来客室の豪華なベッドに座りながら視界に浮かぶステータス画面に目を向ける。
窓の方を見ると何時の間にか日がとっぷりと沈んでいた。
それだけ集中して説明を読んでいた訳だ。
まず、伝説の武器はメンテナンスが不必要の万能武器である。
持ち主のLvと武器に融合させる素材、倒したモンスターでウェポンブックが埋められる。
ウェポンブックとは変化できる武器の種類を記載している一覧表のこと。
とりあえず、俺は盾のアイコンにあるウェポンブックを開く。
ズラ――――――――――――――――――――――!
枠を越えてアイコンは長々と記載されていた。
そのどれもがまだ変化不可能と表示されて……いや、待て。一つだけ変化させられる武器がある。
フォーシールド 0/300 LR
能力解放済み……装備ボーナス、能力『四聖勇者』
専用効果 四身の盾
なんだこの盾? 原作にはこんな盾はなかったはずだ。
試しに他の武器のウェポンブックを開いて確認する。
フォーランス 0/300 LR
能力解放済み……装備ボーナス、能力『四聖勇者』
専用効果 四身の槍
フォーソード 0/300 LR
能力解放済み……装備ボーナス、能力『四聖勇者』
専用効果 四身の剣
フォーボウ 0/300 LR
能力解放済み……装備ボーナス、能力『四聖勇者』
専用効果 四身の弓
……あった。
どうやら、このフォーシリーズには武器を変えることができるらしい。
ヘルプで再確認する。
『武器の変化と能力解放』
武器の変化とは、今装備している伝説武器を別の形状へ変える事を指します。
武器に手をかざし、心の中で変えたい武器名を思えば変化させることができます。
能力解放とはその武器を使用し、一定の熟練を積むことによって所持者に永続的な装備ボーナスを授けることです。
『装備ボーナス』
装備ボーナスとはその武器に変化している間に使うことのできる付与能力です。
例えばエアストバッシュが装備ボーナスに付与されている武器を装備している間はエアストバッシュを使用することができます。
攻撃力3と付いている武器の場合は装備している武器に3の攻撃力追加付与が可能な物です。
『専用効果』
専用効果とはその武器である時のみ発揮する効果です。
この効果は解放による能力付与のように覚えることの出来ないものなので、必要な場合はその武器に変化させましょう。
ここまでが基本的な伝説武器に関する情報だな。
俺が知りたいのはフォーシリーズに関してだ。
そのままヘルプで調べてみる。
『フォーシリーズ』
四聖勇者を一人しか召喚できないため、例外的に解放された武器のシリーズです。
デフォルトの武器として存在し、変化する武器の力を付与させます。
装備ボーナスは変化させた武器に依存します。
『四聖勇者』
伝説武器の反作用を解除する能力です。
この能力により複数の伝説武器を所持することが可能になります。
『四身の盾』『四身の槍』『四身の剣』『四身の弓』
最大四人にまで分身する能力です。
この能力を発動している場合、対象となる武器は分身が使用します。
「……【4つの剣】かよ」
緑の帽子がトレードマーク。ゲームにおける王道な台座に刺さった聖剣を引き抜く勇者の血を引いている、あの有名なゲーム【ゼルダの伝説】シリーズの一つ、【ゼルダの伝説 4つの剣】に登場する聖剣【フォーソード】を思わせる専用効果の武器だ。
確かに原作でも【ゼルダの伝説】が元ネタの盾が出ていたけどさぁ……。
「よし、実験してみよう」
百聞は一見に如かず。
実際に、四身の盾・槍・剣・弓を使ってみるべきだろう。
「「「「四身の盾 / 槍 / 剣 / 弓!!」」」」
四人の声が重なる。
声がした方に目を向けるとそれぞれの武器を天に掲げる『俺』が三人。
というか、俺の着ている服も緑色に変わってる。
「「「「…やっぱり、【4つの剣】じゃん!」」」」
俺(緑)は、俺(赤)と俺(青)と俺(黄)と顔を見合わせる。
「よし、俺はグリーンで」
「僕はレッドだね」
「なら、俺様は……アズールにしておくか」
「それなら私はイエローですね」
俺達は【4つの剣】に倣うことにした。即ち、それぞれ互いのことを服の色で呼ぶことにした。
「「「「四身の盾 / 槍 / 剣 / 弓は解除するとして」」」」
分身を解除する意志を示すと、四人に分身していた俺は元に戻る。
それと同時に、頭の中に三人分の記憶が入ってくる。
どうやら、この専用効果は【NARUTO】の影分身の術のようなものらしい。
「これで人手はどうにかなる……けど、問題は原作の三勇者の活動が分からないことだ」
盾の勇者は基本的に主人公である岩谷尚文の視点で語られる物語だ。
そのため、主人公である尚文のいない場所で起きた出来事について語られることは殆どない。
槍の勇者の道化道等で一部が語られることはあるが、それ以外は作中の登場人物からの伝聞という形でしか知ることができない。
これが、これから俺が勇者として活動する中で一番の問題だった。
