人理防衛戦Ⅰ 悪性断罪領域 アルダーク 副題「復讐の刃」
第8節 ひとつの終わり
【https://syosetu.org/novel/303505/64.html】の本編です
【推奨BGM:その命題~GRAND BATTLE2~】Fate/Grand Order -Epic of Remnant-より
「「はぁ、はぁ、はぁっ……ぐ、ぬうっ……! おのれ、おのれおのれおのれっ……!」」
既にその場所に立っている者は殆どおらず。本来の動きを保っている者に至っては皆無だった。
それでも……倒れぬ者、六者。
全てを破壊しようとする者と、それを止めようと、退かぬ者。
「「何故、だ、何故、それほどに……ッ……!」」
「これで……っ、終わりです、ディストバーン!」
「ぐぅぉおおおおおおおお!!!」
触手じみたマニピュレータが、竜巻のような勢いで周囲を粉砕する。
「っ、はあああああああ!」
その渦中に、光翼を広げた神騎が駆ける。一撃一撃が地を抉り天を裂くような打撃を、唸りを上げた大剣が弾き返し、鋼の嵐の中に、一本の道を作っていく。
ビーストⅠ:IFの保有する固有スキルは『ネガ・エスカレーション』。あらゆる超昂戦士による攻撃を否定・破却する性質を持つこのスキルは、しかし、魔神ディストバーンの本体にしか能力が適用されない。後付けのマニピュレータには通常の超昂戦士の攻撃も十分に効果を発揮する。
「たああああっ!」
「…………っ、か……! ぬ、グ、ォ…………ッ……!」
その細い一本の道を、放たれた幾本もの苦無が貫き、魔神ディストバーンに電光を届かせる。苦無に傷付けられた肉体は即時修復、電光も苦無に宿る超昂の力ごと破却される。それでも、数秒の時間を稼ぐには、その一撃は十分なものだった。
「動きが、止まった……ッ、今!」
「ええっ……残る、エナジーを……全て! 神撃しますっ……!」
「天雷よ……我が敵を討てっ!」
「真名、攻勢展開。これは多くの道、多くの願いを受けた超昂の剣――」
戦士、閃忍、神騎、英霊。四者四様に、自らの武器に残る全てのエナジーを注ぎ込む。
「――――――――『
「穿! 四門、五月雨っっ!」
「ちょう、こう、戦士、どもッ……! エスカ、レイヤアアアアアアア!!」
「我等が恥辱を雪ぐことなく、我等が復讐を果たすことなく!」
「「終わって、たまるものかあああああああ!!!」」
魔神柱出現。
魔神ディストバーンもまた最後の力を振り絞り、超昂戦士達の射線上に魔神柱を作り出す。
「――ここだな。さあ唸れ、紫竜ッ…………!」
跳躍と同時に、ニルの槍に異変が起こる。
鮮やかな紅がニルの体内から槍へと移り、それが巨大な刃を形成する。
「――――『
上空から叩きつけた、異常な程の魔力を集中させた槍の一投が、魔神ディストバーンの召喚した魔神柱に直撃し、衝撃の波が四人の突き進む道を切り拓く。
「ハイ、パーーーー……ッ、ビートエンド!」
「ハイパー・ビート・カルデアス……!」
「「エスカレーション!!」」
「おっ、が、ぐ、まさか、ッ…………! ぐお、ぐ、うぉああああぁぁぁッ……!!!」
正史のマシュ・キリエライトには有り得ない。超昂の力が生み出した、宝具の防御力をそのまま攻撃力に反転させる超昂の剣が、始まりの超昂戦士の剣と共に魔神の霊基を斬り裂く。魔神柱と降臨者、その双方に特攻を有する同時攻撃が突き刺さり――
「……おまえは生きろ」
魔神は、地に堕ちた。
「や、っ…………た、っ……!」
何度も何度も、夢想して……悪夢を圧して、願い続けてきた光景。
ディストバーンが打倒されていく、姿。それが全ての終わりとは限らないと、察しながらも。
一粒だけ、涙が零れるのを抑えきれなかった。
「っ……ん、あれは…………!?」
濛々と立ちのぼる煙が、晴れていく。その中に……何か、人間大の影がある。
「あれは……なんだ? 確かにディストバーンの身体は、粉砕されたのに……?」
「確かに、手応えはありました……けど。っ、これは…………!」
ほぼ破壊されたディストバーンのボディから、もうひとつ……人影が、姿を現す。
「……………………ク、ッ……おのれ……おのれエスカレイヤー……っ……! 忌々しいっ…………!」
「…………!? 誰だ、あれは……?」
『…………!? ディストバーンの中にいた、の……?』
『データベース、ありません……! 完全に、未知の……!』
「……いいえ。情報は……あります。あれは……っ……」
