ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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ウルトラホール

 

 どうする。

 流石にこれをずっと待っていたら終わるぞ。

 というか、頼むからゴーストタイプが小さくなるを覚えないで欲しい! 

 

 ヨノワールはレッドのリザードンが何とかしている。

 あっちは大丈夫だろう。

 ピカチュウいるし。

 問題のゲンガーは瞑想を終わらせたのだろうか。

 またも余裕な笑みを浮かべ、唐突にリーフに背を向けた。

 

「ゲンガー! (楽しいな!)」

 

 ゲンガーの視線の先に居るのはフジ老人だった。

 

「行かせない! どいて!」

 

 リーフはフシギソウを向かわせようとするが、シャンデラが立ち塞がった。

 こいつも嘲笑うようにシャドーボールを撃ってくる。

 フジ老人はいつの間にか祈るのを止めていた。

 いつこのバトルに気づいたのかは分からない。

 分かるのは目を吊り上げたゲンガーを前にして、足を震わせていることだ。

 

「ゲンゲロ! (食らえッ!)」

 

「止めてー!」

 

 ゲンガーのヘドロ爆弾。

 ここで今出られるのは俺だけだ! 

 ボールから出ようとする俺の視線を前に、黄色い稲妻が走った。

 

「……」

 

「ピッカー! (こっちだ!)」

 

 ピカチュウだ。

 ピカチュウは自身の尻尾を鋼色に染め上げ、ゲンガーの腹部を強打する。

 ヘドロ爆弾発動直前の攻撃だ。

 ゲンガーの攻撃は発動できず、数メートル吹っ飛んだ。

 ゲンガーは腹部を払い、好敵手を見定めている。

 

「ゲン! (お前楽しいな……)」

 

「ピッカチュウ! (バトルするなら俺とヤろうぜ!)」

 

 間に合ったのか? 

 でも、あっちにはヨノワールが……っていない? 

 いつの間にか転がっていたモンスターボールからヨノワールが飛び出してきた。

 

「ヨノ……」

 

 レッドが手にしているのはモンスターボールだ。

 それも何も入っていない、空のモンスターボールだ。

 ……あっ、そうか! 

 こいつら野性のポケモンじゃん! 

 空のモンスターボールに入るじゃん! 

 目的が捕獲でない以上、モンスターボールを永久的に投げれば捕まるか倒せるかするじゃん! 

 レッドさん、マジで発想力えぐいなー……。

 

「ピッカー! ピッカッチュー! (こっちには投げるなよ? 美味しいバトルがまずくなる!)」

 

「……」

 

 ヒソカ味を感じるんだけど、あのピカチュウ。

 いつか個体値の高い弱いポケモンに対してどんどん実ってく♠ とか言わないよね? 

 流し目でポケモンに対して点数とか付けないよね? 

 そういうの廃人だけで間に合っているから嫌だよ? 

 

「……」

 

 助けに行こうとするヨノワールに、またまたレッドはモンスターボールを投げる。

 払いのけようとすればリザードンが。

 リザードンを倒そうとすればモンスターボールが。

 なんだろ、ミュウツーボールってこう考えると本当に厄介なんだなって。

 

「……」

 

「その手、私も使う!」

 

 フシギソウを繰り出すレッドと同じく、リーフもピッピとミミカスを繰り出した。

 流石にモンスターボールは投げない。

 

「フシギソウは後ろに隠れていて! それからやっぱり出てきてファイヤー!」

 

 リーフの投げたボールから続いて俺も登場。

 重力に押しつぶされて、そのまま俺は地に付した。

 全員で戦うとかアニメだと良くやるよな! 