三勇者の世界に存在する、この世界を元にした三つのゲーム。
槍の勇者・北村元康の世界のエメラルドオンライン。
剣の勇者・天木錬の世界のブレイブスターオンライン。
弓の勇者・川澄樹の世界のディメンションウェーブ。
俺の世界にはこれらのゲームは存在せず、盾の勇者・岩谷尚文と似たような導入でこの世界に召喚された。
そのため、この世界に関する知識が致命的に欠けている。
そして、そのせいで助けることができない人間が出てくる可能性が高い。
……というか、確実に出ることになる。原作では川澄樹と結ばれることになるリーシア=アイヴィレッドがその代表格と言っていいだろう。
リーシア=アイヴィレッド。
メルロマルクの貧乏な貴族の娘であるもののそれなりに幸せに暮らしていたが、圧政を敷く隣町の悪徳領主の陰謀と暴力で拐われたところを樹に助け出され、その後は彼の力になることを願って同行することを選んだ17歳の少女だ。
彼女は【槍の勇者のやり直し】で悲惨なんて言葉では言い表すことができない境遇に陥る。
盾の勇者の成り上がりの完結後に作者が新たに書いた番外編が槍の勇者のやり直しだ。
これは盾の勇者の成り上がりで当面の敵として描かれる槍の勇者が、並行世界にループしてしまった事から始まる物語。
未来を知っているが、人格が変わってしまった不器用な槍の勇者がどうにかして理想の未来……じゃないな。
盾の勇者のヒロインの一人、フィーロに心酔しつつ過去の過ちを悔み、盾の勇者を助けようと四苦八苦しながらフィーロに出会うために努力する話だ。
頭がおかしい……ごほんっ、常軌を逸した槍の勇者が必要な工程を力技で解決しようとするため、本編である【盾の勇者の成り上がり】では描写し切れなかった出来事がわかる話だ。
この槍の勇者のやり直しのフォーブレイ編でリーシアは地獄を見ることになる。
フォーブレイ編では樹が盾の勇者を差別するメルロマルクから槍の勇者達と共に早々に逃げてフォーブレイに向かったため、悪徳領主から助けられずに長期間過ごすことになった。
しばらく経って槍の勇者から聞いた情報を元に樹から運命の相手として探し出されるも、既に売られた先の悪徳領主から手を上げられて廃人化していた。
勿論、俺に彼女を救わなければならない理由があるわけではない。正義の味方、なんて名乗るほど俺は善意に満ちた人間ではない。
美少女であるリーシアに好意を持たれたい、という下心が少なくない割合を占める。
けど、それ以上に彼女に訪れる悲劇を知っているというのに、それを関係ないからと見捨てるなんて出来るはずがない!
「よし、スレを立てよう。スレ名は……【四聖勇者の成り上がり】でいいかな」
こういう時のための転生板のはずだ。
ここは【盾の勇者】の世界に転生した先輩勇者の力と知恵を借りるべきだろう。
とりあえず、原作進行板でスレ立てして……。
† † †
https://syosetu.org/novel/303505/5.html
1:原作進行中の四聖勇者さん(盾の勇者の成り上がり)
どういう・・・ことだ・・・
† † †
よし、これでスレ立てはできた。まずは俺の事情を説明するべきだな。
† † †
40:原作進行中の四聖勇者さん(盾の勇者の成り上がり)
それがさ、俺、岩谷尚文と似たような導入だから三勇者ほどこの世界について詳しく知らないんだよ
41:原作終了後の黒薔薇の邪神さん(邪神アベレージ)
あぁ・・・
42:原作終了後の黒薔薇の人族さん(邪神アベレージ)
あぁ・・・
43:原作進行中の提督さん(ゲームキャラで異世界転生して、大草原ではじめるスローライフ)
・・・たしかに、それは困ったものだね
44:原作進行中の四聖勇者さん(盾の勇者の成り上がり)
岩谷尚文の視点でわかる範囲に関しては組合ネットで原作を読めるからいいよ
けどさ、残りの三勇者の活動内容は?
俺、残りの三人分は何をすればいいの!?
† † †
一先ず、最優先事項はラフタリアとリファナの二人を救出することだろう。【槍の勇者】のゼルトブル後編で救出が間に合ったことから、急げば彼女達二人を助け出すことができるはずだ。
その際、主であるイドル=レイビアを殺すことになるだろう。問題は、今まで人を殺したことがない俺にそれができるのか、か。イドル=レイビアを殺すことができなければ、奴隷である二人を救うことはできない。
† † †
59:原作進行中の四聖勇者さん(盾の勇者の成り上がり)
そういうこと だから、先輩勇者に話を聞きたいと思って・・・
60:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
そういう事情ならば・・・
61:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
クロスオーバー四聖+αを連れてきたよ
62:原作進行中の四聖勇者さん(盾の勇者の成り上がり)
クロスオーバー四聖+α!?
63:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
シールダーのデミ・サーヴァント(ではない)
高潔の勇者 マシュ・キリエライト!
64:原作終了後の高潔の勇者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
どうも、よろしくお願いします
65:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
SAOで最も反応速度の速いプレイヤー
黒剣の勇者 桐ヶ谷和人!
66:原作終了後の黒剣の勇者さん(ソードアート・オンライン → WEB版 盾の勇者の成り上がり)
後輩が助けを求めていると聞いて
67:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
永遠に紅い幼き月
紅魔の勇者 レミリア・スカーレット!
68: 原作終了後の紅魔の勇者さん(東方紅魔郷 → WEB版 盾の勇者の成り上がり)
ふふっ、この私が最高最善の運命を引き寄せてあげるわ
69:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
我が魔王の同位存在!
銃神の勇者 南雲ハジメ!
70:原作終了後の銃神の勇者さん(ありふれた職業で世界最強 → WEB版 盾の勇者の成り上がり)
僕たちが君の力になるよ
71:原作終了後の海ウォズさん(ありふれた職業で世界最強)
そして、彼等に仕える預言者達!
72:原作終了後の高潔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え! 巨悪を駆逐し、新たな未来へ我等を導くイル・サルバトーレ!
その名もマシュ・キリエライト! 真の救世主がこの地に降り立った瞬間である!
73:原作終了後の黒剣の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え! 巨悪を駆逐し、新たな未来へ我等を導くイル・サルバトーレ!
その名も黒の剣士・桐ヶ谷和人! 真の救世主がこの地に降り立った瞬間である!
74:原作終了後の紅魔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え! 巨悪を駆逐し、新たな未来へ我等を導くイル・サルバトーレ!
その名もレミリア・スカーレット! 真の救世主がこの地に降り立った瞬間である!
75:原作終了後の銃神の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え! 巨悪を駆逐し、新たな未来へ我等を導くイル・サルバトーレ!
その名も銃神・南雲ハジメ! 真の救世主がこの地に降り立った瞬間である!
† † †
「先輩勇者と一緒になんかウォズが出てきたんだけど……」
ウォズ。【仮面ライダージオウ】に登場する祝う人。
転生板には、なぜかウォズがよく出没する。まさか先輩勇者とセットで出てくるとは……。
等と考えながら、スレの流れを見ていくとそのコメが目に入った。
† † †
85:原作終了後の高潔の勇者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
流石に書籍版のみの設定はどうにもなりませんが……WEB版の範疇であれば、私たちの経験がきっと役に立つはずです!
† † †
別の世界で盾の勇者として召喚された少女の言葉。他の三人の先輩勇者の言葉と共に、彼女の言葉はひどく胸の奥に響いた。
……本当にありがたい。これで、彼女達に手を伸ばすことができる。
「諸先輩方、ありがとうございます!!」
そう打ち込むと、またウォズが「祝え!」を披露してくれた。
† † †
89:原作終了後の高潔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え!
90:原作終了後の黒剣の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え!
91:原作終了後の紅魔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え!
92:原作終了後の銃神の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
祝え!
93:原作終了後の高潔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
巨悪を駆逐し、
94:原作終了後の黒剣の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
新たな未来へ彼等を導くイル・サルバトーレ!
95:原作終了後の紅魔の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
その名も四聖勇者!
96:原作終了後の銃神の預言者さん(WEB版 盾の勇者の成り上がり)
真の救世主が彼の地に降り立った瞬間である!
† † †
サルバトーレ……救世主、か。
正直、俺には荷が重い。
それでも、四聖勇者として召喚されたからにはやりきってみせるさ。
「勇者様、お食事の容易ができました」
お? どうやら晩飯が食べられるみたいだ。
「分かりました。今行きます……………………え?」
俺は、扉を開けると同時に硬直した。
扉の外には、あまりにも予想外の人物が立っていた。
「あなた、は……」
一見すれば、セミロングの赤毛の可愛らしい女の子だ。
だが、その本性はこれ以上無いほどに醜悪なものであるのを俺は知っている。
彼女の名は、マルティ=S=メルロマルク。
この国の第一王女であり、「波」の黒幕である神を僭称する存在の分け身。
「ちょっと。部屋の中に入ってもいいかしら?」
「…………」
仮にも王族である彼女の意志を蔑ろにするわけにはいかない。
冤罪をかけられる可能性を警戒しつつ、仕方なしに部屋の中に迎え入れる。
不敵に笑う彼女は後手に来客室の鍵を閉めると。
「――お願いします! 私のことを助けてください!」
その場に土下座した。
「は!?」
俺は、その予想外の出来事に呆然と声を漏らすことしかできなかった。