転生者互助組合外伝 多元世界の転生者   作:ゲーマーN

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Fate/Escalation Order -Epic of Beat Remnant-
人理防衛戦Ⅰ 悪性断罪領域 アルダーク 副題「復讐の刃」
第4節 裏界の城

https://syosetu.org/novel/303505/59.html】の本編です


第4節 裏界の城

【推奨BGM:ライト&アクション(Arrange Ver.)】超昂天使エスカレイヤー・リブートより

 

「ぬ、ぐぬうううううう……ぬうぅぅぉぉおおおおおおお!」

 

 憤怒と、少なからぬ驚愕を噴き上げたまま、苦悶の咆哮をあげるディストバーンの身体は磁力ウェブに拘束され続けていた。

 

『磁力ウェブ作戦、成功! ディストバーンを拘束しました!』

 

『ほ……上手くいったみたいね。過去のデータはあったから、成功確率は低くないと思ってたけど……』

 

『この基地ができてから、真っ先に着手した物ですもんね』

 

『そうね。未来では……ディストバーンは、何度も前線で襲いかかってきた。倒すことはできなくとも……せめて拘束出来る手段が必要だったのよ』

 

『計算上はファヴニール級の存在を拘束可能の代物だ。正直、サーヴァントの力も借りずにこれを必要とするような存在と戦っていた未来の人達には頭が下がる思いだよ』

 

 邪悪なる竜(ファヴニール)は最上級の竜種であり、『ニーベルンゲンの歌』に謳われる万夫不当の英雄、ジークフリートをして「あれは勝利して当然の戦いではなく、無数の敗北からわずかな勝ちを拾い上げるような戦いだった」と言うほどの化け物である。

 ブレスの一撃で街一つを丸ごと消し飛ばすほどの圧倒的な力を持つこの邪竜に匹敵する生命体を拘束する技術というのは、かの万能の天才すらも本心から称賛するほどのものだ。

 

『磁力ウェブ、出力安定。他、各地の迎撃装置も、稼働確認しています』

 

『ええ。じゃあ……後はみんな、頼むわよ。戦闘スタッフ各人へのナビゲート』

 

『『『『『はいっ!』』』』』

 

 ダイビート側が予定通りの行動をする一方、アルダーク側は想定外の事態に焦燥していた。

 

「ディ。ディストバーン様が……!? こ、これはどうすればっ……」

 

「メネメネ! め、命令は下っているのだ! 超昂戦士、倒すべし!」

 

「そっ、そうだなっ……! と、突撃!」

 

 事態は、俄か雨のように急転する。襲来するアルダークの怪人達に背中を見せ、超昂戦士達は各地に逃げ散っていく。

 

 

 

 その一人、花のチルカは――――

 

「はっ、はっ、はぁっ……!」

 

「ブーーー!」

 

「ブブーーー!」

 

「わははははは! 一匹発見! さあ、やってしまえ……」

 

「っ、来ないでっ! 忍法、桜吹雪っ!」

 

 半身だけ振り向いたチルカが手を一振りすると、花びらの嵐がコマンダー達の眼前に広がる。

 

「ぬう、目眩まし……にもならぬわ! 勢いも弱い、構うな! 突撃だ!」

 

「ブブブブーーーーー!」

 

 しかし、その花びらの嵐の密度はそれほど高いものではない。直前の戦闘で消耗しているのだと判断したコマンダーは、多少悪化した視界を気にも留めずに配下の怪人達に突撃を命ずる。その指示に従い、フーマン達はチルカに殺到し……

 

「「「「「ブブブブーーーーーッ!?」」」」」

 

 直後、フーマン達が足を踏み外し、落下する。術で隠された足下に、落とし穴。

 

「やああああぁぁっ!」

 

「ブーーーーッ!」

 

 すかさず投擲された大型手裏剣の餌食となり、フーマン達は這い上がれないまま力尽きる。

 

「なっ、なんだとっ!?」

 