 俺はピッピとミミカスの間に割って入り、シャンデラのシャドーボールを暴風で弾き飛ばす。

 

「ファイヤーはフジさんを守ってあげて! 絶対、手を出さないで!」

 

 あっはい。

 俺はゆらり浮遊するシャンデラを横切り、フジ老人の下へと低空飛行で到着する。

 

「これは……、準伝説ポケモン、ファイヤー……。それも色違いが、こんな近くに」

 

 感嘆な声を漏らすフジ老人に翼を伸ばし、バトルの余波を防いでやる。

 バトルの方だが一番先に決着が付きそうなのはゲンガーとピカチュウだ。

 ピカチュウはバチバチとアクセルを吹かし、最速でゲンガーに攻撃を当てる。

 その一撃は正しく神にも届かんとする速さ。

 纏うオーラはゲンガーを守るようにして吹き上がる。

 防御に回しているのだろうが、それでも崩される。

 

「ゲンー! ゲンガー!? (速いし重い! なんなんだこのピカチュウ!?)」

 

「ピカピカ! ピッカチュピカピカァ!! (どうしたどうした! もっとその力を引き出してみろよ!!)」

 

 オーラを纏い、空振り保険を切ったゲンガーが、それでもなお追いつけないとか、このピカチュウマジでピカチュウじゃない。

 やっぱりあれとは戦いたくない。

 

「ゲン、ガー! (調子に、乗るなー!)」

 

 ゲンガーを中点としてドーム状の虹光が広がっていく。

 あれはマジカルシャインだろう。

 バチバチしたアクセルを踏み続けるピカチュウにもあれなら当たる。

 フジ老人に影響が出ないように俺は翼で守る。

 幸い、ゲンガーの攻撃はどれも俺には効果今一つのようだし。

 

「ピッカ! ピカ! ピカピカピカピカピカ!! (良いね良いね! 最っ高じゃん! もっともっとお互いヒートアップしていくぜ!!)」

 

 ピカチュウの足が超高速に動く。

 すると何もないところから、海の如く水が波のように押し寄せる。

 ピカチュウは電気で作ったサーフボードでその上に飛び乗った。

 波乗りか? 

 違うな。

 俺の知っている波乗りは、波にまで電流が伝っていない。

 ざぶざぶと水音を奏でたその一撃は、やはりピカチュウが放っているとは思えないほど圧倒的で。

 俺にはあのピカチュウが準伝説のポケモンに見えた。

 

「何この音……って、なにあの波!?」

 

「……」

 

「あれピカチュウが引き起こしているの!? こっちにまで来る!」

 

 ピカチュウの一撃はゲンガーだけじゃなく、ヨノワールとシャンデラをも押し流す。

 そして当然リーフとレッド、俺含めたそのポケモンたちにも牙を剥いて……。

 ピカチュウの出した波は、綺麗に味方だけを避けて通り過ぎて行った。

 ……うそん。

 波乗りは自分以外に効果のある技じゃ……。

 

 押し流されたシャンデラはまだ倒れていない。

 ゆらりと何とか浮遊して起き上がってくる。

 ただ唯一、ゲンガーとヨノワールは目を回していた。

 戦闘不能だ。

 

 それに気づいたシャンデラは目の色を変える。

 正しく俺たちを嘲笑うような笑みが消えていた。

 代わりに浮かんだのは怯えとも取れる狼狽した表情だ。

 こいつらが怯えるって、何が起きているんだ? 

 どうやら本気で戦う気のようだ。

 

「ピッカッチュー! (もっと強くなってからまた戦おうぜ!)」

 

 ピカチュウはゲンガーの身体をポフポフと叩く。

 シャンデラにも、本能を剥き出しするかの如く戦闘態勢へと移り、

 

「ピカ! (止めた!)」

 

 唐突に止めて俺の方を向いた。

 さっきのあれを見せられたばかりだから、全身の鳥肌が逆立つ勢いなんだけど。

 こっち見るの、止めてくれないかな? 

