ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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ピッピゲット

 

 まずいよな。ただの雑魚相手にこんな無様な姿晒すとか。

 どっちかというとポケモンだけが無駄に強かったわけだが。

 あれ流石に、組織本部から支給されたポケモンだよな。じゃなきゃ下っ端が持っている強さじゃねぇ。

 序盤からレベル60くらいの奴出されている気分だ。それも強化された。

 

 リーフはもう泣き止んでいる。ポケモンのために流した涙、見ていいのか分からなかったので目を背けておいた。

 もうちょっと鍛えないとなぁ……。といっても、努力値は無理だろうな。

 どうすっかなぁ。なんて考えているうちに、気が付けば俺の目の前にピッピがいた。

 

「ピッ、ピッピ(あの、その、助けてくれてありがとう……っピ)」

「ギャオ(まぁ、そんくらいは)」

「ピッ(……優しいんですね、ピッ)

「ギャオ。ギャーオ(リーフの指示だしな。俺も許せなかっただけだ)

「ピッピピッピピィ(良いトレーナーさんに……巡り合えたんですねっピ)」

 

 ほんとにな。兵器として利用されるとかまっぴらごめんだわ。

 人の考えていることとかまるで伝わらないし、勝手に曇ったりするけど、それもポケモンのことを第一に考える優しい心の持ち主だからと、リーフに目を向けてみる。

 あちらはどうやら、月の石を貰い受けているようだった。

 外に出てきたフシギダネも一緒に飛び跳ねて喜んでいるよ。

 

「ありがとう! ピッピ、ピクシー!」

「ピックシー(改めて、助けていただきありがとうございます)」

「「「「「「「「「ピッ!」」」」」」」」」

「ピックシー! (お礼を込めてピッピたち、舞を再開させましょう)」

 

 ピクシーは指を月に掲げて石段に上る。

 俺の近くにいるピッピも一緒になって跳んで移動し、ピクシーの下へと集った。

 再び始まるピクシーとピッピの舞。

 やっぱり動き自体は簡素だ。激しい動きを必要としていない。

 されど月の光を受けながら踊るピッピとピクシーは変わらず幻想的で。

 正しく妖精だった。

 

「ファイヤー……。私、やりたいこと決まった。あいつらを止める。マリルリやブロスターのように、良いように使われているポケモンたちを助けてあげたい。悲しい目に合わせたくない」

「ギャオ。ギャ(行き過ぎには注意な、それ。Nになるから)」

「だからそのためにも力を貸して。私は強くならないとだから」

「ギャーオ(もう既に力を貸しているよ)」

「ファイヤー、ありがとうね」

 

 舞の終わりにピクシーとピッピが跳ねた。

 

「ピックシー! (最高の宴を)」

「「「「「「「「「「ピッ」」」」」」」」」」

 

 満月に黒色の雲がかかる。

 幻想世界の帳は閉じ、舞台に静寂が訪れる。

 拍手を鳴らすリーフ。

 ピクシーとピッピたちは今一度リーフにお辞儀をすると、山の中へと帰っていく。

 最後に何かを話し合い、握手を交わしたのちに夜闇の中へと身を溶かす。

 一匹、また一匹と消えていき、そして誰も——

 

「ピッ!」

 

 いなくなってなかった。まだいた。

 ピッピはリーフの足を指で突き、何か物欲しそうな顔で見上げている。

 リーフはピッピと目線が合うようしゃがみこむ。

 

「どうしたの? 仲間が待ってるよ」

「ピッ! (その、リーフについていきたい!)」

「えっと?」

「ピッピピッピ! ピィ! (リーフについていく! 一緒に行きたい!)」

 

 ピッピはリーフの持つモンスターボールを指さすと、自分に当ててくれといったジェスチャーをする。

 鈍いリーフもこれには気づいたのだろう。モンスターボールを手に取ると、「これ?」と首を傾げて見せた。

 ピッピは頷くと、自発的にモンスターボールに手を触れる。

 

「えっ?」

 

 赤い光がピッピを包み込む。

 ピッピは抵抗することなくボールの中へと飲み込まれていき、遂には3つの星が現れた。

 

「ピッピ、ゲットしちゃった。こんな、ポケモンの方からゲットされに行くのもあるんだ」

 

 いやリーフさん。俺もだからね。俺も自分からゲットされに行ったからね? 