「やったぁっ! 大成功っ!」

 

「なっ、き、貴様ああっ!」

 

 花遁の本領は「他者を幻惑する」こと。敵の目論見通りに進んだことに怒りに身を震わせるコマンダーは、その怒りのままに逃げるチルカを追いかける。その行動すらも目論見通りであるのを気付くこともできないまま。

 

 

 

 また、血の切裂余命は――――

 

「メネメネメネッ! 捜せ、捜すのだーーーー! この辺りに超昂戦士が逃げ込んだはず! 捜し出して私の前に連れてこい! 洗脳してくれるわぁ……!」

 

「ブー! ブブブーー!」

 

「なに? 見つからない? もっとよく捜せ! この辺りは入り組んでる、隠れてるに……」

 

「…………ああ。決まってるよなあ」

 

「なッ……!?」

 

 雑然とした路地の、片隅から。

 既に至近距離で臨戦態勢の切裂余命が、飢えた表情で唇を歪めていた。

 

「はは、アハハハハハッ! 斬り放題だ!」

 

「ぐ、ぐあはぁーー! 電波ぁーー!」

 

「ブブーーーーー!?」

 

 フラスト怪人。戦闘員に当たるフーマンのみならず、所謂、今週の怪人に当たるウェーブフラストすらも余命は一刀のもとに斬り捨てる。ウェーブフラストに付き従うフーマンも全滅させた余命は、担当オペレーターに次の獲物を要求する。

 

「ふっ、ふふふ……次だ次」

 

『怪人の撃破を確認! 余命さん、次の情報を送ります!』

 

「ああ。まどろっこしいやり方は面倒なんだけど……」

 

『エナジーと疲労、限界でしょう? 斗羽さんが撹乱と分断、してくれてますから』

 

「取り逃がすとまたうるさそうだな……いいよ、分かってる」

 

『! 近くで怪人の反応ありです。潜伏ポイント、指定します』

 

「ああ。さあ、斬るぞ斬るぞ……っ……」

 

 

 

 ディストバーンを拘束する磁力ウェブを発生させる装置の傍では、神騎ユユエルとビートアイドル・マリナが廃屋に侵入してきた怪人達に対処していた。

 

「ブ、ブブブーーー!?」

 

「ううううおおおおお!? う、上の階からっ……歌声がっ……!」

 

 フラスト怪人。レールフラストの率いる怪人部隊は、頭上からのマリナの力ある声に苦しみながらも、その姿を追い求めて廃屋を駆け回る。

 

「か、階段、階段を探せっ……!」

 

「ブ、ブブーーー!」

 

 フーマンの一人が、崩れかけの階段を見つけ、指をさした。

 

「おお、アレであるかっ! よし、路線切り替えである、あそこに――」

 

「えっと……このスイッチですねっ」

 

「お、おわああああああぁ!?」

 

 当然、上階に登る階段をそのまま残しているはずもない。怪人達の眼前で、階段が崩落していく。そして、崩落した階段の向こうには、可憐な超昂アイドルの姿。

 

「アンコールがあるなら、歌い続ける……大丈夫、行けるっ……!」

 

「ぐ、ぐわああああーーーーー!」

 

 頭上から直接降り注ぐ歌に、怪人達は階段と同じように崩れ落ちていく。連戦でエナジーの消耗が激しいマリナは、険しい顔のままに苦しげに息をする。

 

「……っ、はぁっ。これで、なんとか……このビルは、守らなきゃ……」

 

「ええ。あの磁力ウェブを発生させるビルですから……大事な場所です。マリナちゃんのエナジーと体力が保つか……今は、それが心配ですけれど」

 

「大丈夫、歌い続けます。アイドルですから」

 

 見る者を安心させる笑みを見せたマリナは目の前の穴から下の階を覗き込む。

 

「でもこれ、帰る時は……」

 

「大丈夫ですよ、私が飛びますから。ぎゅーっと癒やしながら♪」

 

