転生者互助組合外伝 多元世界の転生者   作:ゲーマーN

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Fate/Escalation Order -Epic of Beat Remnant-
人理防衛戦Ⅰ 悪性断罪領域 アルダーク 副題「復讐の刃」
第2節 勇者と魔王

https://syosetu.org/novel/303505/57.html】の本編です


第2節 勇者と魔王

 

FATAL BATTLE

 

【推奨BGM:Stormfang ~FATAL BATTLE 3~】Fate/Grand Orderより

 

 ――――修羅場は、地獄と化そうとしていた。

 

「っく、あ、アアアアアアッ……!」

 

「ハァァァァァァッ……」

 

 幾人もの超昂戦士を叩き伏せ。

 尚も暴走エナジーは尽きる素振りすらなく、煮え滾るような圧力を周囲に拡げ続けていた。

 

「余命。そこらの子を抱えて逃げなさい」

 

 現状の戦力比。脱出までの手順。予想される妨害と、それを食い止めるのに最小限で済む被害。

 感情を排する冷徹さで、斗羽大洋の鬼謀は最善/最悪の答えを導き出す。

 

「はぁ!? ふざけるな、なんで……」

 

「命令よ。久世七暴、一位としての命令」

 

「っ…………」

 

「まったく。殿なんて真っ平御免なのだけど。一応忍びで……一応ダイビート、だものね」

 

「と、斗羽さんっ……!?」

 

「――――下がるのは君もだ、斗羽」

 

「えっ…………!」

 

 だが、その鬼謀を上回る希望が戦士の窮地に姿を見せる。

 

「トキサダ……!」

 

「駆けつけたのはマスターだけではありませんよ」

 

「マシュさんまで!?」

 

 身の丈ほどの十字架型の盾を携えた少女。人理修復の旅で身に付けていた霊衣を(ベース)に、魔法少女らしい戦装束(バトルドレス)に再構成した霊衣。英霊と超昂、二つの異能を兼ね備える超昂戦士、ビートシールダー・マシュが修羅場へと駆けつけた。

 その隣には、決戦用カルデア制服を身に付けたトキサダが寄り添うように立っている。周囲を見渡したトキサダは、地面に倒れ伏すトパーズに片手を向ける。

 

「トパーズは……エナジー切れか。なら……っ」

 

「んぐうっ……ってこれ、魔力じゃない。長官っ……?」

 

「これくらいなら影響は出ないはずだ。共犯者も支えてくれているからな」

 

「共犯者…?」

 

「ユユエル、頼む!」

 

「あっ、はいっ! 皆さんの治療ですねっ」

 

 同じく魔力を分け与えられたユユエルが、治癒の奇跡で周囲の戦士達を癒やし始める。

 

「ッ、ガアアアアァァァァァ!」

 

「ふっ! 通しません!」

 

 咆哮と共に飛び込んできたエスカリバースの槍が唸りを上げる。その正面に割り込んだ雪花の盾が火花を散らして拮抗する。

 

「ッ、グ、ガ、ア……ッ……!」

 

「…………っ……」

 

 触れるモノ全てを粉砕する衝撃に、対抗するマシュは歯を食いしばる。

 

決戦強化(オール・ブーステッド)!」

 

「これなら、行けます……!」

 

「ガアアッ……!」

 

 魔術礼装のスキルで強化されたマシュはエスカリバースを正面から殴り飛ばす。そのまま追撃に投擲された盾にエスカリバースはパルシオンを叩きつける。円卓の盾は、その主たるマシュの下に跳ね返り――

 

「ッ、アアアアアッ!」

 

「ふ、っ…………やああっ!」

 

 空中で回転しつつ、持ち手を掴み取ったマシュはその勢いのままに遠心力の一撃を叩き込む。

 

「フフフフッ、ハハ、アハハハハハ」

 

「おっと。君の相手は、俺だ」

 

 ガキンッ!

 

「――――ッ……!」

 

 忍び寄る影の凶刃を振り向くことなく手刀で弾く。複数箇所の関節を取りに来る動きを決戦強化と魔力放出で向上させた腕力で強引に堪えて、渾身の力を込めて放り投げる。

 

(……っ……? 今、妙な手応えが……)

 

 ビルに直撃して轟音と共に煙を上げた……のは、重量のある、ただの瓦礫。

 

「アハハハハハハ!」

 

「変わり身か! だが――――」

 

 ズドォン!

