転生者互助組合外伝 多元世界の転生者   作:ゲーマーN

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Fate/Escalation Order -Epic of Beat Remnant-
人理防衛戦Ⅰ 悪性断罪領域 アルダーク 副題「復讐の刃」
第1節 狂戦士の鼓動

https://syosetu.org/novel/303505/56.html】の本編です。


第1節 狂戦士の鼓動

 人類最後のマスター、戦部トキサダは地球防衛組織ダイビートの長官である。

 ダイビート、正式名称『Defence imperative to earth beat forces』は現代人類では対処出来ない侵略行為を防衛、人類の破滅の未来を防ぐのを目的としている。

 人理修復後のトキサダは当初の予定通り、侵略異星生命体、アルダークから人類の未来を守るためにダイビートの長官として行動することになる。

 

 人理保障、即ち未来に於ける人類社会の存続を保障することを目的とする人理継続保障機関フィニス・カルデアと同盟関係を構築したダイビートは、戦士、閃忍、神騎の三勢力の超昂戦士と共にアルダークに対抗している。

 その戦いは新たな局面を迎えることになる。司令室に駆けつけたトキサダが目にしたのは、破壊された街並みに顔を曇らせるエスカチームの姿だった。

 

『っ……こ、これ、は……っ……』

 

『酷いな……本腰を入れてきた、という訳か』

 

『避難もまだだってのに……もうっ!』

 

 モニターに映り込む街並みに顔を顰めつつもトキサダはエスカチームの四人に指示を出す。

 

「今回は、戦闘できるほど回復していない戦闘スタッフを避難誘導に回すつもりだ。君達は……」

 

『あの困ったちゃんを、ね』

 

 紫幻の超昂戦士。エスカ・アメイズの呆れたような声に応じるように、遠くの方から建物が崩れる音と人々の悲鳴が聞こえてくる。

 

「準備が出来次第、応援は回す。厳しいが頼む!」

 

『なんかヤバそうだしね……了解っ』

 

『行くぞ。兎に角、止めなければ……!』

 

 悲鳴の下に駆け出した四人の姿に、トキサダは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「結局、有効な手立てが見つからないまま、対峙する……しかないのか」

 

「周辺の情報、収集していますが……他にアルダークの反応、ありません」

 

「無いのか……」

 

 オペレーターの言葉に、トキサダは意外そうな声を出す。

 

「あの二人の独断かもしれないわね。アルダークが制御できていたようには、あまり見えなかったし……」

 

『その判断は早計だ。トリスメギストスはアルダークの襲撃を予測してる』

 

 司令室の巨大モニターに表示された画面の一つが拡大される。その画面に映り込むドクターロマンが真剣な表情で副官のユーノの推測を否定する。

 霊子演算装置・トリスメギストス。2015年に完成したカルデアの発明の一つ。レイシフトを管制するこのコンピューターは、事象記録電脳魔・ラプラスと併用することで高精度の未来観測を可能とする。

 

「……何れにせよ、厄介な事態であることに変わりはないな」

 

「リバース、エスカチームと接触! 映像出ます!」

 

「…………!」

 

 モニターに六人の姿が表示される。

 その内、四はエスカチーム。残りの二つは――

 

『あ、あれって、っ……!』

 

『………………う、あ…………』

 

『殲、滅…………排除……』

 

 ゆらり、ゆらりと、幽鬼のように。黒い影が、黒煙を上げる瓦礫の向こうから歩いてくる。

 

『たっ、助け…………あぁっ!』

 

『ああぁっ!』

 

『あっ……!』

 

 その片割れ、エスカリバースの直ぐ側で逃げ惑う子供が横転した。その子供の母親と思しき女性とエスカ・トパーズが声を上げる。徐ろに子供へと視線を向けたエスカリバースは……

 

『ぎゃぶっ!』

 

『危ない!』

 

 無造作に、その子供を蹴り飛ばした。危うく飛び出したエスカ・ルビーが、建物の壁に叩きつけられる前にキャッチする。

 

『げほっ、あぐう、けほっ……』

 

『大丈夫!? すぐに……!』

 

『ああっ、ありがとうございます!』

 

『すぐにダイビートの誘導が来ますから、病院に連れて行ってあげてください!』

 

