ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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ぬしポケモン

 

 ウルトラホール。

 カラカラの言っている空の穴って間違いなくそれだ。

 確かヌシポケモンの身体がでかく、戦闘初めに能力上昇する原因にもなっているんだったか。

 そしてウルトラホールの影響を受けた生物は、ウルトラビーストに狙われやすくなるリスクを負う。

 でもあれはアローラ地方、ダイマックスアドベンチャーで起こる現象だろ? 

 なんでカントー地方で起こるんだ。

 サンムーンではカントー地方との繋がりは深く描写されているものの、実際にはかなり離れているとかなんとか。

 いや、考えている場合ではない。

 俺は翼を動かしてカラカラと一緒に、リーフたちに訴えかける。

 

「ファイヤーも。急にどうしたの?」

 

「……」

 

「うん、ファイヤーがこんなに慌てるってことは相当だよ」

 

 事態の深刻さが伝わったのか、リーフは俺をボールに戻す。

 女の子はというと、俺の尋常ならざる様子で察してくれたのだろう。

 カラカラをぎゅっと抱きしめる。

 

「色が違うけど、やっぱりファイヤーだよね……。こんなところで見れるなんて」

 

「フジって人は私たちの方で探すから。待ってて」

 

「……はい! お願いします!」

 

 女の子はリーフに武運の言葉を投げかけると、足早に下り階段の方角へと走っていく。

 その途中、カラカラからは力無さげに骨を振られた。

 真剣な眼差しのリーフとレッドは互いに頷きあうと、すぐにでも階段を駆け上がっていく。

 道中いた墓を頭に付けた犬のポケモンとかランプラーとかを無視して、リーフたちは階段を登っていく。

 三階、四階、そして一気に五階まで走る。

 道中ポケモンバトルを申し込んでくる祈祷師が何人もいたが、事情を説明すると快く道を譲ってくれた。

 ゲームでもこんくらい素直にバトル回避できればいいのにと思う今日この頃。

 

「ここにもいない。あと探していないのは!」

 

 少し息を切らしながら、リーフは最上階を見上げた。

 原作通りであれば確かに最上階に居る。

 でも本当に原作通りなら……。

 リーフとレッドは共に階段へと一歩踏み出す。

 ……しかし、何も起こらない。

 ガラガラの幽霊が来ない? 

 ウルトラホールといい、やっぱり原作とは掛け離れているってわけね。

 最上階に辿り着くリーフたち一行。

 

 果たしてフジ老人はそこにいた。

 真正面に鎮座するでかい墓の前で、静かに両手を合わせている。

 少し表情を崩したリーフとは正反対に、レッドはより表情を険しく……しているかは分からないけど、明らかに自身のボールに手を伸ばしたのが分かった。

 感じる。

 身体のあちこちが警報を鳴らす異様な空気。

 これは間違いなく何かがいる。

 無防備にリーフが飛び出そうとするのを、俺はボールから飛び出て翼で諫める。

 

「ファイヤー?」

 

「……」

 

「何も感じない……!」

 

 墓と墓の間から飛び出した黒い影に、俺は翼をはためかせて暴風を放つ。

 黒い影はいとも簡単に吹き飛ばされ、二度三度タイルの上を跳ねて転がった。

 紫色の身体に三日月のように引き延ばされた口。

 何よりその身体は通常の個体とは比べ物にならないほど成長していた。

 

「これ、ゲンガーなの!?」

 

「……」

 

 リーフとレッドはボールを構えた。

 立ち上がったゲンガーは挑発するかのように、長い舌を伸ばして不気味な笑う。

 目に映るほど強大なオーラをゲンガーは纏った。

 バトル場は一気に緊迫とした空気で包まれる。

 

「とりあえず、戻ってファイヤー!」

 

「ギャオ!? (なんで!?)」

 

 収納光線が放たれて俺はボールの中に強制的に戻された。

 これからだって時に、なんでボールに戻されたんだ!? 

 大体、リーフの今もっているポケモンはカビゴン以外ゲンガーと相性が悪い。

 フシギダネとピッピ、あとはさっき仲間になったミミカスがまだボックスに戻されていない状態だ。

 レッドのピカチュウとリザードンがいるとはいえ、これでゲンガーに勝つっていうのか!? 

