ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!?   作:氷水メルク

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レッツゴーピカチュウ

 

「別に私はいいかな」

「何だよ、釣れねぇな。ポケモン図鑑を完成させるってんなら、少しくらいバトルに強くなっても損は無いと思うぜ?」

「……」

 

 レッドが何を言っているのかは分からないけど、たぶんリーフを説得しているのだろうか。

 ポケモン図鑑の完成……。

 確かリーフは目的が無いって言っていたはずだが……。

 その場の雰囲気で言ってしまった感じだろうか。

 グリーンは俺のボールを目ざとく見つけたようで、「それウルトラボールじゃねぇか!」なんて口にしている。

 ……ウルトラボールを知っている? 

 ということはウルトラビーストが既に現れている世界ってことか? 

 

「……」

「トレーナーなら目と目があったらバトル。俺たちのバトルを見て、自分だけやらないってのは不公平だろ」

「……分かったわよ。けどやるからには吠え面かかせてやるから」

「言うじゃねぇか」

 

 グリーンとレッドの押しに負けたようで、リーフは俺のボールを手に取った。

 まずはグリーンから勝負を行うようだ。

 自分のポケモンを薬や木のみで回復させ、リーフの対面に来るよう位置した。

 

「そんじゃ、試してやるぜ! 行けっポッポ!」

「初のバトル! 出てきて、ファイヤー!」

 

 リーフの投げたボールに呼応して、俺は強制的に外へと弾きだされた。

 さっきまでグリーンやリーフたちが大きく見えたのに、今では逆に小さく見える。

 さっそくの初陣だ! ここで自信をつけるためにもバトルに勝つ! 

 きらりんと色違いのエフェクトを出し、俺は「ギャーオ! (絶対勝つ!)」と雄たけびを上げた。

 

「おいおい、なんの冗談だよ。どこで見つけた、どうやって捕獲した」

「ポッ(これ負けたわ)」

 

 明らかに震え声となって身を細めるグリーン。

 ポッポなんて諦め通り越して悟り開いた感じの表情になっているけどまぁ……、手加減するつもりはサラサラないよ? 

 リーフは俺に図鑑を当て、使える技を調べているようだ。

 ひとつ「なるほど」と口に出し、即刻指示を出した。

 

「エアスラッシュ!」

 

 先に言おう。瞬殺であった。

 俺の飛ばした風の斬撃は一瞬にしてポッポを戦闘不能に追い込んだ。

 続くゼニガメも相手にならず、やはりエアスラッシュ一撃で地に付した。

 もはやバトルなんていうのもおこがましい。一方的なものだった。

 うん、なんというかあれだ。

 捕まえたポケモンを別ロムに送ってレベリングして、元のソフトに戻して無双している気分だ。

 何もさせずに相手を倒す瞬間とか正しく近いかもしれない。

 悔しがるそぶりすら見せず、グリーンは自分の手持ちを回復させながら言う。

 

「むきになるにも限度があるだろ」

「……」

 

 レッドはグリーンのぼやきを何も聞かなかったことにしたようだ。

 実際むきになっている感じしているもんね。

 それで準伝説繰り出してくるとか笑い話にもならないけど。

 グリーンを負かしたリーフはレッドに目を向けた。

 

「レッドもやるよね? 不公平だもんね?」

「ギャーオ(リーフは不公平というより不平等だけどな)」

 

 主にポケモンが。

 リーフをバトルに誘った張本人のひとりであるためか、大人しく対面に来るレッド。

 グリーンとは違い、こちらはファイヤーと戦えるためか若干待望の念が見える気がする。

 額から汗を零れさせながら、レッドはピカチュウを繰り出した。

 

「ピカッ! (弱点つけるなら!)」

「ギャー! (やれるもんなら!)」

 

 とは吠えてみたけど……このピカチュウから迸る力。

 ……気のせいか強くないか? 

 油断はしない方が良いかもしれない。

 

 戦いの火蓋はピカチュウの電光石火によって切られた。

 風を纏い縦横無尽にフィールドを駆け巡り、俺の隙を狙うピカチュウ。

 ……気のせいじゃない。

 このピカチュウ、俺の目が追い付かないほど速い! 

 電光石火は確かに先制技だけど。

 にしたってこの速さは異常だ。

 走り回るピカチュウは段々電撃を纏い始めているのか、バチバチと静電気が鳴り始める。

 もう既に俺の瞳にピカチュウの姿が映ることは無かった。

 俺は耳を澄まし、ピカチュウが地面へと着地する音を頼る。

 しかし振り向く頃にはもういなくなっている。

 

「……」

 

 レッドが頷いた。

 直後だ。

 俺の背中から強烈な雷撃が走ったのは。

 コンセントに針金を突き刺したとしてもこれに匹敵する痺れは味わえないと思う。

 どこに当てようと身体の急所を強制的に突き刺す、ライチュウもびっくりな神速のエレキだった。

 まずい。

 この一撃を与えたピカチュウは既に同じ技の始動に入っている。

 ともなれば、

 

「ファイヤー! 自分を中心に熱砂の大地!」

 

 よし来た! 

 俺はリーフの指示通り、火炎で砂を熱すると自分を中心として広範囲に吹き飛ばす。

 この場のどこに居ようと、これならピカチュウの足は止まるはず。

 

「……」

 

 この攻撃に対しレッドはピカチュウに砂目掛けて電気ショックを放つよう指示したようだ。

 けど無駄。

 電気じゃ地面を相殺するのは不可能。

 熱した砂は電気を飲み込み、バチバチと未練がましく電流を残していった。

 これでピカチュウは終わり、と考えていた俺の頭上に影が映りこんだ。

 

 ピカチュウだ。

 

 おいおいおいおい止めてクレメンス! 

 もしかしてこいつ、電流を足場にジャンプしたのか!? 

 そしてさっき俺が受けたあの技を打つ体勢に入っている。

 そうはさせまいと俺が放った火炎放射は、空中で身動きを取れないピカチュウを飲み込んだ。

 

 グルグルと目を回すピカチュウを見て、俺はようやく安堵の息を漏らす。

 マジで速いうえに強かったんだけどこのピカチュウ。

 お互い低いレベルだからここまでしてやられたんだろうか。

 というかなんだよ、速いうえに必ず急所を突いてくる電気技って。チートかよ。

 レッドはピカチュウを抱えて元の位置に戻ると、次発としてヒトカゲを繰り出した。

 

 そしてヒトカゲは瞬殺された。ピカチュウの頑張りも虚しく。

 

 いやね、ピカチュウがあまりにも強かったから警戒心マックスで戦ったんだけど、予想外に弱かった。

 火の粉に合わせて火炎放射を撃ったら簡単に押し返せたうえに、そのままヒトカゲを飲み込んで倒しきっちゃった。

 耐えたら熱砂の大地で追撃を加えようと思ったんだけど……、ピカチュウが強すぎただけにちょっとこけおどし感が強かった。

 

 レッドはヒトカゲをモンスターボールに戻すと、帽子の鍔を握り目元を隠した。

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