人理防衛戦Ⅰ 悪性断罪領域 アルダーク 副題「復讐の刃」
第6節 幻影魔神同盟
【https://syosetu.org/novel/303505/61.html】の本編です
【推奨BGM:Beat Witch】超昂大戦 エスカレーション・ヒロインズより
「魔女…………ッ! どういうことや、不干渉主義のあんたらがっ……」
「何もおかしいことはありません。我々は、幻魔を狩る事が使命……そう、今の貴女のような!」
斧の刃風が炎を切り裂き、その主の姿を露わにする。白いハイレグレオタードの上に灰色のジャケットを着るという奇異極まりない服装。黒い三角帽子の下部には単眼が描かれており、彼女自身も右の目を眼帯で覆い隠している。
「…………ッ! く、なん、やてぇっ……!」
「今、降り注いでいる力。紛うことなく、オルタナスタイン……幻魔の力! 我らの、敵の力!」
「早すぎるやろっ……! こんな、物陰で出番探ってたみたいな……!」
「我らのお嬢様の、辛抱強い手回しの成果です。必ずその時が来るから、と。ずっと、待っていたのです。我ら以外の誰かが、貴方達を追い詰め……その本性を、晒す瞬間を!」
殲忍――否、幻魔カゲリは驚愕の声を上げる。その反応に、不敵な笑みを漏らした金髪の女性は身の丈以上の大斧を振るい、獲物たる幻魔に斬りかかる。辛うじて斧の一振りを躱したカゲリはギリギリと歯ぎしりする。
「あ、あれって……!」
「ここは私が。お二人は離脱されてください」
「もしかして……イレーナさん!? エリーちゃんの、メイドさんの……!」
「はい。そして、私だけではありません」
時を同じくして、閂市の各所に正体不明の勢力が続々と姿を見せていた。謎の第三勢力は窮地に陥った超昂戦士達の助けとなり、アルダークの怪人と滅忍を各々の方法で倒していく。
死の寸前にあったマリナを救ったのも彼女達の一人。文字通り、空から降ってきた長い黒髪の女性は、その髪が形取った巨腕で滅忍を殴り付けた。突然の状況の変化に困惑するマリナ達は、自分達を助けに来たらしい女性に視線を向ける。
「あ……あ、え、ええっと……?」
「…………誰?」
金色の瞳が、ぼんやりと滅忍達に向けられる。
「邪魔されちゃった。敵かな、敵だよね。うん、よし、てややややーーーー!」
「危なッ…………」
大刀が唸りを上げる。ビルの壁ごと粉砕する勢いで襲いかかる大刀を、闖入者の女性は一歩も動かずに髪の巨腕で無造作に掴み取る。
「わ」
「…………」
「わーーーーーーー……!」
そして無造作に、左側の開口から放り捨てる。
「何者、ッ…………」
「お味方……なんでしょうか……」
ユユエルの疑問の言葉に、ぐっ、と髪の巨腕が親指を立てる。
「だっ、だだ、だから味方ですよ! 大丈夫! ほらっ!」
「「「ブブブーーーー!」」」
三度笠の様な南瓜の被り物をした女が右手の杖を振ると、先端のカンテラから炎が走り、フーマン達を灼いていく。その光景を目の当たりにした余命はつまらなそうに舌打ちをする。
「………………ちぇっ。なら駄目か」
しばらく刀を向けていた余命が、その刀を再びフーマン達へ向けた。
「じゃ、そっちは譲る。こっちも……片っ端から、斬るっ……!」
「あうあう、頑張りますけど、私そういう系のノリじゃないんですがー!」
第三勢力の存在を観測した司令室は困惑の最中にあった。
「か、各所で魔女と名乗る正体不明の存在が……た、戦い始めています! アルダークと!」
『《魔女》……? 人間を嫌う魔女がどうしてこんなことを……』
「これは……どういう……」
『彼女たち、味方だから! 信じていいわよ!』
「エリーちゃん!?」
司令室に満ちた困惑の空気を引き裂いたのはエスカ・アメイズ……雪城エリーの言葉だった。
『私が呼んだの。向こうがやっと、墓穴を掘ってくれたわ』
