ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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強いファイヤーなんて今はいらない!

 

 終わってみればやはり一方的だった。

 膝をつくリーフを前に、エリカはフシギバナをボールに戻し、裾の中へ戻した。

 

「ファイヤー以外はみんな力不足ですのね」

 

 膝をついたリーフの身体がぴくりと動く。

 その一言は今のリーフにはナイフよりも鋭い刃だろうに。

 エリカはなんてことも無くぴしゃりと言い切って見せた。

 

「いきなりファイヤーに頼らない戦い方をしても簡単に強くなれるものではありませんわ」

 

「分かってる……」

 

「いいえ、分かっておりませんわ。分かっていないから、あなたにはファイヤーの言葉が届いておりませんし、心の奥底でまだ頼ろうとしている」

 

 エリカはなおも鋭く言い放つ。

 リーフはもう、完全に打ちのめされて何も言えないでいた。

 リーフだけじゃない。

 ボールに居るフシギソウ、ピッピ、ミミカ……もといミミッキュも何も言わずに悔しそうな顔をして見せた。

 

「……」

 

「わたくしはいつでも挑戦に応じますわ。もし強くなりたいのなら……、ファイヤーを手放しなさい」

 

 エリカの言葉にリーフが条件反射で顔を上げる。

 それよりも多分、一番驚いたのは俺かもしれない。

 俺がリーフの手持ちから外れたら……。

 外れたら……。

 リーフの手持ちから強い奴が居なくなる。

 そこまで考えた時、エリカの言葉に頷きかけた俺がいるのに気づいた。

 

「ファイヤーを手放すって!」

 

「無論、絆を引き裂こうというわけではございませんの。あなたも、そしてファイヤーも。メガシンカできそうなくらい、お互いを想いあっているのは十分伝わりましたわ」

 

「じゃあ!」

 

「だからこそ、ファイヤーはあなたの想いに応えようとしておりますの。自分が負けることはあなたの敗北を意味していると」

 

「……」

 

「岩タイプ、水タイプ、電気タイプのジム。普通のトレーナーでしたら、炎飛行のファイヤーほぼ一匹で乗り込もうとしませんわ」

 

「でも……ファイヤーは」

 

「いつまでファイヤーに甘えておりますの」

 

 エリカの怒涛の説教にリーフは圧倒されていた。

 ……そうか。

 そうだったのか。

 うすうす分かっていた。

 俺の存在がリーフには足枷になっていたのだと。

 強くなれる機会をことごとく奪っていたのだと。

 そりゃそうだ。

 最初から子どもがファイヤーなんか持てばどうなるかくらい、俺だって多少なりと分かっていた。

 でも、俺には責任があるから言い出せない。

 リーフをこうしたのは俺だから、途中で抜け出すなんてかわいそうなことできない。

 そう思って、ずっとなぁなぁにしていたところはあったのだ。

 無論、俺としては抜けようとなんて気は一切ないのだが。

 それでもリーフが強さを目的とするならば、抜けるという手段もありなのではないかと思ってくる。

 エリカはリーフの下まで歩いていき、その肩に手を置いた。

 

「もし、本当にファイヤーが居なくても強くなりたいなら、わたくしのジムを訪ねてくださいの。もちろん、ファイヤーを置いて」

 

「……なんで、私にそこまでしてくれるの」

 

「見ての通り、わたくしは草タイプのジムリーダーですもの。フシギソウを連れたトレーナーを邪険に扱うことはできませんわ。それに、何か理由があるのでしょう?」

 

 袖で口元を隠してクスクスと笑うエリカ。

 なんかそれは違うような気もする。

 フシギソウ以外にも連れているからね、リーフは。

 

 その時である。

 後ろの自動ドアがスライドして、中に新しい挑戦者がやってきたのは。

 入ってきたのはレッドだ。

 レッドはリーフの姿を見ると、気まずそうに帽子の鍔を握って顔をそむけた。

 

「……何?」

 

「……」

 

「そう、負けた。ファイヤーを使わなかったから」

 

「……!」

 

「だってレッドたちは! ……良い。エリカ……さん。一晩、考えさせてください」

 

 いつもならスカートの土を払うリーフが、払うことなくすぐにジムを出ていった。

 

