夢女子製造機とエロイラストが多い二人と幼馴染なんだが…… 作:ヤマナミさん
「うわっ、やべぇなスモールモーター……どんどん不祥事が湯水のように湧いてくるな」
自分の席のPCから、現在までのニュースを見始める。ここパルデア地方はまだまだ発展途上のためこのようにエキセントリックな事件がなく、ゴシップというものもほぼ発生しない。ちなみに、いまは休憩時間です。
「ちょ、アオキさん見てくれよこの記事。スモールモーター、自動車査定でイシツブテで故意に傷つけ不正請求だって」
「すごいですね」
隣の席で山盛りのお握りを沈黙で食べているアオキさんに話しかける。アオキさんは少し椅子をこちら側に移動し、俺のPCの画面を静かに眺める。けれども、飯を食べるのはやめず、まるでこの記事をさらにおかずに食べているようである。
「うちもある意味ブラックですけど、ここもとんでもねぇすな……」
「そうですね。うちはユーザーには誠心誠意ですが、身内には厳しいですからね……おもにトップ」
「たしかに、あの女帝殿の人使いは荒いのは今に始まったことじゃないしな」
いつの間にかニュースになっている企業の話が、うちのトップの話にすり替わる。女帝ことオモダカさんという女性が我らの絶対上司である。
あの人は道が無ければ作ればいいじゃないという、というバリバリのキャリア組だという言うのに行動はアグレッシブ。
こないだだって、定時は大分過ぎたけれど作業も終わり速帰ろうとしたときだって――
『しっ!!!! よし、おわり! かえる、俺は帰るぞ! おつかれした!』
『待ちなさい、ヤマナミ』
『はい! なんすかトップ! 帰っていいですか会長!』
『変なテンションになっていますよ、落ち着きなさいヤマナミ』
『落ち着いたら帰してくれますかトップ! 俺、もう4徹超えて何かに変身しそうです!』
『帰したいのはやまやまですが、隣のアオキを見なさい』
隣の席は見ないようにしていた。この日の四日前、大規模の『大穴脱走事件』が発生した。一般のリーグ職員は大穴に関しての権限はなく、俺や四天王、トップなど幹部でしか対応できない大事件が起こった。
四天王は各所の街で事後確認と、近くに逃げた化け物どもの調査。トップは会見や関係各所の応答対応。俺も大穴に行ける搬入口周辺の警備と、大穴を囲むように人員の配置、事件の詳細調査、目撃者のヒアリングと口止め、けが人などの被害者がいないか入念な調査、あと一週間後の打ち上げの幹事、チリの臨時面接官対応、調査委員会の発足と議事録制作、あと三週間後のポピーちゃんの誕生日会幹事、一か月後のアカデミーとの懇親会の幹事、幹事、幹事……。
あれ、俺幹事ばっかやってね? あと、なんか俺だけ仕事の量鬼やばいのは気のせいか……。いや、いまはそんなことよりと会長の言う通り隣の席にいるはずのアオキさんを見る。
『………………………』
目が白目を向いているが、書類を入念に書くよう筆を動かしている怪奇現象を目撃。口も半開きで、なにか魂てきなのが見えてしまったちくしょう!