 

「ピカ。ピッカ? (早く離れろよ。そこは危ないぜ?)」

 

「ギャーオ? (危ないって?)」

 

「ピッカチュ? ピーカピカ(気づかないのか? 後ろにもう一体いんだよ)」

 

 おいおい、ピカ様。

 冗談はやめてくれよ。

 これでさらに後ろにもう一体って、何がいるんだよ。

 ピカチュウの助言に俺はゆっくりと後ろを振り向いた。

 果たしてそこにはピカチュウの言う通り、空に浮かぶポケモンがいた。

 

 ……えっ、ムウマ? 

 あの特徴的な髪に赤いネックレス。

 間違いなくムウマだ。

 ムウマージじゃなくて、ムウマに怯えていたのか? 

 ゲンガーとシャンデラ、それにヨノワールが? 

 ムウマージでも勝てると思うけどなー、ぬし化していたなら。

 

 ムウマは倒れたヨノワールとゲンガー、それからまだリーフと戦っているシャンデラを睥睨する。

 小さく瞼を落として頷くと、タワーの壁を透過して飛び去って行った。

 

 ……何だったんだろうか。

 普通のムウマにしては妙に大きかったし、なんかジト目をしていたけど。

 いや、それよりもまだ問題は……。

 

「シャン~!」

 

 俺はシャンデラへと目を向けた。

 そこではもう、勝負がついていたようだ。

 電気が全身に回っているからか、動きの悪いシャンデラ。

 最初こそ遊びを捨てた様子だったのに。

 ムウマが身体をすり抜けたのを見るや否や、こちらは一目散にゲンガーとヨノワールを引き連れて逃げて行った。

 そんなに怖いのかよ、ムウマが。

 ウルトラホールだからてっきりウルトラビーストが出ているのかと思ったけど……。

 そうじゃないみたいだな。

 リーフはピッピとミミッキュ、フシギソウに労いの言葉を掛けてボールに戻す。

 

「ファイヤーも、ありがとね!」

 

 それから俺もボールの中に戻していった。

 バトルの余韻も少ししないうちに、リーフはがっくりと肩を落とす。

 

「はぁー、結局一匹も倒せなかった」

 

「……」

 

「分かってるよ」

 

 いじけたようにレッドの言葉に応えるリーフ。

 何が分かっているのか、俺にはさっぱり分からないんだけど。

 そんな二人にフジ老人が声を掛ける。

 

「助けてくださってありがとう。お二方もお墓参りですか?」

 

 フジ老人の言葉にリーフは「実は……」と話しを始める。

 カラカラのこと、女の子のこと、それから俺が慌てだして何かあると考えたこと。

 フジ老人は話を聞いているうちに「フム」と頷いた。

 

「なるほど、それはご迷惑をおかけしました。どうやらうちへ戻った方が良さそうです。こちらからも話したいことがあります」

 

「話したいこと?」

 

「はい。先ほどのポケモンがオーラを纏う現象、私には心当たりがあります」

 

  *  *  *

 

 すっかり捕獲の気分じゃなくなったリーフはフジ老人を連れて、ポケモンタワーを降りていく。

 レッドさんは相変わらずポケモンたちを捕まえていたけど。

 タワーを出た後、リーフ一行はフジ老人の案内の下ポケモンハウスへと向かって行く。

 フジ老人が「ただいま」と扉に手を掛けると、中からカラカラが飛び出してフジ老人へと飛びついた。

 遅れてニドランオスやメス、ポッポにマダツボミといった小さなポケモンたちが出迎えた。

 フジ老人はポケモンたちの頭を優しく撫でると、奥にいる女の子に「心配を掛けた」と言葉を送っていた。

 

「ささっ、どうぞ」

 

 フジ老人に通されて、リーフとレッドはテーブルに付いた。

 お茶を三人分入れてくれた女の子にお礼を言い、フジ老人は話し始める。

 

「あれはぬしポケモンと呼ばれる、主にアローラ地方で起こる現象です。曰はく、空に穴が開く現象、ウルトラホール。これが起きた時に流れるエネルギーが、ポケモンに影響を与えるのだとか」