「ええ、お待ちしておりますわ」

 

 エリカはその後ろ姿に手を振ってくれるのだった。

 

 *  *  *

 

 ポケモンセンターに戻ったリーフは、フシギソウ、ピッピ、ミミッキュをボールから出す。

 俺とカビゴンはボールの中だ。

 

「フシッ! (僕はやるよ!)」

 

 フシギソウはツルを伸ばしてアピールする。

 

「……ピッ(……私は)」

 

 ピッピは小さく指を合わせながらもじもじする。

 

「ミミッキュ(まぁリーフの好きなように任せるよ)」

 

 ミミカスは上半身の皮を大きく揺らす。

 思えばミミカスの言葉を聞いたのはこれが初めてかもしれない。

 なんか陽気っぽいから、ストリンダーでいうハイな感じか。

 フシギソウは若干穏やかっぽいし、ピッピは控えめ。

 ミミカスは陽。

 性格は良いの引いているよな。

 リーフは最後に俺のボールを放り投げる。

 青色の光を伴い、光のエフェクトを撒き散らして俺は登場する。

 

「……ファイヤーは?」

 

「ギャーギャー。ギャーオ、ギャー(リーフの選択に任せる。俺としてはエリカの言葉に乗った方が良いと思うけどな)」

 

 俺はエリカのジムがある方を翼で示しながら、精一杯リーフに伝わるようにジェスチャーする。

 伝わるかどうかは分からないけどと、俺は少しだけ目を細める。

 するとリーフは俺の首に腕を回してきた。

 

「ごめんね、弱虫なんて言って……。変わるなんて言ったのに、やっぱり全部任せきりにしちゃって……」

 

「ギャーオ(リーフ)」

 

「ファイヤー! あなたに相応しいトレーナーに進化してくる! だからまた少し、待っててくれる?」

 

 リーフがそう決めたんだったら、俺は何か言うつもりもない。

 精一杯声と翼を広げて、リーフの選択を肯定する。

 リーフは「うん」と嬉しそうに頷いて、俺をボールに戻……さずにポケモンセンターの外を指さした。

 あの? 

 何で俺、【弱いファイヤーなんていらない】をされているんですか? 

 

「ボールに居たら頼っちゃいそうだし、博士に預けたらそれはそれで頼っちゃいそうだから。だからしばらく時間……大体三か月くらい経ったらタマムシシティに帰ってきて!」

 

 あのー? 

 いやね、言い分は正しいと思う。

 正しいと思うんだけどさ、流石にこの身ひとつで外に出ろっていうのはさ? 

 こうさ? 

 ボールに戻ることもできないっていうのは、なんかこう思うことがあるんですよ。

 というか、ポケモン世界の三か月なんて分かるか! 

 マジで三か月ってどれくらいよ。

 カレンダーとか時計とか持たされていないのに分かるわけないじゃん! 

 ちらっと俺はフシギソウとピッピ、ミミカスを見てみる。

 

「フシッ! (強くなってくる!)」

 

「ピッピ(元気でね)」

 

「ミミッキュ! (強くなったら戦ってよ!)」

 

 一匹! 

 一匹ピカチュウの影響受けたピカチュウ擬きいる! 

 ……あぁもう分かった。

 こうなったらヤケだ。

 出て行ってやるよ、この身ひとつで。

 その代わり。

 

「ギャーオ! ギャーギャーオ! (強くなって来いよ! 俺はいつでもリーフの仲間だからな!)」

 

「うん!」

 

 リーフの笑顔を受けて、俺はポケモンセンターから外に飛び立つ。

 タマムシジムでリーフが強くなって帰ってくるのを願って。

 いや、帰るのは俺なんだけどね? 

 強くなったであろうタイミングを見計らって帰ってくるんだけどね? 

 どこかに知っている人が入ればいいなぁ……。




タマムシジムで有名な話といえば、男子禁制ですよね。
リーグから派遣された男性職員すら食堂に追い出されているとの話です。

ジムに行かねばバッジは手に入らない。
でも、女性じゃ無ければジムに入れず門前払い。
リーグの職員すら追い出されている。

これで良く問題になりませんよねぇ……。
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