ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
少し休憩をした後、試しにとリーフは俺を外した状態でグリーンとバトルする。
ピジョンVSピッピ
ピジョンVSフシギダネ
勝者はピジョンだった。
うちのピッピ、メテオビームとか覚えているのに。
かぜおこしと電光石火でピッピの発射位置を逸らし、大振りで放たれた隙をついて体当たりで決めていた。
フシギダネに関しては言うに及ばず。
「ピジョ(これ、勝ちでいいんだよね)」
なんかあまりにあっさりしすぎていてピジョンさん困惑しているよ。
ごめん、本当に。
ここまでリーフ、俺一匹で進んできたから他のポケモン出会ったころと変わらないのよ、強さが。
小難しい表情で、かつ何か決意した顔でグリーンはびしっと言い放つ。
「弱い! これポケモンというよりトレーナーに問題がある」
「私に?」
リーフは自分の顔を指さす。
レッドも少し息を吐いてグリーンの意見に賛同していた。
グリーンは最もかつ、一番の原因であるリーフの弱点を指摘する。
「トレーナーなんだからポケモンに指示出してやれよ。お願い、頑張って、だけだとポケモンだってなにすりゃいいのか分からないぜ」
「けどファイヤーは——」
「準、伝説級のポケモンとフシギダネ、ピッピを一緒にするな。俺もあいつは異常だと思う。だがな、あいつが異常なだけだ」
やばいグリーン君、俺が思ったこと全部言ってくれてる。
なんだろう、ありがとう本当に。
というかあれか、もしかして。
グリーンから見て、リーフってライバルだと思われていない的な?
だから普通にアドバイスもするとか?
グリーンは頭をガシガシと掻きながら、最上級の槍をリーフに突き刺す。
「良くそれでタケシとカスミとのバトルに勝てたな」
「ぐはっ! た、確かにレジロックとカプ・レヒレは強敵だったけどファイヤーが頑張ってくれたから」
「おい待て今なんて言った」
グリーンとレッドの顔つきが変わった。
リーフはしょんぼりとした顔でもう一度言う。
「ファイヤーが頑張ってくれた?」
「違う、その前だ」
「レジロックとカプ・レヒレは強敵だった?」
「タケシとカスミは本当にレジロックやカプ・レヒレを出してきたのか?」
「うん」
さっきまでおちゃらけていたグリーンの表情に陰りが出る。
それは果たしてグリーンの目指していたところが所以か。
リーフは伺うかのように声を掛ける。
「どうしたの?」
「その実力でレジロックとカプ・レヒレに勝ったのか。そうかそうか」
急変を見せるグリーンに困惑した顔を見せるリーフ。
なおも構わずグリーンはリーフに背を向けた。
「悪いが俺も暇じゃないんだ。修行なら他を当たってくれ。バイビー」
「ちょっと、待ってよグリーン」
ジムリーダーはトレーナーの実力にあったポケモンを使用する。
こればかりは俺から見てもね。
ゼニガメでレジロックに勝つことはできるだろうけど、純粋にレベルがね。
これ以上引き留めるのは無理と悟ったのか、リーフは助けを求めるかのようにレッドを見る。
レッドは帽子で顔を半分覆い、リーフの修行に応じてくれた。
* * *
結論、俺を使わないリーフは現時点で最弱だった。
圧倒的にトレーナーもポケモンも経験不足である。
リーフは悔しさからか、たたらを踏んだ。
「……」
「ファイヤーとも戦いたいって?」
レッドは物凄い首を縦に振る。
リーフは俺のボールを手に取って挑戦に応じるようだ。
天井高く放られたボールから青い光を伴い、俺登場。
乗客たちは一斉に色めき立ち、中にはカメラを向けてくる者までいた。
「……」
「ファイヤーの動きを良く見ること? 動きならいつも」
「……」
リーフは心底不思議そうな顔でレッドの無言に頷いた。
レッドが繰り出した一匹目はやはりピカチュウ。
ピカチュウは自分の頬を叩き「ピッカ!(バトルだ!)」とめっちゃはしゃいでいた。
二体のポケモンが対面する。もうバトルのゴングが鳴った証である。
「……」
ピカチュウの身体がバチバチと音を立てる。
稲妻が身体を脈動し、正面から堂々と飛んでくる。
ので、俺は回避と同時に暴風を放つ。
「……」
ピカチュウは暴風を十万ボルトで相殺。
効果抜群とはいえファイヤーの暴風を十万ボルトで防ぐか普通……。
俺は咄嗟の判断で熱砂の大地を飛ばし、空中にいるピカチュウを追い詰める。
「……」
その時、俺はピカチュウから水の波を幻視する。
いや、幻視ではない。本当に水の波が出ている!
