ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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ダークシャドウポケモン

 

 初めてゲームでいてだきの洞窟を見た時、俺の心に合ったのはここには何があるのだろうという冒険心に満ち溢れていた。

 ニューラの生息地及び、近くの村での孵化作業。

 攻略本を読んだ時、ここにラプラスが生息しているのかと胸が躍ったものである。

 踊っただけで手持ちにはヤマブキシティで貰ったラプラスが既にいたわけだけど。

 

 ナナシマは良くも俺に影響を与えてくれた場所だ。

 色褪せた思い出しかもう持っていないけれど、それでも声を大にして言える。

 もう一度、ナナシマで冒険をしてみたいって。

 もう一度、あの懐かしいBGMを聞いていたいと。

 俺をひと時だけでも子どもの頃を思い起こさせてくれるナナシマが今、現実としてここにある。

 しかして多少の感傷に耽っていた俺を迎えたのは、まるでこの世の悪意を濃縮して、圧縮して、それをさらにドロドロに煮込んだかのような、重たい空気だった。

 内部はもっと嫌なオーラが充満している。

 ここが寒い場所であったことをすっかり頭の中からぶっ飛んでしまうほどに。

 

「おいおい、ここにフリーザーいんのか? 野性ポケモンすらいねーじゃねぇか」

 

 袖で顔を覆ったグリーンは、顔を歪ませて眼前に広がるいてだきの洞窟を進む。

 

「ロケット団のせいだろうね。あまりこの空気にポケモンを触れさせない方が良いよ。普通のポケモンには毒だから」

 

 毒ぅ? 

 毒って感じはしない……っとと。

 身体の内側から何かが根を張るように侵食してきて俺は千鳥足を踏む。

 毒や猛毒とは違って直接身体を害そうって感じの物じゃないけど、反応は鈍るし、夏場の湿気のように鬱陶しいのにどうしようもならない。

 この環境、普通のポケモンであれば気が散って仕方ないと思う。具体的には回避率が下がる思いだ。

 

「面白れぇじゃん! 全部この俺様が倒してやるよ!」

 

「もう一度言うけど気を付けてね。特にロケット団のポケモンの技には」

 

「わーってるよ! 攻撃を受けなきゃいいんだろ!」

 

 あしらうようにメルクの言葉に手を振るグリーン。

 その様子にレッドは何か物を言いたげに視線をぶつけている。

 

 原作ならまだしもここのグリーンなら本当に分かっていると思うよ? 

 少なくともカントーとジョウトのチャンピオンになった程度で、世界で一番強いトレーナーなんてほざく、あの思い上がった傲慢さを感じないからさ。

 俺的には不安を隠すための自己暗示のようなものだと考えている。

 それはレッドも理解したのだろうか。グリーンの目を覗き込み、しばらくして微笑を浮かべていた。

 

 洞窟の内を進行していると、不意にレッドが手を横に広げて立ち止まる。

 氷で覆わされた壁のある一点を見つめたまま、顔に警戒心を露わにしている。

 自然な流れでベルトのモンスターボールに手を当てる。

 グリーンとメルクもレッドの行動に引っ張られる形でボールに手をやった。

 

「バレちゃしょうがないか。この洞窟はロケット団が占拠した! すべてのポケモンを置いて逃げ出すんなら何もしないでやるよ!」

 

 レッドの警戒していた壁から現れたのは、黒い帽子にでかでかとレインボーにRと描かれた黒シャツ。

 見るからに下っ端ですよと言わんばかりの男性だ。

 

「逃げ出す? 下っ端なのに随分と大言壮語を吐くんだね」

 

「警告はしたからな! 行けっカビゴン! 奴らを叩き潰せ!」

 

 安い挑発に速攻で乗ってきた下っ端は、Rの赤文字が入った黒いボールを投げた。

 現れたのは赤い目をしたカビゴン。俺でも分かる程度に紫混じった黒色の靄に包まれたそいつは、何の感情もない顔で降り立った。

 膝を曲げて着地するという、生物として当たり前のことすら行わずに。

 瞼こそ開いていないが、カビゴンの瞳に睨まれた俺を襲ってきたのは、強烈な不安感と逃亡を訴えてくる本能だった。

 前のマリルリとブロスターと戦った時と同じ、こいつは冗談抜きでやばいと訴えてくるあの本能。

 