 

 上空より降り注ぐ刃がアスファルトを深く大きく抉り取る。人間など容易に殺し得るその一振りが斬り裂いたのは、白い制服。

 

「変わり身の術が使えるのは君だけじゃない!」

 

 礼装身代わりの術。多くの英霊に鍛えられたトキサダの戦闘技術は並大抵のものではない。未来での訓練による基礎の上に龍の者であると同時に魔王としての力も兼ね備えた強靭な肉体を合わせれば、その戦闘能力はサーヴァントにも匹敵する。

 

「ひゅっ……クア、ハ、アアアアアアア!」

 

「分身の術――――っ! ならば! 我が征くは恩讐の彼方――!」

 

 殲滅対象の健在を認識した黒い忍びは、その影を幾重にも分かれさせる。一人二人とその数を増す影に対抗するように、内に秘めた魔力を一気に練り上げる。

 

「『虎の影よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフⅡ)』!!」

 

 地獄の如き未来で培われた鋼の精神力と魔王の魔力を以て巌窟王の宝具が再現される。高速移動に伴うトキサダの分身がハルカリバースを次々と拳で打ち抜き、その最後の一人に全方位から一斉に掴みかかる。

 迎え撃つように放たれた苦無が頬を浅く斬り裂いたものの、人間離れしたレベルで「毒」に対する耐性を有するトキサダを止めることはできない。

 

「っく、ウウウウウアアアアァァ!!」

 

「正気に、戻れ、ッ……!」

 

 腕を掴む。振り解こうと暴走エナジーの出力を上げるハルカリバースに対抗するため、トキサダもまた魔力の放出量を一段階上げる。

 

 ――――無駄だ、殺してしまえ――――

 

 と同時に、身体の裡から声が聞こえる。本来の欲望を統べる、魔王の声。

 

 ――――邪魔だから殺せ。外敵だから殺せ。障害だから殺せ。殺せ、殺せ、殺せ殺せ殺殺殺殺殺――――

 

 魔力の反動。欲望の衝動。胸の奥から湧き上がる、どろりとした、悪意の塊のようなもの。

 

『フン……この程度で、我が共犯者を支配できるとは思わないことだ!』

 

 その悪意を恩讐の炎が焼き尽くす。復讐と共に在り、尚も眩い光を侵す泥をその男は許さない。

 

(……礼を言うぞ、巌窟王。マシュの方は――)

 

「アアアアアアア!」

 

「これで、終わりです……! これ以上、あなたには暴れさせません!」

 

 エスカリバースを叩き込み、建物がまた一つ、瓦礫の山と化す。体勢を立て直すよりも先に飛び込んだマシュが、身体の上に跨がり、その膂力でエスカリバースを抑え込む。

 

「……マスター! 魔王の魔力による暴走は大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だ! 今の所、共犯者が抑えてくれている!」

 

「了解です! では、後はこの二人を正気に戻すだけですね!」

 

「だが、その方法が――」

 

「私にいい考えがあります!」

 

 黒い戦士達を抑え込む二人の会話に割り込んだのは意識を失っていたはずのルビーだった。

 

「ルビー!? 目が覚めたのか!」

 

「ユユエルさんのお陰でバッチリです!」

 

「……よかった」

 

 その報告に安堵の息を漏らすトキサダ。

 

「それでルビーさん、いい考えがあるとのことですが……」

 

「はい! けどその前に……ユーノさん! 今、テレビとか映ってます?」

 

『ルビー? どうしたの? 報道は出てるわよ。ヘリも飛んでる』

 

「それ、映らないようにってできますか?」

 

『ええ、ジャミングを掛けることは可能ではあるけど……』

 

『長官が正気を失う姿とか、ちょっとまずいもんねえ。準備はおっけーだよ」

 

『何をする気なの?』

 

「ちょっと変身を解除するので。身元バレちゃうのは困るなって」

 

「「「「『えっ!?』」」」」

 

 その言葉を聞いた全員が己の耳を疑った。

 

「何をする気なのルビーっ! こんなところで変身解除なんて!」

 

「トパーズ、二人を止めるには必要なことなの」

 

『やー、いい根性。分かった。今からジャミングを掛けるよ』

 

「ありがとうございます!」

 

 身振りを交えて、ルビーが語ると、見る間にその場の全員の表情が変わっていく。

 

「…………そうか、リバース達も超昂戦士……」

 

「はい。だから、この方法で二人を止めることができるはずです」

 

「……危険な方法だ。可能ならば、基地に予備を取りに行きたいところだが……」

 

「予備を待つ間、私達が耐えられる保障はありません」

 

「…マシュの言うとおりだな。……ルビー、君の案で行こう」

 

 今、エスカリバースとハルカリバースを抑え込む二人は継戦能力に難がある状態だ。二人の限界が来る前に対処する必要があることを考えれば、準備に掛けられる時間はそれほど多くない。長官の了承を以て、エスカ・ルビーの作戦は正式に認可された。

 

『ジャミングが完了したわ!』

 

 その言葉に、拘束から逃れようと荒れ狂う狂戦士達にアメイズの紫の瞳が向けられた。

 

「ちょーっと大人しくしててね……♥ 全力、ビィーーームッ!」

 

 完全に動きを止めた黒い戦士達の下に、二つの人影が真っ直ぐに向かっていく。

 

「変身、解除っ!」

 

「これで、いい加減に目を覚ませ……ッ」

 

 二人は自らのADDDのシールを剥がし――――

 

