ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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誰もが一度は考えたやつ

「ギャーオ(勝ったー)」

 

 足先から一気に力が無くなっていく。

 もうほとんど立つ気力さえ残っていない。

 マジか、ライコウに勝てた。

 はぁ……マジか!? 

 ライコウに勝った!! 

 

「やったー! ありがとうファイヤー!」

 

 嬉しさ交じりかリーフが飛びついてくる。

 炎の身体なのにいつも通りって感じである。

 

「ナイスファイトだったネ!」

 

 手を慣らしながらマチスがリーフの、俺たちの健闘を湛えてくれる。

 リーフは最高の笑顔で「ありがとうございます!」と返事をしている。

 こっちはもう疲れたよ。

 

「ラライー(飛行タイプに負けたのは久方ぶりだ)

 

 ライコウももう既に起き上がっていた。

 戦闘不能って言われてすぐだと言うのにタフである。

 

「ギャーオ(正直、もう相性不利とは戦いたくないね)」

 

「ラライー(それは同感だ)」

 

 いやあんた弱点ひとつしかないじゃん。

 熱湯も覚えるからライコウってのは本当に厄介極まりない。

 この性能で壁貼ってくるとかほんと厄介だわ。

 ゲームでいったら即交代安定の対面だわ。

 後ろでドアの開く音が聞こえる。

 

「グリーンもありがとねー!」

 

 一言も声を掛けず去ろうとするグリーンにリーフは手を振る。

 グリーンはそれにひとつ指のジェスチャーで答えると、そのまま去っていった。

 そういえば結局何しに来ていたんだろ。

 バトルを見に来ていたとか? 

 

 マチスは懐から箱を取り出し、その中身をリーフに差し出した。

 

「これがオレンジバッジヨ! ユーとのバトル、とってもビリビリ来たネ!」

 

 パチンとウインクをするマチスに、リーフは礼を言ってオレンジバッヂを手に取った。

 

「オレンジバッジ、ゲットよ!」

 

「ギャーオ!」

 

 聞こえる。

 フシギダネ、ピッピからも喜びの声が。

 あぁ、これこそ正真正銘! 

 俺たちで掴み取った、初めてのバッジだ! 

 リーフはバッジをケースに仕舞いこみ、楽しそうに眺めている。

 ウキウキして落ち着かない様子のリーフにマチスは声を掛ける。

 

「次はどこへ挑戦するネ?」

 

「ヤマブキシティが工事中だからタマムシシティかセキチクシティかな」

 

 タウンマップを広げて見せるリーフに、マチスは自分の顎を撫でて見せる。

 

「それならタマムシシティが良いヨ! セキチクシティのキョウにはまだまだ早いネ!」

 

「タマムシシティ……。何タイプのジムだろう」

 

「行ってみてからのお楽しみネ! ファイヤーが入れば楽勝かもヨ?」

 

 そら、タマムシシティって草タイプのジムだもんね! 

 草タイプの準伝説って誰がいたか……。

 ……あぁ、楽勝だわ。

 待って、草タイプの準伝説でしょ? 

 うん、楽勝だわ! 

 草で岩技使える奴はいるけど、水とか岩とか複合で持っている奴いないもんな。

 どっちも割と使用率低い方だし。

 いたとしても火力もそんなに無いと思う。

 次のジムは気楽で良いね。

 

 リーフはマチスにお礼を伝えてからジムを出る。

 ポケモンになっても不思議なもので、あれだけの激戦を終えた後なのに、時間が過ぎればもう過去のように思えてくる。

 空はまだまだ明るいのに、既にお休みモードである。

 ポケモンセンターによって回復してもらった後、リーフはカバンを下げて次の目的地であるタマムシシティへと向かう。

 そのために11番道路へと向かっていく。

 ここら辺はネズミっぽいのが多いな。

 というかミネズミ、デデンネいるやん。

 外来生物紛れ込んでいるけど大丈夫なのかな。

 モルペコとかポチエナとか、違う地方のポケモンまでしれっと紛れ込んでいる。

 なんか笑えないわ。

 

「行くよッ! フシギダネ! ピッピ!」

 

 それからリーフは野性とのバトルにも積極的に二体を使うようになっている。

 捕獲もできるし、経験値も稼げるので一石二鳥だ。

 そして俺はというと……。

 高そうなスーツに身を包んだ青年が、耳に付けたピアスを撫でる。

 ピアスに施されているのは、遺伝子模様が浮かび上がった小さな石。

 光り輝くいくつもの稲光がポケモンへと伸びていく。

 

「行くぞっ! ジュペッタ! メガシンカ!!」

 

 それが今まさにジュペッタが首から下げている石の稲光と紡ぎ合う。

 ジュペッタがトレーナーとの絆と結びつき、更なる進化を解放する。

 肥大化した呪いのエネルギーは、ジュペッタの手足を突き破り赤き爪となって突き出した。

 あの……遂にメガシンカまで使い始めたんだけど……。

 ジムリーダーでもないトレーナーが。

 これ初心者トレーナーに勝たせる気ないよね? 

 確かにコルニがメガシンカ使えるようにしてくれるの、今ぐらいのタイミングだけどさ。

 それで……俺はというと、

 

「行ってきてファイヤー! 適当に戦ってきて!」

 

「ギャーオ! (いや、待てや!)」

 

「頼んだよ! 信頼しているからね!」

 

 当たり前のようにメガシンカを駆使するトレーナーに、自動で戦われていた。

 流石に失礼だろ!? 

 相手せっかく絆の力で戦おうとしてくれているのに、こっち信頼の力で戦わされそうなんだけど!? 