 

「……」

 

「ううん、しばらくファイヤーに頼らない! 私は私自身の力で切り開きたい! それに、ここでまた頼ったら私だけ……私たちだけ置いて行かれる!」

 

 リーフ……。

 ぶっちゃけた話をすると、ゲンガーはかなり楽勝の相手だ。

 なんせライコウやらガルっとモンスターやら、素早さの高い奴からの攻撃は軒並み慣れている。

 本来の対戦であれば、二回シャドボを撃たれるだけで負けるファイヤーだけど、躱せるのであればこっちのものである。

 それこそ当たったとしても一撃で意識を持っていかれるとかじゃない限り大丈夫だ。

 もしくは二回行動してきて、攻撃が高くて、防御が高くて、おまけに素早さも高くて、弱点はひとつだけで、運ゲーも仕掛けられるみたいな奴とか。

 

 でも、リーフは俺に頼らないでバトルをすると答えた。

 ならその意思を汲んでやるのが、俺の役目だ。

 俺としても、このままリーフがファイヤー一辺倒に戻るのを避けたいところだからな。

 とはいえ、真に危ないと判断したら飛び出そう。

 信じろと言わんばかりにボール越しに頷くフシギソウに、俺も同じように頷きを持って返す。

 リーフはフシギソウのボールをがっしりと掴み取った。

 

「だから、ここは行くよ! フシギソウ!」

 

 スピンを加えられたボールから、フシギソウは勢いよく飛び出した。

 しっかりと四つの足で相手を見据え、「フシフシッ! (ファイヤーだけじゃないよッ)」とやる気に満ちた声を張り上げた。

 レッドは帽子の鍔を強く握り、ボールを振りかぶった。

 

「ゴォー! (行くぜッ!)」

 

 青い流星を引き連れて、飛び出したのはリザードンだった。

 天井に大きく炎を噴き上げて、ドンっと自身の両手を強く鳴らした。

 

「ゲンガー! (来い我が仲間たち!)」

 

 反対にゲンガーは両手を振りかざして声を張り上げた。

 アローラじゃないから助けなんて来ない、そんな常識はこのカントー地方では通じない。

 そいつらは天から、はたまた影から秒で来る。

 シャンデリアに似た姿をしたポケモンのシャンデラ、それと人をあの世に連れて行くと図鑑で有名なヨノワール。

 

「シャン!」

 

「ヨノ!」

 

 二匹ともゲンガーのように身体が大きくて、そして特殊なオーラを身に纏った。

 ……おいおい。

 仲間呼びはまだ分かる。

 だがよっ、呼び出されたポケモンが二匹ともヌシポケモンとか! 

 リーフとレッドが対峙するは三匹のヌシポケモン。

 

「行くよッ、フシギソウ! 宿木の種!」

 

「ゲンガー! (効くかッ!)」

 

 フシギソウの背中から種が放出される。

 ゲンガーはその種をいともたやすく回避して、お返しと言わんばかりにその瞳を輝かせた。

 フシギソウの身体がぶれる。

 

「……!」

 

 リザードンは四つ足が転びそうになるフシギソウを叩いて目覚めさせた。

 催眠術ゲンガー……良い思い出が無いんだが。

 しかしナイスファインプレイだ。

 ゲンガーの放った催眠術は、リザードンの手によって空振りに終わる。

 そう、空振りで終わったのだ。

 ゲンガーの身体から、何かの紙が弾き飛ばされた。

 

「……なにあの紙」

 

「……」

 

「……なにその空振り保険って」

 

 おい、対人戦じゃねぇんだぞ。

 誰だよ、ポケモンタワーに空振り保険を捨てた奴! 

 というか、ポケモンが木の実以外の道具をさも当たり前のように使うなよ! 

 空振りに終わった催眠術のおかげで、保険はゲンガーに更なる力を与える。

 

「ゲンガー! (この道具最高だぜ!)」

 

 ゲンガーの動きがさらに加速する。

 俺の目でも追いつくのがやっとのほどだ。

 

「眠り粉を周囲にばらまいて!」

 

 リーフの指示に従い、背中の砲を向けるフシギソウに忍び寄る怪しい影。

 その名はシャンデラ。

 シャンデラはフシギソウの身体に触れると、何かするでもなくその場を離れた。

 その奇妙な行動にリーフは怪訝な顔を浮かべながらも、気にせずにフシギソウに指示を繰り出した。

 

「フシ! (行くよッ!)」

 

 おかしい。

 あの一瞬であそこまで近づいたくせに、フシギソウに何もしなかった? 