 母親に子供を渡して。

 

『…………ッ!』

 

 紅蓮の超昂戦士、エスカ・ルビーの燃え上がるような視線がエスカリバースに向けられた。

 

【推奨BGM:夜よりも長き牙 (Arrange Ver.)】超昂天使エスカレイヤー・リブートより

 

『敵…………ッ、敵ィィィ……ッ……!』

 

『――――!』

 

 獰猛な獣のような勢いで、エスカリバースが襲いかかる。

 

『あああぁぁっ!』

 

 起動させないままのパルシオンを一閃、鈍器の質量でルビーを撥ね飛ばす。

 

『殺す…………殺す、殺す、殺すッ』

 

『っく、うっ……!』

 

 そこに、閃光のように一直線に、もう一つの影…ハルカリバースが飛びかかる。

 

『っ、ちょ、待ちなさいっ……!』

 

『ルビーッ!』

 

 辛うじて割り込んだトパーズが勢いを鈍らせ、無防備なルビーを、エスカ・サファイアが紙一重で抱え上げる。

 

『っ、くぁっ……! あ、ありがと、二人共っ……』

 

『ルビー、まだっ!』

 

『っ……!』

 

『シャアアアアアアアアア!』

 

『く、っ……!』

 

 黒の暴虐を前に、アメイズはその左目を紅に染め上げる。

 

『ッ……! こっちの”目”でも、止まらない……ッ……!』

 

 魅了や石化、拘束能力を持つアメイズの魔眼は確かにその機能を発揮している。その上で、エスカリバースは魔眼の拘束を強引に振り払い、夜よりも長き牙を二人の超昂戦士に届かせる。

 

『うわあああぁぁっ!』

 

『っく、が、ああぁぁッ……!』

 

 猛追する黒の戦士の一撃が、赤と青の戦士を纏めて地面に叩きつける。

 

『っ……く、ッ……なんて、力だ…………っ』

 

「っ……! どういうことだ。今までのリバースとは……」

 

「……まるでバーサーク・サーヴァントみたいです」

 

 傍らに立つ少女、マシュ・キリエライトの言葉にトキサダは人理修復の旅を思い出す。

 邪竜百年戦争。第一特異点にて対峙した竜の魔女ジャンヌ・オルタは、聖杯の力により『狂化』を付与したサーヴァントを従えていた。理性と引き換えに全ての能力を底上げされたそれらのサーヴァントは、バーサーク・サーヴァントと呼ばれている。

 今のリバース達は、確かにバーサーク・サーヴァントも同然の状態にあった。

 

「凄いエネルギー量……初めて姿を見せた時と同じか、それ以上……」

 

 ダイビートの技術部門のトップを預かる高円寺さやかがリバースの状態を分析する。

 

「それ以降は省エネ傾向で戦ってたっぽいけど……D2エナジーを補充し直したってこと?」

 

「DDDはまだしも、閃忍にそれは不可能のはずです。龍の者が早々見つかるとは思えません」

 

『ボクもマシュと同意見だ。恐らくは何らかの代替手段を――』

 

「……! スキャン終了。確かに、今のリバース達には凄い量のエネルギーが確認できるわ」

 

「エネルギーパターン、こっちに回して」

 

 ロマンの言葉を遮るようにユーノが報告を読み上げる。

 

「…………なにこれ?」

 

「さやかさん?」

 

「D2エナジーとは、別に……未知のエネルギーが、とんでもない量で流し込まれてる」

 

「未知の、エネルギー……」

 

「んー。これが全身に巡ってるせいで、あの凶暴化……というか、自我を失いかけて暴れてるみたいね……」

 

「…聖杯の魔力で、英霊を強引に使役しているようなものか」

 

「行動パターンを見た限り、衝動のままに彼女達を暴れさせているように見えますね」

 

 同意を示すようにトキサダはその言葉に頷いた。少なくとも、今のリバース達が複雑な命令の下に行動しているとは思えない。恐らくは、暴走させた彼女達を差し向けただけだろう。問題は、特記戦力の二人を放り出したアルダークの目的が何か、だ。

 

「あーもう、アルダークの技術って、単純に進んでいるように見えて、強烈な理不尽な所があるのよね。何よコレぇ」

 

