ファイヤーに転生したけどこのカントー地方、色々おかしい!? 作:氷水メルク
「……」
「勝ったぁ! お疲れ、ファイヤー!」
リーフから労いの言葉を受け取り、俺は大人しくボールに引っ込んだ。
無重力空間に身を任せて休憩している最中、天蓋から聞こえる三人の話し声に耳を傾ける。
三人とも一先ずポケモンを休ませるということでポケモンセンターへ戻ると決めていた。
「で、どこで捕まえたんだ。そのファイヤー」
「マサラタウン近くの森。ほらっ、よくポケモンキャンプとか行ったあそこ」
「あくまで隠すってわけか」
リーフの話をグリーンはどうやら信じていないらしい。
首を横に振ってすかして見せている。
俺はあの場所がどういったとこなのか理解していない。
なのでリーフが言うなら多分そこだったんだろう。
ただグリーンの言い分も分かる。
ポケモンキャンプに選ばれるほどの場所ならなぜ半年間もの間、俺はリーフ以外の人間に会わなかったのだろうと。
いたずらっぽく笑うリーフは口元で指を立てた。
「私だけの秘密基地」
この言葉にグリーンはこれ以上俺のことについて追及することは無かった。
話題を転換させるかのように話は先ほどのバトルについて流れていく。
レッドも何かを口にすることは無かったが、水晶のように純粋な瞳からして耳を傾けているようだった。
ポケモンセンターに戻ると、俺はボールのままラッキーにタンカーで運ばれて手術台のような場所に連れていかれた。
頭上ではジョーイさんがよく分からない機械が頭上を弄っており、しばらく経つと俺の身体に変化が訪れる。
途端にポカポカとした、お風呂に入った時のような絶妙な気持ちよさが全身を包み込む。
身を任せていると、ピカチュウから受けた傷がきれいさっぱりと癒えていく。
そういえばモンスターボールの中ではポケモンはデータになっている。
だからポケモンバトルの時に負った傷、データの綻びを修復することによって回復を果たすって説を聞いたことがあるような……。
その割によくアニメだと手術台に乗せられているシーンを見るような……。
ともあれ数秒と掛からず、俺は全回復を果たしていた。
同時にポケモンを回復し終わった時に流れる、あの音が耳に入ってくる。
というかデータ化しているのに意識はそのままって何気にホラーだよね。
だって自分の身体が分解されているのに、脳はそのままで思考できるって考えたら怖くね?
思えばポケモン交換とか、ボックスに入れられているときもデータ化されてそこに保存されているんだっけか。
野性で生きてきて、人にモンスターボールを投げられて捕獲されて、バトルに連れ出されて、挙句データとしてボックスに保存される。
……そらミュウツー、ゲノセクト、ポリゴンが生まれますわ。
モンスターボールの技術力の高さに脱帽するなぁ。
唯一の救いがあるとすれば、自分からモンスターボールの外に出れるって部分だろうか。
一生閉じ込められる牢獄じゃない分だけましだ。
これがアニメ基準ならのほほんと研究所の牧場で生活できるのに、なんて考えていた俺がこの世界はアニメ基準であると知ったのはつい三十分後のことである。
そろそろ昼食の時間なようでリーフ、レッド、グリーンは食堂にやってきていた。
三人は腰に付けたすべてのボールからポケモンを出す。
リーフは外に出てきた俺たちの前にポケモンフーズを置くと、レッド、グリーンと合流して食事を始めたようだ。
毎度思うことがあるのだが、ポケモン世界に登場する肉はいったいどこから出ているのだろうか。
レッドが食べているステーキ、実は元々ミルタンクとかだったりするのだろうか。
ポケモンやトレーナーをデータ化してワープゾーンを作るほど技術が発展している世界だから、分子を結合させて作っている説も無くは無いと思うが。
実際、ヨワシとかカマスジョーとかバスラオとか、昔は食べられていたみたいな図鑑記述はあるけど、あくまで昔ってだけだし。
俺はポケモン世界の謎だと勝手に考えている。
それから、
「ダネッ(威圧感すごいね)」
俺を見上げてくるフシギダネ。
正真正銘、リーフが最初に貰った一番目のポケモンだ。
性別は分からないが、声の感じからして非常に穏やかそうだ。
フシギダネは特に気にすることなく俺の隣でポケモンフーズを口にしている。
ピカチュウ以外のポケモンたちは、大体委縮して俺から離れた位置で食べているというのに。
さて、ポケモンフーズなのだが、味はどういったものなのだろうと食べてみたら意外と美味しかった。
一粒一粒に木の実の味が濃縮されているようで、オレンの実特有のハリのある爽やかさが口に広がっていくようだ。
味は正しくミカンといった感じで風味を感じる。
ファイヤーには歯といったものがないのだが、それでも食べられるように調整された絶妙な硬さ。
食べ進めているうちに味は甘いモモンの実へと変わっていく。
美味い美味いと食べていると、隣からものすごい物欲しそうな目でフシギダネが見てきていた。
フシギダネの容器は空になっていた。
もしかして足りないのだろうか?
「ギャー? (食べるか?)」
「ダネェ! (いいの?)」
身体大きいけどファイヤーは並サイズで十分だったりする。
正直これ以上食べると後々動くときに支障が出てきそうだ。
それは良くない。
でぶったファイヤーは個人的に可愛いと思うけど、弱く見られるのはファイヤー好きとして避けたい所存だ。
俺はキラキラした目を向けてくるフシギダネの前に容器をずらす。
するとすごい勢いで容器いっぱいのポケモンフーズが無くなっていく。
午後もバトルするかもしれないんだからそんなに食べたら後で腹痛くなるぞ、なんて考えながら俺もくちばしを動かす。
意外にも美味しいポケモンフーズを堪能しているうちに、昼食の時間は過ぎていった。
お互い最強のポケモントレーナーを目指すと気持ちを新たにするレッド、グリーン。
二人と別れたリーフ。
原作通りなら次に向かう場所といえばトキワの森なのだが……、リーフが向かった先はフレンドリーショップ。
そういえばトキワの森って天然迷路になっていて、普通に迷子になる広さなんだっけか。
ゲームだと一本道だったからすっかり忘れていたわ。
そりゃ準備も必要になるよね、ってことでリーフはモンスターボールと日持ちする食材を持ってレジに並んでいた。
ちなみにこの世界で金を稼ぐ方法のうちに、トレーナー同士でバトルをするっていうものがある。
ゲームのようにバトルに敗北したら金を払うとか、そういうものじゃない。
バトルに勝つとポケモンリーグからお金を支給される、といった制度が取られているらしい。
ランクの高いトレーナーに勝つほど貰える金の量が多くなる。
そしてトレーナーに付けられたランクを決定づけるものがご存じジムバッジというわけだ。
要はジムバッジを多く持っている人や、ジムリーダーを倒すと多く賞金が貰えるよ、って話ですね。
そんな説明をポケモンセンターで金を引き出しているリーフが受けていた。
そんで、リーフは再び1番道路に戻ってきていた。
どうやらこのあたりに生息するポケモンを捕獲、図鑑を埋めていきたいらしい。
何をやりたいのか、何をしたいのかを探しているリーフはひとまず図鑑埋めを冒険のモチベーションにしているわけだし。
綺麗に埋まったポケモン図鑑というのは、なんというか達成感を感じるものだから俺も付き合っている。
それでポケモンといえばバトルして体力を減らし、モンスターボールを投げるというのが常套句なのだが……。