 

「その影響を受けたポケモンがぬしポケモン?」

 

 フジ老人は首肯する。

 そうしてフジ老人はウルトラホールに付いて説明し始めた。

 

 正確にはネクロズマの失った光エネルギーだったか。

 ウルトラネクロズマと戦ったことあるから言えるけど、あれはマジで鬼畜だった。

 ウルトラホールにねぇ。

 今じゃ各地方の伝説、準伝説ポケモンに出会えるって要素の方が強いんだけどさ。

 あと色違いのポケモンにめっちゃ出会いやすいって奴ね。

 サンムーンのころは別世界に行ける程度しか用途なかったんだよね。

 改めてコスモッグを入手しようと久しぶりに開いたら、手持ちにソルガレオ共が居なくていけなかったっていうね。

 っと、フジ老人の話を聞いていたらつい懐かしい気持ちが溢れてくる。

 今はフジ老人の話に集中しないと。

 リーフは質問する。

 

「それがなんで、このカントー地方で起こったの?」

 

 そう、一番の疑問点はそのウルトラホールがなぜカントー地方で起こったのかってことだ。

 はっきり言ってまるで関係が無い。

 いくらカントー地方が魔改造されまくっているからって、流石にウルトラホールまで起こるのはおかしいと思う。

 

 フジ老人は瞬きをする。

 お茶を啜り、ふぅと息を吐いた。

 

「ウルトラホールは別の世界へと繋がっている。ここではない別の世界。例えば、その先にはもうひとつのカントー地方も存在している」

 

「もうひとつのカントー地方……」

 

「もしかすればそこには、別のリーフちゃんがいて、別のレッド君がいることだってある。当然、ファイヤーやそのほかの準伝説ポケモンもいるだろう」

 

「別の世界、同じで別の地方……。そこには別世界の私がいるかもしれない」

 

 反芻するかのようにリーフは呟く。

 ウルトラホールの別の世界。

 公式でメガシンカのある世界と、メガシンカの無い世界は別の世界線だとされている。

 どこかで聞いた話だが、メガシンカの無い世界線はフェアリータイプが存在していないらしい。

 だからフェアリータイプを持っていないアローラの守り神が存在していて。

 その世界ではウルトラビーストに勝つことができず、敗北したとかなんとか。

 それがアクジキングのいる場所とかなんとか。

 

 当然、FRLGでリーフが主人公になる世界線もあるだろう。

 漫画版でレッドとリーフ、二人が存在している世界線もあるだろう。

 もしかすればリーフが、もっと強かな強さを見せる世界線もあるだろう。

 なんならそもそもリーフが生まれてこない世界線もあるだろう。

 ウルトラホールは、そんな無数に枝分かれしている世界線に繋がっている。

 フジ老人はゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「そしてそのウルトラホールに目を付けたのが彼ら、ロケット団だ」

 





実のところ、元々道連れをピカチュウに使おうとしていました。
ピカチュウのピカピカサンダーをシャンデラが庇い、道連れで相打ちにするというルートが。
ただ書いているうちにそれが出来る立ち位置で無くなってしまいました。
すごい未練です。
せっかく回避率を上げたのに。

主人公は剣盾までプレイしていますが、案外知らないことも多いです。
第五世代のシャンデラの夢特性が影踏みとか、相棒ピカチュウとか。

相棒ピカチュウ:
種族値:HP 45 A 80 B 50 C 75 D 60 S 120

バチバチアクセル:威力50、優先度2、必ず急所に当たる。
ざぶざぶサーフ:威力90、相手全体が対象のだくりゅう仕様、30%で麻痺。
ピカピカサンダー:懐き度に応じて威力が変わる。最大148の必中技。

さらにこのピカチュウ、電気玉を持っています。

この状態のバチバチアクセルは、普通に火力指数3万を超えるそうです。
ファイヤーがどんだけ怯えていたのかよく分かるかと思います。

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