「あはは……ありがとうございます」

 

 苦笑気味にお礼を言うマリナ。神騎に覚醒するほどの病的な癒し欲を前にしては、流石の超昂アイドルも笑顔を保つので精一杯だった。

 

 

 

 そして、人類最後のマスターとそのサーヴァントもまた戦場を駆け巡る。

 

「よし、後は頼む」

 

「お任せください」

 

 一度散開、再び合流したマドカにリバース達を預けたトキサダは、再び相棒と共に走り出す。

 

「……各人がナビに従って入り込んだ先は、全部ダイビートの敷地内だ。迎撃用のトラップも用意済み」

 

「単純に逃亡しては、街が危険に晒されますからね。敵を私達に引き付けつつ、罠で各個撃破していく。予定通りに事が進みましたね」

 

「ああ。これで敵を壊滅、とはいかないが。要所を崩して、戦意を挫ければ……」

 

「なるほどな。アルダークの怪人どもは、判断する力が弱い。ディストバーンから命令が出れば……か」

 

「――ッ、危ない! マスター!!」

 

 刹那、その気配と殺意に気付いたマシュが槍の穂先を咄嗟に受け止める。

 

【推奨BGM:グリゴリ】超昂神騎エクシールより

 

「だが。俺の存在は、未来にはなかったか? 龍の者よ」

 

「ッ、殲忍、ハガネ…………ッ!」

 

「マスター、ご無事ですか!?」

 

「大丈夫だ。それよりも今は殲忍ハガネを――」

 

「うちもおるよ?」

 

「お前は…………っ」

 

「殲忍カゲリ……! 以前、基地に侵入した滅忍です!」

 

 花魁のように両肩と胸の開いた和装を身に纏う女が殲忍ハガネの隣に並び立つ。その姿は、聖杯戦争に参加するマスターとサーヴァントのようであり、殲忍カゲリの立ち振舞からは殲忍ハガネに対する信頼を感じ取れる。

 不意に、殲忍カゲリは別の方向に視線を向ける。その視線の先には――

 

「オルバ! ディストバーンを解放せぇ!」

 

「…………分かった。向こう側の力を使う」

 

 アルダークの副官。オルバは、竜頭の杖を天に掲げる。

 

「天の三方。地に六角。絡め、重ね、呼び起こさん。我が名に於いて、言上奉る――――」

 

 両目を閉じたまま続けられるその詠唱と共に、彼女の足元に巨大な魔法陣が生まれる。

 

「狭間より来たれ、裏界(りかい)の城よ。底終(ていつい)の光を乗せ、道の果てへと至れ」

 

 それが強く光を放つと、眼下の街中から、呼応するように幾つもの光が放たれていく。

 

「理の渦を越え、現の鏡を抜け、虚の船に乗り、来たれ、来たれ、来たれ―――」

 

 天空が割れ、空間が歪み。雲を裂いた向こうから、姿を見せたのは……

 

「――――裏界の、城よっ…………!」

 

 上下逆さのピラミッド。エジプト形式ではなくマヤ文明形式のそのピラミッドは、不吉なようでどこか神々しく……それを見る者に侵し難い印象すら与える。

 以前、三人の超昂戦士を連れ去ったピラミッドを前にしてトキサダ”達”は歯を食いしばる。

 

「あんたら、厄介やもんなあ……手を抜かず、今日で終わってもらうわ」

 

「あの建造物は、レジェンド超昂戦士の皆さんを吸い上げた……!」

 

「っ……! 逆さまの、ピラミッド……!」

 

 

 

 そのピラミッドを目視しているのはトキサダ達だけではない。他の超昂戦士と同様にアルダークを各個撃破していたエスカ・アメイズは、昂奮したように大きな声を上げる。

 

「……っ! 来た……出て、きたッ……!」

 

(チャンス……! 今、この瞬間を……っ、でも…………っ……)

 

「けど……っ、長官くんが……っ……それに、みんなも……!」

 

