ナルトになったらヒナタが可愛すぎてやばい 作:湯切倉庫
NARUTOのことを思い出したからといって、オレがオレでなくなるわけじゃない。
むしろこれまで「お前何言ってるのか分かんねーぞ」ってシカマルたちに言われてた原因が判明してスッキリした。
そりゃ別世界のネタを振られても分かるわけないよね。みんなノリわるーとか思っててごめん。
合格者向けの説明会が終わると、これから苦楽を共にする
これ知ってる! 進◯ゼミでやったところだってばよ!
「次、第七班。春野サクラに……うずまきナルト!」
しゃー! ガッツポーズしたオレの隣でがくりと肩を落とすサクラちゃん。
「それと、うちはサスケ」
復活のサクラちゃん。コーナーで差をつけてくるサスケにそれはもう焦る。
どっからどう見てもサクラちゃんはサスケが好きだし、オレは脈なし。
でも、サクラちゃんがオレの嫁ってのは確定演出なんだよね。
ムフフと笑ってたら「アンタなんか気色悪いこと考えたでしょ!!」と腹にグーパンを食らった。
……エスパータイプ? いやこの世界だと幻術タイプか。
「オレは、はたけカカシ。お前たち第七班の担当上忍だ」
顔のほとんどが布に覆われている不審者が、死んだ魚のような目で自己紹介した。
次はお前たちだと言われたので「ハイハーイ」と手を上げる。
「名前は、うずまきナルト! 好きなものはカップラーメンと……他人の金で食うラーメン!」
「サイテーだな」
「なんとでも言えってばよ」
焼肉じゃないだけ可愛いから! チョウジを見てみろよ。イルカ先生を破産寸前にまで追い込んだ過去を持つ男だぞ。
「将来の夢はァ、立派な人と認められるように火影になること!!」
「……他人の金のくだりがなければな」
「終わりよければ全てよしだってばよ」
細かいことは気にすんな。カカシ先生はまだ何か言いたげだったが、視線を隣のサスケに向ける。
「……名は、うちはサスケ。嫌いなものならたくさんあるが、好きなものは別にない」
クールキャラ御用達の定型文で具合が悪くなり、そんなサスケのゲンドウポーズに気分が良くなったりした。
俺も真似して隣で同じポーズをしたら、サスケは無言で別のポーズに変えていた。
「夢なんて言葉で終わらす気はないが、野望はある! 一族の復興と、ある男を必ず……殺すことだ」
一族の復興って、具体的になにをどうするんだろ。
あとお前のにーちゃんいーやつらしいぞ。でもサスケの一族全員殺した人が実はいい人って……どんな背景があったらそんなことになるんだよ。
最後にサクラちゃんに「嫌いなものはナルトです!」宣言されたオレの慟哭の声は「好きなものはぁ……」誰にも「将来の夢は……これも言っちゃおうかなぁ?」聞こえてねーな。
顔合わせの翌日。なぜかサバイバル演習が行われていた。
カカシ先生が詳しく説明してた気もするけど……忘れちゃったよね。
とりあえずカカシ先生の腰についてる鈴を取ればいいらしい。取れなかったら首切られてアカデミーにアイルビーバック。よし、頑張るぞ。
火影のじいちゃんを病院送りにし、ミズキ先生を監獄送りにしてまでもぎ取ったアカデミーの卒業資格。こんなところで喪失するわけにはいかない。
オレの足元には、屍が転がりすぎたんだってばよ……。
「お前たちの相手なら、本を読みながらでも出来る」
「それってば、イチャイチャパラダイス!」
「知ってるのかナルトォ!?」
やる気のカケラも感じられなかったカカシ先生の目がキラキラと輝いた。同志を見つけたオタクの煌めきである。
「とっ……とくに157ページのアレが」
「分かるってばよ」
薄らと微笑みながら頷く。身悶えながら感激するカカシ先生。まあ読んでないけど。
ナルトになる前のオレは、それなりに薄い本を読み込む、その道のベテランとも呼べる存在だった。
なのに火影のじいちゃんが持ってたR-18本の一部を読んだだけで気絶するなんて、おかしくない?
考えられることは一つ。
つまり、エロ耐性は精神ではなく肉体に宿ることをお前に教える。
両手を広げて同担歓迎を謳っていたとしても、そう簡単に
オタク特有の早口で語り始めたカカシ先生の腰から、こっそり鈴を掠め取ろうとしたオレは……木に縛られて放置されていた。
その間にサスケやサクラちゃんが勇敢にも向かっていったが、全部返り討ち。
カカシ先生ってば強すぎ。
朝から始まった演習なのに、もう昼過ぎだ。
考え無しに突っ込んできたバカのレッテルを貼られたオレは、飯抜きにされた挙句、両隣りで黙々と弁当を食べるサスケとサクラちゃんという地獄のような状況に置かれていた。
空腹が限界を迎えそう。カカシ先生、飢えた獣の恐ろしさを教えてや――
「ほら」
復讐者になる寸前だったオレの前に、サスケの弁当が差し出される。
「……え?」
「いいから食え。今ならアイツの気配もない」
「で、でも……さっき先生がオレに食べさせたら全員失格だって……」
食い物の恨みはすごいが、食い物の恩はもっとすごい。占める感情的な意味で。
「カカシの言う通りだ。一人では絶対に鈴は取れない。……さっきお前がカカシの気を引いてた時、あれは正直有効だった、と思う。オレはあの本を読んだことがないし、お前にしか出来ないことだ」
「……サスケ」
オレとサスケの間に蒔かれた友情の種が芽吹いた頃、サクラちゃんも食べかけのお弁当をオレに差し出してくれた。
「サクラちゃん……!」
感動で前が見えない。
でもさ、でもさ。オレってば、がっつり木に縛られてるから、このままじゃ食べられないんだよね。
ここは未来の嫁さんにあ〜んしてもらうしか!