『さぁ、一緒に5徹目をがんばりましょう。まさか、このままアオキや私を見捨てませんよね』
『…………はぃ』
あの時は首元に死神の鎌があてつけられている気分だった。けれど、その死神の首に手をかけていたのもトップなんだろうなぁと思い、諦めつつ死地に再突入したのだ。
「マジで思いますけど、よく俺らあの時生きられましたね」
「あのとき……あぁ、あの事件ですか」
「なんすか、忙しすぎて忘れちゃったんですか? 俺たち同志でしょ」
「いえ、忘れたくて記憶の底に沈めていたので。本当に辛くて……」
「アオキさん……」
お互いブルーな気持ちになった瞬間だった。アオキさんは先ほどまで元気にモグモグとおにぎりを食べていたのに、どこか苦いものを食べたような顔つきになっていた。モグモグではなく、シャリシャリという擬音が聞こえそうだ。
辛かったよな、ほんと。俺はアオキさんの方に手を置き、君は1人じゃないんだ。被害者は君だけではないんだよと気持ちを伝える。
そう、俺たちは同志。あの女帝とともに戦場(書類地獄)をいっしょに駆け抜け(書き込み)、途中意識を失いながらお互いを励まし合った仲である。途中、女帝が「茶番より書類を書いてください」と空気ぶち壊したりなど、精神ダメージは多かったけれども。
あの女帝はいつか絶対泣かせてやると、深く心に決めた瞬間だ。どう泣かすかって? そうだな……もういい年なのに、彼氏いないという点をツッコミたいが、それは俺にも心が抉れる諸刃でもあるし、友達少ないというところも、まぁ俺も頭おかしいやつらしかいないから……うん、まぁいつか思いつくだろう。
そう考えていると―――
「なんのお話をしているんですか、2人とも」
悪魔が声をかけてきた。
トップはにっこりと営業スマイルを俺たちに向けているが、もう俺もアオキさんも一気に効果抜群が決まって、体力が瀕死状態になってしまった。
なんということだ、たったこれだけのことでダメージ負うとか、どんだけトラウマになっとるんだ。ほら、アオキさんも完全に止まっちゃったよ。ヤドン以上に思考停止しちゃってるよ、どうするよおい。
「どうしました?」
「い、いや……急に話しかけられて驚いちゃって。な、アオキさん!」
と、思い切り背中をたたき覚醒させる。
「はっ。これはトップ、お疲れ様です」
「はい、お疲れ様です。で、なんのお話をしていたんですか?」
「ほ、ほらトップ。スモールモーターって会社ご存知ですか。ニュースで頻繁に取り上げられているところで、今日も内部事情が暴露されていたので、それを一緒に見ていたんですよ」
「ほぅ。あの会社ですか。あそこの副社長とは一度お話したことあるんですよ」
何か思い出したかのように、ニコリと笑う。会長は正直美しく、笑うだけで男はいちころなんだろうが…。
「あんがい、小さい男でしたよ」
再度ニコリと笑いかけていたが、目が笑っていない。何が小さかったんですか、トップ。身長ですか、身長ですよね、身長と言ってくださいトップ。
トップは俺の方に手を置き、力が少しずつ加わってくる。
「ところで、先ほど『女帝』というワードが聞こえたのですが。どういうことですかね?」
心臓を貫くような質問をぶちかましてきやがった!?
その言葉とともに会長の握力の力が強くなり、肩がゴキゴキなりはじめている。これがコミュニケーションと信じるぞ、俺は。上司と部下の1on1だ。大丈夫、この後アオキさんが1on2でパーティーを組み助けてくれるはずだ。
アオキさんに助けを請おうと目を向けた。
同志アオキさん、いまこそ俺たちの処世術で魔王を鎮めようではないか! マジで頼む。ほんと、この人怒ると自然災害並みに被害をだすから! おもに俺に!
「……か「アオキ、ここにいたか」」
すると、遠くから体格よすぎるおじさんが話しかけてきた。
ずんずんと近づき、アオキさんに話しかける彼の名前はハッサク。言葉の通り、アオキさんを探していたらしい。
アオキさんはハッサクさんに話しかけられ、すぐさま席を立ちあがった。
「ハッサクさん! 何か御用ですか」
と、いつもなら大声なんか出さないアオキさんがここぞとばかり声をあげ、足早にハッサクさんのところに向かった。
ふふ、おいおい。マジですかアオキ先生。あなた、四天王戦ですらハッサクさんを呼ぶのもノーマルなあんたなのに、あの貧乳も驚くような声をだしやがって……。
いや、アオキさんは成長したのだ。自分のために殻を破り、積極的に動く彼を見て、俺は少々涙腺が緩んだ。別にこれから起こることを想像して、涙がでたのではない。これは感動なのだ。裏切られたのではない、そうだよねアオキさん
「ヤマナミ、休憩時間で申し訳ありませんが部屋まで来てくれますかね」
「……ふっ」
「優しくしてください」
「大丈夫です、私優しいので」