「何、足止めてんの!」

 

「トパーズっ……!?」

 

 逡巡するアメイズに一喝を入れたのはトパーズだった。

 

「あ、ご、ごめんね、えと、ちょっと……」

 

「何か、したい事あるんなら……さっさと行きなさい!」

 

「えっ……」

 

「いいわよ、言いたくないコト言わなくても。ヒーローたるもの、秘密の一つや二つ。なんか……あんたにしかできないコト、あるんじゃないの」

 

「トパーズ……」

 

「ほら! こっちは大丈夫だから!」

 

「っ、うんっ……!」

 

 自信満々の表情でそう告げるトパーズの姿はまさにヒーローそのもの。信頼する仲間に背中を押されたエスカ・アメイズは、自分でも驚くくらいに軽く強い足取りで走り出す。

 

「…………あ! でも一個だけ! 言いたくないんじゃなくて言えないだけ! 終わったら、絶対、っ……!」

 

「いいから! 走れっ!」

 

 余計な事を口走るアメイズを見かねたようにトパーズは声を上げる。

 

「ヒーロー……は、関係ないか。いいの、仲間なんだから」

 

 二人は前を向く。今は、自分にできる精一杯を。

 

「さー、急がないと!」

 

 

 

 そして、ディストバーンは――――

 

「ぬ、く、む…………ううううッ……!」

 

『み、未知のエナジー反応! 磁力ウェブ、緩み始めています!』

 

『ディストバーンの霊基規模が膨張している!? これはあのピラミッドが原因なのか!?』

 

『! あれは、あの時のピラミッド……! 磁力ウェブ、出力上げて!』

 

 その霊基を膨張させていく。今の出力では抑え込むことは出来ないと判断したユーノが、磁力ウェブの出力を上げるように指示を出す。霊基の膨張と出力の向上、先に限界が訪れた方が敗北する、互いに血を吐くような根気の比べ合いが始まった。

 

「あらまあ、頑丈やねえ。未来の技術、つうやつやろか」

 

「キクリ、コテツ。あの装置を展開しているビルを落としてこい」

 

「承知いたしました!」

 

「はーいっ!」

 

「ふふ、そんならうちも……ちょい、動きましょか」

 

「っ、待て…………!」

 

 頭領ハガネの指示に従い、動き出す殲・上弦衆を止めようとするが……

 

「貴様はここだ」

 

「させません!」

 

 振るわれる槍を一度、二度と捌く。だがそれが精一杯で、他の滅忍を止めるまではできない。

 

「ここで朽ち果てろ。それで、全てが終わる」

 

「いいえ! 人理を終わらせるような真似は、カルデアの者として絶対に許しません!」

 

 対峙するマシュとハガネ。各々の得物を強く握り締める中、最後の役者が姿を見せる。

 

「っ、ハガネッ!」

 

「っ…………邪魔立てか。結論は、出たのか?」

 

「サファイア!」

 

「若頭領は、殺させん……お前は、私が止める!」

 

 青嵐の超昂戦士、エスカ・サファイアが自らの兄を止めるために駆けつけた。

 

 

 

『……っていう状況! 作戦通りなら、向こうの角を曲がるんだけど……』

 

「すみません! あの子を……オルバちゃんを止めます!」

 

 オペレーターに現在の状況を確認したエスカ・ルビーは一切の迷いなくそう告げた。

 

『えっ! で、でもっ……』

 

「そーねっ、同感! ちょっと話も聞かなくちゃだしっ!」

 

「トパーズ! ……うん、行こう!」

 

 合流したトパーズと共にオルバの元に駆け出した、ルビーの前に。

 

「あらあら、アカリちゃん――――」

 

 無数の滅忍を引き連れた、殲忍カゲリが立ちはだかる。

 

「ソレされると、うちらほんまに困るんよ。だから…………な?」

 

「ッ…………!」

 

 逃がしも行かせもしないと。

 カゲリは半月形に、唇を歪めた。

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