ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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VSマチス

 

 クチバジムの門を潜る。

 暗がりのバトルフィールド。

 電灯が灯ると、最初に見た時と同じく両脇に男性と女性を侍らせたマチスがフィールドの中央に立っていた。

 

「ヘイ、ガール! 随分とナイスなフェイスになったネ!」

 

「今度は勝つ」

 

「オー! ユーの闘志バリバリと伝わってくるヨ! けどそうイージーに負けてあげられないネ! ジャッジ!」

 

 マチスは審判を呼ぶ。

 バトルフィールドの片側に立ち、挑戦者を待ち受けてくる。

 両脇の人たちは離れて観客席の方へと移動していた。

 リーフもマチスに倣ってフィールドの片側へとやってくる。

 バトル前の独特な緊張感。

 普通なトレーナー相手ではまず味わうことのない空気。

 そしてランクマッチをしているときのような、若干の息苦しさ。

 リーフの手が震えている。

 無理もない。

 今初めて、リーフはひとりのトレーナーとしてジムリーダーと戦うのだ。

 緊張するなと言う方が酷だろう。

 言えるような口じゃないけど。

 マチスがモンスターボールを突き出す。

 

「使用ポケモンは互いに三体ヨ。交代は両者オーケー。それじゃあ行くネ!」

 

 マチスは大きくボールを振りかぶる。

 

「ゴー! レアコイル!」

 

 綺麗な回転を描いてボールから現れたのは、水色と白を基調としたスカーフを巻いたレアコイル。

 先発はあの時と同じ。

 リーフが一番最初に手を取るのは……えっマジで?

 ワームホールを模ったかのようなボールを、リーフは今まさに投げる。

 

「行って! ファイヤー!」

 

  *  *  *

 

 思った以上に出てくるの早かった。

 選ばれたからには、雄たけびを上げて登場する。

 

「またファーストからファイヤー?」

 

「レアコイルにはこの子でしか勝てないから!」

 

 まぁ、そうなるよね。

 フシギダネとピッピでレアコイルを倒そうとする奴はまずいない。

 悪タイプとゴーストタイプが鋼タイプに半減されていた時代、何を思ったのかロゼリアとグラエナとオオスバメで突破しようとした馬鹿がここにいるけど。

 ちなみにディグダの穴で捕まえたモグリューだけど、特性型破りだった。

 

「ファイヤー、私はまだあなたに指示を出せるほどトレーナーとして成長していない。だから、思う存分やって!」

 

「ギャーオ(つまりはいつも通りね)」

 

 審判が手に持った旗を同時に降ろす。

 それはバトル火ぶたが切って落とされた合図だった。

 

「レアコイル、十万ボルトネ!」

 

 三つの赤と青の磁石にバチバチと電流が走る。

 電流はやがてレアコイル全体を包み込み、ひとつの電気として飛んでくる。

 俺はいつものように熱砂の大地を浮かび上がらせて相殺する。

 

「もっともっと十万ボルトヨ!」

 

 厄介だな。

 ここからどうやって切り崩そうか考えているに違いない。

 熱砂の大地で相殺するたびに砂煙が舞う。

 幸いにもレアコイルは十万ボルトしか打てない。

 スカーフだし。

 そもそもレアコイルがわざわざスカーフを撒くメリットって薄いし。

 雷の石で進化できるんだからジバコイルになればいいのに。

 

「砂煙に紛れて十万ボルト!」

 

 来た。

 レアコイルが砂煙に紛れるその一瞬。

 俺は暴風ですべてを吹き飛ばす。

 砂煙が晴れる。

 しかしてその先にレアコイルはいない。

 どこにいるかなんて考えるな。

 その迷いが隙を生む。

 

「ファイヤー! 下!」

 

「今だ十万ボルト!」

 

 マチスの指示が飛ぶ。

 待ってましたとばかりに俺は燃え尽きる。

 全身から炎を吹き出して上下関係なくすべてを燃やし尽くす。

 燃え尽きると十万ボルトの威力なら圧倒的にこちらの方が上。

 素早さとかもこれなら関係ないし。

 十万ボルトを押しのけ、レアコイルに直撃する。

 

「ノー! レアコイル!」

 

 ……軽いな。

 けど弱点なんだから頑丈発動まで削れてくれたら良い。

 俺は一切の油断なく暴風で止めに走る。

 

「ターンしながら十万ボルト!」

 

 レアコイルはその場でジャイロボールのように回転しながら十万ボルト。

 俺の暴風を電気で押し返している。

 それってカウンターシールドでは?

 迫る十万ボルト。

 熱砂の大地、暴風を続けて飛ばすもほとんど効果がない。

 ならばと俺も暴風でカウンターシールドを再現。

 コマのように回転しながらレアコイルへと突撃する。

 

「ノット! レアコイル、気合入れろヨ!」

 

 回転の向き的にレアコイルの十万ボルトが俺の風の中にも入ってくる。

 電流がグルグルと回転を描く。

 やがて目と鼻の先までやってきて直撃する。

 

「ギャ(ピカチュウの電撃に比べれば)」

 

「ファイヤー!」

 

 身体が電気に包まれる。

 腹痛を何倍にも上げたかのような芯を貫くこの痛み。

 効果は抜群。今だになれない。

 レアコイルが不敵な笑みを浮かべている。

 ……けど、勝利宣言にはまだ早い。

 

「アンビリバボー!? そんなのアリ!」

 

 俺は十万ボルトを受けたままさらに直進。

 暴風を纏った自分の身体ごとレアコイルへタックルして吹っ飛ばした。

 レアコイルはゆらゆらと空を浮遊する。

 やがて地面へと落ちて目を渦のように回していた。

 頑丈まで押し込んでなかったら危なかった。

 審判が旗を揚げる。

 

「レアコイル、戦闘不能!」

 

 まずは一勝。

 マチスはレアコイルのボールと二体目のボールを手に取った。

 その目はまだ余裕そうな感情を秘め。

 

「バック、レアコイル。ゴー、ライチュウ!」

 

 雷のような尻尾、電気を思わす耳、そしてどっしりとした真っ黄色な体型。

 ライチュウ。

 アローラとかではピカチュウの方が人気な為進化させる人はほとんどいないとされているポケモン。

 電気玉とかの恩恵も受けられないけど、偶に思わぬ活躍を見せてくれるから俺も良くパーティに入れていた。

 マチスは腰に両手を当てて挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「レアコイルのエレキでファイヤーは既にビリビリ。どうする、チャレンジャー」

 

「戻って、ファイヤー! 行って、フシギダネ!」

 

 赤い光に包まれた俺。

 代わりに飛び出したのはフシギダネ。

 最終日に戦った時は大体一、二撃で終わってしまったのでお手並み拝見である。

 その時、ジムの扉が開いた。

 リーフはバトルに集中していて気づいていない。

 入ってきたのは……グリーン?

 リーフに声を掛けることなく観客席の方へと歩いていった。

 何しに来たんだろ。

 っと、バトルに集中しないと。

 フシギダネとライチュウのバトルが始まる。




 レアコイルにグラエナとロゼリアとオオスバメで挑んだのは実話です。
 なんで勝てないんやろなと園児の時はずっと思っていました。
 当たり前ですね。
 その後、オオスバメ100レべでも勝てなくてダイゴのボスゴドラがトラウマになる……。
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