此方(魔術)側から見ても、アルダークの技術は異常としか言い様がないよ』

 

『対策とかってないわけー!?』

 

 司令室の会話を聞いていたトパーズが悲鳴混じりの声を上げる。

 

「うー、ゴメン。こっちからは今はない! 技術的に変な事してるわけじゃないし!」

 

『っ……! く、了解っ!』

 

「取り敢えず、暴走エナジーって名付けるわ。解析は進めるけど……あんま期待しないで」

 

『ボク達もトリスメギストスで暴走エナジーの分析を試みる!』

 

 対処方法は存在せず。少なくとも、このままでは味方側の戦力が全滅するだけ。それを許す訳にはいかないと、思考を切り替えたトキサダはダイビート全体に指示を出す。

 

「戦闘スタッフ、順次出撃頼む。但し、戦える状態にある者だけだ」

 

「全スタッフに伝達するわ」

 

(何か、手はないのか……っ……考えろ、考えろっ……)

 

 心の内側に閉じ込めた焦燥を見抜くようにマシュはトキサダと視線を合わせた。

 

「――先輩。ここは、私達が行くべきでは……」

 

「それは……」

 

「駄目よ、マシュ! トキサダも……あなたたちを行かせるわけには……!」

 

 ダイビートの要であるトキサダを安易に出撃させることはできない。

 終局特異点を踏破した後のマシュは、宝具を完全状態で発動することができない。超昂戦士と同様にADDDを使用することで、ようやく戦闘行動が可能という大幅に弱体化した状態だ。

 本来、この二人は前線に出るべきではない。ユーノの発言はこれ以上ないほどに正論だった。

 

『ハハッ、は、ああああああッッ!』

 

『……ッ……!』

 

 久世上弦衆・七暴が二位、血の切裂余命が昂奮を露わにエスカリバースに斬りかかる。切断依存症の彼女は、血に飢えるがままに刀を振るう。されど、人斬りの刃がエスカリバースに届くことはなく、パルシオンに受け止められる。

 

『余命、飛ばしすぎよ! 無理言って補給したエナジーを……!』

 

『バカ言うな、こんな相手にっ……ハハ、ガマンなんてできるもんかっ!』

 

 猛禽の如き勢いで、切裂余命とエスカリバースが斬り結ぶ。

 

『なあ、オマエ……ッ、オマエも楽しいのか……壊すのが……斬るのがッ!』

 

『ッァァァァアアアアア!』

 

『っ、とぉっ……』

 

 余命の刃がリバースの手甲の上で滑らされ、返す拳が数本、長い黒髪を吹き飛ばしていく。

 

『っ、お馬鹿、一人で行くからそうなるとっ……』

 

『……ッ!』

 

 後方から二人の死合を見ていた七暴が一位、鬼の斗羽大洋が余命に加勢する。不意打ちに放たれた金属製の扇だが、エスカリバースはその鉄扇すらも防ぎ止めた。パルシオンを横薙ぎに振るうことで、閃忍二人を自らから引き離す。

 

『邪魔するな、って、ッ……! それにッ……!』

 

 ちらり、と。

 赤髪の超昂戦士が前回帰還してきた時の姿が、余命自身も意識しないまま、脳裏を掠める。

 

『オマエは斬ったら…………ッ、特別楽しそうだッ!』

 

 叩きつけられるやりを既の所で掻い潜り、余命の刃がきらめく。

 

『ッ――――りゃあああっ!』

 

『”花”のチルカッ! 参りますっ!』

 

 想破上弦衆・七閃が五位、”花”のチルカ。死角から飛び出した彼女が巨大花手裏剣を解き放つ。

 

『てーーーりゃぁああーーー! 合体攻撃アターーーック!』

 

 と同時に、反対側からトパーズの剣が突き刺さる。三方向の同時攻撃。それも必殺級の攻撃を前にして、エスカリバースは――

 

『――――ハ』

 

 嗤った。

 

『あああああアアアアアッッ!』

 

『な、ちょ――――』

 

『うあああああぁぁっ!』

 

 エナジーの奔流が全身から放たれて、近接していた二人が纏めて吹き飛ばされる。

 

「…流石は、エスカレイヤーさんの同一存在ですね」

 

