ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
俺の置かれている意味の分からない現状にリーフはしゃがみこんで頭を抱えていた。
「どうしよう。これこのまま受け取ったら泥棒になる!」
「ギャーオ(いっそボール壊すか? それとも一旦逃がすとか)」
「けどこれ説明のつきようがないし……。うん、ファイヤーがトレーナーいないって言うならいないんでしょ。たまたま転がってたモンスターボールに入っちゃったってことだろうし」
ひとり頷いて納得したリーフはウルトラボールを受け取った。
初めて見るボールに戸惑った表情を見せながらも、仕組みはモンスターボールと同じと分かるや否や、赤いビームを放ち、俺を収納させた。
「くじかれたような気がするけど! ともかくファイヤーゲットよ!」
俺を捕獲したリーフは一番道路を歩いていた。
ボールの天幕から見える外の景色に、一番道路の看板が刺さっていたから間違いないと思う。
どうやらリーフは本当にオーキド博士からポケモンを貰ったばかりの状態らしい。
となればリーフが一番最初に貰ったポケモンはカントー御三家の誰かとなるわけだが、いったい誰だろうか。
ヒトカゲだったらタイプ相性が被るから後々苦労しそうだなぁなんて考えつつも、レッドがいるならそれは無いだろうと考える。
リーフといえば、ブルーという別の名前もあるけど、どのみちカメックスかフシギバナの二択になるだろう。
レッドはリザードン。グリーンはカメックスのイメージが強いよなぁなんて考えているとトキワシティについたようだ。
ポケモンセンターへ向かおうとしたリーフが、何かを発見したようで「あの後ろ姿は」と駆け出して行った。
レッドとグリーンだ。
二人してポケモンリーグへと続く22番道路に向かっている。
恐らくは原作通りバトルするのだろう。
駆け出したリーフがレッドとグリーンの元につく頃にはもう始まっていた。
グリーンがきざったらしく指示を出しているのはポッポだ。
対するレッドはピカチュウ。
ピカチュウといえばトキワの森で捕まえられるポケモンなのだが……、レッドは一度捕まえてきてから戻ってきたのだろうか?
二人はリーフの姿に気づかないくらいバトルに集中していた。
「ポッポ! 体当たり!」
「……」
タイプ相性的にはピカチュウの方が有利なのだが、意外とグリーンのポッポも負けていない。
根気強く粘っているものの、やはりタイプ相性差は簡単に覆せないようで、電気ショックにて沈んでいった。
というかレッド、無言でどうやって指示を出した。
ポッポをボールに戻したグリーンは、ようやくリーフに気づいたようだ。
額の前に指を持ってきて、「ボンジュール」と独特な挨拶を飛ばしていた。
レッドも帽子の鍔を握り、リーフに視線を飛ばしていた。
リーフはそんな二人に対して、多少呆れた態度で声を掛けた。
「またやってるの? 好きだね」
「……」
「レッドがどれくらい強くなったか試してやってるのさぁ!」
「その割には最初の一匹目を倒されたみたいだけど」
「なぁに、こっからだぜ! 行くぜ、ゼニガメ!」
モンスターボールを振りかぶり、次にグリーンが繰り出したのはゼニガメ。
水色の身体に茶色の甲羅を背負ったポケモン。
ゼニガメは「ぜっにぃ! (やってやるぜぇ!)」と気合十分な様子で甲羅に閉じこもり回転して見せた。
ポケモンになるとポケモンの言うことが分かるんだな。
ポケモンはトレーナーに似るって聞いたことがあるけど、あのゼニガメもグリーンのような仕草でピカチュウと対峙する。
「……」
レッドは頷いてピカチュウに何かの合図を送る。
するとピカチュウはフィールドから離れ、レッドの隣へと戻っていった。
交代か。
レッドの持っているボールは二つ。
ともなれば次にレッドが繰り出すのは御三家のうちの、フシギダネかヒトカゲだろう。
なんて考えていたら、レッドはボールを振りかぶり疑問の答えを繰り出した。
「ヒトォ(頑張るぞぉ!)」
やっぱりヒトカゲだったか。
ヒトカゲもやる気十分といった感じにまだ小さな爪を合わせて見せた。
さっきと反対で、今度はレッドの方が相性不利の状態だ。
「……」
「ゼニガメ! 水鉄砲!」
ゼニガメは口を閉ざし、貯めた水鉄砲を放った。ヒトカゲはこれを、おぼつかない足取りでもろに受ける。
効果は抜群!
水鉄砲の勢いで仰向けになるヒトカゲ。グリーンはこの隙を見逃さず、ゼニガメに追撃の指示を飛ばす。
「……」
レッドの指示? どう考えても言葉を発していないのだが、ヒトカゲは立ち上がりと同時に飛んできた水鉄砲に火の粉を合わせた。
水鉄砲って火の粉で相殺できるもんなんだろうか?
水鉄砲と火の粉の衝撃で衝撃が走り、空中に煙幕が巻き起こる。
その煙幕に乗じてヒトカゲは突っ込んでいき、正面からゼニガメの身体を引っ掻いた。
一撃、二撃、右と左から連続引っ掻き。ターン制なんてお構いなし。
ゼニガメが苦し紛れの水鉄砲を飛ばすころにはもう遅かった。
ゼニガメの頭を押さえつけ、ヒトカゲは飛び上がると至近距離から火の粉をぶつける。
効果いまひとつの技であってもあれだけ引っ掻きまくられれば関係なかったようだ。火の粉を受けたゼニガメは目を回していた。
すげぇ……なんというか、やっぱりゲームとは違うっていうのを見せつけられている気分だ。
水鉄砲を火の粉で相殺しようなんてゲームやっているうちだと考えないからなぁ……。
そうなるくらいなら交代でサイクルを回すだろうし。
ゼニガメを戻したグリーンは、「いつの間にそんな腕を上げたんだ?」なんて感じにレッドの勝利を褒めていた。
……おいこのグリーン、原作と違って尊大な態度じゃねぇぞ。
始めのグリーンといったら上から目線で何かと言ってくるのに、負けたら「何むきになってんだよ」とか妙に小馬鹿にしてくる奴だっただろ!
なのにこのグリーン、負けた理由をメモに取ってやがる。ちゃんと次からは勝気満々って感じだ。
こんなのグリーンじゃねぇ!
グリーンはベルトにゼニガメのボールを戻すと、リーフに目を合わせた。
「どうだリーフも」