「……そろそろ、全部聞かせてくれる気になったってことかしら?」
『ん。まあ、そゆこと。とにかく……』
「ええ。オペレーターは戦闘スタッフに通達! 彼女ら……魔女と協力して、アルダークを撃退して!」
その空気の変化を感じたのは味方だけではない。磁力ウェブに拘束されたままのディストバーンも、風向きが変わるのを感じていた。このままでは超昂戦士に敗北することになる。その未来を脳裏に描いたディストバーンは、己の臓腑が沸騰するのを感じていた。
「ぬうううう……ッ…………! 忌々しい……連中めっ……!」
「っ……拘束の力が、また強く……っ……早く、しないと……」
「オルバちゃん!」
「っ…………!」
焦燥の表情をするオルバの下に、ルビーとトパーズの二人が辿り着いた。
「オルバちゃん、どうしてそんなことをしてるの!? あなた、いったい……!」
「超昂、戦士……?」
「そーよ! タイ焼き奢られといて、やっぱ人類滅ばしますーってどういうことよ!」
「…………? ……」
お金を払う、という人間社会の基本を知らずに困っていたオルバに、この二人は屋台のタイ焼きを奢ったことがある。
「超昂、戦士ィ…………ッ……! ぐぬうううううおおおおおお!」
「ディストバーン……!」
「オルバアアァァァァァ!
「……だめ。そんなことをすれば……これ以上、向こう側の力を注げば……」
「構う、ものかッ…………やれええええぇぇ!」
「ッ…………!」
オルバの杖の鈍い光が、ディストバーン本人に狙いを定める。
「オルバちゃん!」
「…………逃げて」
「おっ、お、ご、が、うぐううおおおおおお! ぬ、ぐ、ぅぅぅううううおおおおおおおお!」
【推奨BGM:臨戦】Fate/Grand Orderより
地の底から響くような呪詛の声に、力が満ちていく。
同時に、強固に絡め取り続けていた磁力ウェブが徐々に押し拡げられていく。
『磁力ウェブ、拘束がこじ開けられます! し、出力は下がってないのに……!』
『なんて力……っ……! 未来世界のディストバーンじゃ、自力での脱出はできないはずなのに……!』
『出力、最大ですが……っ、これ、は…………』
「うおおおおおおおおおおおっ!」
磁力の網に拘束された獣が遂に自らの自由を取り戻す。
「ッ、ディストバーンがっ……」
「殺す…………殺す殺す殺す殺すッッ! 許さぬぞ、超昂戦士ッ!」
「――っ、真名、疑似展開! 『
背中のマニピュレーターから放たれた光が、破壊的な力となって街に降り注ぐ。それを許すまいと立ち塞がるのは、白亜の城塞を生み出したマシュ・キリエライトだ。カルデアを思わせる白い建造物が、降り注ぐ破壊の光を真っ向から防ぎ止める。
「ッ――――『ストライク・エスカレーション』ッ!」
「ええいっ……『ブライトネス・エスカレーション』!」
「……ッ…………ぬるいわ、羽虫がっ!!」
「あああぁあっ!」
「きゃあああぁっ」
事もなげに、ルビー達の攻撃を受け止めたナニカが、二人を薙ぎ払う。
『……! 霊基出現を確認! これは……このパターンは……!』
『そんな馬鹿な! 有り得ない! 天地がひっくり返っても、コイツだけは有り得ない!』
「――はは。―――は、は、は、はははははは!」
ディストバーンの胸部装甲、その中央から人の形をしたナニカが飛び出してくる。
「久しぶりだな、戦部トキサダ……! 憎きカルデアのマスターよ!」
「まさかゲーティア……!?」
『いや、違う!
「魔神柱……!?」
「それって、アルダークが来る前に長官達が倒したはずの……!?」
「アルダークの襲撃前に、だと…………?」
ハガネは眉をピクリと動かす。
「ああ、滅んだとも! 我らは既に、滅び去った種だ!
復活は能わず! 回帰は能わず! 復元は能わず! 永劫は叶わず!
そう、3000年の計画はまさしく完全に崩壊した!