 シャンデラだぞ? 

 オーラを纏っているのだから火炎放射とか使えば一撃で持っていけるはずなのに。

 なのにフシギソウに触れただけで終わった? 

 何かこう、直感めいた嫌な感触が俺を襲う。

 ゲンガーの空振り保険。

 ……いや、まさかな。

 

 流石のぬしと化したシャンデラでも、自分から近づいたせいだろう。

 フシギソウの眠り粉を吸い込み、ふら付いていたところを同じくヨノワールから張り手を受けてシャキッとする。

 四つ足で地面に降り立ったフシギソウの首元には、水色のスカーフが巻かれていた。

 

「フシギソウ! 種爆弾!」

 

「フシッ! ……フシ? (うん! ……あれ?)」

 

 フシギソウがいくら自身の主砲を向けようと、種爆弾は発射されない。

 その光景にぬしポケモンはゲラゲラと不気味に笑っていた。

 

「……」

 

「拘りスカーフ……って何それ! 素早さが上がるだけでひとつの技しか使えなくなるとか誰が使うのそんなゴミ!」

 

 リーフが感情を剥き出しにして叫ぶ。

 子どものころは確かにゴミだと思ったけどな。

 今は無いといけない身体になってしまっているのが何とも。

 一周回ってありえなくなる。

 というかそうじゃなくて、拘りトリックとか。

 三体二でやって良い戦術じゃないだろ、それ。

 そしてヨノワールが手を広げると、リザードンは空に居られなくなり打ち落とされる。

 重力が強くなった影響だろう。

 こいつら……。

 もし三対一でこの戦法やられたら間違いなくキレてる。

 

「……」

 

「そうだよね。戻れ、フシギソウ!」

 

 リーフからのボール放たれた収納光線はフシギソウに命中する。

 交代をすれば拘りは一旦解除される。

 俺が知る限りフシギソウはこいつらに有効打とか持っていないけど。

 でもピッピはメテオビームを使えるから、それで戦えるはずだ。

 何ならカビゴンを出してもいいかもしれない。

 そおうして収納光線はフシギソウを包み込み、バチンッ! と綺麗に弾かれた。

 ……はっ? 

 

「嘘でしょ。戻って! 戻ってよフシギソウ!」

 

 いくらやってもフシギソウはボールに戻れない。

 何度やっても弾かれ続ける。

 

「フシ! フシフシッ! (戻れない! どうして戻れないの!)」

 

 黒い眼差しを使われた? 

 いや、そんなはずはない。

 黒い眼差しっぽい攻撃を受けていれば俺が気づける。

 じゃあなんでフシギソウは交代ができない! 

 もしかして影踏みか? 

 なら、どこかにソーナンスかゴチルゼルがいるはず。

 だってゲンガーは当然だけどメガシンカしていないし。

 というか瞑想しているし。

 いや、そんなことはどうでも……良くないけど。

 かなりまずい状況なのはそうだけど、それよりもあっちがかなりまずい。

 

「シャン!」

 

 あのシャンデラ、なんか小さくなっているんだが? 

 





初手ゲンガーから空振り保険催眠術。
シャンデラからは拘りトリック+小さくなる。
ヨノワールは重力を使うことでゲンガーの催眠術の命中を上げる。

おまけに拘り解除のために交代しようとしてもできない状態。
そこを迷っているうちにシャンデラは小さくなるを使い、ゲンガーは瞑想を使ってくる。
さらにぬしポケなので、全員どこかしら能力が二段階上昇しています。
交代できない理由については、シャンデラ、第五世代、夢特性と検索すれば判明します。

ちなみにどこぞのガルっとモンスターはトリックが効きません。
重力なんて使われようものなら、命中100%の怯み率51%の全体岩技が飛んできます。
多分、一番解禁しちゃいけないのはこいつだと思う。
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