ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
いつまでも船が出発しないことを疑問に思ったリーフとレッドが船長室へ赴くと見知った顔がそこにいた。
ギザギザ頭の自身家な男子はリーフとレッドの姿を目に入れるや否やそっぽを向く。
リーフは特にこれといって気にもせず、親しき仲に礼儀の無い男子に手を振った。
「グリーン、そっちも気になったの?」
リーフの言葉にグリーンは一瞬悔しそうな顔へと変わる。
しかしすぐに自身の髪をかき上げて見せた。
「どうやらレッドとリーフもらしいな」
レッドは無表情のまま頷いた。
この最強にして原点さんの表情が変わるところ未だに見たことがない。
ゲームでも雪山の中ほぼほぼ軽装だったのに無表情だったし。
多分、顔に出にくい性格なのだろう。うん、きっとそうだ。
そしてレッドさんはさっさと予定を済ませようとばかりに船長室の扉を開けた。
ノックぐらいしろよ……。
果たして扉を開けた先にはゴミ箱に顔を向けて虹を作り出している船長の姿があった。
……ゲームをやっていた頃から思っていたんだけど、どうしてこの人この職業に就けたのだろう。
「大丈夫ですか!」
リーフはすぐに駆け寄り船長の背中を擦っていた。
何回か擦ってやると、ゾンビのように青白かった船長の顔に血色が戻っていく。
さらに三、四回擦る頃にはもうすっかり治ったらしい。
「ありがとう。助かったよ」
「いえいえ」
リーフが安堵と疑問、二つの感情が混ざったかのような表情になる。
「おいおい、船長なんだろ。情けないな」
心底呆れた顔でグリーンが声を掛ける。
船長も申し開きが無いのか苦笑いを浮かべる。
リーフは「ちょっとグリーン」とグリーンの脇腹を肘で小突いていた。
「助けてもらったのにお礼をできないのは申し訳ない。何分職業柄でね。カントー地方の準、伝説ポケモン。ファイヤー、サンダー、フリーザーの話をよく耳にするのだがいかがかな?」
そんなことは良いから居合切りを寄越せと二重の意味で言葉を出せない俺がいた。
だってリーフ、もう既にファイヤー持っているし。
サンダーとか手にされたら色んな意味で困るし。
勝てるかあれに。
リーフとグリーン、レッドは顔を合わせる。
リーフはともかくグリーンとレッドはとても聞きたそうに目を輝かせている。
無表情なのにレッドの目が輝いて見えるのほんと不思議。
グリーンが先陣を切る。
「せっかくだし聞いてやるよ」
「ちょっと、頼み方」
「若くて結構。では旅の者に伝わる三匹の鳥の話をしよう」
そう言って船長は話し始める。
語り口はファイヤー、サンダー、フリーザーはカントー、シンオウ、カロス地方に現れやすいという話からだった。
「恐らく三鳥にとって過ごしやすい環境がこの地方にあるのだろう。ファイヤーはマグマのある活火山。サンダーは電気のある一目のつかない場所、フリーザーは凍える場所で姿を隠すとされている」
元ネタ的に言えば送り火山、チャンピオンロード、白銀山、双子山と無人発電所だな。
シンオウとカロスは飛び回っているからよく分からない。
メタ視点で考えれば主人公が必ずゲットできる位置に居るわけだけど……、まぁ現実となった今、いる可能性は低いと。
グリーンが質問する。
「つまり何が言いたいんだ」
「ここ最近三鳥の目撃例が多くてかれこれ十件以上確認されている。そして準、伝説級のポケモンは類稀なる実力を伴ったトレーナーか、夢を追い続ける者の前にしか姿を現さないとされている。旅をしていれば、ゲットできるかもしれないぞ」
「類稀なる実力ねぇ?」
グリーンは含み笑いをリーフに向ける。
リーフはむくっと頬を膨らませてそっぽを向いた。
目撃情報が多いということは、やはりこの世界準伝説は一匹しかいないわけではないってことか。
ラティオスとラティアスとか図鑑で既に群れで行動するとか書いてあるもんな。
実力に関してはノーコメント。
あれほんと奇跡の出会いだったから。
鳴き声がして走ってきてみたら怪我したファイヤーがいて、しかも色違いだった。
どんな確率だろうね、それ。
「ジムリーダーたちは良く各地方に出張する。ちゃんとした実力も伴っているから、カントーの三鳥のような準、伝説級のポケモンを持っているという噂だよ。どうかな、少しは益に立ったかな?」
そう言って船長は話を終わらせた。
噂じゃなくてそれ本当の話や。
現に二回下してきたわ。三回目にやられたわ。
バンギラスと戦った時のことを考えると、絶対二回とも手加減されていたような気がするけど。
レッドはともかくとして、グリーンの表情が分かりやすく陰っていく。
それはプライドを傷つけられたからか、それとも果たして。
俺としても準伝説程度で四天王にもチャンピオンにも勝てないことが再認識できた。
というよりかは理解できた。
なんでアニメでは伝説のポケモンにも勝てない奴が、ゲームでは準伝説蔓延るタワーで生き残れているのかとかね。
あれは違う。
勝てるんだ。本当は。
そして自分たちでもゲットしたうえであのパーティを使っているんだ。
……そりゃ、バンギムドーとか使ってくるトレーナーが普通に居るわけだ。
リーフは船長にお礼を言い、船長室から出てきた。
レッドと共に客室に帰ってしばらく、船の汽笛が鳴る。
それは船が動き出す合図だった。
少し休んでからリーフはフシギダネとピッピのボールを手に取り、バトルに赴く。
俺はというと、再びレッドの修行に付き合うこととなった。
レッドさんのピカチュウさん本当に強いから苦手なんだけど。
ピカチュウピカチュウ言っているのはピカチュウしか脅威に感じていないからなんだけどさ。
だとしてもあのピカチュウ、ほんと奇想天外なことして俺を追い詰めてくるから苦手だ。
しかもファイヤーって、類稀なる実力を持った者の前にしか姿を現さないって言っていたじゃん。
そんなファイヤーになったのだから、リーフに恥を搔かせたくない。
だから俺はレッドのピカチュウに一度だって負けてやる気はないのである。
要約:三鳥、めっちゃ珍しくて強いってだけでこの世界にはたくさんいます。
同様にライコウ、エンテイ、スイクンも複数個体が確認されています。
その大半が通常特性ですが、1000匹に一匹くらいの割合で夢特性が混じっています。
その分捕獲するのも一苦労、最低でもジムリーダークラスは無いと難しい。
目撃例も多いとされる数で10件ほど。
さらに4096匹に一匹しか色違いはいないと考えると……まぁ、リーフさんとんでもない確率を引き当てているわけです。