ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
すべてが終わった後、お月見山に集まっていたトレーナー一同、集まっていた。
今は緊急事態なので、いつさっきのような雑魚に襲われないか心配なため、それぞれ相棒ポケモンを外に出したままだ。
まず一番に遭遇したリーフからさっきの雑魚について一から全部話し始めた。
そのうえで何か知っているものがいないかと聞いてみたものの、誰もかれも口を揃えて知らないとのこと。
いやどう見てもロケット団以外の何者でもないような気がしなくもないのだが。
他から見たら奇抜な格好をしている犯罪者にしか思えないのだろうか。
思えばあいつ自分がロケット団であるとは言っていないかったもんな。
せいぜい幹部昇格とか口走っていたことから、組織的な犯行であることを読み取れるだけで。
一度ジュンサーさんを呼んで捕獲したポケモン諸々含めて話そうという流れになったが、気がかりなのは最後に口走った根こそぎ何かを手に入れるという発言。
俺から見てまだまだ子どものリーフは気づかなかったが、トレーナーのひとりがこのことに気が付いたようだ。やるやん!
といっても、多分月の石やろなぁ。あんなんガラル行けばいくらでも掘れるがな。
集めて何するんだって話だよ。
ほかにも先ほど捕まえた紫のオーラを放つポケモンたち。
彼ら彼女らが放つ技のひとつひとつがとんでもない威力を誇っていた。
その上、どう考えても明らか普通じゃない方法、人為的に力を引き出しているよう見える。
もしもダイオウドウの攻撃が当たっていたらと思うと、途端に鳥肌が立つ。俺もう鳥だけど。
ジュンサーさんを呼んでいる間、改めて紫のオーラを放つポケモンを出してみようという話になった。
危なくないかという意見もあったのだが、いざとなったらなぜか意味不明に俺が押さえつけるというという話になった。
それであのポケモンを出してみたものの拍子抜けだった。
紫のオーラを放つデルビルは暴れることなく、ボールから出したトレーナーをじっと見つめている。
だけど俺はすぐに感じとる。多分、この場にいるリーフと未熟なトレーナー以外の全員が感じ取ったんじゃないだろうか。
このポケモンは明らかに異質だった。
真っ赤に濁った瞳。先ほどまでとは違い、暴れる様子こそなかったものの、何かの感情を映しているようには見えなかった。
それは俺に対してもだ。
ポケモンバトルをした後、多かれ少なかれ相手に対して何か感情を抱くのが普通だと思う。
だけどこのデルビルときたら、指向性の無い憎悪や殺意といった感情だけが滲み出るだけ滲み出ていて何もしてこない。
前の主人はもう見限った。今の主人はあなただからあなたの指示を聞きますと言わんばかりに。
なんというか、生物兵器といった言葉が正しいか。
ダークポケモン?
いや違う。ダークポケモンなら普通の人には分からないはずだし、特別なダーク技を使うはず。
じゃあこのポケモンはいったいなんだ?
定まらぬ感情を剝き出しにしながらも、この場にいるどのポケモン、どのトレーナーにも向けることのないこのデルビルはいったい何なんだ?
バトルをしてみれば分かるか? と誰かが言った。
けど、何も分かっていない状態でバトルを行うのは危険すぎた。
もしまたトレーナーの意図しない力を引き出し、その結果お互いのポケモンに何かあったら。
そんな話し合いの中、空気になっていたリーフが手を上げる。
「私のファイヤーなら余裕よ!」
止めて! と思ったけど案外良いかもしれないな。
俺が使っていたファイヤーならあるいは、このポケモンの攻撃をいくら受けたとしても倒れやしないと思う。
間違いなく痛いけど。
「大丈夫? ごめんね、勝手に」
「ギャーオ! (頼んだよ! くらい言えっての)」
「うん、頼んだよ!」
勝手に決定づけた手前か物凄い申し訳なさそうに俺の顔を伺ってくるリーフ。
おいおい、俺はリーフのポケモンなんだぜ? トレーナーが決めたなら付き合うのがポケモンってものさ! 知らんけど。
俺はそんなリーフに自身の良さをアピールするかのように翼を広げてやった。
多分、初めて俺の意思がリーフに伝わったかもしれないな。
というわけで一度、先ほど紫のオーラを放っていたポケモンであるラクライで試してみることに。
一見、爽やかそうな雰囲気を持つ青年が言うには、デルビルだと申し訳ないが火力足りないかもしれないとのことだ。
んで、軽く10回ほど10万ボルトを撃ってもらったわけだが、めちゃくそ痛い!
体内をガツンと響かせる凶悪無比な稲妻。翼を動かそうとすれば、痺れが伝わったせいか動かすのにも意識を向けなきゃいけなくなるほどだった。
リーフに心配させたくないんで無理やりにでも飛んでやっているけどな!
なるほどこれがHP1で残ったり、状態異常が勝手に治る理由か。割と根性論だわ。
これは明らかにラクライが出せる火力じゃない。そう、レッドが使っていたピカチュウと同じ火力だ。
そして俺たちの総意を体現するかのように、一回10万ボルトを撃ったら何もしてこなくなるラクライ。
不気味なほど動こうという意思を感じられないそれは、トレーナーにとって都合の良いように造られた存在のようだった。
青年がボールを構える。
トレーナーが違うというのに、最後まで抵抗することなくボールの光線を受け入れるラクライ。
俺はリーフから応急手当を受け、体力を全快にしていた。
ジュンサーさんを待っていると、先ほどのラクライを捕まえた青年がリーフに話しかけた。
「話は俺たちで付けておくから、そっちはあの男を追ってくれないか?」
どうやらこの青年は、ファイヤーを持っているリーフならすぐに逃げた男の企みを食い止めることができるのではないかと判断したらしい。
「何かあってからじゃ遅いだろうが。ピッピが月の舞をするのは今日の夜なんだろ? ジュンサーさんに拘束されるのを含めると、時間が足りないかもしれないぞ」
だから青年は他の人にも証人になってもらいたいと、ここに居残ってほしいと提案。
紫のオーラを放つポケモンたちを捕まえたトレーナーは、みなポケモンのためならと快く引き受けていた。
目に見えるだけでもリーフを除いて5人くらいトレーナーが集まっている。
リーフは青年の目をじっと覗き込むと、ひとつ頷き自分の捕まえたポケモンのモンスターボールを差し出した。
「このポケモンたち、あいつは人から奪ったって。ジュンサーさんに頼んで元の人たちへ帰してあげられないかな?」
「分かったよ。それもジュンサーさんに伝えておくぜ」
「頼んだわよ! 行くよっファイヤー!」
リーフは青年を信じると判断したようだ。
青年は捕まえた紫のオーラを放つポケモンたちが入ったモンスターボールを丁重に受け取り、再度「こんな行い、許されることじゃねぇしよぉ!」と怒りを露わにして見せた。
そんな青年の様子にリーフと俺は振り向くことなく、先ほどの雑魚を追いかけお月見山を進んでいった。