ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
ヤケモン。
それは火力にのみ全プッパし、圧倒的高威力技のみを使用し、相手のサイクル戦を崩壊させる戦いを得意とするポケモン、もといヤケモン。
その実、交代戦で運が絡んだり、ダイマックスにはあんまり効果が無かったり、一度でも負けると破門というルールから、着々と門下生を減らしていった論理。
けど単純な考え方というのは案外応用が利く。
初手ランドロスにメガリザードンYでブラストバーンを打ち込むとか。
予想していないポケモンに全抜きされるなんてよくある話だし、とにかく相手を倒すことに特化しているポケモンはそれだけで脅威だ。
ここからが本当の闘いというわけか……。
いや馬鹿だろ、ここからが本当の闘いって。
残り1体で最後がヤケモンなのはあれなんだけど。後ろが後ろってのもあるし、PPという概念が無いせいで悪あがきも狙えない。
ようするに、
「カプ・レヒレ! ハイドロポンプ!」
「レヒィ! (了解ですなWWW!)」
カプ・レヒレから発射されたハイドロポンプが岩肌に直撃。そのまま粉になるまで暴力の限りを尽くし、なおも威力は衰えることを知らず俺へ迫る。
雨にメガネかけてタイプ一致。その威力驚異の248。
こんなん食らったら死ぬわ!
けど威力だけならマリルリの方が上っていうね! あいつ先制技で威力480だから。
あれ? 耐えられる気がしてきた。
目の前に迫る青い砲撃を見て、いや無理無理と思い直して回避行動に移る!
なんかずっと回避しかしていねぇよなここ最近!
やっぱ躱せは無限の勝ち筋。
ならばと攻撃速度が遅いのを狙いに俺は近くの岩場に向かい、熱砂の大地をカプ・レヒレへ飛ばす。
だが赤く赤熱した砂はカプ・レヒレのドロポンによって薙ぎ払われる。
……勝てるかこんなん!
せめて雨が降ってなければ! もしかしたら耐えられるかもしれない!
雨さえ降っていなければ……、こちらが不利なのは変わらない!
どうする! どうする!
「レヒィ(すごいトレーナーですなWWW)」
「ギャーオ(良くなった方だぞ)」
「レヒィ。レヒレヒ(これでですかなWWW。まぁ、自分のペースで歩むのが一番ですぞWWW)」
その通りなんだけどもう少し走ってほしい気持ちしかない。
俺はリーフへそっと視線を送る。俺の行動にリーフは「火炎放射、いやエアスラッシュ、けどけど」とあたふたしている。
可愛いなクソやってやる! やってやんよぉ!
雨! 雨! なんかないか!
この危機的状況を打開するためには!
俺のファイヤーはレヒレを倒せる。あの時の記憶は今も衝撃的で覚えている。
ならあの時、俺はどうやってレヒレを倒していた。毎回どうやってレヒレを!
あの時の技構成は? あの時のフィールド状態は? あの時どうやってレヒレを打倒した!
何年も前の記憶を引っ張り出し、俺はドロポンを避けながら記憶を探る旅に出る。
「レヒィ! (諦めるんですなWWW!)」
「ギャーオ! (そうしたいけど嫌だね!)」
「レヒィ? レヒレヒ。レヒィ(ではどうして戦うんですかなWWW? はっきり言ってあのトレーナーは3流も良いところですぞWWW)」
「ギャーオ! (そんな褒めんな)」
俺との会話で、レヒレさん笑顔を絶やさない。
いやだって、三流トレーナーでも指示は出すからいい方だろ。
俺が諦めたらもう後は無い。
それにリーフは、トレーナーとして3流であってもポケモンに対する気づかいは1流だ!
俺はこの少女のためならどこまでも頑張ってやる!
「カプ・レヒレ! ハイドロポンプを止めて、ファイヤーに突撃して!」
ドロポンのみ注意していた俺は、レヒレの突撃をもろに受ける。
体勢が崩れる。目の前でレヒレの殻が開く。レヒレが手を突き出す。手の内でドロポンが形成されていき、
……完全に思い出した。もしかしてこの状況、俺にとって最良の状態じゃないか?