 ファイヤーで特防の数値が高いカビゴンを相手するのは厳しいな。

 特功の数値だけで言えばカビゴンよりも上だけど、あいにくと耐久振りなわけだし。

 燃え尽きるを撃ってしまえば、残る打点はもう暴風だけだ。

 カビゴンにはリサイクル型とか眠寝言型とかいる。

 火傷に頼った戦いをしたところで、すぐに体力を削られて、それこそ空元気なんか搭載されていたら終わりだろう。

 キョダイサイセイカビゴンは強かった。

 免疫よりも食いしん坊の方が多いだろうけど、それでも毒状態にするのも憚られる。

 あくまでこの場に、俺しかいなかったらの話だが。

 

「カビゴンならあいにく対策済みだぜ! カイリキー! グロウパンチ!」

 

「リキー! (ウオオオオ──!)」

 

 こういう時、やっぱりグリーンは頼りになる。

 何度も戦った仲だから、この中で一番俺についての造詣が深い。

 認めたくは無いけど、二番目はメルクだろう。育成方針があれなうえに、俺のステータスを見て「今の環境じゃ使いにくいかなぁ」とかほざいてきたし。

 今の環境ってどこの地方のどの環境だよ、ってめっちゃツッコミを入れたいところだけど。

 レッドはこの中で一番強いかもしれないけど論外。レベルでごり押しするタイプだから。

 

 ボールから登場すると共に飛び出したカイリキーは、四つの拳に鉄をも粉砕するほど固くした。

 地面を踏み砕かん勢いで足に力を籠め、格闘タイプらしく正々堂々真正面からカビゴンに立ち向かう。

 

「まずは一匹!」

 

 種族値だけ見ればカイリキーは鈍足の部類に入るが、カビゴンはそれよりもさらに遅い。

 アニメのバトル形式であるこの世界だが、ポケモン一匹一匹の性能はゲームを基準としている。

 鋼鉄の筋肉全てを乗せていざ放たれようとしていたカイリキーの拳に、ロケット団の下っ端は不敵な笑みを浮かべた。

 自身の弱点ともいえる格闘技を前にして、カビゴンは恐怖することも勇気を振り絞ることもなく立っていた。

 何かがおかしい。俺が懸念を感じたころにはもう遅かった。

 

「カイリキー!」

 

 突如として洞窟の奥から飛んできた黒いオーラによって、カイリキーの身体ごと弾き飛ばされたからだ。

 ゴーン! っと、壁を砕く勢いで叩きつけられたカイリキーは目を回して崩れ落ちる。

 洞窟の奥の闇から現れたキュウコンは、カビゴンと同じようにその目を赤く染めていた。

 

「増援かな」

 

 メルクの言葉通り、奥からさらにわらわらとロケット団が現れる。

 数にして十人以上。数えたところでさらに奥から湧いてくるのでキリがない。

 その増援たちがさらに一匹づつポケモンを繰り出してくる。

 もれなくその全匹がシャドウポケモンであり、ダークポケモンだ。

 

 しかも現れたロケット団は全員もれなく下っ端なのに、メタグロスやカイリュー、ガブリアスといった六百族の面々が連なっているのはいかがなものか。

 ドサイドンとか倒しきれる気がしない。

 準伝説級以上は一匹としていないものの、準伝説級以上に厄介な奴ら勢ぞろいだ。

 

「クソッ、ウインディ!」

 

「……」

 

「ピッカー(やな感じー)」

 

「じゃあぼくはこの子で!」

 

 グリーンはウインディ、レッドはピカチュウ、メルクはギャラドス。

 そこに俺こと原種ファイヤーが加わるわけだから、何とも懐かしさ全開なカントーチームである。

 あとピカチュウ、その言葉をお前が使うのか。ロケット団と対峙している時に。

 

「ファイヤーはあっちのカビゴンを何とかして」

 

「ギャーオ(よりにもよってカビゴンかよ)」

 

「ヒメリの実はいっぱいあるから、好きに戦ってきて!」

 

 メルクに言われずとも好きに戦うから良いけどさ。

 ここでジムバッジが足りないようだをして、単身でダークポケモンの群れに向かうほど馬鹿じゃない。

 ほんっとうに不本意だけどメルクの指示通りに動いた方が良さそうだ。

 戦況が超不利からある程度不利に変わるだけだし。

 