「ああ、一対多戦闘に慣れている。それに、今の出力は……」

 

『並の宝具以上…下手をすれば、魔神柱の焼却式並だね』

 

 トキサダの表情は刻一刻と険しさを増していく。

 

『ハハ、簡単には斬れないかっ……!』

 

 余命が苦痛を嗤い飛ばし、空中で体勢を整え、更に刀を握り込んだ――――その瞬間。

 

『――――――――』

 

『なっ……!』

 

『っ…………くっ……!』

 

 辛うじて、斗羽の鉄扇が割り込む。

 力を込めた様子もないハルカリバースの刃が、強固な鉄扇を歪ませる。

 

『まったく、手の掛かるっ……!』

 

『チッ、勝手に助けるなよっ……!』

 

『――――死ね』

 

『くっ……! 下がれっ!』

 

 至近距離から黒い雨のように苦無が降り注ぎ、周辺一帯の戦士達に襲いかかる。サファイアが同じように苦無を投擲するが、数本を叩き落とす以上のことはできない。回避の間に合わない戦士に苦無は傷を刻み込む。

 

『んぐぅっ! くう、こんなの……って、げほっ! なにこれ、身体が……!』

 

『っ、まずい、毒だ!』

 

『わたしが治しますっ、えいっ……!』

 

 神騎ユユエルが治癒の奇跡を展開させた、その瞬間。

 

『ッ、シャアアアアアッ!』

 

『あっ…………』

 

 そのユユエルに、エスカリバースが一直線に突進する。身動きの取れないユユエルに、あわやパルシオンが突き刺さる――

 

『っ、させないっ、やああああぁっ!』

 

 その寸前、A級サーヴァントと同等以上の実力を誇る準レジェンドの閃忍ナリカが、大型手裏剣でエスカリバースの槍撃を受け止める。どうにか、その威力を受け流そうとするものの……

 

『潰す…………潰す…………!!』

 

『ううっ……!』

 

 一合、二合と打ち合うが、技術ではどうにもできない力の差が、ナリカを後退らせる。

 レジェンド級の超昂戦士の戦闘力はトップサーヴァントと同等以上。その中でも破壊力に特化しているエスカリバースの攻撃を受け止めるには、ナリカは余りにも非力だった。元の世界にいた時よりも弱体化している事も原因の一つだ。

 その一方、リバース()は暴走エナジーで狂化されている。

 

『ひゅっ……』

 

『っ、ハルカさん……!? ううん、違うっ……ペロッ!』

 

 ナリカの大型手裏剣は「蛇咬」と呼ばれる生体兵器であり、普段は蛇の姿を取っている。蛇の姿に戻った手裏剣は、易々と背後を取ってきたハルカリバースに食らいつく。

 

『ああああっ!』

 

 黒い苦無の一振りで蛇ごと斬り飛ばされたナリカの身体が、エスカリバースの間合いに入る。

 

『ククッ……!』

 

 轟音を立てる穂先が捉えるより、僅かに早く。

 

『ちょっとは止まりなさい! 『バジリスク・エスカレーション』ッ!!』

 

『!』

 

『行きます、『恋に翼を』!』

 

 アメイズの眼光で僅かに動きが鈍った所に、ビートアイドル・マリナのD2エナジーを内包した歌が響き渡り、その衝撃でエスカリバースとハルカリバースの足元が沈み込む。

 

『っ……! リバースッ!』

 

 同時に、歌の力で強化されたルビーの飛び蹴りが、弾丸のように黒の戦士に突き刺さる。

 

『っ、ククッ、クククククッ……!』

 

 ――が、エスカリバースは崩れない。赤の超昂戦士の全霊を容易に受け止める。

 

『っ、どうして……どうしたの! あなた達……正気じゃない!』

 

『ダメだルビー、話しかけても……!』

 

『でもっ、前とは……!』

 

『正気じゃない、のは本当みたいね。さっき通信で、よく分からないエナジーを注がれてるから、そのせいだって』

 

『よく分からない、エナジー……?』

 

「波形的にはD2エナジーに似てるけど。それが尽きない限り、あの二人は……」

 

『あのまま……って、こと……』

 