燃え尽きるで炎タイプを失い、フィールドは雨状態。
なんで忘れていたんだろう。雨はファイヤーが最も得意とする天候じゃないか!
「レヒィ! (無駄ですぞWWW!)」
今まさにドロポンは発射される。もう発射される。だから俺はすぐ近くまで接近してくれたレヒレにエアスラッシュをお見舞いしてやる!
レヒレの顔が退いた。けどドロポンは止まらない。
狙いの定まっていないドロポンから俺は身をよじり急旋回する。
自分の腹すれすれにドロポンが通っていくのが分かる。ジッ! と冷たい感触が腹の神経を伝い、脳に危険信号を送り続ける。
掠っているだけなのに、全身をハンマーで叩きつけられているかの如き衝撃が襲う。
翼をはためこうものなら、ドロポンに当たるかもしれない。
もしレヒレがすぐ横にドロポンを向ければ、俺はなすすべなく一撃で葬られるかもしれない。
だから俺は一度羽ばたくのを止め、ある程度落ちたところで急上昇。雨乞いで作られた積乱雲の中へと飛び込んだ!
「「うそぉ……」」
カスミとリーフの声が重なった。
カスミは良いけどリーフさんや、あなたのポケモンですよ。
積乱雲の中は冷たい突風が舞っていた。この中にサンダーいるとかマジ? 身体が持っていかれそうだ!
だからなんだ。お前らは俺が使う。俺がお前らの主人になってやる! その力、存分に奮ってやるッ!
そして流石はジムリーダーのポケモン。分からないながらもドロポンはきっちりと撃ってくる。
撃たれるたびに冷や冷やする。見えないのはお互い様だからな。
俺は翼を羽ばたかせ、羽ばたかせ、羽ばたかせ続ける。
積乱雲の強風。それは圧倒的風力。徹底的に電気に撃たれようが、水で斬ろうが、なお中にいるポケモンを痛め続ける暴君。
だからこそ良い。
この暴君に身を任せ、この力を無理やり身に沁みさせ、そして覚える!
エアスラッシュの使い方を更新する。もう俺は、エアスラッシュの使い方を思い出せない。どうやって使ったのか完全に忘れた。
代わりに新たに覚えたこの技を、俺は雲の高みからレヒレへぶつけてやる!
「レヒィ! (ゴミ技を捨てましたなWWW!)」
「ギャーオ! (こちとらヤケモンとは真逆のポケモンじゃい!)」
「レヒィ! (異教徒は導く以外ありえないWWW!)」
ヤケモンは使いようだろうが!
俺は翼を今まで以上に動かしまくり、レヒレに暴風を放つ。
雨は俺の暴風を援護する。フィールド全領域に暴風が吹きすさぶ。水面が荒れ狂う。岩肌が吹き飛ぶ。
レヒレがとぐろを巻いた風の龍に飲み込まれる。
だがこれではまだ倒せない。それは分かっている!
「カプ・レヒレ! ハイドロポンプ!」
「ファイヤー! えっと、今さっき使った技!」
リーフさんリーフさん、もう少し勉強してくださいな。
俺とカプ・レヒレの技がぶつかり合う。
分かっている。この押し合いは俺の負けだ。
ヤケモンに勝てるわけがないだろ、俺の型で。
だからせめて、
「レヒィ! (勝負から逃げましたなWWW!)」
「ギャーオ! (もとより勝負する気はねぇ!)」
俺が狙ったのはこの後!
ハイドロポンプを撃っているお前の背後だ!
振り向くカプ・レヒレに俺は暴風を叩き込む!
真っ逆さまにカプ・レヒレは落ちていき、そのまま水面へと叩きつけられる。
ズドーン!! っと、派手な水飛沫が空を飛んでいる俺にも届く。
飛沫が止んで現れるのは目を回したレヒレの姿。
リーフとカスミの間に言葉は無く、沈黙を破るように審判が旗を振り上げる。
「カプ・レヒレ! 戦闘不能! よって勝者! チャレンジャーリーフ!」
本当ならダイジェット、雨、暴風あってようやくなんですけどね。
ちな嫁ポケはテッカニン