波乗りかと思ったけどそうじゃない。
あの電気が流れる波は波乗りよりも遥かに脅威だ。
「……」
俺は自分に暴風を放つ。
自分事グルグルと周ることでドリルのような渦を生み出す。
電気の水波を荒れ狂う暴風で受け、ピカチュウを弾き飛ばす。
俺は炎を全身から放出する。
「ピカッ(まだまだ)」
ピカチュウは即座に十万ボルトを放ち、空中に足場を展開する。
「ギャーオ!(それは前見た!)」
俺の炎はピカチュウの足場すら飲み込む。
これで足場は使えない。
追い詰められるだけのピカチュウは、なおも不敵な笑みを浮かべていた。
「……」
バチバチと音が鳴る。
電気の水波も一緒に現れる。
ピカチュウはバチバチと電気を纏ったまま、水波へ飛び込んだ!
それって俺がさっきやった!
波を電気で補強しながら俺の燃え尽きるを受けきるつもりか!
炎と電気の水波が衝突する。
やはり相殺。
だけどピカチュウは少なくないダメージを受けたようで少しよろめいていた。
「ピカッ! (良いね、楽しい!)」
「ギャオ(なんだこいつ)」
「ピカピッカ! (こんな楽しいバトルを朝昼晩、最低四回も出来るなんてそっちのポケモンは幸せだね!)」
レッドさんのピカチュウが戦闘狂過ぎる件について。
ピカチュウの十万ボルトが天井へとぶち当たる。
そうして再び駆け出そうとしたところに赤い光が直撃。
レッドのモンスターボールに吸い込まれていった。
交換? と思ったけどどうやら違うようだ。
「……」
「どうだったって言われても……。ファイヤーがすごい?」
レッドは首を縦に振る。
うーん、レッドが言いたいことは分かる。
けどねレッド。それもう一度、リーフが通った道なんだ。
俺の動きがすごいことを分かって、自分には難しいと諦めた末がこれなのである。
俺はリーフのボールにタッチして中へ戻っていく。
そろそろ周りの目がきつかったので。
「ファイヤーがすごいのは分かってるよ。私が指示しない方が強いし」
「……」
「動きを見て参考になったとか? ……うーん、咄嗟の判断って難しいから」
レッドがジトッとした目でリーフを見ている。
実際、瞬間瞬間で判断して決めるって相当難しいからね。
「……」
「指示を出し続けることが大事?」
レッドがこくこくと頷く。
そういえば確かに。
リーフが根本的に諦めていたのは指示を出すことだった。
最も、間接的に諦めさせたのは俺だけど。
俺が最初から変なことをしなければ今頃ちゃんと指示を出せていただろうに。
「分かった。やってみる」
こうしてレッドさん指導の下、リーフはバトルで指示を使い始める。
最初こそバトルに負け続けていたリーフだけど、段々とコツを掴んできたようだ。
「ダネダネ(何となく分かってきたね)」
「ピッピ(これで……リーフさんともっと)」
フシギダネとピッピもバトルに適応し続けてきているようだ。
惜しいと思えるような場面もちらほら見えてきた。
バトルをしている時のリーフの顔。
とても楽しそうだ。
元々、リーフがバトルをするときはこんな顔をしていたのかもしれない。
……罪悪感が。
最初から俺を捕まえることなければ、今もレッドとグリーン。
二人と肩を並べて立っていたのかもしれない。
だって最初に選んでいるのフシギダネだし。
そのフシギダネが今まさにコラッタを打破する。
所詮コラッタ。されど勝利に違いない。
フシギダネは飛び上がって全身で喜びを表した。
「ダネ! ダネダネ! (勝った! 勝ったよ!)」
「ピッピ(……負けてられない)」
近くでピッピが両指を握る。
リーフは俺のボールを手に取り、レッドに渡す。
「……」
「多分、ファイヤーもバトルしたがっていると思う。けど私じゃまだまだ力不足だし、つい頼っちゃうかもしれないから」
最初こそ不思議そうな顔なレッドだったけど、リーフの説得に俺のボールを握りこむ。
別にバトルとかしたがっていないよ?
ほんとだよ?
しかし思い出すハナダシティでの服屋の一件。
もしかして俺、バトル好きなポケモンだと思われている!?
天蓋から見えるリーフの顔。
「お互い頑張ろう!」
それは俺に激励を送るかのような表情だった。
その時点で俺は諦めた。
諦めた方が幸せになれる気がしたから。
もう戦闘狂ピカチュウの顔が見えるようだよ。
そうしてレッドのポケモンたちと滅茶苦茶戦わされた。
途中、レイドバトルと勘違いした連中まで集まってきて一対五とかいうとんでもないことになった。
アニメのサンダーとフリーザー、良くこれを切り抜けられたなと諦める。
まぁ俺も勝ったけど。