ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
「君、ちょっと弱すぎない?」
「マホ(マジシャ打っているだけで終わった)」
サント・アンヌ号に乗り込んでから一回目のバトル。
リーフは綺麗に惨敗を記していた。
良いところのお嬢様風の見た目をした女の子はマホイップをボールに戻した。
リーフは俺を出そうとボールに手を掛け、ゆっくりと放していった。
女の子はリーフを置いてどこかへ行ってしまう。
リーフは自分の客間に戻り、少し休憩をした後にもう一度バトルに赴く。
そして、
「よっしゃ! 強いぞ俺のケンホロウ!」
またも惨敗を記していた。
リーフはまたも俺を出そうと手を掛け、ゆっくりと放す。
その様子を見た身なりの良い少年が煽る。
「はっ! 何回やっても俺が勝つに決まってるもんね! 付き合っても良いぜ! どうせ結果は変わらないだろうがな! ハッハハ!」
「行って! ファイヤー!」
リーフさん、もう少し煽り耐性を身に付けましょうよ。
このバトル、どっちが勝ったかなんて言うまでもない。
リーフは地団太を踏むかのような力強い足取りで自分の部屋へと歩いていく。
「まったく、私だってファイヤーがいればこんなもんよ」
リーフさんリーフさん、それ勝ったって言えるんでしょうかね?
少なくともフシギダネとピッピがケンホロウ一匹にやられたのは事実ですよ?
こうなってしまった原因の片棒を担いでいるので強く言えない。
通じもしないし。
「申し訳ございません。客室はいっぱいでして。船員の部屋であればご用意できます」
何かトラブルでも起きたのだろう。
船員の困った声が聞こえてくる。
普通に無視しても良いものだろうけど、人の良いリーフは声のする方へと走っていく。
「……」
立っていたのは無表情のレッドと船員だった。
状況から察するに、チケットを持っているので追い返すわけにはいかず。
かといって現在泊まれる部屋は無い、そういうことなのだろう。
思えば原作だと主人公ひとり分だけだったからなぁ。
どこに部屋に行っても基本客室は埋まっていたっけ。
レッドさんは基本的に無口なので、困った様子の船員。
「レッド! 来たんだ」
そこへリーフが手を振って絡みに行く。
双子愛が良くて良いことである。
レッドが何かを訴えるかのようにリーフを見る。
「客室もう無いの!?」
「……」
「うん、そっか。じゃあ私の部屋で一緒に泊まる?」
「……!」
「そっか、じゃあそうしよっか!」
相変わらずのエスパーぶりである。
リーフの言葉である程度状況を掴めたのだろう。
最初こそ男女で泊まるのはと引き留めようとする船員だった。
けれど、リーフから双子発言を聞かされたことで一辺、すぐに首を縦に振るのだった。
フシギダネとピッピを回復させるために、一度部屋へと戻ろうとした途中で出会った。
なので船員の代わりにリーフは部屋へとレッドを案内していた。
「そう負けちゃってね。今一度鍛え直すために。そっちは?」
「……」
「えぇー! すっごい! マチスに勝ったの!?」
「……」
「最後の一体がね。強すぎちゃって」
あのジム、本来は居合切りがないと入れないんだけどね。
今更感あるけど。
そんな風にレッドとリーフが会話をしている時である。
前からさらに見知った顔の少年が歩いてきたのは。
「ボンジュール、リーフとレッド。おやおや! こんなところで会うとは……!」
「グリーン!」
「……」
サント・アンヌ号といえばグリーンが図鑑数を聞いてくるところで有名な場所だからね。
やっぱり原作とは違い、嫌味を到底感じさせない表情である。
リーフがそうだとばかりに口を開く。
「グリーンは勝った? マチスのジム」
「あぁ、勝ったぜ。リーフもだろ?」
「いやね、私は負けちゃった」
あははと弱々しい顔でリーフは笑う。
しかし、これに一番驚いたのはレッドとグリーンであった。
「負けた? おいおい、ファイヤーがいるのにそんな冗談無いだろ。ライチュウだろ、相手」
「ライチュウ? それは二番目に出てきたけど」
「じゃあ三番目の相手は誰だ?」
そう、二番目のポケモンはライチュウ。
原作でのエースポケモンであり、アニメに至ってはピカチュウの成長に貢献したあのライチュウ。
だけど、この世界でマチスが繰り出してきた三番目のポケモンは違う。
あのポケモンは俺よりも圧倒的に素早く、それでいて火力も群を抜いていた。
そのポケモンの名を、今まさにリーフは口にする。
「準、伝説級のポケモン。ライコウが相手だったよ」
レッドとグリーンが絶句する。
リーフが「ほらこれ」と図鑑でライコウを記録していたのを見せたことで、言葉の信憑性を裏付ける。
完全にレッドとグリーンは掛ける言葉を見失っていた。
同時に俺も完全に理解した。
そりゃ、最初からレジロックやらカプ・レヒレやら繰り出してくる方が異常だったんだなって。
そんな二人の表情など露知らず、リーフは弱々しい笑顔を浮かべて二人を祝福する。
「二人は勝てたんだね。おめでとう」
「いやいやいやいや! ただの嫌味にしかなってねーから。俺はライコウなんて出されてないぜ。なぁレッド」
同調を促されたレッドは首を縦に振る。
これにはあれぇ? といった様子のリーフ。
これが正しい反応なのは間違いない。
原作時点でライコウなんか繰り出されてたまるか。
リーフは図鑑をしまい「とにかく」と話題を変える。
「負けちゃったから、ファイヤー以外も鍛えようって。そのためにここに来たの」
「お前、ファイヤーとフシギダネ以外に何か捕まえているのか?」
「捕まえてるよ! もう百種類以上記録したんだから!」
「俺の二倍以上……」
がーんとショックを受けた様子のグリーン。
原作時点で考えるとグリーンもかなりすごいことしているよ。
とある人の検証によると、実際この時点で四十種類のポケモンを記録することは可能らしいからね。
というかやっぱりグリーン目線、俺と最初に貰ったフシギダネ以外誰もいないと思っていたのね。
ハナダシティの時点でピッピも居たと思うけど。
リーフは「そうだ!」と手を叩く。
「グリーン、レッド。この後暇なら私のポケモン鍛えるの手伝って!」
「そりゃ別にいいが。レッドは」
「……」
こくんこくんと頷くレッド。
というかグリーン、君本当にどうしちゃったの!?
原作でここまで丸くなるのはチャンピオンで負けた時からだよね!?
俺の知っているグリーンだったらここ絶対断っているのに。
最強を目指して自分のポケモンを思いやっていないとか言われていたからね、オーキド博士に。
ともあれ、二人の了承を得られたリーフは「ありがとう!」と笑いかけていた。