「グッ……!」

 

「ウウウッ……!」

 

 それを、リバース達に貼り付けた。

 

「付けたぞ!」

 

「さやかさんッ! ADDDを! 二人を――――強制変身させてっ!」

 

『りょーかいっ! てーーーい!』

 

「「うあああああああああああああああ!!」」

 

 ADDD、正式名称『アドバンス・ドキドキダイナモ』は超昂戦士の力の根源である。この装置は同種の効果を持つ力と併用が出来ず、通常のDDDや閃忍・神騎の能力と併用は出来ない。

 当然、暴走エナジーと併用することも不可能。つまり、この状態でADDDを起動すれば……

 

『暴走エナジーはD2エナジーと似てるからこその荒業だね』

 

『お陰で回路を通じてADDDに送ることができた。だいーぶ乱暴だけどね』

 

『でもADDDから返ってくるエナジーは、紛れもなくD2エナジーだ。彼女たちをおかしくしている暴走エナジーを、D2エナジーに変換できる』

 

『アカリちゃん。本当に、よくこんな方法を思い付いたわね』

 

「うららちゃんの時の事を思い出したんです。超昂戦士だから、適合することも分かってましたし」

 

「ああ、私の……なるほど……」

 

 魔王の力を受け、神騎の能力を得た人間を地上神騎と言う。

 エスカ・トパーズ……本名、春雛うららは地上神騎の中でも非常に強大な魔力を有しており、以前、その強すぎる魔力が原因で暴走したことがある。

 その前例をよく知っていたからこそ、ルビーは今回の作戦を思い付いた。

 

「って! それまだ引っ張ってたの!?」

 

「あ、あ、わ、悪い意味じゃなくって! 状況として、似てたから……!」

 

「私、カッコ悪い話じゃない!」

 

 その会話に、何処からともなく笑い声が漏れる。「笑うなぁ!」と怒りを露わにするトパーズに一行の笑い声は深まり――

 

『どうしたの?』

 

 その時、通信機の向こうから警告音が聞こえてきた。

 

『た、っ…………大変です! その、そっ、そ、そこ……に……ッ……』

 

「どうした!?」

 

『その地点に、強力なアルダーク反応!! フーマン、滅忍……数、測定不能!』

 

『合わせて、巨大なエネルギー反応……こちら、測定履歴がありません!』

 

『なんだとっ……!』

 

 それを聞いた戦士の一人が、変身解除した二人の下に駆け寄った。

 

「アカリさん、こちらを」

 

「うわっ!? ま、マドカちゃん!?」

 

「まだ戦いは終わらないようです。こちらのADDDをご使用ください」

 

「あ、ありがとう。けど、マドカちゃんは……」

 

「私はD2エナジーなしでも、救助活動などは支障ありませんので」

 

 マドカは自分の首筋からシールを剥がし、アカリに差し出す。

 

「それと、ヒビキさんもこちらをどうぞ」

 

「って、こっちは誰の……」

 

「そこのポンコツーーーー! 人のモノを奪うなーーー!」

 

「ちっ。要らない事に気付くのは早いですね」

 

「……………………』

 

「まあ、アレもADDDなしでもやれますので。ご安心を」

 

「……分かった。ななかには悪いが……」

 

 二人の少女は超昂戦士に再度変身を遂げる。それを見て、トキサダは全超昂戦士に指示を出す。

 

「全員、戦闘態勢! アルダークの襲来に備えろ!」

 

 ――――そして。天が割れた。

 

【推奨BGM:グリゴリ】超昂神騎エクシールより

 

「ブー! ブブブーーー!!」

 

「フハハハハッ! 出撃準備完了!」

 

「メネメネメネッ!」

 

「特別急行! 出発である!」

 

 虚空の穴より降臨する無数の怪人。それは、第七特異点のラフムを思い出す数の暴力。

 

「こちらも出陣可能。頭領、下知を」

 

「わはー! やっるぞー!」

 

「どうぞ、ハガネ様。ご存分に」

 

「ああ。どうやら……頃合いか」

 

 想破上弦衆の裏切り者、殲忍ハガネを頭領とする殲・上弦衆。そして、

 

「ッ…………ハガネ!!」

 

「何よ、あ、あの数、っ…………! 嘘でしょっ……」

 

「ちょっと待って。まだ出てくる…………あの、奥から……」

 

「ッ…………! あれは、っ……」

 

「…………あれは。あれ、は……ッ……!」

 

「時は、来た――――」

 

 虚空からの降臨者(フォーリナー)

 

 この惑星(ほし)を侵す外敵。

 

 世界観を乱すモノ。

 

 その名は、その名は、その名は――――!

 

「我はアルダークの長――――ディストバーン」

 

 鋭い眼光で眼下を睥睨したディストバーンは満身創痍の超昂戦士達へ高らかに宣言する。

 

「さあ…………超昂戦士どもよ、全滅の時間だ」

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