「カビゴン、ダークラッシュ!」

 

 心を閉ざして兵器と変えられてしまったカビゴンが、黒いオーラを纏って限界を優に超えた力で飛び出した。

 初めからダーク技が来ると分かっていた俺は、暴風を自身の足元にぶつけて急上昇して躱した。

 こっちも待ってくれないみたいだしさ。

 

「早くしろ! ダークブレイクだ!」

 

 血が尋常じゃない速度で巡っているのか、普通ではありえないほどにカビゴンの腕が肥大化する。

 光など届かない奈落、そこに潜む得体のしれない化け物を引っ張ってきたかのような果てしない絶望色を秘めた拳が振るわれた。

 目をそむけたくなる惨たらしい姿は、赤いギャラドスの都市伝説を思い起こすかのように痛ましい。

 攻撃の余波で僅かに散る黒いオーラだけでも、俺の肌は尋常じゃないほどにピリついて来る。

 

 心で理解できる。これはどうしようもない。

 ここがゲーム世界だったら今頃確定一発取られてやられていた。

 

「何してんだ! 相手はたかだかファイヤー如きだぞ! さっさと仕留めろ! でなきゃ処分すんぞ!」

 

 あの下っ端にダイレクトアタックしちゃダメかな? 

 たかだかファイヤー如きといった罪と、処分というポケモンを物としか扱っていない罪で。

 試しに狙いを定めようと下っ端に眼光を叩きつけて見るも、すぐに振り下ろされるカビゴンの腕に意識を持っていかれる。

 ダメではなく今は無理だな。

 こいつを何とかしないと。




ちょっとした解説:ダーク技はXDで登場した技です。

ダーク技はダークポケモン以外に当てた場合、全18種タイプに対して効果抜群判定になります。
あてさえすれば相手がノーマルだろうが、電気だろうが、ドラゴンだろうがフェアリーだろうが効果抜群になります。

特徴が似たものとして、ステラタイプが挙げられます。
こちらもテラスタルしたポケモンに対してテラバースト、テラクラスターを撃った場合、相手が何タイプテラスであろうと効果抜群になります。

ステラタイプにテラスタルした場合、元のタイプが変化しない特徴も同じです。
ダークギャラドスであれば水飛行、ダークマリルリであれば水妖精、ダークラフレシアであれば草毒タイプとなります。
普通のポケモン同様、弱点を突く攻撃を撃てば効果抜群になります。

またダーク技は使い続けるとリバース状態、ハイパー状態という、混乱に近い状態になります。
しかし敵が使用している場合において、この状態になることは無いので、覚えておかなくて大丈夫です。

ここからがこの作品独自の一部仕様となっております。
こちらは作品の都合上、解説できないため書いておきます。

ダークシャドウポケモンとは、ポケモンコロシアム及びXDで登場したダークポケモンと、ポケモンGOで登場したシャドウポケモン、二つの性質を併せ持ったハイブリッドポケモンです。

本来ダーク技は相手のポケモンを捕獲する際の嫌がらせとして使用されますが、この作品においては対戦で実用的な物として使用しております。
具体的にはタイプ一致補正が追加されています。

今回のA特化カビゴンでいうと、
162(実数値)×75(ダークブレイク)×2(効果抜群)×1.5(タイプ一致)となります。
火力指数36450
ここからさらにシャドウポケモンの性質、攻撃特功に1.2倍補正が追加されます。
なので総火力指数43740となります。

これがレベル50、性格、特性、持ち物、ランク、天候、補正無しで放たれます。

もし性格補正をプラスすると、火力指数48060となり、
うちのファイヤーが食らうともれなく410ダメージなので、三匹くらい吹っ飛びます。
輝石持ちHB特化ポリ2が確定一発で吹っ飛びます。
特殊物理反転した輝石持ちHBラッキーに305ダメージ叩き込まれます。
乱数とかは含まれていない初心者が適当に算出した数字なので、あくまで参考程度に。

……原作でタイプ一致が無かった理由が良く分かりますね。
他にもダークウェザーとかいう、ダーク技をさらに1.5倍にする天候があったり。

ここまでやっておいてなんですが、
腹太鼓A特化力持ちマリルリのアクアテール、火力指数120960。
うん。

あと、シャドウポケモンの特徴はこれだけじゃなかったり。
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