 このままでは敗北するのは時間の問題だろう。ドクターロマンに視線を向けたマシュは、必死の表情で声を張り上げる。

 

「ドクターロマン! この件にサーヴァントを投入することはできないのですか!?」

 

『今、所長が動いているけど……魔術協会、国連共に今回の件に関するサーヴァントの投入を拒否しているようだ』

 

 このままでは危ないというのに、頭が固い上層部にマシュは歯噛みする。

 

「限界が来たスタッフは、直ぐに回収させて」

 

「通達済みです。簡単ではないですが……神騎アルゴルがそちらの指揮を」

 

「動く者に反応してるらしいのが、まだ救いね……」

 

『不幸中の幸い、というだけだ。このままだと此方の戦力が全滅する!』

 

 戦線から離脱した戦闘スタッフは、既に十名を数えようとしている。

 ロマンの言う通り、このままではダイビートの戦闘スタッフが全滅するのも時間の問題だろう。

 

「エナジーの配分も何もない稼働ね……あんな調子で暴れてたら、早晩自滅するってのに……」

 

「……魔力放出全開で暴れているようなものですからね」

 

「ま、暴走エナジーが尽きる頃には、動いてるヒト誰もいないだろうけど」

 

「……このままでは駄目だ。俺達はもちろん……あの二人も」

 

 この有様をどこかで眺めているであろう、アルダークの嘲笑を感じて、トキサダは歯噛みする。

 

『っ、きゃああぁぁっ!』

 

「――――!」

 

 そのトパーズの悲鳴と共に、辛うじて保たれていた均衡めいたものが崩れ始めた。

 

『トパーズッ……!』

 

『っく……う、ぐ……っ……! ま、まだよ、まだ……っ……』

 

『壊れ、壊れろ、壊れろ壊れろ壊れろッッ! ハハ、ハハハハハハ――――!』

 

 突進するエスカリバースを止めようとしたトパーズは、周囲の地形ごと槍の一撃で跳ね飛ばされてしまう。必死に立ち上がろうとするが、彼女は倒れ伏したまま動けない。

 

『ハハハハ、アハハハハ――――』

 

『あっ……』

 

『くっ――――ああ、もうっ……!』

 

 一人、また一人と死の忍びが後方の戦士を仕留めていく。その凶刃が遂にアメイズを捉え――

 

『オオオオオオゥゥゥアアアアアア!!』

 

『きゃあああぁぁっ!』

 

 アメイズが倒れ伏すと同時に、動きを多少なりとも鈍らせていた力が消え、エスカリバースが嵐のように荒れ狂う。

 

『これは……本格的にまずいわね……っ』

 

『とめ、なきゃっ……! それでも、私は…………!』

 

『ッ、ルビー! 行ったぞ!』

 

『――――ッ!?』

 

 咄嗟に、全身全霊の力を振り絞り……

 

『…………………………ハハッ』

 

 叩きつける拳は何の意味も持たず。

 

 ドグシャアッ!!!

 

 ―――-ルビーは、衝撃の感触を最後に意識を断ち切られた。

 

「アカリちゃんっ! みんなもっ……!」

 

「――先輩、行きましょう」

 

「ああ。……ユーノ、ロマン。悪いが、後は任せる」

 

「っ……トキサダ……! でも…………!」

 

『マシュ!? 君は今、不安定な状態なんだ! 無理をさせるわけには……!』

 

 ユーノとロマンの制止。だが、二人の決心が揺らぐことはない。

 

「えっ……長官さんが行く気?」

 

「判断が遅すぎた。全部丸く収める手段を……探しすぎた。俺のミスだ」

 

「全員撤退という手もあるはずよ。要請した国防軍の支援もそろそろ……」

 

「駄目だ。彼女らの今の目的は、石化じゃない。直接、人が死ぬ」

 

「でも! 貴方達が戦うには、あの二人は……!』

 

 その言葉に答えることはなく。

 

「行きましょう、マスター!」

 

「ああ、マシュ!」

 

 共に人理修復の旅を駆け抜けた二人が、今再び、人理防衛の戦いに飛び込むことになる。

 マシュは、トキサダと共に廊下を走りながら力を得るための言葉を口にした。

 

「フラックスプロージョン! ビートチェンジ!!」

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