ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
シャドウ化とはポケモンの心を閉ざすものである。
シャドウ化とはポケモンの持つ潜在能力を無理やり引き出すものである。
シャドウ化とはポケモンの身体に負荷をかけ、普段の何十倍もの威力を誇る技を放つことが可能である。
シャドウ化とはポケモンの意思や身体の状態を無視して、無理やり動かさせる技術である。
シャドウ化とはボールから出したトレーナーの指示を無条件で聞く非常に都合の良い存在である。
シャドウ化ポケモンは、その日の気分や体調といった物に作用にされない完璧なポケモンである。
シャドウ化ポケモンは手順さえ踏まえれば、どのようなポケモンであろうとシャドウ化できる。
そしてシャドウ化ポケモンはその性質上、普通のポケモンに比べて寿命を迎えるのが速い。
なんて身体の節々から怒りが込みあがる話だろうか。感情を持たないなんて、なんて悲しいポケモンたちだろうか。本当になんて、
なんて人ごとじゃない、笑えない話だろうか。
トレーナーのために創られた、物言わぬポケモン。
トレーナーにとって都合の良い、強くて育て甲斐のある、いくらでも替えが利くポケモン。
決して逆らったりしない。使うだけで自分もエリートトレーナーの仲間入りを果たせる夢のポケモン。
強くなければ次の同一ポケモン。才能がなければ見向きもされない。勝てなかったら、その時点で捨てられる。本当に、
俺たちが普段やっている孵化厳選とどっちがマシなのだろうか?
違うのはポケモンの尊厳を奪うことだけ。いやそれすらも、厳選をするプレイヤーは奪っているのかもしれない。
栄養ドリンクの買い占め。遺伝技の強要、色違い厳選に秘密の特訓、挙句ミントを嗅がせて性格の強制だ。
生まれた時点でLV1のポケモンを逃がす、のも追加しておくとしよう。
もし、もしもだ。
もしシャドウ化はトレーナーに見向きもされないポケモンたちが持つ、唯一の救済措置だったら。
これでまたトレーナーに振り向いてもらえる、とか考えてシャドウ化を受け入れるポケモンがいるとしたら。
考えすぎた、……居るわけないよな。そんなの。
ともかくシャドウ化の齎すメリットとデメリットは今この場で説明なされた。
ポケモンボックスを開発した天才、マサキによって。
「いやまてぇーい! ちょいと自分ら重過ぎるんちゃうん?」
「許せない。弱った心に刷り込みシャドウを植え付けるなんて!」
「それとみぃーよ! あのな? さっきから自分たちピッピと話してるんやで? ちぃーとくらい、驚いてくれたってもええんやで? てか、後生だからワイの頼みもきぃてくれや!」
ポケモンが話すのは普通だと思う。ギエピーとかギエピーとかギエピーとか特に。
リーフとレッドはマサキの家に駆けこんだ。
最初こそ「助けてくれやぁ!」と人間の言葉を喋りながらこっちに来るピッピに困惑。
自己紹介で「ワイピッピ! ちゃう、マサキや!」と鉄板ネタを披露。
ジュンサーさんから事前に変な人だと聞いていたリーフとレッドは、一瞬硬直してしまうもすぐに再起動。
シャドウ化ポケモンについての説明と怪しげな男の話をした後に、意見を聞きたいと迫っていた。
「あのな? 自分らがポケモンのこと大事にしてるんはよく分かった。けどな? ちぃーと、突っ込むべきとこがあるんやないか?」
「あー……、ポケモンが喋ってる!?」
「そう、ワイはピッピ! 趣味はミイラダイエットって誰がポケモンや! ほんまいきなり来て話すなんて常識のなっとらん子やなぁ」
ミイラダイエットってネタ古ッ。
しかもそれギエピーやってなかった? やっぱりギエピーなんじゃないの?
あれ? 包帯ダイエットだっけ?
「一生のお願いや! ワイは人間に戻りたいんや! あの分離器に入った後、自分はそこのパソコンのエンターキー押すだけでええから!」
「……分かりました」
「ほんまおおきに!」