その影の正体を、並行世界から召喚された戦士の一人であるマドカは知っていた。
否、マドカだけではない。同じく並行世界からの来訪者である高円寺ななかも知っていた。
そして、この二人と同じ世界を出自とするエスカレイヤーも――
「ゲ……ゲッツェン……っ……ですか!? まさか…………!」
「この姿を晒す時は……貴様の屍を見下ろす時と、決めていたというのに……なッ……!」
「既知の……敵、ですか」
「はい。私たちの世界の……私の、過去の……敵」
その名はゲッツェン。エスカレイヤーの並行世界の地球を第22の植民地にすべく、将軍を派遣してきた惑星侵略軍ダイラストの幹部の一人。この世界に存在するはずのない過去からの刺客。
「でも、どうして……なぜあなたがこちらの世界に!」
「ク、クク……言うと、思うのか。プレスバーン様の仇の、貴様に…………!」
「っ…………!」
同位存在等ではない。
間違いなく、死闘の末に自らが倒したはずの敵の健在にエスカレイヤーは動揺を露わにする。
「! エスカレイヤー、上を!」
「えっ……」
閉じかけていた空の裂け目が再び開き……いつかのように、空間ごと吸い上げ始める。
「これは、あの時の…………っ!」
「また皆さんを吸い上げるつもりですか!?」
「っ、距離を取れ、四人とも!」
「っ……いいえ、これは……っ、私たちではなくっ…………!」
「クク、ハハハハ……ッ……! フフフハハハハハッッ……!! どの道、おまえたちはここで終わりだ! このまま時空の歪みに飲み込まれるがいい!」
ピラミッドはゲッツェンとオルバを吸い上げて、そのまま裂け目は閉じていった。
「時間神殿が崩れます……! いえ、それ以前に空間が安定していません!」
「特異点Fの時と同じか!? だが、あの時のようにレイシフトで逃げることは――」
「安心するといい。僕の”箱舟”で君達を元の世界に送り届けよう」
その言葉と共に、ニルと並び立つように白い髪の美少年がその姿を見せる。
「サーヴァント……!?」
『いや、驚くのはそこじゃないマシュ。そのライダーは――まさか、グラ――』
「無粋な発言は控えよ、魔術師」
皇帝の威圧。ロマンの言葉を途中で遮ったニルは、自らの隣に立つ英霊に視線を向ける。
「よいか? ”箱舟”の英霊よ」
「ああ。人の善悪に寄る戦いに関わる気はないが、君達は救世を成し遂げた現代の英雄だ」
そう告げる、英霊の背後に一隻の「箱舟」が浮かび上がる。
「必ず、目的地まで送り届けよう」
箱舟は、虚数の海を進んでいく。その甲板には今回の戦いに参戦した超昂戦士が立っている。
「……色々と気になることはあるが、どうにか全員無事に生き延びることができたな」
「はい、先輩! ディストバーンの本体……ゲッツェンは取り逃がしてしまいましたが、魔神バアルを撃破することはできました」
「ああ。一先ずは一件落着、と言ったところか」
リバースの襲撃を発端とするアルダークとの全面対決は、一人の犠牲者も出すことのない完全勝利という形で幕を閉じた。まだまだ、解決すべき問題は幾つも残っているが――
「しかし、妄執か。なるほど、奴らとは相性がよさそうだ。厄介な相手に見込まれたな」
「そうだが。結局は、目の前の事を解決しながら考えるしかないさ」
「ふぅむ。それは?」
「…………今は、決まってる」
背筋に、力を入れて。少しばかりの見栄で、ボロボロの姿でも笑顔を作り。
「…………おかえり」
今日の作戦は、それで全て終了した。
真名 :ディストバーン(+魔神柱バアル)
クラス:ビーストⅠ:IF(イミテーション・フォーリナー)
原罪 :慚愧
出典 :『Fate/Grand Order』
『超昂大戦 エスカレーション・ヒロインズ』
地域 :オルタナスタイン
属性 :混沌・悪・獣
ステータス
筋力:A
耐久:A
敏捷:D
魔力:A+
幸運:B
宝具:A++
保有スキル
・単独顕現(A+)
・陣地作成(A)
・道具作成(EX)
・高速詠唱(A)
・召喚術(EX)
・ソロモンの指輪(-)
・啓示(-)
・千里眼(EX)
・ネガ・エスカレーション(EX)
ネガ・エスカレーション(EX)
ビーストⅠ:IFとしてのスキル。あらゆる超昂戦士による攻撃を否定・破却する。
……ただし、ただ一つの例外を除いて。『人理防衛戦Ⅰ』ではその例外によって、ビーストⅠ:IFの霊基を砕かれたことで、その正体が判明することになる。