 分かるよ? 

 フシギダネとピッピのために鍛えて、自分もトレーナーとしての腕を磨く。

 その間ファイヤーはやること無いし、適当に他のトレーナーに求められるがままに戦わしてあげることが効率的なのはさ。

 それでもメガシンカまでしてくれた相手にこれはさ……。

 せめて向きなおってあげようよ。

 相手の青年も怒りで……。

 青年はリーフとフシギダネのコンビを見て笑みを作る。

 

「あのトレーナー……。なるほど、面白い」

 

「ギャーオ!? (なにが面白いんですかねぇ!?)」

 

「どうであれ、こちらの目的はファイヤーだ! トレーナーの代わりに付き合ってもらうぞ!」

 

 そんな感じでこの青年と戦った後、三回連続で別トレーナーのメガシンカポケモンと戦わされた。

 そのうち三回当たり前のように負けた。

 やっぱり絆の力って強いんだなって。

 いやー、メガデンリュウとメガガルはきついっす。

 メガデンリュウは下手に耐久が高いせいで熱砂の大地そんなに効かないし。

 メガガルは……うん。

 もう二度とあいつらの捨て身タックルは受けたくない。

 固い。速い。痛いの三連星である。

 三戦目はメガヘルガー倒せて良いところまで行ったんだけど。

 その後出てきたアバゴーラに岩Z打ち込まれて敗北した。

 Z技とメガシンカ両方使うとか主人公かよ。

 準伝説も形無しである。

 

 これは俺もウカウカしていられない。

 もっと強くならないと。

 エリカのタイプが草だからって余裕をかましている場合ではない。

 タイプ統一している人の方が、相手にするポケモンのことを良く考えているのだから。

 リーフは敗北の報告をしに来た俺に、「ごめん」と一言謝罪をしてボールに戻した。

 ……まぁ良いわ。

 実際に暇しちゃうのは事実だし。

 メガシンカの洗礼を味わえたってことでここはひとつね。

 それでひとつ思ったんだけど。

 俺はボールの中から話しかける。

 

「ギャー? (フシギダネ、進化してない?)」

 

「フシー? フッシャー(分かる? そうなんだよねー)」

 

 モンスターボール越しで映るフシギダネは、なんかフシギソウに進化していた。

 多分、俺がメガシンカ軍団とバトルしている時に進化していたのだろう。

 見る余裕がまるで無かったから気づけなかった。

 メガデンリュウと戦っている時に余所見なんかできるわけがない。

 

「ギャーオ。ギャーオ。ギャーギャー(良かったじゃないか。でも報告くらいしてくれよ。こっちは進化できないんだから)」

 

「フッシャー。フシフシフッシャー、フシフッシャー(ごめんねー。なんか激戦繰り広げていたから、リーフと一緒に見ていたんだー)

 

「ギャーオ(なんかかっこ悪いところ見せたな)」

 

「フシー? フシフシ。フッシャー(そう? かっこよかったよー。僕もああなりたいなー)」

 

「ギャーオ(そうか?)」

 

「フシ! フッシャー! (うん! 僕もあんな風に進化して準伝説倒したいー!)」

 

 そっちかよ。

 まぁ、うん。

 お前はメガシンカできるよ。

 フシギバナになって、あとキーストーンとメガストーンさえあれば。

 だからさピッピ、そんなに興奮した顔ではしゃいでもお前はメガシンカできないから諦めろ。

 

「……ピッ(……酷い)」

 

「ギャーオギャーギャー(お前はメガシンカ無くても強くなるから安心しろ)」

 

 メガシンカ没収されてもある程度戦える方が厄介だからな。

 対策していなかった俺が悪いとはいえ、延々回避と瞑想積んでくるの止めてほしい。

 これはどこぞのホイップにも言えることだけど、固くなって火力高めて攻撃しながら回復はマジで害悪なんよ。

 なんてやり取りをリーフに内緒でボール内にて交わし合う。

 すると突然、歩いていたリーフの足が立ち止まった。

 

「なにこれ?」

 

 リーフの目の前には上下する巨大な青い壁があった。

 その壁に触れたリーフは小さく「柔らかい。毛?」と呟いた。

 俺はそうなるよなと少しにやけていた。

 すかさずリーフは図鑑を開いて確認する。

 

「カビゴン? これポケモンなの!? へぇー、道を塞いでしまうこともある」

 

 図鑑から流れる音声を耳にしながら、リーフは圧倒された様子でカビゴンを見上げる。

 そう、こいつのせいでわざわざハナダシティに戻って、イワヤマトンネルを通過する必要があるんですよね。

 ポケモンの笛持っていないと起こせないし、こいつの他にもう一匹出現するところがある。

 RTAとか見たことあるけど11番道路ってまず通らないよな。

 なんて昔、俺が遊んでいた時と同じような状態に陥っているリーフを見て干渉に耽っているときそれは起こった。

 

「行って! モンスターボール!」

 

 リーフの投げたモンスターボールがカビゴンに当たる。

 数回揺れた後、ポンっと星のエフェクトを出してカビゴンはモンスターボールに収まった。

 ……収まってしまった。

 

「カビゴンゲットよ!」

 

 リーフはカビゴンの入ったモンスターボールを高く掲げる。

 フシギソウとピッピが楽しそうに跳ね回る中、俺は一匹絶句する。

 

 ……あのさぁ。

 それ誰もが子ども心に考えた奴!




この主人公が転移してきた時期は剣盾ですからねぇ……。
小説自体は最新作で更新させていただきますとも!
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