それでも我はこうして無様を晒している!
全て、全て貴様を殺すため。そのためだけに――――!」
「……フン、何かと思えばただの残党ということではないか。おまけに、その男を殺すためだと? 逆恨みもここに極まれり――」
「知っている!!」
「――」
魔神の宣言に、”皇帝”を自負するファヴニルですら言葉を紡ぐことができなくなる。
「その通りだ! この胸を掻き毟る苦痛、じりじりと身を焦がす熱!
それは3000年の計画を台無しにされたからではない。
英霊たちによって、人理焼却を防がれたからでもない。
まして、マシュ・キリエライトによって
完璧な計画、完全な展開。全てを台無しにした起点がある」
ギロリ、と憎悪に満ちた二対の眼差しが戦部トキサダへと向けられる。
「……そう、おまえだ戦部トキサダ!」
「俺が……?」
「認めよう、これは逆恨み、八つ当たり。それすらも飾りだ。
……憎悪。憎悪、憎悪、憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪!
憎悪以外感じられぬ! おまえだ、おまえが憎い戦部トキサダ! おまえは何故、この
「…………っ」
「無様に逃げるという恥辱に耐えたのは、何としてもおまえを殺すという、ただ一点のみ……!!
世界を滅ぼすためにおまえを殺すのではなく、おまえを殺すために世界を滅ぼす――!!
応報の情熱。復讐の誓約。それが、この魔神バアルの
「魔神バアルは戦部トキサダ……貴様を殺すために。そして我は、超昂戦士を滅ぼすために。共に不可能に等しい難行を成し遂げるために、我らは
「幻影魔神同盟……!?」
「幻魔と、魔神の同盟だと……!?」
復讐の連鎖。ディストバーンへと復讐するために時を遡った戦部トキサダが、魔神バアルによる復讐を招くこととなった。そして、
「我が追憶より生まれたのがアルダークならば――」
「我が追憶より生まれるのは――」
『……戦部君! 気を付けろ、途方も無い魔力の流れが来るぞ!』
「「『
その詠唱と共に閂市全体を魔力の光が塗り潰す。空間と時間を捻じ曲げ、切り裂き、別の世界を形作る。その別世界の名は、特異点。まさに今、この土地に特異点が成立する。
『これは、時間神殿か!?』
モニターの映し出す光景にドクターロマンが驚愕の声を上げる。空間、宇宙、世界の全てを魔神柱が満たすその特異点は、冠位時間神殿。終局特異点のそれとほぼ同じ光景をしていた。差異は光帯が存在しないという点くらいだ。
[トリスメギストスからの通信]
『残滓を基にする霊基復元』
『魔神柱と侵略異星生命体の融合』
『これらを用いた、仮想英霊体の構築を確認しました』
『霊基分類:ビーストⅠ イミテーション・フォーリナー』
『以降、対象を魔神ディストバーンと呼称します』
「――――――――は?」
トリスメギストスの発した機械音声に理解出来ないとばかりにトキサダは声を漏らす。そのトキサダに現実を突きつけるように、彼等の目の前には、ゲーティアのそれとよく似た大角を頭部から生やしたディストバーン――魔神ディストバーンが嗤っていた。
「「ハハハハハハハハ! どうだ! これで終わるのだ! 貴様らの全ては! ここで!」」
「なにあれっ! 見掛け倒しじゃないってこと……!?」
「まずいですね。これまでの記録にある中でも、最上位の火力です」
「それって…………!」
「策でどうにかできるレベルを超えています。戦力が……どうあっても足りません」
以上の経緯を以て彼等のクラスは決定された。ディストバーンなど偽りの名。
其は人間が生み出した、人類史を最も有効に悪用した大災害……その名をビーストⅠ。
七つの人類悪の一つ、『憐憫』の理を持つ獣――――
否。
既に、第一の獣は倒された。
其は獣の残滓より形作られた、たった一人を殺すための影法師……
その名をビーストⅠ:IF。
七つの人類悪の一つ、『憐憫』の理を持つ獣……その
「「断罪の火に焼かれよ! 『焼却式 ディストバーン』!!」」