 目をぱちくりと動かし、困惑のままリーフはピッピの入ったボールに目を落とす。

 気のせいか俺には、ボールの中でピッピが喜んでいるように見えた。

 

 

 

 お月見山から出て4番道路にやってきたリーフ。その腰には三つ目のモンスターボールが付けられている。

 そういや理科系の男に出会わなかったな。レッドかグリーン辺りが戦ったんだろうか。

 あの人の言い分って個人的には何にも間違っていないと思うのは気のせいだろうか。

 

 そんで4番道路って特になんもない。ハナダの洞窟も上方面から向かうわけだし。

 トレーナーに出会うわけもなく、新しい野性ポケモンに会うわけもなく、メガトンパンチとキックを覚えるわけでもなく、距離も決して遠いわけでなく、

 

「さて、どこ行こっかな!」

 

 ハナダシティのポケモンセンターから出てきたリーフは両腕を上げて伸びをする。

 太陽はまだ真上に上り切っていない。昼食にするのはまだ早いだろう。

 ここにもジムがあるので少しくらいゆっくりしたいところだけど……。

 

「ボンジュール! よぉ、リーフじゃん!」

 

 だよなぁ、グリーン来るよなぁ。

 

「お前見たか? お月見山のピッピの踊りを」

「うん! 見た見た! グリーンは?」

「俺? それがよ、あの黒い奴。ロケット団だっけ? あいつらに邪魔されてよ」

「勝てたの!? すっご」

「まぁな! ほら俺、天才だし」

「なら私のファイヤーも天才だ!」

「なんだ、やっぱりお前も勝ってんじゃねぇかよぉ!」

 

 何度も思うがリーフとグリーンって仲良いよな。今も肩を組んで笑い合っている。

 ほんと、幼なじみって感じするわ。分かりやすく言うと、闇落ちしていない。

 グリーンの目。ラムネ瓶のように透き通っている。これから濁るんだろうか。

 少年時代のグリーンって最強を目標に、ポケモンに愛情を注ぐことなくただ強さだけを求め続けた。

 多分、何度戦っても勝つことができなかったレッドに対して劣等感を抱いてもいたんだと思う。

 ただただ純粋なまでに強さを求めた。

 互いの教育方針の違いで交換したって話を聞いたこともある。

 その時グリーンから帰ってきたレッドのポケモンたちが好戦的になっていたとか笑ったわ。

 まさかグリーンは好青年になって、レッドは強さを求めて白金山に引きこもる、逆になるなんてな。

 

 グリーンとリーフが話をしていると、赤い服に赤い帽子を被った少年、レッドの後ろ姿が。

 最初に話しかけたのはグリーンだ。

 

「よう! こんなとこうろちょろしてどうしたんだ!」

「……」

「俺か? 色々捕まえられて絶好調だぜ! レッドはどうだ? 俺に見せてみろよ!」

 

 グリーンは腰のボールを手に取り放り投げる。

 青い光を伴い中から現れたのは……ピジョンだった。

 えっ……。弱ない? 

 ポッポかピジョットなら分かるけど。

 

「……」

 

 レッドが繰り出したのはピカチュウ。

 そのあとは、

 ピジョンVSピカチュウ

 ケーシィVSフシギダネ

 コラッタVSヒトカゲ

 ゼニガメVSヒトカゲ。及びピカチュウ

 二人が繰り広げるバトルは決して観客が盛り上がるような、凄まじい技の応酬とかは無い。

 けれど白熱とした試合なのは間違いなく。グリーンとレッド、二人の顔には笑みが浮かんでいて楽しそうだった。

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