ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
レッドって普段から無口なんだな。ここに来るまでずっと言葉を発さなかったとか。
バトルの時どうすんだよって思ったけど、なんとなく言いたいことが分かるらしい。
何それみんなエスパータイプ持っていんの? そもそもレッドがエスパータイプなの? スーパーマサラ人超えてゴッドまで行くの?
それでよくタケシを攻略できたな。てかなんも言われなかったの?
いや、言いそうにないな。あの人、トレーナーの行動や口じゃなく、その奥に秘める意思とか志を視ようとしている感じあるし。
なお、レッドと生活を共にしてきて一番辛かったのは食事らしい。
毎食レーションかカロリーメイトかポケモンフーズって。
そりゃキツイわ。おかげでポケモンセンターは天国のようだって。
今日ほどリーフに土下座してお礼を言いたくなったのは初めてかもしれない。
今日は本当にバトルをする気がないらしい。
ポケモンセンターから出たリーフはレッドの手を取り、そのままブティックに駆け込んでいった。
ここブティック屋なんてあったっけ? とか考えていたらチャリを100万掛けて売ってくる、ぼったくり自転車屋がそれだった。
潰れるよな。ただでさえポケモンに乗って移動した方が速いうえにたけぇし。
支店の方が安いし。おまけにどっちもチケットで交換できるし。
三年後辺りで客足全部持っていかれていたよなぁ、なんてイベントを思い出しながらリーフのショッピングを覗く俺。
表情でわかる。レッドさん、ものっそい嫌な表情しているよ。
ファッションとか完全に興味ないタイプの人間だもんね。分かるよ、うん。
ダウンジャケット、帽子を実際に試着して見せ、レッドに似合うかどうか訊ねている。
双子だからいたたまれないだろうな、これ。
なお、フシギダネとピッピも外に出て一緒にリーフとファッションを楽しんでいる。
あの子たち、メスだもんね。おしゃれとか興味あるよね。
迷彩カラーの帽子やジェントルマンが持つような杖を握ったりして、楽しんでいるよ。
なお、ハナダシティというだけあり服は、ビキニから一般水泳用の水着といったり、青色を基調とした涼し気なものが多い。
最新のトレードを抑えたものとか、中にはあるんだろうね。知らんけど。
俺もあんまり服は2着あれば十分派の人間だからなぁ……。
女子の買い物に付き合わされる10代男子の気持ちを考えろ。
答えは間違いなく興味ない、だろうな。そして無駄に疲弊する。
俺としてもリーフの水着とかはしゃいでいる姿を見るのは至福のひと時といっても良いんだけど、……どうにもレッドに共感してしまうのが。
仕方ない。
俺はボールから勝手に外へ出る。
「なに? ファイヤーも被ってみたい?」
リーフはものすごい現代アイドルもかくやというべき楽しそうな笑みを浮かべ、帽子を持ってじりじりと歩み寄る。
……あっ無理。可愛い。リーフさんマジ可愛い。
ウキウキしているリーフさん、超可! 天真爛漫を地で行く女子やわ。
こんな子と買い物できるチャンスを、俺はわざわざ不意にするのか!
そんなこと、そんなこと!
俺はそっとレッドに首を向け、窓の外を翼で指した。
「身体を動かしたいの? しょうがないか。レッド、ファイヤーがバトルしたいみたいだから頼んでいい?」
うん、考えてみたらここで逃げなきゃ人形にされるのは俺の方だわ。
何なら戻ったらそれはそれでなんで出てきたの? って感じなる。
だったらもうバトルしかないわ。選択肢ひとつしかないわ。
リーフの頼みを聞いたレッドは、それはもう瞳を輝かせながら何度も頷き、ブティックから飛び出した。
お前、そんなに苦痛だったのか。
双子ならさもありなん。
俺は翼をはためかせ、ピカチュウを出して準備満タン、苦しみから解放された分楽しむぞ! といった感じの表情を隠しきれていないレッドの後を追った。
バトルしなければ良かったと思う気持ち半分、リーフの買い物マジで長すぎてレッドの気持ちもよく分かったという気持ち半分。
まさか服屋から出るころには3時過ぎてて、次の店舗へ。
終わる頃にはもう夕方過ぎているっていうね。全部同じ服屋だろうに。
その間ほとんど休みなくレッドの手持ちポケモンとほぼほぼ回復なしで戦わされた。
こいつらの容赦ない部分。正しく双子だわ。
バトルの最中、レッドのポケモンのヒトカゲとフシギダネが共に進化しちゃったし。
終いにはリザード、フシギソウ、ピカチュウ対俺の3体1で戦わされた。……勝ったけど。
戦っているうちに周りのトレーナーもなんだなんだとバトル挑んでくるし。当たり前のようにガブリアス出してくるの止めてくれません?
* * *
そんなこんな久しぶりの休日? を満喫した俺たちは夕食を食べ終えた。
俺たちはボールに戻し、リーフから感謝の言葉を貰う。
レッドとリーフはポケモンセンターで部屋をひとつ借りる。
最初こそ男女で1部屋なのはと渋るジョーイさんだったけど、双子だと伝えると納得して通された。
通された部屋で一晩過ごした俺たちは気持ち体力全快になっていた。
朝食を取った後、ポケモンセンターから出てきたレッドとリーフ。
「おーい、レッド君、リーフちゃん!」
二人を呼び止める声が聞こえた。
青を基調とした警察服に身を包み、青緑の髪を後ろでひとつに纏め、赤い口紅をつけた大人の女性。
ジュンサーさんは手を振りながら、レッドとリーフへと走り寄る。
レッドは帽子の唾を握り、リーフは「こんにちは」とお辞儀をしてジュンサーさんを迎えた。
「はい、こんにちは。実は二人に頼まれてほしいことがあって」
「ジュンサーさんが私たちにですか?」
「ゴールデンボールブリッジの先に、ポケモンボックスの開発者のマサキさんが住んでいるの。先日保護してくれたこの子たち、シャドウ化してしまったポケモンたちを元のポケモンに戻してあげられないか訪ねてきてほしいんだ」
ジュンサーさんはそう言うと、カプセルに入ったモンスターボールを差し出してきた。
恐らくシャドウ化しているポケモンだと見分けがつくようにしているのだろう。シールが貼られている。
シャドウ化を治す方法ね。
マサキよりもオーキド博士辺りを頼った方が良いと思うんだけど……。あれなのか、分野が違いか。
レッドとリーフは返答の代わりに、ジュンサーさんから差し出されたボールを手に取った。
「マサキさんに聞いてくればいいんですね」
「そう、噂によればかなり変人らしいから気を付けて。本当なら私の仕事だけど、今はロケット団騒ぎに追われているせいで手が離せないの。頼んだわ!」
早々に言葉を紡ぎ終えると、同じ警察関係者であろう人の下に行って報告をしている。
それも終わると、矢継ぎ早に次の仕事場まで駆けていく姿を晒していた。どうやら本当に忙しいらしい。
「……」
「そうねっ、行こっ!」
レッドとリーフは互いに頷きあうと、マサキの家を目指して走り出した。