ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
分離器は二つあって、それぞれ二本のチューブで繋がれている。
分離器に入ったマサキを確認したリーフは、パソコンのエンターキーを押すと、分離器の内部がちかちかと発光を繰り返す。
丸い光がチューブを通り、もう片側に位置する分離器へと進んでいく。
プシューと煙を吐き出しながら、光の入った分離器の扉が開く。
現れたのは茶髪にパーマが掛かった若々しい青年、マサキ正しくその人だった。
「いやー、実験に失敗してほれこの通り、ポケモンとくっついてもうてな? 戻ろうにもキーを押せなくて困ってたんや」
なんて実験の失敗を少しも苦に感じていない様子で、笑いながら椅子に座り、「で、自分らが持ってきた話なんやけど」と言葉を繋ぐ。
「知らんわ。シャドウポケモンなんてついさっき聞いたばかりやしな。心を閉ざした? なら、心を開いてやればええんやない?」
「心を……開く」
「トレーナーならいつもやっとることやろ? まっ、ポケモンと過ごさせたり、構ってやれば時期に心開くんやないか? 知らんけど」
あぁ、つまりシャドウポケモンはダークポケモンと同じようにトレーナーと一緒に居てあげることが大事と。
リライブ?
ダークポケモンとシャドウポケモンって何が違うん? ダーク技とダークタイプくらいやない?
マサキは腰を持ち上げると、パソコンに向かい合う。
「ちゅーことはあれや。心を開いたポケモンからシャドウを抜くプログラムが必要になるっちゅーことやな。任せとき! いっちょ作ったるわ!」
「そんなことできるの?」
「自分、反応うっすいなぁ。まっええわ。全ポケモンたちのためや。ワイの名に掛けて、作れへんとは絶対言わん」
「マサキって本当にすごい人なんだ」
「見直してもええが惚れちゃダメやで」
「それは無い」
振られたのにもかかわらず楽しそうなマサキは、途端に真面目な顔つきになると、パソコンに向き直り、難しそうなプログラムコードを打ち始める。
シャドウについてもっと詳しいデータが欲しいとのことで、リーフとレッドはマサキにシャドウポケモンを受け渡す。
もうここでの用は終わり。
できたらまずジュンサーさんに連絡を入れるよう頼み込み、家から出る直前でマサキは何か思い出したように手を叩いてリーフたちを引き留めた。
机の引き出しを開け、チケットを二枚リーフとレッドに差し出した。
「そやこれ、サント・アンヌ号のチケットや。ワイは行く時間無いし、そろそろ期限切れそうやさかい。二人で行って来たらどうや?」
「えっ、けど。流石にまた貰うのは」
「ええ、ええ。豪華客船サント・アンヌ号はな。貨物船の面も持ち合わせておるんや。でっかい船体でな、世界中を渡る。必然、世界中のトレーナーが集まる場でもあるんや」
「……!」
おっと世界中のトレーナーが集まるという言葉を聞いて、今まで無反応だった最強で最高な頂点さんが初めて関心を示したぞ!
リーフに向ける煌めく瞳が、それはもう行きたいという意思を秘めている。
レッドの変わりようにマサキは楽しそうに笑うと、サント・アンヌ号のチケットをリーフとレッドの手に握らせた。
「恋人……って腹、顔じゃないわな。兄妹水入らず、楽しんできたらええ。どや? 貧乏性のワテを助けるとおもて。なっ?」
あっ良い人だ。変人だけど良い人だ。
人助けという名目になると、流石のリーフも断れないようで「ありがとう!」と良い笑顔でチケットを財布のポケットにしまい込む。
そんで我らが白金山の所見殺し先輩は雑に上着の胸ポケットへ放り込んでいた。
マサキの家から出てきたリーフたちは、ハナダの岬へと向かって行く。
男女ともに人気なデートスポットと呼ばれるだけはある。入ってすぐ右手方面に見える水面は何も言わずに揺らめいていた。
天に昇った闇を払う白き太陽を映すサプライズを満遍なく送り、恋人たちを歓迎していた。
良い雰囲気になり夢を語らう恋人、将来を約束しあう恋人、中には男が先か、女が先か、告白前なのだろうドギマギしている恋人もいた。
カスミは……居ないな。3年後には主人公がデートを邪魔しているのだが……。
あそこまでゲームとアニメでキャラが違うと感じるのって、カントー地方では珍しい方だと思うのは俺だけだろうか。
あくまでデートスポットだからか、バトルをする場違いな人は誰ひとりとしておらず。
早々に脇をすり抜け、双子は居心地悪そうに橋を下りていった。
花より団子だし、どちらかがラブなタイプでもないもんね。
俺もあの場所に居たら間違いなくキレているわ。