 

 

「あれを根こそぎ手に入れちまえば——」

 

 俺とリーフ含め、周囲のトレーナーが唖然としている隙に逃げ出す雑魚。

 野性と化したポケモンたちが力の限り暴れ始めたので追おうにも追えない。

 

「ファイヤー! 戻ってきて!」

 

 結局奴の逃走を許しちまった。カイロス並みに逃げる奴だ。

 リーフの方で何かあったのかと、指示を聞いた俺はリーフの元へと降り立った。

 

「みんなを捕獲、保護するよ! 手伝って!」

 

 指示をくれって駄々こねている場合じゃないな。

 リーフはモンスターボールを大きくすると、あの下っ端が逃がしたポケモンたちに目を向ける。

 周囲のトレーナーたちも事態の深刻さを飲み込んだのだろう。それぞれ自分たちのポケモンを繰り出し、リーフに続いてモンスターボールの捕獲を手伝ってくれる。

 

「これで最後!」

 

 リーフの投げたモンスターボールがダイオウドウの胴体にコツンと当たる。

 慣性に従い一度跳ね返ったボールは赤い光を伴いダイオウドウの巨体を飲み込んだ。

 揺れる。揺れる。揺れる。リーフがお願いと手を結び、ボールの行く末を見守っていた。

 カーンとボールから三つの星が浮かび上がる。捕獲に成功したようだ。

 リーフはいつものようにモンスターボールを手に取った。

 その表情が映し出していたのは、いつもの弾ける笑顔ではなく、あの雑魚からポケモンを救い出せたことによる安堵であった。

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