「……チッ、仕方ねーな」
途端に羞恥に歪むサスケの顔。は?
サスケは恥じらう乙女のように頬を染め、震える指でタコさんウインナーを箸で掴み、オレの口元に近づけてくる。
待ってよ、こんなの誰も望んじゃいないよ!
いやよいやよと拒否していても身体は正直な女騎士が最終的に快楽に溺れてしまうように、オレはいつの間にかぱかりと口を開いてウインナーを咀嚼していた。
栄養補給成功により肉体は喜んでも、心の花は枯れてしまう。美しい花を咲かせるには、継続的な水やりと可愛い女の子の愛情投与が必要なんだ。
カカシ先生に負けないくらい死んだ目をしていたら、光の速さでオレたちの前に現れた先生が「ごーかっく♡」とサバイバル演習終了を告げた。
「なぁ、シカマルゥ。お前のとこも迷子猫探しとか、じっちゃんばっちゃんの世間話の相手とかばっかりなわけ? オレってば、そろそろデケー任務やってみたいんだけど」
「……めんどくせー。誰だよナルトをここに連れてきたの」
「さあ」
煩わしそうにオレを見るシカマルに、ニッコニコ顔でポテチを食べ続けるチョウジ。ほんと食べてる時は無限に幸せそうだよね、チョウジって。
ここにはオレを入れて三人しかいないので、消去法でチョウジということになる。しかし、オレは誰かに連れられてここに来たわけではないので、忍として裏の裏を読み、オレがオレの意思でやって来た可能性を考慮すべき。
「うるせェな。全部口から出てんだよ」
心の中で思ってたつもりだけど出てたらしい。それは失敬。
「でもさ、でもさ! いくら下忍になったばかりだからって、忍者じゃなくても出来るようなことばっかりじゃね?」
「そんなもんだろ。……つーか、サスケたちに愚痴れよ。同じ班なんだから」
「もう言いすぎて、口開いただけでサクラちゃんに殴られるようになったってばよ」
「…………」
シカマルはオレの頭にぷっくりとできていてるタンコブを見て、納得するように頷く。チョウジは指についたポテチのカケラを舐めとりながら「お餅みたいだよね、ソレ」とお腹を鳴らした。食うなよ? 絶対食うなよ?
「ボク、お腹すいちゃった。アスマ先生のところに行こうよ」
「アスマは自動給餌器じゃねェって……ま、そろそろ時間だしな」
「二人とも行っちゃうのぉ!? 悩める友人を捨てて!?」
「じゃーな、ナルト」
ひょいっとオレの両腕が勝手に持ち上がり、猿真似ポーズをする。目の前に立っているシカマルも真顔で同じポーズをしていた。え?
「こっ、これはぁ、奈良一族の影真似の術……!!」
シカマルの足元から伸びた影がオレの影を捕らえている。
シカマルの動きに合わせてオレたちはお互いに背を向け、しっかりとした足取りで別々の道を歩み始めたのであった。完。
今日も老人の介護やらアカデミーの庭に生えてる雑草抜きやらを任されそうだったので、ついにオレはごねた。それはもう全力でごねた。
火影のじいちゃんに「オレってばもう、じいちゃんが思ってるような(イチャパラで気絶するような純情ボーイでは)ないです」と伝えたところ、なんとCランクの任務をゲットした。やったぜ。
「……よーし、波の国か。なんか漫画で読んだ気がするな」
下忍にとっては難易度が高い任務だからと、忍道具を補充するために一旦家に戻ってきていた。
鏡の前に立ち、ちょっと傾いている額当てを直す。
あとはクナイと、手裏剣とぉ……これも持っていくか。
ヒナタが作ってくれた御守りをジャージの内ポケットに仕舞う。
こういうのって、ヒロインの御守りのおかげで主人公が命拾いする展開が王道だよなあ。サクラちゃんがオレに作ってくれるはずないけど……。
「……へへ!」
外側からぽんぽんと御守りのある位置をたたく。
でもなんでかなあ、これ持ってるとオレ最強! って感じする。
「ナルトォー! 準備にいつまでかけるつもり? サスケ君も先に行っちゃったじゃない!」
「す、すすすすすぐ行くってばよ!」
部屋の外から聞こえてきたサクラちゃんの声と、その直後に聞こえてきた不穏な音に飛び上がる。
オレってば、そろそろ拳の音がトラウマになりそう。